消費税における中間申告制度がどのようなものなのかご存じでしょうか。本記事では、消費税の中間申告で納める消費税の税額や納付期限について紹介します。また、中間申告制度で知っておきたいポイント3つを解説しています。消費税の中間申告制度について理解を深めたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
目次
中間申告制度とは
納税する予定の消費税の一部を複数回に分けて課税期間に納める制度を中間申告制度と言います。企業は物やサービスを提供する際に消費者から消費税を受け取りますが、その消費税は後々国に納めなければなりません。
消費税を納める義務があるのは一定の条件を満たした課税事業者のみとなっています。課税事業者となる具体的な条件は次の通りです。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている
- 特定期間の課税売上高かつ、支払った給与等の金額が1,000万円を超えている
- 適格請求書発行事業者に登録している
上記の条件に当てはまる企業は、課税事業者となり消費税を国に納めなければなりません。上記の条件に含まれる基準期間や特定期間は法人と個人事業主で違います。それぞれの基準期間と特定期間は次のように設定されています。
法人 | 個人事業主 | |
基準期間 | 前々事業年度 | 前々年の1月1日~12月31日 |
特定期間 | 前年の事業年度開始の日から6ヶ月間 | 前年の1月1日~6月30日 |
上記の表からも分かるように、法人の基準期間は前々事業年度、特定期間は前年の事業年度開始日から6ヵ月間です。個人事業主の基準期間は、前々年の1月1日から12月31日の1年間、特定期間は前年の1月1日から6月30日までに設定されています。
法人と個人事業主で期間が異なるのは、法人は事業年度を法人ごとに決められるのに対し、個人事業主の事業年度が1月1日から12月31日までの1年間と決められていることが関係しています。
参考:消費税のしくみ|国税庁
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中間申告制度の対象となる条件
消費税の納税義務があるのは課税事業者のみですが、課税事業者の中でも一定の条件を満たした場合、中間申告制度の対象となります。中間申告制度の対象となる条件は法人と個人事業主で異なるため、以下でそれぞれの条件を確認していきましょう。
法人のケース
法人で中間申告が必要となるのは、前の事業年度の確定消費税額が48万円を超えた場合となっています。
現在の消費税率は8%と10%ですが、この税率には地方消費税率が含まれており、実際の消費税率は6.24%と7.8%です。
確定消費税額には、地方消費税額は含まれていないため注意しましょう。
個人事業主のケース
個人事業主で中間申告が必要となるのは、前の年の確定消費税額が48万円を超えた場合です。
法人は事業年度で判定しますが、個人事業主の場合は前の年の1月1日から12月31日までの1年間の確定消費税額で判定されます。個人事業主の場合も、法人と同様に地方消費税額を含まない確定消費税額で判断します。
中間申告で納める消費税はいくら?
中間申告で納める消費税の額は、予定申告方式と仮決算方式で異なります。以下では、それぞれの方式を選択した際の税額について解説していきます。
予定申告方式の場合
予定申告方式では、所轄の税務署から送られてくる消費税及び地方消費税の中間申告書と納付書を使って消費税を納めます。予定申告方式の場合、消費税額は次のように設定されています。
前の事業年度の 確定消費税額 | 48万円超から 400万円以下 | 400万円超から 4,800万円以下 | 4,800万円超 |
---|---|---|---|
中間納付税額 | 直前の課税期間の確定消費税額の6/12 | 直前の課税期間の確定消費税額の3/12 | 直前の課税期間の確定消費税額の1/12 |
中間申告の回数 | 1年に1回 | 1年に3回 | 1年に11回 |
すでに解説しましたが、確定消費税額が48万円を超えると中間申告をしなくてはなりません。中間申告による消費税額は48万円超から400万円以下、400万円超から4,800万円以下と4,800万円を超える場合で異なります。
例えば、直前の課税期間の確定消費税額が100万円の場合は、100万円×(6/12)=50万円なので50万円を1回の中間申告で納めるということになります。
直前の課税期間の確定消費税額が1200万円の場合は、1200万円×(3/12)=300万円なので300万円の消費税を3回納付するという事です。
実際に納付する際は、上記以外に地方消費税額を含めて納付します。前の事業年度の確定消費税額が高いほど、中間申告の回数は増えるということを覚えておきましょう。
仮決算方式の場合
仮決算方式では、中間申告対象期間を1つの課税期間と考えて仮決算を行うことで納付すべき消費税額および地方消費税額を計算します。
例えば、期首が4月の場合は4月から6カ月間を1つの事業年度として考え、決算を行います。
