マイクロ法人とは、経営者1人で事業を行う会社のことです。個人事業主やフリーランスと同じような事業内容でも、法人として事業を行うことで、税金や社会保険料の節減や社会的な信用度の向上などのメリットが期待できます。しかし、マイクロ法人にはデメリットや注意点もあります。この記事では「マイクロ法人とは」をテーマに、マイクロ法人設立のメリットやデメリット、設立に必要な手続きや注意点などを解説します。
目次
マイクロ法人とは
マイクロ法人は経営者1人だけで会社を運営するものです。マイクロ法人は自分1人で出資し、自分1人で役員や従業員の役割を果たします。ここでは、マイクロ法人の定義と特徴、個人事業主や一般的な会社との違いについて説明します。
マイクロ法人の定義と特徴
通常、会社は多くの株主から資金を集め、役員や従業員を雇って事業を展開します。しかし、マイクロ法人は経営者1人だけで会社を運営するものです。株式会社や合同会社、合名会社などの会社形態での設立が可能です。
ただし会社法の規定では、非上場会社の役員や株主の数に制限はありません。法的には通常の会社とマイクロ法人は同じものと見なされます。マイクロ法人を立ち上げる際には、通常通りの会社法に沿った手続きや、法人としての登記が必要です。
マイクロ法人の特徴は、自分で出資・設立・経営だけでなく、営業や会計、納税申告も自分ですることです。通常の会社が事業の拡大を目標としているのに対し、税金の軽減を主な目的としているケースが多いです。通常は株主に利益を分配しますが、マイクロ法人の場合は株主へ配当しないことが珍しくありません。
個人事業主やフリーランスと同じような事業内容でも、法人として事業を行うことで、税金や社会保険料の節減、社会的な信用度の向上などのメリットが期待できます。
マイクロ法人と個人事業主の違い
マイクロ法人と個人事業主の違いは、起業の手続きや税金の仕組み、経費の範囲などです。
個人事業主として開業する場合は、税務署に開業届を提出するだけですが、マイクロ法人を設立する場合は、定款の作成や法務局で法人登記などが必要です。
また、個人事業主の場合は、所得が増えると保険料や所得税が上がります。一方、マイクロ法人の場合は、役員報酬の金額を下げることで個人の保険料や所得税を抑えるだけでなく、個人の税率よりも低い法人税の税率を利用して節税効果を高めることができます。
さらに、マイクロ法人の場合は、経費として扱える幅が広がります。たとえば、役員報酬や退職金、生命保険の一部や出張の際の日当などが経費として認められます。
項目 | 個人事業主 | マイクロ法人 |
所得税 | 所得に対して課税 | 利益に対して課税 |
所得税率 | 所得の額によって段階的に上がる | 一律23.2% |
経費の差し引き | できない経費もある | できる |
社会保険料 | 所得に対して課税 | 給与に対して課税 |
社会保険料の額 | 所得の額によって段階的に上がる | 給与の額によって決まる |
マイクロ法人と一般的な会社の違い
マイクロ法人と一般的な会社の違いは、事業拡大を目指すかどうかという点です。一般的な会社は、利益の維持や向上のために事業拡大を目指し、得た利益は株主などに配分します。
一方、マイクロ法人は、出資者である株主と経営者の役割を同一人物が両方兼ね、1人でできる範囲で事業を行います。1人でできて、かつ設備費や仕入れ費用が抑えられるような業種に向いているでしょう。コンサルタントやライター、デザイナー、ブロガー、アフィリエイターなどが代表的な例です。
マイクロ法人を設立するメリット
マイクロ法人を設立すると、個人事業主として事業を続ける場合に比べ、さまざまなメリットがあります。ここでは、マイクロ法人を設立するメリットについて、以下の3つをご紹介します。
節税効果が高い
マイクロ法人のメリットの一つは、節税効果が高いことです。
マイクロ法人の場合、個人事業主よりも、経費にできる範囲が広く認められています。経費とは、事業を行うために必要な費用のことで、経費として認められたものは、所得から差し引くことが可能です。所得が減れば、税金も減るので、節税効果があります。
たとえば、法人の経営者は役員報酬を受け取りますが、要件を満たせば役員報酬は経費として扱うことが可能です。役員報酬を経費として扱えれば、法人の所得が減るため、節税効果を高めることにつながります。
法人であれば経営者の退職金も損金計上できるだけでなく、生命保険の一部や出張の際の日当も経費として扱うことも可能です。
また、個人事業主は累進課税制度が採用されているため、複数事業を運営して所得が増えると税率が高くなります。しかし、マイクロ法人を設立すると、個人事業とマイクロ法人に所得を分散でき、全体の所得を減らせるため、節税につながります。
