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会社設立の基礎知識

起業後の税金にはどんな種類がある?個人事業主・企業の税金について詳しく解説

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起業後の税金にはどんな種類がある?個人事業主・企業の税金について詳しく解説

起業する場合、まずは個人事業主か法人を設立するのかを選択しなければなりません。そして、いずれの事業形態を選択したとしても、事業を行っていくうえで税金に関する知識は必要不可欠です。この記事では、個人事業主・法人それぞれに発生する税金の基礎知識や必要書類について、詳しく解説していきます。起業後の税金について疑問をお持ちの方は、ぜひとも参考にしてみてください。

個人事業主にはどんな税金がある?

所得税

個人事業主が主に課される税金が所得税です。この所得税は、事業によって得た「事業所得」に対して課税されます。売上高から必要経費や基礎控除、扶養控除などを差し引いた「課税所得」を算出し、課税所得に対して税率をかけることで所得税額が決定します。

この所得税はサラリーマンなどの被雇用者も納めていますが、被雇用者の場合は「給与所得」に対して課税されるという違いがあります。なお、税率は5%~45%となっており、所得が増えるほど税率が高くなる「累進課税」が採用されていることも特徴です。

個人事業税

個人事業税とは、70種類ある法定業種に対して課税され、お住まいの都道府県に納める税金です。事業所得から各種控除を差し引き、該当する区分ごとに規定された税率をかけることで算出します。つまり、個人事業税は業種によって税率が異なる税金となっています。

例えば、飲食業や製造業などは5%、水産業や畜産業などは4%の税率が適用されます。逆に、法定業種に含まれないライターやプログラマーなどは課税対象外です。自分の事業がどの区分に該当するのか、事前に確認しておきましょう。

個人住民税

個人住民税とは「区市町村民税」と「都道府県民税」からなる税金で、1月1日時点で住所のある市区町村によって課税されるものです。個人住民税には非課税限度額を上回る方を対象とした「均等割」と、所得に応じた税額を負担する「所得割」があり、市区町村の役所にまとめて納付します。なお、金融に関する所得に対して課税される「利子割」「配当割」「株式等譲渡所得割」は、都道府県民税のみ納める必要があります。

源泉徴収税(従業員がいるケース)

源泉徴収税は、従業員を雇っている場合のみ納める税金です。従業員に支払う給与から所得税と復興特別所得税を控除し、源泉所得税として納めます。また、従業員に支払う給与以外にも、税理士や弁護士などに支払う報酬からも徴収されるものです。源泉所得税をいくら支払う必要があるのか確認したい場合は、国税庁の公式サイトに掲載されている「源泉徴収税額表」を活用してみてください。

消費税(納税の必要がある場合に限る)

商品やサービスを提供する事業を行っている場合、顧客から受け取る対価には消費税が含まれています。また、商品や原材料の仕入れを行う際には、仕入れ先に対して消費税を支払います。この「顧客から受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税を差し引いた額」が、国に納付する金額です。

ただし、個人事業主の場合は消費税が免除されるケースがあります。それは、前々年の課税売上が1,000万円以下だった場合です。前々年の課税売上が基準にされることから、開業から2年間は消費税の納税義務が発生しません。

なお、前々年の課税売上が1,000万円以下だったとしても、前年の1月1日から6月30日までの課税売上が1,000万円を超えていた場合には納税義務が発生することに注意しましょう。

個人事業主として起業した際に必要な書類

所得税

個人事業の開廃業等届出書

一般的に「開業届」といわれる書類であり、個人事業主が事業を開始する際に必要な書類です。事業を行う住所や事業内容などを記入し、納税地を管轄する税務署に提出します。また、開業時のほかにも事務所を移転・新設・増設・廃止したときにも提出する必要がある書類です。開業届を提出する際には本人確認が行われるため、マイナンバーカードなどの本人確認書類も持っていくようにしましょう。

所得税の青色申告承認申請書

所得税の青色申告承認申請書とは、青色申告で確定申告をするために提出する書類です。この青色申告とは、一定の水準を満たす事業者に対して最大65万円を控除するなど、節税メリットの大きな申告方法となっています。青色申告を希望する場合は、青色申告承認申請書を忘れず提出するようにしましょう。

所得税の納税地の変更に関する届出書

所得税の納税地の変更に関する届出書とは、個人事業主の自宅と事業所の住所地が異なり、事業所を納税地とする場合に提出する書類です。個人事業主として起業した際に自宅と事業所の住所地が異なる場合は、開業届と同時に提出する必要があります。そのほか、納税地を事業所から自宅の住所地へ変更する際にも届出が必要です。

