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- サプリメントの不都合な真実 ~健康食品が怖い~
小谷野です。
薬学博士である、畝山智香子氏著『サプリメントの不都合な真実(筑摩書房2025.1)』を読みました。
昨年、健康のためにサプリを飲んで、複数の死者や多数の健康被害者が発生した事件がありました。
本末転倒などという言葉では表現しきれない事件でした。
サプリや健康食品とは、何なのか、本当に必要なものなのかということについて、考えさせられる著書でした。
<日本における健康食品とは>
法律上の定義があるものを「保険機能食品」といい、3つの種類がある。
(1)「特定保険用食品(通称トクホ)」:1991年消費者庁が健康の維持・増進に役立つ、あるいは適するといった表示を認めているもの。
治験者は少人数で、僅か数週間の臨床試験で「おなかに脂肪がつきにくい」などのお墨付きが国から得られる。
世界的に例のない、ゆるい国の認証制度。
(2)「栄養補助食品」:必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合に、補給するための食品。
国の審査はない。
(3)「機能性表示食品」:事業者が科学的根拠に基づく機能性を表示した食品。
国は評価せず、消費者庁への届出のみで、最も商品数が多く、急速に拡大しており、昨年死者まで出した健康食品もこの分類である。
<米国>
1994年に制定された健康教育法にて、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など、食品でも医薬品でもなく「ダイエタリーサプリメント」という分類を作った。
米国民の健康に役立った報告はないが、食事から充分な必須栄養素を摂取できない場合、次の四つのダイエタリーサプリメントは役立つと報告がされた。
・骨の健康のためのカルシウムとビタミンD
・先天性障害リスクをへらすための葉酸
・心疾患予防のためのオメガ3脂肪酸(DHA、EPA、ALA)
・加齢性眼疾患研究で使われた、組み合わせ処方(ビタミンC・E、亜鉛、銅、ルテイン、ゼアキサンチン)
<欧州>
食品の健康上の機能性表示は、厳しい審査をクリアする必要がある。
日本で定着している「ヒアルロン酸が皮膚の保湿に役立つ」「グルコサミンが関節の軟骨の維持に効果がある」などの効用は、欧州では却下されている。
<発酵食品は体に良い?>
ヨーグルトなどの乳酸菌や発酵食品はお腹の調子を整えるとして、トクホとしても機能性表示食品としても日本では販売されているが、EU、北米では科学的根拠が乏しく(極微効果)、健康を強調する表示は認められない。
<健康食品は健康な人が使うもの>
病気の人が使うことを想定していない。
持病があるひとへの安全性、他の医薬品との相互作用は検証されていない。
<健康食品の製造会社の誤解>
会社の大きさや、社名に製薬が入っているといったことで安心する場合がある。
健康食品の製造会社は、新薬を開発することができる技術水準の高い、日本製薬工業協会に加盟をしていない会社が多い。
医師の処方無しで、薬局で購入できるかゆみどめ、筋肉痛の塗り薬などが、OTC(オーバーザカウンター)医薬品である。
製造会社が「日本OTC医薬品協会」に加盟しているが、本来消費者がイメージする製薬会社の技術水準とはかけ離れている。
損益計算書を見ると、研究開発よりも広告宣伝費の方が遙かに大きい会社が多いのが特徴である。
~毎日、お腹が膨れる程のサプリの山、小谷野でした~