会社を設立する際は、さまざまな申請・手続きが必要です。会社設立の申請・手続きでは電子化が進んだとはいえ、まだまだ印鑑が必要とされます。今回は、会社設立に必要となる印鑑について、その種類・用途・選び方などについて、詳しく解説します。会社設立にあたってどのような印鑑が必要か理解が深まる内容です。
目次
会社設立に印鑑は必要?
会社設立の申請・手続きには、原則として印鑑が必要とされます。会社設立の手続きを始める前に会社印などを用意するのが一般的です。会社設立で必要とされる印鑑のさまざまな情報を解説します。
そもそも印鑑って何?
一般的に「ハンコ」と呼ばれ、多くの方がイメージする印鑑は、正式名称を「印章」と呼びます。また、印章を捺印した際に残る跡の正式名称は「印影」です。「印鑑」とは、会社設立の手続きの中で、役所や銀行などに登録する「印影」をさします。
会社設立の手順で登録される側、つまり役所や銀行が必要としているのは「印影」であり、会社を設立するための準備をしている方が必要としているのは「印章」だというわけです。それが、関係機関で登録されれば「印鑑」になると考えるとよいでしょう。
本記事では、会社を設立される方が必要としている、いわゆる「ハンコ」についての紹介ですので、便宜上「印鑑」と紹介させていただきます。
会社設立の手順のなかで印鑑を作るタイミング
まず、会社設立の際に、どのような場面で印鑑が求められるのか、会社設立の手順を見ていきましょう。会社設立の大まかな手順は以下の通りです。
- 会社概要の策定(会社名・事業目的・代表者・資本金など)
- 定款作成・登記
- 設立後の各種手続き(税金・社会保険・労働保険関係の手続き・銀行口座開設)
一連の会社設立の手順の中で、法務局へ提出する「登記申請の手続き」で印鑑が必要とされます。次項で詳しく説明しますが、定款の作成や登記申請の前に印鑑を作っておくのが望ましいでしょう。
定款や取締役会議事録では必要
定款および取締役会議事録を書面ベースで作成した際には、押印、つまり印鑑が必要です。一方、電子定款および電子媒体で議事録を作成する際には、電子印章を利用することになります。
取締役会議事録では、場合によって個人の実印、または認印、および会社実印(代表印)が求められます。
商業登記では印鑑不要のケースも
商業登記の手続きでは、電子申請も可能です。電子申請の場合は、印鑑は任意とされています。
一方、従来どおりの書面による申請のときには、会社実印(代表印)が必要です。
出典:オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記) 法務省
会社設立の準備は、専門家の意見を聞くのもおすすめです。ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
会社設立で必要となる印鑑とは?
会社設立にあたって必要となる印鑑は、以下の4本です。これらの印鑑は「4本セット」とも呼ばれています。
- 会社実印(代表印)
- 銀行印
- 角印
- ゴム印
それぞれの印鑑について、詳しく見ていきましょう。
会社実印(代表印)
印鑑の中でもっとも重要な印鑑は、会社実印(代表印)です。会社設立時の商業登記の際にも利用されますし、不動産の契約など重要な契約の締結時にも使われます。
会社実印(代表印)には、サイズ規定があります。辺の長さが1cmを超えて、3cm以内の正方形の中に収まるものでなくてはなりません。会社実印(代表印)を作る際には、注意しましょう。
銀行印
銀行印とは、その名前のとおり、銀行の法人口座を開設するときに使われる印鑑です。口座開設にあたっては、会社実印(代表印)を使ってもよいのですが、会社実印(代表印)の紛失や悪用リスクの防止のために、銀行印は会社実印(代表印)とは分けておく方がよいでしょう。
銀行印のサイズには、特に規定はありません。会社実印(代表印)と区別がつきやすいように、やや小さめのサイズで作るのが無難です。
角印
企業の日常活動の中で、もっとも多く利用される印鑑が角印です。会社実印(代表印)や銀行印とは違い、印鑑の形が四角形であることから角印と呼ばれています。
角印の用途としては、請求書や納品書・見積書への押印です。印影は会社名を縦書きで記載することが一般的です。
ゴム印