たとえば、現時点でコンサルタントとして年間800万円、EC事業者として年間400万円の合計1,200万円の売上がある個人事業主がいるとします。マイクロ法人を設立してEC事業の売上400万円をマイクロ法人で計上すれば、コンサルタントとしての個人事業とEC事業者としてのマイクロ法人どちらも課税売上高が1,000万円以下のため、いずれも消費税の免税事業者になれる可能性があります。
そして、役員報酬は給与所得のため、給与所得控除が受けられます。給与所得控除とは、給与所得から一定の金額を差し引かれる控除です。給与所得控除の金額は、給与収入の額に応じて変わります。たとえば、給与所得が55万円下がると、所得税も住民税もその分安くなります。
さらに、マイクロ法人として社会保険に加入すれば、役員報酬の金額を可能な限り下げることによって、健康保険と厚生年金の保険料を抑えることが可能です。個人事業主の場合は、国民健康保険や国民年金に加入する必要がありますが、これらの保険料は所得に応じて増えます。マイクロ法人の場合は、役員報酬を月額6万3千円未満にすることで、保険料の負担を減らせるでしょう。
社会的な信用度が高くなる
マイクロ法人を設立するメリットとして、社会的な信用度が高くなることも挙げられます。
法人を設立する際には、法務局に法人登記(会社設立登記)を行います。法人登記の目的は、商号(社名)や住所、資本金などの情報を開示して会社の信頼維持を図り、安心して取引ができるようにすることです。
登記した内容は誰でも閲覧できるため、法人としての責任が発生し、社会的な信用度が高くなります。たとえば、大手企業は個人事業主と契約を結ばなかったり、取引金額を抑えたりする場合もありますが、マイクロ法人なら取引できることもあるのがメリットといえでしょう。
また、社会的な信用度が向上すると、金融機関からの融資を受けやすくなる可能性があります。個人事業主でも資金調達は行えますが、マイクロ法人なら、法人を対象にした補助金・助成金制度も利用できるようになります。
事業拡大がしやすい
事業拡大がしやすいことも、マイクロ法人を設立するメリットです。
マイクロ法人は、自分1人でできる範囲で事業を行いますが、事業が順調に進んで人手や資金が必要になった場合、法人としての体制が整っているので、事業拡大につなげやすいといえます。
たとえば、マイクロ法人は、株式会社や合同会社などの会社形態で設立できますが、これらの会社形態は株式の発行や譲渡が容易です。そのため、資金調達や株主の増加がしやすいといえます。
また、個人事業主とは違い、マイクロ法人は法人化しているため、いつでも役員を迎え入れることが可能です。役員や従業員を雇うことで、事業の規模や種類を拡大したり、専門性や効率性を高めたりできます。
マイクロ法人の設立に関するご質問やご相談がありましたら、ぜひ、わたしたち「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
マイクロ法人を設立するデメリット
節税や社会的信用度の向上などのメリットがあるマイクロ法人ですが、デメリットもあります。ここでは、マイクロ法人を設立するデメリットについて、詳しくみていきましょう。
会社の設立・維持に費用と手間がかかる
マイクロ法人を設立するには、個人事業主と比べて、より多くの費用と手間がかかります。
まず、会社の設立には、定款の作成や認証、法人登記などの手続きが必要です。これらの手続きには、登録免許税や収入印紙代などの費用が発生します。
また、自宅以外に事務所を借りる場合や、バーチャルオフィスや電話受付代行などのサービスを利用する場合にも、その分の費用がかかります。
さらに、会社の設立後には、定期的に決算書や税務申告書などの書類の作成が必要です。これらの作業には時間がかかり、作業中は営業活動ができません。決算書や税務申告書は自分でも作成できますが、個人の確定申告に比べて複雑なため、税理士に依頼することをおすすめします。
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赤字でも法人住民税を支払わなければいけない
マイクロ法人を設立すると、個人事業主とは異なり、赤字でも法人住民税を支払わなければいけない場合があります。
法人住民税は、都道府県民税と市町村民税の2種類からなりますが、都道府県民税と市町村民税には、法人の所在地に基づいて課される均等割という税金があります。均等割は、法人の所在地の都道府県や市町村が定めた一定の金額を、資本金や人数に応じて分担して納める税金です。
