税務調査では、主に税務署の職員がやってきて税金の申告内容が正確かチェックします。調査に来る職員が新卒レベルの若手なのか、一分の隙もないベテランなのかを判別する方法をご存知でしょうか。この記事では、税務調査に来る税務署職員の役職について解説します。役職が分かることで、自分がどの程度問題視されているか、税理士に依頼するべきかが判断できますので参考にしてください。
目次
税務調査に来る職員の役職によって手強さが変わる
税務調査をする職員の役職は、調査の性質や深刻度を示す重要な指標です。ほとんどの税務調査には事前通知があるので、その際に担当職員の名前・所属・役職を聞き、どの程度手強いのか把握しましょう。
また、担当職員が1人でくるのか、複数人で来るのかも重要です。納税者への事前連絡は調査メンバーの中で一番の若手が行うため、電話口の職員の役職が低くてもベテラン職員が一緒に来ることがあります。
事前通知の時点で調査メンバーが決まっていなかった場合は「決まり次第教えてください」と伝え、メンバー全員の所属と役職を必ず確認しましょう。ここでは、一般的な税務署の職員の役職について解説します。
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やばいレベル①事務官
事務官は、軽微な事案や、経験が浅くてもすぐ分かるような露骨な不正がある事案などに派遣されます。一般企業で言う新入社員と同じで、税務署に就職してすぐにつく肩書きです。
しかし、税務調査にやってくるのが事務官だとしても、甘く見てはいけません。経験が浅いが故に調査の落とし所が分かっておらず、調査が長引くケースもあるからです。納税者側が税務に詳しくないときは、税理士を付けて泥仕合になるのを防ぎましょう。
事務官が赴任する7月から数ヵ月間は、上の役職の職員に同行して税務調査の基本を学びます。そのため、この時期は軽微な事案でも上の役職の職員と一緒に来ますが、慣れてきたら1人で調査し始めます。
ちなみに、レベル②以降の「国税調査官」「上席国税調査官」などが役職と呼ばれるのに対し、事務官は役職がない状態です。
やばいレベル②国税調査官
国税調査官は、向上心が盛んで同期との競争意識もあるため、警戒が必要です。納税者側が税務に詳しくない場合は、税理士を付けるのがおすすめです。一般企業で言う係長クラスで20代後半~30代前半の職員が多く、税務署内の中間層と言われています。
一方で、60代以上の国税調査官が来たら幸運かもしれません。国税調査官は、定年退職した職員が再任用でなる役職でもあります。優秀なベテラン職員が多いですが、出世への意欲がないため、若手と比べて甘い傾向があります。
個人事業主の場合、先ほど紹介した事務官か国税調査官が税務調査に来るケースがほとんどです。
やばいレベル③上席国税調査官
上席国税調査官は、一般企業で言う課長補佐クラスで、現場に出てくる職員の中ではトップクラスの手強さです。上席国税調査官が複数名で来る場合は、何らかの証拠を掴んでいる可能性が高いため、納税者は税理士と共にしっかり事前準備する必要があります。
一方で、年配の上席国税調査官が来た場合は、税務調査の難易度が変わってくる場合もあります。上席国税調査官までは経験年数が15年ほどあれば誰でも出世できますが、その先は能力のある職員しか出世できない仕組みだからです。
したがって、年配の上席国税調査官は出世への意欲があまりなく、比較的税務調査に甘い傾向があります。しかし、甘い調査だろうと予測して納税者1人で対応しようとするのではなく、税理士に相談して税務調査に対応することをおすすめします。
やばいレベル④統括国税調査官
統括国税調査官は、一般企業で言う部長課長クラスで、優秀な人だけがなれる管理職です。普段は調査に出ず、署内で上席以下の職員に指示する立場ですが、部下が手を付けられないような重大な事案に限り派遣されます。
つまり、統括国税調査官が来る場合、税務調査の経験が豊富な税理士と共に入念に準備しなければいけません。ただし、事務官と一緒に夏頃に来るならあまり警戒は必要ありません。事務官の研修のために、軽微な事案でも同行することがあるためです。
やばいレベル⑤特別国税調査官
特別国税調査官は、大規模な税務署にある役職です。大企業や、億単位の財産を持つ資産家など規模が大きい事案を担当します。特別国税調査官が調査に来るときは、すでに問題や証拠が把握されていることが多いので、速やかに税理士に相談して判断を仰ぎましょう。
やばいレベル⑥国税局の職員
国税局は、税務署の上部組織です。レベル①〜⑤はすべて税務署の職員ですが、それを束ねる国税局の職員は、さらに優秀な人材ばかり揃っています。国税局の職員が来るとなれば相当厳しい調査が予想されます。速やかに税理士に相談し、被害を最小限に食い止めましょう。
税務調査に対応するときのポイント
やましいことがあろうとなかろうと、税務調査が来ると決まったら対応するしかありません。むやみに足掻くと調査を長引かせる原因になり、不利益が生じます。ここでは、税務調査の事前通知があってからでもできる対策を解説します。
誠実かつ透明性を持って対応する