最後は、ゴム印です。ゴム印とは会社の住所・社名・電話番号などが記載された印鑑です。用途としては、封書などを送る際に送り主の欄に押印する際などに使われます。ゴム印は、会社設立に必須な種類の印鑑ではなく、企業の日常活動で必要な場合のみ、準備すればよいでしょう。
会社設立の印鑑の選び方
会社設立に利用する印鑑の選び方について、詳しく紹介します。選び方のポイントとしては、以下の4点です。
- セット購入がおすすめ
- 材質
- 書体
- 大きさ
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
セット購入がおすすめ
会社設立に利用する印鑑は、1本ごとバラバラに購入することもできますが、セットで購入した方が割安です。一般的に、4本セット(会社実印(代表印)・銀行印・角印・ゴム印)や、3本セット(会社実印(代表印)・銀行印・角印)などがあります。
材質
印鑑の材質には、木材系・角牙系・金属系の大きく3種類があります。会社で利用する印鑑は、今後、長期にわたっての使用が予測されるため、これらの材質の中で耐久性が高い材質の印鑑を選んだ方がよいでしょう。
3種類の材質の中で、もっとも耐久性が高いものが金属系のチタンです。チタンの耐久性にあやかって、事業が長くうまくいくように、という縁起も担ぎ、会社設立の際には、チタン製の印鑑をおすすめされるケースが増えています。
書体
印鑑に彫られている書体には、篆書体・吉相体・古印体の3種類があります。書体の中で、法人用印鑑で最適な書体は篆書体といわれています。読み方は「てんしょたい」です。
篆書体は、その形状から可読性が低く、偽造しにくい書体です。セキュリティ性も高いことから、会社設立には篆書体がおすすめです。
大きさ
印鑑の大きさにも、さまざまなものがあり、サイズを選びに悩む人もいます。法人用印鑑の大きさとしては、一般的に
角印>会社実印(代表印)>銀行印 |
の順にサイズを決めるとバランスが良いでしょう。そのため、セット購入の場合には、こうした順にサイズ設定をしていることが多いです。
会社実印は印鑑証明書が必要
企業において、もっとも重要な印鑑は、会社実印(代表印)です。会社実印は、法務局で印鑑登録を行い、印鑑証明書を事前に準備しておく必要があります。会社実印の印鑑証明書とは、どのような目的で求められるのでしょうか?
会社実印の印鑑証明書の利用目的
会社実印(代表印)の印鑑証明書は、個人の印鑑証明と同様に、本人確認をして取引などの安全を図るために必要とされています。また、第三者による代表者へのなりすましを防止するためにも求められるケースがあります。
たとえば、会社実印(代表印)は、前述のとおり不動産の賃貸借契約を締結する際や、金融機関で資金融資を受けるときなど、重要な取引で必要とされます。印鑑証明書もこうした取引で提出が求められます。
会社設立の準備は、専門家の意見を聞くのもおすすめです。ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
会社実印の印鑑証明書の取得方法と手数料
会社実印(代表印)の印鑑証明書の取得方法には、以下の4通りの方法があります。
- 法務局の窓口で申請・取得
- 証明書発行請求機で申請・取得
- 郵送による申請・取得
- オンラインによる申請・取得
それぞれの取得方法について、さらに詳しく見ていきましょう。
法務局の窓口で申請・取得
法務局窓口で、印鑑証明書の申請・取得を行うときには、窓口に直接申請書・印鑑カード・手数料分の収入印紙(1通あたり450円)を持参して手続きを行います。
なお、法務局窓口のシステム一元化によって、会社の管轄の法務局でなくても、全国各地のどこの法務局でも取得可能となるなど、利便性が向上しています。
印鑑証明書をできるだけ早く取得する必要がある場合には、あらかじめ法務局のホームページ内にアップされている「印鑑証明書交付申請書」をダウンロードして、事前に必要事項の記入を済ましておくとよいでしょう。
参考:登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式 法務局
証明書発行請求機で申請・取得
