未成年でも起業することはできるのか、どうやって起業しているのかと疑問に思う人は少なくありません。本記事では、未成年が起業する方法や起業する際の注意点について解説しています。また、起業する際に必要となる書類や発起人、代表取締役になる際の流れについても併せて紹介しています。未成年の起業について知りたい方は、ぜひ本記事を参考にして下さい。
目次
未成年でも起業はできる?
先に総括すると、未成年者でも起業は可能です。会社に関する法律である会社法では、会社の設立に年齢制限は設けられていないのです。しかし、15歳未満の未成年者は印鑑登録ができません。会社を設立する際には印鑑証明書の提出が不可欠であるため、未成年者が実質的に自分で起業できるのは15歳からと言えるでしょう。
未成年者が法律行為を行うには法定代理人を立てなければなりません。したがって、15歳未満の未成年者が起業する場合は、個人ではなく法定代理人である両親とともに起業することになります。
未成年が起業する際の流れ
未成年者が起業する場合は、主に以下の手順で手続きを進めていきます。
- 必要書類を準備する
- 会社の概要を決定し、実印を作成する
- 定款を作成し、認証を得る
- 資本金の払込と登記申請書
以下では、それぞれの手順について詳しく解説していきます。
必要書類を準備する
未成年が起業する際の手続きで書類が必要になるのは、定款の認証と登記申請です。これらの書類は、実際に定款を作成したり登記申請をする時までに準備をしておく必要があります。準備には時間を要するため予め準備しておくと安心です。必要な書類は以下の通りです。
- 未成年者および親権者の印鑑証明書
- 親権者の同意書
- 戸籍謄本
上記の書類は定款の認証と登記申請それぞれで使うため、各2通ずつ準備しておきましょう。登記申請では、提出する法務局によっては同意書のみで済む場合もあるので確認しておきましょう。また、親権者全員が発起人になるケースでは、定款の認証では同意書は不要となる場合もあります。こちらも併せて確認しておくと安心です。
会社の概略を決めて実印を作成する
新たに会社を立ち上げるにあたって、まずは会社の基本的な情報をまとめましょう。具体的には、社名や事業内容、所在地、資本金などを決める必要があります。社名が決定したら、会社実印を作成しましょう。
会社実印は、丸印や法人実印とも呼ばれています。会社の設立に必要な印鑑がセットになっているものもあるため、予算に合わせて探してください。
定款の作成および認証を得る
定款とは会社の基本的な決まり事をまとめた書類のことです。定款には記載すべき事項が決められており、これらを定款の絶対的記載事項と呼びます。定款の絶対的記載事項は以下の通りです。
- 商号
- 本店の所在地
- 事業目的
- 発起人の住所、氏名または名称
- 設立にあたって出資される財産の価額もしくは最低額
上記の絶対的記載事項が含まれていない定款は認められないため漏れのないように作成しましょう。定款は電子もしくは紙で作成可能です。ただし、紙で作成した場合は4万円分の収入印紙を貼らなくてはならないため、少しでも起業にかかるコストを抑えたい場合は電子で作成すると良いでしょう。
起業する会社が合同会社の場合は定款を作成するだけで良いですが、株式会社の場合は公証役場に定款を提出し、認証を得る必要があります。
資本金の払込および登記申請書類の作成と申請を行う
定款の認証が下りたら発起人は資本金の払込を行います。発起人は資本金を払込み済みであることを証明できなければ登記の申請ができないため、登記申請の前に必ず払込を済ませましょう。
すでに解説しましたが、未成年者が登記申請を行う際には親権者の同意書が必要です。同意書のほかにも下記の書類を提出しなければなりません。なるべく余裕を持って準備しておきましょう。
- 設立登記申請書
- 登録免許税の税額分の収入印紙
- 印鑑証明書
- 定款
- 発起人への資本金の払込の証明書
- 発起人の同意書
- 発起人の印鑑証明書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 監査役の就任承諾書
- 登記すべき事項が記載された書類
上記の書類を漏れなく提出できていれば、通常10日程度で登記が完了します。漏れがある場合はそれだけ登記が後ろ倒しになります。また、提出先の法務局によっては、上記以外の書類を求められるケースもあるため前もって確認しておくと良いでしょう。
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未成年は会社の発起人や取締役になれる?
未成年者は会社の発起人になれますが、未成年者が発起人になる場合は親権者の同意書が必要になります。代表取締役には15歳以上からではないとなれない仕組みになっています。
それは、代表取締役には実印が不可欠だからです。実印は15歳以上からでないと作成できないため、代表取締役になれるのは実質的に15歳以上からということになります。
また、定款の認証を受ける際に提出する書類には、発起人の実印を押さなくてはなりませんが、これは両親の印鑑証明で代用できます。15歳未満で実印がない場合は、公証役場に事前に問い合わせて代用の旨を伝えましょう。
なお、取締役には10歳以上(取締役会ありの場合は15歳以上)からではないと難しいとされています。取締役になる際に10歳がボーダーラインになっているのは、責任能力の有無が関係しています。一般的に10歳未満は責任能力がないと考えられており、仮に10歳未満の未成年者を取締役として登記しようとしたとしても、承認されない可能性が高いのが実情です。
未成年が起業する際の留意点
未成年者が起業する場合、年齢によって法定代理人である両親の同意書が必要になるなど成人で起業する場合と比べて縛りがあります。では、未成年者は起業するにあたってどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。
以下では、未成年者が起業する際の留意点を2つ紹介していきます。
資金の調達が容易ではない
起業するにあたって避けては通れないのが資金調達です。起業する際には、業務に必要な備品を購入したり当面の運転資金が必要となります。しかし、未成年は銀行から融資を受けることができません。仮に銀行から融資を受けて資金調達をしたい場合は、親権者に申し込んでもらうことになります。
その他の資金調達方法としては、クラウドファンディングや投資家から融資を募る方法がありますが、どちらの方法も確実性はないため出資してもらえるようなアイデアが必要です。
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1人の社会人としての責任が伴う
民法では、未成年者の営業許可について以下のように記載されています。
一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
つまり、親権者の同意を得て営業を許可された未成年者は、業務においては成人と同様に1人の社会人としての責任が伴うということです。親権者の同意を得て起業した未成年者は、業務上なにか問題が発生したとしても、大人と同様に責任を持たなければなりません。
個人事業主になる方法も検討する
これまで未成年者が起業する方法について解説してきましたが、成人が起業する場合と比べて必要書類も多く、資金調達が困難であったり社会人としての責任を背負わなければならなかったりと、企業に対するハードルが高く感じる人も少なくありません。
そのような方におすすめなのが、個人事業主として事業を始めるという方法です。個人事業主になる場合は特に年齢制限は設けられておらず、起業する際のネックとなっていた印鑑証明書の提出も必要ありません。
いきなり起業するのは心配な場合は、まずは個人事業主として事業を始めることを検討してみると良いでしょう。
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未成年で起業する方法や気を付けるポイントを理解しよう
会社の設立に年齢制限は設けられていませんが、実印を持つことができるのは15歳以上からであるため、未成年者が自分の力で起業できるのは15歳以上からだと言われています。15歳未満の未成年者が起業する場合は、法定代理人である両親の同意が不可欠です。
また、未成年者は年齢に関係なく会社の発起人になれますが、取締役になれるのは責任能力があると認められる12歳以上からと言われています。未成年者が起業する際には、資金調達が困難である点や、事業を始めると1人の社会人として責任を負わなければならない点などに留意しましょう。
未成年者で起業することのハードルが高いと感じた場合は、個人事業主として事業を始めることも検討してみましょう。