税務調査に対しては、一貫して誠実であることが得策です。税務調査をする職員は、納税者が強硬な態度をとることに慣れています。そのため、こちら側が協力的な姿勢をとるだけで心証が良くなり、スムーズに調査が進みます。
職員からの質問には正確に答え、わからなければ正直に「わからない」と伝えましょう。誠実な受け答えが、結果的に調査を長引かせずに終わらせることにつながります。
調査前に過去7年分の書類を整理する
事前に、過去7年分の帳簿書類を準備しておくと、スムーズに税務調査が進む可能性があります。税務調査では一般的に過去3年分の帳簿書類について確認が行われますが、問題が見つかった場合は、最長7年分遡って確認されるためです。
職員に提示を求められてから書類を探し始めると、調査が長引いてしまう恐れがあります。
上席国税調査官以上が来るなら税理士に依頼する
税理士は、調査に来る職員の現在の役職だけではなく、その職員の経歴や上司の経歴までも調べます。そのため、その職員に対してピンポイントで効果が出やすい交渉を行えます。
特に、上席国税調査官以上の手強いベテラン職員が来るのがわかっている場合は、早急に税理士に相談しましょう。
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税務調査はやばい?よくある質問
ここでは、税務調査についてよくある質問を4点ピックアップします。
税務調査を逃げ切った人はいる?
逃げ切れません。その理由は4つあります。
1つ目の理由は、刑罰と前科です。税務調査の妨害や嘘の回答は、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金の対象です。一見「罰金を払ったら終わり」と思えますが、罰金でも有罪に変わりはなく前科がつきます。
2つめの理由は、脱税には事実上の時効がないことです。法的には最長7年の時効がありますが、時効が成立するケースはまずありません。
3つめの理由は、自己破産しても意味がないことです。自己破産は借金などを免責できる手続きですが、税金は免責できません。ただし、法人の場合は自己破産することで、一部免責になることもあります。
4つめの理由は、たとえ死亡しても、払うべき税金は無くならないからです。税金を払うべき人が亡くなった場合、その支払い義務は家族に相続されます。また、行方不明になって7年経った場合も同様に相続されます。
税務調査が来たら追徴課税が払えない場合は、逃げ切りを考えるのではなく、納税の猶予制度など救済措置を活用して支払い金額を最小限にしましょう。
税務調査がきたら人生終わりになる?
人生が終わりになるほどのダメージを受ける人もいます。例えば、追徴課税が払えず財産差押えになる人、脱税が家族にばれてしまい一家離散する人、脱税が明るみになり会社の信用がなくなって倒産する人などです。
そうならないためには、日頃から記録保持と内部管理を徹底することが大切です。適切に記録しておけば税務調査が来る確率を下げられる上、来たとしてもダメージを最小限にできます。
税務調査で領収書は全部見る?どこまで調べる?
税務調査では、領収書はすべて隅々まで見られます。日付や金額はもちろん、何に対して支払ったのか、数字が改ざんされていないかもチェックの対象です。場合によっては、支払い先への裏取り調査も行われるので注意してください。
税務調査では最長で過去7年分の領収書がチェックされるので、古いものも破棄せず保管しておきましょう。
税務調査で狙われやすい人はいる?
います。例えば、そもそも確定申告をしていない人は狙われやすいです。自分が申告していなくても、取引先の申告で発覚するケースが多くあります。また、利益が少なすぎるなど、明らかに不自然な確定申告をしている場合も同様です。
また、顧問税理士が付いていない人も狙われる傾向があります。確定申告時の提出書類に税理士に関する入力がない場合「脱税しているから第三者にチェックを依頼できないのでは?」「税理士が作成していないならばミスが出てくるのでは?」と推測されるからです。
さらに、税務調査時に税理士がいない方が、税務署側にとって有利な調査ができると考える職員もいます。
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税務調査が不安なら顧問税理士に相談しよう
この記事では、税務調査に来る職員の役職と対策について解説しました。
税務署の職員は「事務官<国税調査官<上席国税調査官<統括国税調査官<特別国税調査官」の順に手強くなります。上席国税調査官以上の職員が関与する場合はより複雑な調査になるので、早急に税理士に依頼しましょう。
たとえ、税務調査に来るのが新卒レベルの事務官だとしても、税の分野に自信がない人は事前に税理士に相談するのがおすすめです。事務官が誤って追徴課税してしまうケースを回避できたり、調査を長引かせずに済んだりと、多くのメリットが受けられます。
また、不正の内容によっては税務調査の事前通知が来ない場合もあります。しかし税務調査の経験が豊富な税理士が顧問税理士であれば、日頃から適切な会計処理をサポートできるため、突然の税務調査に不安を抱く必要はありません。