所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

個人事業主によっては、所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書を提出する必要があります。まず「棚卸資産の評価方法」とは、在庫金額を計算するための評価方法のことを指します。事業によって適切な評価方法は異なるため、よくわからない場合は専門家に相談することをおすすめします。なお、棚卸資産の評価方法について税務署に届出をしない場合、「最終仕入原価法」で計算されることになります。

次に「減価償却資産の償却方法」とは、時間の経過によって価値が減少する資産について、その購入費用を使用可能期間にわたって分割計上する方法のことを指します。減価償却方法についても、何も届出をしない場合は「定額法」という計算法が用いられます。資産の種類によって選択できる減価償却方法は異なるため、しっかり確認しておきましょう。

源泉所得税

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書とは、従業員を雇用して給与を支払っている場合に必要な届出書です。起業後に従業員を雇用した場合、1か月以内に税務署へ届出なければなりません。なお、給与の支払い事務を行う事務所等を移転・廃止した場合にも忘れずに提出するようにしましょう。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

従業員を雇用している場合、源泉徴収した所得税は原則として翌月の10日までに納税しなければなりません。しかし、源泉所得税を毎月納税するのは事務負担も大きく、もし期限に遅れてしまった場合にはペナルティも発生してしまいます。そこで、源泉所得税の納期の特例を利用することで、源泉所得税の納付を年2回まで減らすことが可能です。なお、特例を利用するには一定の条件が設けられているため、事前に確認しておきましょう。

消費税

消費税課税事業者選択届出書

消費税課税事業者選択届出書とは、消費税の「免税事業者」が「課税事業者」として事業を行う場合に提出する必要がある書類です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているなどの要件を満たした場合、個人事業主であっても消費税を納める必要があります。なお、消費税の納税義務が発生する代わりに、消費税の還付やインボイス制度導入後に適格請求書の発行をすることが可能です。

消費税課税期間特例選択届出書

個人事業主の場合、消費税の課税期間は1月~12月の1年間となります。しかし、所轄税務署に「消費税課税期間特例選択届出書」を提出することで、消費税の課税期間を3か月または1か月に短縮することが可能です。なお、特例を利用するためには、希望する課税期間の初日の前日までに提出しなければなりません。

消費税簡易課税制度選択届出書

消費税簡易課税制度選択届出書とは、消費税の簡易課税の適用を希望する場合に提出する書類です。この「簡易課税」では、一定の要件を満たした事業者が消費税を計算する際に、事業の区分に応じて定められた「みなし仕入率」によって仕入控除税額を算出します。簡易課税を適用した場合、事務負担の軽減や納税額の予測がしやすいといったメリットがあります。

法人を起業した場合にはどんな税金がある?

法人税

個人事業主の場合は所得税が課せられるのに対し、法人の場合は法人税を納める必要があります。株式会社などの法人が収益を得た際に課税され、税率は企業形態や資本金などによって細かく区分されています。また、所得税と違い、法人税には累進課税が適用されていません。つまり、所得が一定の水準を超えた場合、所得税よりも法人税のほうが支払う税金が少なくなります。

法人住民税・法人事業税

法人住民税とは、「均等割」と「法人税割」のふたつがある税金で、事業所などがある市区町村に納める必要があります。また、法人事業税とは事業によって収益を得ている場合に発生する税金で、所得に法人事業税率をかけて計算します。法人事業税率は各自治体によって異なるため、公式サイトなどで確認しておきましょう。

均等割(赤字であっても発生する)

上述のとおり、法人住民税には均等割と法人税割のふたつがありますが、均等割は事業が赤字であっても発生する税金です。税額は従業員数と資本金によって一律で定められており、対象となる法人は事業が赤字であったとしても支払いが免除されません。

源泉所得税

従業員を雇用している場合、法人も源泉所得税を納付しなければなりません。課税対象額は、従業員の給与から社会保険料を差し引いて算出します。なお、個人事業主の場合と同様に、税理士や弁護士に支払う報酬からも源泉所得税は徴収されます。

消費税

法人も個人事業主と同様に、「顧客から受け取った消費税から仕入れの際に支払った消費税を差し引いた金額」を消費税として納付しなければなりません。原則として、前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合に納税義務が発生します。ただし、資本金の額が1,000万円以上の場合は消費税の課税事業者になってしまうため注意が必要です。

法人として起業した際に必要な書類

法人税

法人設立届出書

法人設立届出書とは、法人を設立したことや法人の概要について知らせるために、所轄の税務署に提出する書類です。法人の設立登記が完了してから、2か月以内に提出する必要があるため注意しましょう。なお、都道府県税事務所や市町村役場にも届出が必要な場合があります。

