仮想通貨の取引で得た利益は最大45%の所得税がかかりますが、節税対策を行うことで税金の負担を減らせます。本記事では、仮想通貨投資家が知っておくべき税金の基本知識と具体的な節税アイデアを、分かりやすく解説します。本記事を読めば賢く仮想通貨投資に取り組む方法が理解できますので、ぜひ参考にしてください。
目次
仮想通貨の税金事情
仮想通貨の売却や交換などにより利益が生じた場合、原則として確定申告が必要です。また、利益の確定タイミングは、売却や交換を行った時点となります。
ここでは仮想通貨の税金について解説した上で、確定申告が不要なケースもご紹介します。
所得区分は「雑所得」となる
仮想通貨の取引で得た所得は原則として所得税の「雑所得」に分類されます。雑所得とは、他の所得区分に当てはまらない所得を指すことが一般的です。
ただし、仮想通貨の取引を事業として行っている時は、事業所得に該当する可能性があります。
仮想通貨の税率は最大45%となる
仮想通貨の取引で得た雑所得は、他の所得と合算して計算する総合課税です。所得税の税率は5%から45%の7段階に分かれており、所得が多いほど高い税率が適用されます。
対象となる課税所得 | 税率 | 控除額 |
1,000円 〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁 No.2260 所得税の税率
以下で自身の事業と仮想通貨で所得を得ている個人事業主を2ケース挙げ、仮想通貨の所得にかかる税金をシミュレーションしてみましょう。
【ケース1:個人事業主の所得が300万円で、仮想通貨での利益200万円の個人事業主】
項目 | 金額 |
合計所得金額 | 500万円 |
合計所得の内訳 | 事業主の所得:300万円 仮想通貨所の得:200万円 |
基礎控除 | 48万円 |
課税所得 (課税所得=合計所得500万円 – 基礎控除48万円) | 452万円 |
所得税の税率 | 20% |
所得税総額 (課税所得452万円 x 所得税率20%) | 90万4,000円 |
目安税総額 (所得税総額90万4,000円 – 所得税による控除42万7,500円) | 47万6,500円 |
※その他に住民税を考慮したり控除があったりする場合は減額になることがあります。
復興特別所得税は含まれていません。
ケース1では、課税所得金額が452万円ですので、速算表より所得税率20%を利用して計算します。
続いてもう1つのケースを見てみましょう。
【ケース2:個人事業主所得が500万円で、仮想通貨での利益500万円】
項目 | 金額 |
合計所得金額 | 1,000万円 |
合計所得の内訳 | 事業主の所得:500万円 仮想通貨の所得:500万円 |
基礎控除 | 48万円 |
課税所得 (課税所得=合計所得1,000万円 – 基礎控除48万円) | 952万円 |
所得税の税率 | 33% |
所得税総額 (課税所得952万円 x 所得税率33%) | 314万1,600円 |
目安税総額 (所得税総額314万1,600円 – 所得税による控除153万6,000円) | 160万5,600円 |
※その他に住民税を考慮したり控除があったりする場合は減額になることがあります。
復興特別所得税は含まれていません。
ケース2では課税対象となる事業主所得と仮想通貨所得の合計が上がれば上がるほど、対象となる所得税率があがることが分かります。
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確定申告が不要なケースもある
仮想通貨の取引で利益が出た場合でも、必ずしも確定申告の必要がないこともあります。
確定申告が不要なケースとしては、以下の通りです。
ケース1 | 仮想通貨の取引による雑所得の金額が20万円以下であり、かつ、給与所得や他の所得を合わせた総所得金額が20万円以下 |
ケース2 | 雑所得の金額が20万円以下であり、給与所得のみで確定申告が不要な場合 |
自身が上記に当てはまっているかどうか分からない際は、税理士などの専門家都一緒に確認することをおすすめします。
仮想通貨の税金対策9選
仮想通貨の利益に対する税金の負担は重くなる傾向にあるため、節税対策が欠かせないでしょう。ここでは、仮想通貨投資のための9つの税金対策をご紹介します。
法人化すると節税効果が見込める
法人化すると個人事業主として納めている所得税よりも法人税率の方が低くなる可能性があるため、節税効果が期待できます。
年間課税所得 | 個人事業主の所得税率 | 法人税率 ※一般的な普通法人 |
800万円以下 | 5〜23% | 15% |
800万円超 | 23~45% | 23.2% |
法人化した後、法人で売買して得た利益は法人の収益として扱われるため、法人税の対象です。また法人化には、赤字になっても法人住民税の均等割がかかるデメリットもあります。
個人事業主が法人化する目安となる所得は事業規模や業種によって異なりますが、おおむね800万円以上といわれています。
経費に計上する
仮想通貨の取引に関する必要経費は、経費として計上が可能です。適切な経費計上を行うことで、節税効果が高まります。
例えば、取引手数料や専門家への相談料などです。経費計上には、事前に専門家に確認の上、行うようにしましょう。
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利益を年間20万円以下で確定する
開業届を出さずに、副業として個人で仮想通貨を取引をしている個人の場合、仮想通貨の利益が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。ただし、仮想通貨の所得以外に給与所得など他の所得がある際は、合計所得金額で判断します。
利益を20万円以下に抑えるためには、利益が確定したタイミングを調整することが有効です。
しかし利益を意図的に20万円以下にするのは税務上のグレーゾーンとなる可能性もあるため、注意が必要です。
また、20万円以下の副業は確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要なため注意しましょう。
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保有のみに留める
