住民税が非課税になる要件や住民税非課税世帯のメリットについてご存じでしょうか。本記事では、住民税のしくみや非課税となる要件、住民税が非課税になるメリットについて解説しています。また、住民税が非課税になる際に注意すべきポイントも併せて紹介しています。住民税が非課税になるメリットや注意点について知りたい方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
住民税のしくみ
住民税とは地方税の一種で、都道府県民税と市区町村民税を合わせた税金のことです。住民税は基本的に給与から天引きされており、住んでいる地域の行政サービスに充てられています。
住民税の税額は1月〜12月の1年間の所得をもとに決められており、所得割と均等割という2種類の課税方法が存在します。そして、私たちは所得割と均等割を足した額の住民税を納めなくてはなりません。
以下では、所得割と均等割の課税方法について詳しく解説していきます。
所得割
所得割は、前の年の所得額に応じて課せられる住民税のことを指します。所得割の税率は、都道府県民税の4%と市区町村民税の6%を合わせた10%が基本ですが、自治体により税率が異なるケースもあります。
参考:個人住民税|総務省
均等割
均等割は、住民税の納税義務がある人が一律で課せられる住民税のことを指します。均等割では、都道府県税の1,000円と市区町村民税の3,000円を合わせた4,000円です。ただし、この税額も所得割と同様に自治体によっては税額が異なります。
また、令和6年度から住民税と合わせて森林環境税という税金が徴収されることになりました。森林環境税の税額は一律1,000円です。
参考:個人住民税|総務省
住民税が非課税となる要件
住民税が非課税になるか否かは主に所得で決まり、所得割のみ非課税になる場合と所得割と均等割の両方が非課税になる場合の2パターンあります。その中でも、所得割と均等割の双方が非課税になる世帯を住民税非課税世帯と呼びます。
以下では、所得割のみ非課税となるケースと所得割と均等割の双方が非課税となるケースについてそれぞれ解説していきます。
所得割のみ非課税となるケース
所得割のみ非課税になるのは、以下の条件に当てはまる場合です。
- 前年の総所得金額等が45万円以下の単身世帯
- 前年の総所得金額等が35万円×(本人+生計を共にする配偶者+扶養親族の人数)+42万円以下の世帯
例えば、本人と生計を共にする配偶者、扶養親族の合計人数が6人の場合は35万円×6人+42万円=252万円となります。したがって、総所得金額等が252万円以下であれば住民税の所得割の部分が非課税となるのです。
参考:個人住民税|東京都主税局
所得割と均等割の双方が非課税となるケース
所得割と均等割の双方が非課税となるのは、以下の条件に当てはまる場合です。
- 生活保護法における生活扶助を利用している
- ひとり親、障害者、寡婦、未成年者に該当し、前年の合計所得金額が135万円以下
- 前年の合計所得金額が45万円以下の単身世帯
- 前年の合計所得金額が35万円×(本人+生計を共にする配偶者+扶養親族の人数)+31万円以下の世帯
例えば、本人と配偶者、扶養親族の人数が4人の場合は、35万円×4人+31万円=171万円となります。したがって前年の合計所得金額が171万円以下であれば、所得割と均等割の双方が非課税となります。
上記の計算式は東京都のケースとなっており、自治体によっては基準が異なるケースもあるため居住地の自治体に確認しておくと安心です。
参考:個人住民税|東京都主税局
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住民税が非課税になるメリット
住民税は年収や世帯人数によって非課税になるか否かが異なります。仮に住民税が非課税になる場合、いくつかの優遇措置を受けることができます。そのうちの1つが高額医療費の負担額が軽減されるという措置です。
病院の窓口や薬局で支払った医療費の合計額が一定のラインを超えると、超えた部分が支給される制度を高額療養費制度と呼びます。住民税非課税世帯の方は通常よりも基準額が低く設定されているため、医療費の負担額が少なくなっているのです。また、65歳以上の住民税非課税世帯では介護保険料の負担額も低くなっています。
さらに、住民税非課税世帯では国民健康保険料や国民年金保険料の負担額も軽減されます。保険料の負担額がいくらまで抑えられるかは、所得額などによって異なります。具体的には、以下で求めた額よりも年収が低い場合に適用されます。
〈国民健康保険料の軽減割合〉
軽減される割合 | 基準となる所得額 |
2割減 | 43万円+{10万円×(給与・年金所得者の人数-1)}+(53.5万円×被保険者の人数)以下 |
5割減 | 43万円+{10万円×(給与・年金所得者の人数-1)}+(29万円×被保険者の人数)以下 |
7割減 | 43万円+{10万円×(給与・年金所得者の人数-1)}以下 |
〈国民年金保険料の免除割合〉
免除される割合 | 基準となる所得額 |
1/4免除 | 168万円+扶養親族等の控除額+社会保険料控除額等以下 |
1/2免除 | 128万円+扶養親族等の控除額+社会保険料控除額等以下 |
3/4免除 | 88万円+扶養親族等の控除額+社会保険料控除額等以下 |
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円以下 |
この他にも、2歳以下の保育料無償化や、大学進学の際に利用できる給付型の奨学金といった制度も利用可能です。このように住民税非課税世帯が享受できるメリットは多くあります。
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住民税が非課税となる際に注意すべきポイント
住民税が非課税となるか否かを決定する所得は、すべて前年の所得が基準となっています。そのため現時点での所得が低くても、前年の所得が基準を超えている場合は住民税を支払わなくてはなりません。
すでに解説した通り、住民税は給与から天引きされているため、手元の資金から新たに支出があるわけではありません。しかし、災害や病気などによって住民税の支払いが出来ない場合は、納税に猶予期間が設けられる制度もあります。
また、個人事業主の場合は住民税は天引きされません。個人事業主で住民税非課税の対象とならず支払いが困難な場合は、一括納税ではなく分割納税にすれば負担を軽減することができます。支払いが困難な場合は無理をせず分割で納税しましょう。
住民税のしくみや非課税になるメリットについて知ろう
地方税の1種である住民税は通常、所得割の10%と均等割の4,000円、森林環境税の1,000円が給与から天引きで納税されています。しかし、一定の条件を満たすことで住民税が非課税になります。
住民税の非課税枠は、所得割のみと所得割と均等割の双方の2種類あります。
所得割と均等割双方が非課税となる世帯を住民税非課税世帯と呼びます。住民税非課税世帯は、2歳以下の保育料無償化や大学進学の際に利用できる給付型の奨学金、国民年金保険料の負担減などさまざまな制度を利用できます。これらを利用できる点が住民税非課税世帯の大きなメリットと言えます。
しかし住民税が非課税になるか否かは、前年の所得をもとにして決定されます。万が一、住民税の支払いが困難なほどに生活が困窮している場合は、住民税の納付期限に猶予が与えられる制度もあります。