法人税の青色申告の承認申請書

法人税で青色申告を行う場合は、法人税の青色申告の承認申請書を提出しなければなりません。青色申告をすることによって、法人税の還付や欠損金の繰越控除など、さまざまな節税メリットを享受することが可能です。法人として起業する場合には、法人設立届出書と同時に提出しておきましょう。

法人税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

個人事業主の場合と同様、法人においても在庫金額や減価償却資産の計算方法について届出を行うことが可能です。届出書の提出は義務ではありませんが、節税対策を行ううえで重要な書類となっています。事業内容に応じて節税につながる方法を慎重に検討する必要があるため、専門家に相談してみることをおすすめします。

法人税の有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書

有価証券を新たに取得した場合や、区分・種類の異なる有価証券を追加で取得した場合に、一単位当たりの帳簿価額の算出方法を選定する場合に提出する書類です。なお、この届出をしなかった場合には「移動平均法」によって評価されます。有価証券を取得した事業年度の、確定申告書の提出期限までに届け出る必要があることに注意しましょう。

源泉所得税

源泉所得税関係の届出書

個人事業主と同様、法人も「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」や「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」などの源泉所得税に関する書類を、必要に応じて提出しなければなりません。従業員を雇用している場合や、源泉所得税の納期の特例を利用したい場合には、忘れず提出するようにしましょう。

消費税

消費税の新設法人に該当する旨の届出書

「消費税の新設法人」とは、事業年度の基準期間がない法人のうち、その事業年度開始日における資本金の額が1,000万円以上である法人のことを指します。この消費税の新設法人に該当する場合には納税義務が免除されず、消費税の新設法人に該当する旨の届出書を所轄税務署に提出しなければなりません。ただし、法人設立届出書に消費税の新設法人に該当する旨を記載した場合には、別途届出を行う必要はありません。

個人事業主の税金控除制度とは

青色申告の特別控除

個人事業主が確定申告をする際に利用できる税金控除制度として、まず青色申告による特別控除があります。特別控除の金額は最大で65万円となっており、事前に青色申告の申請をすることによって控除を受けることが可能です。ただし、最大限の控除を受けるためには複式簿記での記帳などが必要となります。青色申告の特別控除を受けるためには、その年の3月15日までに事前申請を行う必要があるため注意しましょう。

事業主控除

事業主控除とは、個人事業主が1年間事業を行うことによって受けられる控除制度です。個人事業税について一律290万円の控除を受けることができますが、事業期間が1年未満の場合は月割の金額が控除されます。なお、収入が290万円未満の場合は、そもそも個人事業税の納税義務は発生しません。

個人事業主よりも法人設立の方が、税金がお得になる場合がある?

経費にできる対象の範囲が広い

個人事業主と法人を比較した場合、法人のほうが経費面での柔軟性に優れているといえます。例えば、自宅の家賃を経費として計上しようとする場合、個人事業主では住居部分と事務所として使用している部分とで案分計算しますが、住居部分は経費として計上することができません。

しかし、法人が賃貸借契約を行い、役員の借上社宅として取り扱うことができれば、家賃の約50%を経費とすることが可能です。そのほか、生命保険料や役員報酬など、経費にできる対象の範囲が広いことは法人設立における大きなメリットだといえるでしょう。

法人の確定申告の控除額が大きい

例えば、個人事業主の場合は売上から経費を差し引いた額が所得となりますが、法人化することによって会社からの役員報酬へと変わります。この役員報酬は給与所得として取り扱われるため、給与収入から「給与所得控除」として一定額が控除された後に所得税が算出されることになるのです。

つまり、法人化することによって役員報酬を経費として計上できるとともに、受け取った給与からも給与所得控除を受けることができるため、二重に経費を差し引くことが可能となります。

このように、法人の場合は個人事業主よりも多くの控除を受けることができ、所得額によっては納める税金の大幅な削減につながります。ほかにもさまざまな控除制度があるため、法人設立を検討している方は確認しておきましょう。

起業した後の税金をなるべく抑えたい場合には専門家へ相談して対策を

個人事業主か法人、どちらの事業形態で起業したとしてもさまざまな税金が発生します。サラリーマンであれば基本的に会社が手続きをしますが、独立すると税金の支払いや節税対策などについても自ら検討していかなければなりません。税金の負担をなるべく抑えて利益を最大化していくためにも、専門家への相談を検討してみてください。

この記事の監修者
税理士「今野 靖丈」

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