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- 相続事件簿 ~保証債務~
小谷野です。
今回は、相続現場で直面した事件からです。
相続財産の確定で難しいのが、保証債務です。
目に見えない負債とも言われます。
一般の方々には、保証債務の危険度を正しく認識することが難しいようです。
その理由は、①債務が顕在化していないので、借金を負うことを想像できない、②保証債務は相続されず、死亡した人の固有の取引で消滅したと考える傾向があるからです。
<保証債務が相続されることを知らなかった相続人>
1年前に父親の相続が発生した方からのご相談でした。
父親が生前、やむなく親戚の会社の借金の保証人になったことは知っていましたが、保証債務は当人の死亡により消滅したと思い込んでいました。
相続時点では現実の債務ではなかったこともあり、通常の相続手続きを行いました。
そして父親の相続1年後、その親戚の会社が倒産し、金融機関から、連帯保証人(*)となっていた父の相続人として借入の返済を迫られています。
(*)保証人と連帯保証人は大きく異なります。
連帯保証人は一般の保証人と異なり、借入本人や他の保証人の資力は関係なく、全額返済を直接迫られます。
(どうすればよかったのか)
親戚の主債務者と連絡を取り、借入の内容、返済状況をヒアリングしてリスクを見極める必要がありました。
状況によっては「相続放棄」が最良であった可能性があります。
相続放棄をしない場合は、難しいですが連帯保証を外すために、事業に関係する親戚に肩代わりの交渉など、専門家を使った動きも必要になります。
相続には、①単純承認、②限定承認、③相続放棄があります。
①は、全ての財産及び債務(保証債務も含みます)を引き継ぎます。
何もしなければこの単純相続になります。
②は、相続する資産を限度として債務を引き継ぐことです。
③は、財産も負債も承継しません。
②と同じく、3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要です。
余談ですが、苦境にある事業は数多く見てきましたが、通常の金融機関ではなく、知人、親戚へお金の工面を行って事業が立ち直るケースは希です。
~見えない負債、小谷野でした~