青色申告の承認は、一定の条件下で取り消しになることをご存じでしょうか。本記事では、青色申告の承認が取り消される条件や取り消しによるデメリットについて解説しています。また、取り消された場合の対応についても併せて紹介しています。青色申告の承認が取り消しになる条件や、その後の対応について知りたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
目次
青色申告が取り消される条件
青色申告の承認は、一定の条件を満たすと取り消しとなってしまいます。以下では、具体的な取り消しの条件について解説していきます。
期限後申告または無申告となった
原則として、法人の確定申告は事業年度が終了した翌日から2ヵ月以内に行わなくてはなりません。しかし、法人が2年連続で確定申告を行わなかったり期限内に申告できなかったりした場合は、青色申告の承認が取り消されてしまいます。
期限後申告や無申告を2年連続で行った場合、翌年からは青色申告が利用できません。この
期限後申告や無申告による取り消しは、法人にのみ適用されるため注意しましょう。
参考:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁
関連記事:【税理士監修】会社設立後も青色申告できる?法人が青色申告するメリットや方法
帳簿書類を開示しなかった
確定申告を正しく行っているか調査する税務調査が行われた場合、帳簿書類の提出を求められます。その際に帳簿書類の開示を拒んでしまうと、青色申告の承認が取り消しとなってしまいます。
通常の確定申告では、仕訳帳や総勘定元帳、領収書などの帳簿書類の提出は必要ありません。しかし、これらの帳簿書類は7年間の保管が義務付けられています。保存期間内であるにも関わらず帳簿書類がない、何度も帳簿書類の提出を拒んだ場合、提出を求められている年以降の承認が取り消しとなります。
税務調査が行われた際には、税務署長の指示に従い帳簿書類などは速やかに開示するよう
にしましょう。
参考:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁
関連記事:税務調査とは?いつ・どこまで調べられるのか?大まかな流れや査察調査(国税調査)との違いなども解説
電子帳簿保存法の基準を満たしていない
電子帳簿保存法で定められているデータ保存形式の基準を満たしていない場合、青色申告の承認は取り消されます。電子帳簿保存法とは、領収書などの書類を電子取引で対応した場合、そのデータを保存するように義務付ける制度のことです。
しかし、電子帳簿保存法の基準を満たしていなかったとしても、即座に青色申告の承認が取り消されるわけではありません。改善の余地や印刷して保存している書類の管理状況などで総合的に取り消しの有無が判断されます。
所得の隠ぺいが行われた
所得の隠蔽が行われた場合も、青色申告の承認の取り消し対象となります。ただし、即座に取り消されるわけではなく、隠蔽や仮装による不正所得金額が本来の所得金額の50%に相当する金額を超える場合が対象です。この条件は、不正所得金額が500万円未満の場合は除外されることに留意しましょう。
参考:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁
悪質な帳簿作成であると判断された
二重帳簿や過少申告を継続して行っているなど、帳簿作成が悪質であると判断された場合も青色申告の承認の取り消し対象となります。
青色申告取り消しのデメリット
青色申告の取り消しは、電子帳簿保存法の基準を満たしていない場合や、所得の隠蔽が行われた際に他の要素と総合的に判断されます。では、青色申告の承認が取り消された場合、どのような影響を受けるのでしょうか。
以下では、青色申告の承認が取り消された場合のデメリットについて解説していきます。
少額減価償却資産の特例が適用されない
青色申告の承認が取り消されると、少額減価償却資産の特例が適用されなくなります。少額減価償却資産の特例とは、平成18年4月1日から令和6年3月31日の間に事業のために取得した減価償却資産のうち、取得価格が30万円未満のものについては取得価額に相当する金額を損金算入できるという制度です。
この少額減価償却資産の特例は青色申告法人の中小企業者、もしくは農業協同組合等で常時使用する従業員数が500名以下の場合に適用されます。そのため、青色申告の承認が取り消されるとこの制度の対象外となってしまうのです。
少額減価償却資産の特例は節税にも繋がっています。そのため、青色申告の承認が取り消されることは節税ポイントも減ってしまう点でデメリットとなるでしょう。
青色申告特別控除が適用されない
青色申告事業者は青色申告特別控除が適用されますが、青色申告の承認が取り消された場合はこの控除が適用されなくなります。
青色申告特別控除とは、青色申告で確定申告を行う個人事業主などが利用できる控除で要件を満たした場合に最大65万円の控除が受けられるという制度です。青色申告の承認が取り消されるとこれまで受けられていた65万円の控除がなくなるため、結果として税負担が重くなってしまうというデメリットがあります。
青色事業専従者の給与を経費として計上できなくなる
青色申告の承認が取り消されると、青色事業専従者の給与を経費として計上できなくなります。
通常、配偶者や親族に給与を支払っている青色申告事業者は、青色事業専従者給与に関する届出手続を行うことで支払った給与を経費として処理できます。しかし、青色申告の承認が取り消されると、配偶者や親族に支払った給与は経費に計上できなくなるため、結果として納税負担が重くなってしまうのです。
ただし、青色申告の承認が取り消された場合でも、事業専従者控除を適用できます。その際、配偶者の場合は86万円、親族の場合は一人につき50万円の控除が受けられます。
参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
関連記事:個人事業主の青色申告とは?いくらから必要?メリット・デメリットや帳簿の書き方などについて解説!
赤字の繰り越しまたは繰り戻しが不可になる
青色申告事業者は、法人では10年、個人事業主では3年にわたって赤字を繰り越せます。また、法人では一定の条件を満たすと、赤字となってしまった部分を赤字が出た事業年度の前の事業年度に繰り戻すことが認められています。赤字の繰り戻しは個人事業主でも利用できます。
しかし、青色申告の承認が取り消されると、赤字の繰越または繰り戻しによる恩恵が受けられなくなります。
青色申告は再度申請できる?
青色申告の承認が取り消され白色申告となってしまった場合、取り消しから1年間は再度、青色申告の申請を行うことはできません。しかし、1年経過すれば再度青色申告の申請ができます。
申請の流れは、新規で申請するケースと同じです。青色申告の利用を希望する年の3月15日までに、所轄の税務署にて所得税の青色申告承認申請書を提出することで申請ができます。ただし、青色申告の承認の取り消しについて納得がいかない場合は、青色申告の承認取り消しの通知が届いた翌日から3ヵ月以内に再審請求ができます。
青色申告の取り消しを避けるため適切な申告を行おう
青色申告を利用すれば、少額減価償却資産の特例や赤字の繰越、繰り戻しができるなどのメリットがあります。しかし、所得の隠ぺいや電子帳簿保存法の基準を満たしていない、悪質な帳簿作成であると判断された場合、青色申告の承認が取り消しになる可能性があります。
青色申告の承認の取り消しは、即座に行われるケースもありますが基本的には複数の観点から総合的に判断されることとなっており、取り消しに不服がある場合は再審請求も可能です。
青色申告の承認が取り消しにならないために大切なことは、ルールを守って申告や納付を行うということです。青色申告や帳簿書類などに疑問や不安がある場合は、税理士などの専門家に相談するのも1つの手段です。
青色申告が取り消されてしまうと、節税効果の期待できる控除や特例が受けられなくなってしまうため、日々の経理処理や確定申告の際は十分に注意しましょう。