均等割の金額は、市町村によって異なりますが、一般的には数万円から数十万円程度です。均等割は、法人の所得に関係なく課される税金なので、赤字でも支払わなければいけません。
このため、マイクロ法人を設立する場合は、赤字になったときにも均等割を支払えるだけの資金を確保しておく必要があります。
決算申告などの税務処理コストがかかる
マイクロ法人を設立すると、個人事業主とは異なり、決算申告などの税務処理コストがかかります。決算申告は、法人の所得を計算して法人税を納めるための手続きです。
決算申告には、貸借対照表や損益計算書などの決算報告書だけでなく、個人事業主では作成しない勘定科目内訳明細書や法人事業概況説明書などの添付書類が必要です。これらの書類を作成するには、会計ソフトや税務ソフトを利用するか、税理士への依頼が必要でしょう。個人事業主よりも複雑で時間がかかる上に、税理士の報酬などのコストがかかります。
正確な税務処理のためには自分一人だけで行うより、税理士に依頼する方が効率が良い場合もあるため、マイクロ法人を設立する場合は、これらの税務処理コストを見込んでおくことが大切です。
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マイクロ法人の設立に必要な手続きの流れとポイント
マイクロ法人を設立するには、株式会社や合同会社などの会社形態を選び、法務局で法人登記する必要があります。マイクロ法人の設立に必要な手続きについて、詳しくみていきましょう。
①会社概要の決定
マイクロ法人の設立には、まず、会社の概要を決める必要があります。会社の概要には、以下のような項目が含まれます。
- 会社の目的:マイクロ法人が行う事業の内容を明確に示すもの
- 会社の商号(社名):マイクロ法人の名前
- 会社の本店所在地:マイクロ法人の本社の住所(自宅やレンタルオフィスなども可)
- 会社の会社形態:株式会社や合同会社などの法人の種類
- 会社の資本金:マイクロ法人の事業を行うために必要な1円以上の資金
これらの項目は、定款に記載する必要がありますので、定款作成前に決めておきましょう。
②法人用の実印作成
マイクロ法人の設立には、法人用の実印と代表者個人の実印が必要です。法人用の実印は、法務局での登記や契約書などに使用します。
法人用の実印と代表者個人の実印は、印鑑店やネット通販などで作成できます。作成する際には、印鑑の大きさや素材、彫り方などに注意しましょう。一般的には、法人用の実印は18mm以上、代表者印は12mm以上の大きさが望ましいとされ、彫り方は、浅彫りよりも深彫りの方が印影がはっきりとします。また、素材は木製や樹脂製よりも、象牙や水牛角などの高級なものが好まれます。
法人用の実印と代表者個人の実印を作成したら、それぞれの印鑑登録を行いましょう。法人用の実印は、本店所在地の市区町村役場で登録し、印鑑登録証明書を受け取ります。代表者個人の実印は、代表者の住所地の市区町村役場で登録し、印鑑登録証明書を受け取ります。印鑑登録証明書は、登記申請の際に必要になりますので、大切に保管しましょう。
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③定款の作成と認証
定款とは、マイクロ法人の「憲法」のようなもので、会社の目的や商号、本店所在地、資本金、役員の構成などの基本事項を記載した文書です。定款は、法人登記の際に法務局に提出する必要がありますので、正確に作成しましょう。
定款の作成には、専門的な知識が必要ですので、税理士や司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。また、インターネットなどで定款の雛形やサンプルを入手できますが、必ず自分の事業に合わせて内容を変更しましょう。
定款を作成したら、株式会社の場合は、公証役場で定款認証を受ける必要があります。定款認証とは、定款の内容が法令に適合しているかどうかを公証人が確認する手続きです。
定款認証を受けるには、定款の原本と写し・発起人の印鑑登録証明書・発起人の本人確認書類などを持参し、定款認証申請書に必要事項を記入して提出します。定款認証の費用は、資本金の額に応じて変わりますが、最低でも5万円はかかります。
合同会社の場合は、定款認証は不要ですので、この手続きは省略可能です。
④資本金の払込み
資本金とは、マイクロ法人の事業を行うために必要な資金のことです。資本金は、発起人が出資することで調達します。