仮決算方式によって中間申告を行う場合は、中間申告のたびに消費税及び地方消費税の中間申告書を作成して納税額を算出しなくてはならず、業務負担が重くなる点がデメリットと言えるでしょう。
しかし、前年度よりも業績が悪く予定申告方式では、税負担が重くなる場合は仮決算方式を選択することで税負担が軽くなるというメリットがあります。ただし、計算した税額がマイナスになった場合でも還付は受けられない点は留意しておきましょう。
中間申告で納める消費税の期限
中間申告によって納める消費税の納付期限は、中間申告の回数や法人と個人事業主で異なります。具体的な納付期限は以下の通りです。
中間申告の回数 | 納付期限 | |
年1回 | 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヵ月以内 | |
年3回 | 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヵ月以内 | |
年11回 | 法人 | 課税期間の開始後1ヵ月分 課税期間が開始してから2ヵ月を経過した日から2ヵ月以内 以降の10ヵ月分 中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内 |
個人事業主 | 1月分から3月分 5月末日 4月分から11月分 中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内 |
法人の場合は、課税期間の開始後1ヵ月分は課税期間が開始してから2ヵ月を過ぎた日から2ヵ月以内が納付期限です。それ以降の10ヵ月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内に納めなければなりません。
ただし、消費税の確定申告の期限の延長特例を受けている法人の場合は、税期間開始後の2ヵ月分は課税期間が開始してから3ヵ月を過ぎた日から2ヵ月以内に納めます。それ以降の9ヵ月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内が納付期限となっています。
個人事業主の場合は、1月~3月分は5月末日、4月~11月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内に納めましょう。
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中間申告制度で知っておきたい3つのポイント
中間申告制度によって納税予定の一部の消費税を複数回に分けて納める場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
以下では、中間申告制度で知っておきたいポイントを3つ紹介していきます。
1.納期限を過ぎると罰則がある
中間申告によって納めなければならない消費税の納付期限を過ぎると、罰則として延滞税が発生します。延滞税は遅れた日数に応じて金額が加算され、税率は納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までは原則として年7.3%、それ以降は年14.6%です。
延滞税は本来支払わなくてもよい税金であるため、消費税は期日内に納めるようにしましょう。
2.対象外でも任意で中間申告できる
すでに解説した通り、中間申告の対象となるのは確定消費税額が48万円を超えた場合からです。
しかし、確定消費税額が48万円以下でも、年に1度中間申告書を提出する旨を記載した届出書を所轄の税務署に提出することで中間申告を行えます。
対象外の企業や個人事業主が中間申告を行う際の納税額は、直前の課税期間の確定消費税額の6/12です。
任意で中間申告を行う場合でも、納付期限に遅れると延滞税が発生するため期限を過ぎないように注意しましょう。
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3.仮決算方式では申告期限も重要になる
中間申告の納付方法には予定申告方式と仮決算方式があります。
仮決算方式の場合、期限までに中間申告書を提出できないと予定申告方式として取り扱われることになっています。仮決算方式で中間申告を行いたい場合は余裕を持って申告することが大切です。
中間申告で納める消費税額や納付期限を理解しよう
消費税には、あらかじめ納税予定である一部の消費税を納められる中間申告という制度があります。確定消費税額が48万円を超えると中間申告をしなくてはなりませんが、届出書を所轄の税務署に提出することで対象外の場合でも中間申告が可能です。
中間申告の納付期限を過ぎてしまうとペナルティとして延滞税が課せられます。中間申告が必要になった場合は、期限内に納付できるように余裕を持って手続きをするようにしましょう。
中間申告の手続きや納付忘れが不安な場合は、税理士などのプロに依頼すると安心です。
中間申告に関するお困りごとや税務に関するご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。