法務局や自治体の役所に、証明書発行請求機が備えられているなら、証明書発行請求機で印鑑証明書の申請・取得ができます。申請内容は、直接証明書発行請求機に対して入力するため、申請書を用意する必要がないというメリットがあります。
証明書発行請求機の具体的な使い方は、申請内容の入力・印鑑カードの挿入を行い手続きをします。印鑑証明書の発行ができたら窓口から連絡があるので、その際に手数料分の収入印紙(450円)を所定の用紙に貼り、印鑑証明書の交付を受けます。
郵送による申請・取得
郵送によって印鑑証明書を取得する場合には、以下のホームページ内の「印鑑証明書交付申請書」をダウンロードして、必要事項を記入します。
この申請書とともに450円分の収入印紙・印鑑カード・印鑑カード返信用封筒(切手付き)を同封して、法務局に郵送します。
なお、普通郵便で送る場合には日数がかかるため、早めに郵送したい人は簡易書留などを利用するとよいでしょう。
参考:登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式 法務局
オンラインによる申請・取得
印鑑証明書は、オンラインからの申請もできます。しかし、取得(受取)は法務局窓口か、郵送のみの対応となっています。
オンラインによる申請にあたっては、事前準備としてインターネットにつながるパソコン・印鑑カード・電子証明書(商業登記電子証明書:商業登記前であればマイナンバーカード)が必要となります。これらの準備が完了後に、パソコンにオンラインによる申請の際に利用する「申請用総合ソフト」をインストールし、申請書を作成します。
つぎに、申請様式一覧のなかから「交付請求書(印鑑/登記事項証明書)【署名要】」を選択して、必要事項を入力します。請求書の作成が完了したら、請求書に電子署名を付与します。その後、電子証明書が付与された請求書のデータを送信します。
オンラインで送信した後には、手続きの処理情報を確認したり、手数料を電子納付することもできます。手数料は、インターネットバンキング・モバイルバンキング・電子納付対応のATMを利用して電子納付が可能です。
手数料は、郵送受取は410円、窓口受取は390円です。印紙では払えない窓口での受取を希望する場合には「電子納付情報表示」の画面を印刷して、請求する通数を加筆して、窓口に提出する必要があります。
出典:登記ねっと 法務省
出典:非対面での印鑑証明書・印鑑登録証明書の入手方法について デジタル庁
会社設立の準備は、専門家の意見を聞くのもおすすめです。ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
会社設立にまつわる印鑑についてのQ&A
ここでは、会社設立にまつわる印鑑のよくある質問について、代表的なものを解説します。
Q:安いハンコでも大丈夫?
基本的には、大丈夫です。相場観としては、4本セット(会社実印(代表印)・銀行印・角印・ゴム印)であれば、安いものでは3万円を切る価格で購入することもできます。ただし、この価格帯の印鑑は「耐久性にややかける」といわれています。
会社の印鑑は長い間に渡って利用しますし、会社にとって大切なものです。会社実印(代表印)は、印鑑が変わるたびに印鑑登録をしなおす必要が出てくるため、耐久性のやや劣る安価な印鑑を購入すると、あとで後悔するケースもあります。そのため、印鑑の金額にあたっては、慎重に検討された方がよいでしょう。
Q:オンラインでの会社設立や電子定款なら印鑑不要?
オンラインでの会社設立や電子定款の整備などにより、従来よりも印鑑の必要性は少なくなりつつあります。しかし、不動産の契約など、紙ベースの契約が残っているため、まだまだ印鑑のニーズはあります。
印鑑や印鑑証明書を求められる機会があってもおかしくないため、会社設立にあたってはやはり印鑑を持っておいた方が、安心といえるでしょう。
会社設立について印鑑も含め不安がある場合はプロに相談しよう
今回は、会社設立にあたって必要となる印鑑について詳しく解説してきました。会社設立にあたっては、会社実印(代表印)・銀行印・角印・ゴム印を準備するのが一般的です。会社実印に至っては、印鑑証明書も取得しておきましょう。
会社設立日を目の前にし、いざ印鑑を作成しようとすると、不安や疑問点などが出てくるでしょう。そういったときには、印鑑屋や会社設立のプロに相談するのがおすすめです。