資本金は、1円以上であれば自由に決めることができますが、事業の規模や内容に応じて適切な額を設定しましょう。また、定款には資本金について記載が必要ですが、資本金の最低額のみの記載も可能です。具体的な定款作成後に決定することもできます。
資本金は、発起人の個人名義で開設した銀行口座に振り込むケースが多いです。登記が完了していない段階では、マイクロ法人名義での口座を開設できません。
振り込み後、資本金が証明できる通帳の表紙と1ページ目、資本金の振込内容が記載されているページをコピーします。登記申請の際に必要になりますので、大切に保管しましょう。
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⑤登記申請書作成と申請手続き
登記申請書とは、マイクロ法人の設立を法務局に申請するための書類です。登記申請書には、マイクロ法人の登記内容や発起人の氏名や住所などの情報を記入します。登記申請書の書き方は、法務局のホームページなどで確認可能です。
登記申請書を作成したら、登記申請書類と一緒に法務局に提出します。登記申請書類には、登記申請書のほかに、以下のものが含まれます。
- 登録免許税分の収入印紙を貼った納付用台紙
- 定款の写し
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の印鑑登録証明書
- 資本金の払込があったことを証する書面
- 印鑑届出書
- 登記すべき事項を記載した書面(データでも可)
登記申請書類を法務局に提出する方法は、窓口へ持参、郵送、オンライン申請のいずれかです。持参する場合は、法務局の窓口で書類の書き方などのアドバイスをもらえます。しかし、知識のないまま申請を行い書類に不備があった場合、受理されるまでに時間がかかります。司法書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
登記申請を行ったら、法務局が登記申請書類の内容を審査します。審査には、通常10日ほどかかり、審査に問題がなければ、法務局は登記を完了させ、登記完了の通知を発行します。登記完了の通知を受け取ったら、マイクロ法人の設立は完了です。
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⑥登記簿謄本と印鑑証明書の受け取り
登記簿謄本とは、マイクロ法人の登記内容を記載した書類です。登記簿謄本は、マイクロ法人の設立後に必要になることが多いため、登記完了の通知を受け取ったら、法務局に申請して受け取りましょう。登記簿謄本の申請には、登記簿謄本交付申請書と手数料が必要です。手数料は、1通につき600円です。
印鑑証明書とは、マイクロ法人の実印が登録されていることを証明する書類です。印鑑証明書も、マイクロ法人の設立後に必要になることが多いため、登記完了の通知を受け取ったら、本店所在地の市区町村役場に申請して受け取りましょう。印鑑証明書の申請には、印鑑証明書交付申請書と手数料が必要です。手数料は、1通につき300円です。
登記簿謄本と印鑑証明書は、マイクロ法人の設立後に、銀行口座の開設や契約書の作成などに必要になりますので、大切に保管しましょう。
⑦各種行政への手続き
マイクロ法人の設立後には、各種の行政機関への手続きが必要になります。主な手続きは、以下の通りです。
- 税務署への法人設立届出の提出
- 税務署への給与支払事務所等の開設届出書の提出
- 県税事務所への法人設立届出の提出
- 市区町村役場への法人設立届出の提出
- 社会保険事務所への社会保険の加入届出の提出
- 労働基準監督署への労働保険の加入届出の提出
これらの手続きには、それぞれに必要な書類や手数料がありますので、事前に確認しましょう。また、手続きの期限や方法も、行政機関によって異なりますので、注意しましょう。
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マイクロ法人の設立や維持にかかる費用
マイクロ法人を設立するには、一般的な法人と同様に、設立費用や維持費用がかかります。設立を検討している方は、維持費用についても想定しておくことが大切です。ここでは、マイクロ法人の設立費用と維持費用について解説します。
マイクロ法人の設立費用
マイクロ法人の設立費用は、会社の形態によって異なります。現在は株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類から選択できますが、形態にこだわらずに費用を抑えたいと考えている場合には、合同会社がおすすめです。
合同会社は、株式会社に比べて設立費用が安く、出資者の責任が限定されるというメリットがあります。合同会社の設立費用は、以下のとおりです。