仮想通貨を売却や使用せずに保有しているだけでは、利益は確定しません。つまり仮想通貨を保有しているだけでは課税対象にならないですが、エアドロップなどで仮想通貨をもらった場合は注意しましょう。
ただし、将来の税制変更などのリスクは考慮しておきましょう。また、長期的な運用戦略の一環として、保有のみに留めるのも1つの選択肢です。
損益通算を適用する
副業など個人で仮想通貨を運用していて同じ年に仮想通貨で利益と損失が出た場合、損益を通算して税金を計算したうえで、利益から損失を差し引いた金額に対して税金が発生します。
例えば、ビットコインで100万円利益が出て、イーサリアムで80万円の損失が発生すると、差し引き20万円の利益に対して、税金が計算されます。
ただし、株式譲渡などの他の所得との損益通算はできませんので、注意しましょう。
個人事業主になる
開業届を出していない際、仮想通貨の利益は原則として雑所得ですが、個人事業主として開業届を提出し、事業所得とすると税制上の優遇措置が受けられる可能性があります。例えば、青色申告を行うと65万円の控除が適用可能です。
ただし、開業届の事前準備や青色申告が適用できるかの確認などが必要です。
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所得税に有効な節税対策を適用する
所得税の税金対策を適用することで、税負担を軽減できます。例えば、iDeCoやNISA、、ふるさと納税などです。このように適切な税金対策で手取り額を増せるため、個人で仮想通貨を運用している場合は仮想通貨の利益だけでなく、所得全体を見据えた税金対策を行いましょう。
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控除や還付を活用する
仮想通貨を運用する個人・法人ともに、仮想通貨取引で生じた損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺したり、納めすぎた税金の還付を受けたりできます。これを繰越控除、繰戻還付といい、控除や還付を適切に活用することで、節税が可能です。
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給与所得を調整する
法人の場合、役員報酬を増やすことで給与所得を調整して節税効果を得られますが、役員報酬の増額が過大であると、税務上の問題となるケースもあります。
給与所得の調整は法人税の節税対策の1つとして有効ですが、適切な方法で行いましょう。
仮想通貨の税金対策で良くある6つの質問
仮想通貨の税金対策については、さまざまな疑問や質問をお持ちの人もいるのではないでしょうか。ここでは、仮想通貨の税金対策に関する代表的な質問と回答をまとめてみました。
海外の仮想通貨取引所を利用しても税金はかかる?
海外の仮想通貨取引所を利用しても、日本の税法に基づいて税金がかかります。日本の居住者が海外取引所で仮想通貨を売却した場合、課税対象です。
取引所の所在地に関わらず、利益が発生した時点で課税の対象となります。海外取引所を利用する際は、取引記録を正確に記録したうえで確定申告で申告しなければなりません。
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自分が海外に出国しても税金はかかる?
日本の居住者が海外に出国しても、仮想通貨の利益に対する税金はかかります。日本の税法では居住者の全世界所得に対して課税されるため、海外で得た利益も課税対象です。
海外移住後も一定期間は日本の納税の義務が継続するため、海外居住者になれば確定申告の方法や必要書類が変わる可能性がある点も含め、注意しましょう。
会社員でも法人化はできるもの?
会社員でも、法人化が可能ですが、会社の就業規則で副業が禁止されている場合は注意が必要です。
そのため会社員が副業で法人化する際は、法人化するメリットとデメリットを理解した上で、本業への影響や税務上の留意点などを専門家に相談しましょう。
今後仮想通貨は税制の変更の可能性がある?
仮想通貨の税制は、今後変更される可能性があります。2024年度の税制改正大綱では、法人の暗号資産の課税方法が変更されることが決定しました。
個人の暗号資産課税についても、現在の総合課税から申告分離課税への変更や税率の見直しなどが要望とされています。ただし個人の暗号資産課税の変更は、2024年度の税制改正では見送られました。
以上から、今後も暗号資産の普及に伴い、税制が変更される可能性は十分にあると考えられます。
参考:仮想通貨「保有で課税」見直し 24年度税制改正大綱 – 日本経済新聞
参考:令和6年度税制改正大綱
【税理士監修】税金の種類とは?日本の税制一覧と今後の課題・国際比較も解説
仮想通貨で開業する場合、個人と法人で違う点は?
仮想通貨で開業する場合、個人と法人では主に以下の違いがあります。
項目 | 個人 | 法人 |
利益への課税方法 | 総合課税 | 法人税の対象になる |
開業手続き | 確定申告のみ | 設立登記が必要 |
個人で仮想通貨の売買を行なう際の利益は事業所得として総合課税の対象となり、税率は5〜45%です。確定申告は必要ですが、青色申告は任意です。
一方、法人の場合は設立登記を行わなければなりません。加えて法人税が課税されるほか、経理処理などが義務付けられます。
利益が800〜900万円を超える場合は、個人より低い法人税率のメリットを享受できる可能性があるため、法人化を検討しましょう。
仮想通貨投資で賢く節税しよう!
本記事では、仮想通貨投資で得た利益に対する適切な税金対策の必要性を解説しました。仮想通貨の取引で得た利益には最大45%と高額な税金がかかるため、適切な税金対策が大切です。
状況に応じて法人化することで、個人よりも低い法人税率の適用を受けられる可能性があります。
個人で仮想通貨を運用する場合は、取引関連の経費計上や損益通算の活用、利益を一定水準以下に抑えることで確定申告を不要にするなどの対策があり、所得税対策としてiDeCoやふるさと納税の控除活用も有効です。
法人化や損益通算など具体的な税金対策もご紹介しましたが、自身の状況に最適な方法がわからない方もいらっしゃるでしょう。
仮想通貨の税金対策についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。