- 登録免許税:6万円
- 定款作成代:0円(電子定款を利用する場合)
- 定款認証手数料:0円(電子定款を利用する場合)
- 各種証明書取得費用:1,000円
- 会社印鑑:0円(電子定款を利用する場合)
- 会社設立代行サービス:0円(自分で手続きを行う場合)
合計で約6万1千円が必要となります。ただし、電子定款を利用しない場合や、会社設立代行サービスを利用する場合は、それぞれ4万円や5万円程度の費用がかかる場合があります。
また、バーチャルオフィスや電話受付代行などのサービスを利用する場合も、その分の費用がかかりますので、合わせて確認しておきましょう。
マイクロ法人の維持費用
マイクロ法人の維持費用は、主に以下が考えられます。
- 法人税:約7万円(最低限の法人住民税)
- 社会保険料:約135,000円(会社負担分のみ)
- 役員報酬:約279,000円(個人負担分の社会保険料込み)
- 会計費用:約50,000円(税理士に依頼する場合)
合計で約534,000円が必要となります。ただし、これらの費用は、事業の規模や収益、役員報酬の額などによって変動します。また、消費税の免税事業者の場合は、消費税の納付が不要です。
マイクロ法人の設立や維持にかかる費用は、個人事業主と比べて高くなりますが、税金や社会保険料の節減効果がある場合もあります。マイクロ法人を設立するかどうかは、自分の事業の状況や目的に応じて慎重に判断する必要があります。
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マイクロ法人に向いている事業とは
マイクロ法人を設立するのに向いている事業やおすすめなケースがあります。自身の事業や状況と照らし合わせ、設立に向けての検討材料としてみてください。
マイクロ法人に向いている事業
マイクロ法人に向いている事業は、以下が考えられます。
- 在庫や仕入れがない(少ない)
- 設備投資が必要ない
- オフィスが必要ない(もしくは小さい)
- 顧客との直接対面がない(もしくは少ない)
- 専門知識やスキルがある
- 副業として行える
上記のいずれかの特徴を満たす事業は、マイクロ法人としての経営コストを抑えられるとともに、個人の強みを活かせるというメリットがあるでしょう。マイクロ法人におすすめの事業の具体例を挙げます。
- 資産管理/資産運用(FX・株・不動産・太陽光発電・仮想通貨・NFT)
- YouTuber/ライバー/TikToker/インスタグラマー
- フリーランス(コンサルタント・コーチング・ライター・イラストレーター・プログラマー・エンジニア・デザイナー・動画編集)
- オンラインサロン運営
- せどり(転売)
- フードデリバリー(ウーバーイーツ・出前館・menu・foodpanda・Wolt・DoorDash)
- ブログ(アフィリエイト)
- マッサージ・整体
- 出版
- モデル
これらの事業は、マイクロ法人として行うことで、税金や社会保険料の節減効果や、法人格の信用力や安定感を得ることができます。また、自分の好きなことや得意なことを仕事にすることで、やりがいや自由度も高まります。
上記で挙げた事業以外にも、マイクロ法人として設立した方がメリットが得られるという事業もありますので、自身の事業の特徴を比較してみてください。
マイクロ法人の設立におすすめなケース
個人事業主やフリーランスとして事業を行っていく上でぶつかる問題の中には、マイクロ法人の設立で解決できるものがあります。
マイクロ法人の設立におすすめなケースは、以下が考えられます。
- 個人事業主やフリーランスとして所得が高く、所得税や住民税の負担が重い場合
- 個人事業主やフリーランスとして収入が不安定で、社会保険料の負担が重い場合
- 個人事業主やフリーランスとして経費が少なく、保険料などを経費にしたい場合
- 個人事業主やフリーランスとして事業の拡大や資金調達が難しい場合
- 個人事業主やフリーランスとして事業の信用力や安定感が低い場合
- 個人事業主やフリーランスとして事業の継承や譲渡が難しい場合
これらのケースでは、マイクロ法人を設立することで、以下のメリットが得られます。
- 法人税率が所得税率より低い場合、税金の負担を軽減できる
- 社会保険料が国民健康保険料より低いため、社会保険料の負担を軽減できる
- 経費が増えるため、税金の負担を軽減できる
- 法人格を持つため、事業の拡大や資金調達がしやすくなる
- 法人格を持つため、事業の信用力や安定感が高まる
- 法人格を持つため、事業の継承や譲渡がしやすくなる
マイクロ法人の設立に関するご質問やご相談がありましたら、ぜひ、わたしたち「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
マイクロ法人を設立した後に気を付けるべきこと
マイクロ法人を設立する際、いくつか注意するポイントがあります。注意点を把握しないまま法人化すると、税務署から脱税行為と疑われてしまうリスクもあります。
また、会社員が兼業としてマイクロ法人を設立する際も、注意が必要です。ここでは、マイクロ法人設立時の注意点について、詳しくみていきましょう。
ペーパーカンパニーと見なされないようにする
ペーパーカンパニーとは、事業活動を行っている実態がないまま、法人登記だけをしている会社のことです。ペーパーカンパニーは、税金や社会保険料の節約、他の会社との取引の際の信用力の向上などの目的でつくられることがありますが、国税庁や社会保険庁などの行政機関から厳しく監視される対象となります。
ペーパーカンパニーと見なされると、以下のようなデメリットがあります。
- 税務調査や社会保険料の追徴などの処分を受ける可能性が高まる
- 法人口座の開設や融資の受け入れが困難になる
- 事業の信用力や安定感が低下する
- 事業の拡大や資金調達が難しくなる
- 事業の継承や譲渡が難しくなる
ペーパーカンパニーと見なされないようにするためには、以下のような対策が必要です。
- 実際に事業活動を行い、収益を上げる
- 事業内容と関係のない経費や借入金を避ける
- 事業所に実際に出勤し、事務作業や営業活動を行う
- 事業所に備品や設備を整え、顧客や取引先との連絡手段を確保する
- 事業計画や決算書などの資料を作成し、記録や証拠を残す
脱税行為にならないようにする
脱税とは、故意または過失によって、正当な理由なく税金を納めないことです。脱税は、法律によって罰せられる犯罪行為です。脱税の例としては、以下のようなものがあります。
- 収入や利益を過少申告する
- 経費や損失を過大申告する
- 非課税や控除の対象となるものを虚偽申告する
- 悪意を持って税金の納付を滞納する
- 税務申告や納税の義務を無視する
脱税を行うと、以下のようなデメリットがあります。
- 税務調査や追徴課税などの処分を受ける
- 刑事罰や行政罰などの制裁を受ける
- 信用力や社会的評価が低下する
- 事業の継続や拡大が困難になる
- 顧客や取引先との信頼関係が損なわれる
脱税を行わないようにするためには、以下のような対策が必要です 。
- 正確かつ適正に税務申告や納税を行う
- 経理や会計の知識やスキルを身につける
- 会計ソフトや税理士などの専門家を活用する
- 税務に関する最新の情報や制度を把握する
- 税務に関する記録や証拠を整理し、保存する
会社員との兼業に注意する
マイクロ法人を設立する場合、会社員との兼業を行うことも可能です。しかし、会社員との兼業には、以下のような注意点があります 。
- 会社の就業規則や契約書によっては、兼業が禁止されている場合がある
- 会社の業務時間や休日に兼業を行うと、過労や健康障害のリスクが高まる
- 会社の業務内容と兼業の内容が競合すると、利益相反や損害賠償の問題が発生する可能性がある
- 会社の業務に支障をきたすような兼業を行うと、懲戒処分や解雇の対象となる可能性がある
- 会社員としての所得と兼業としての所得を合算すると、所得税や住民税の税率が上がる可能性がある
会社員との兼業を行う場合には、以下のような対策が必要です 。
- 会社の就業規則や契約書を確認し、兼業が許可されているかどうかを確認する
- 会社の上司や人事部に相談し、兼業の内容や範囲を明確にする
- 会社の業務時間や休日に兼業を行わないようにする
- 会社の業務内容と兼業の内容が競合しないようにする
- 会社員としての所得と兼業としての所得を別々に管理し、税務申告や納税を正しく行う
マイクロ法人を設立するにはしっかり計画を立てよう
マイクロ法人を設立するかどうかは、自分の事業の状況や目的に応じて慎重な判断が大切です。マイクロ法人を設立することで、自分の好きなことや得意なことを仕事にできますが、それだけではなく、法人としての責任や義務も負うことになります。
マイクロ法人の設立は、自分の事業をより本格的に行うことを意味します。マイクロ法人を設立する前には、事業計画や資金計画などをしっかりと立てることが重要です。
マイクロ法人の設立に関するご質問やご相談がありましたら、ぜひ、わたしたち「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。