「税金が高すぎる」「もっと節税できたら」と感じる法人は多いのではないでしょうか。今回は、法人の節税対策について詳しく解説します。法人として活動を続ける限り、納税義務があります。しかし、適切な節税対策で支払う税額を少なくできれば、余剰資金が生まれ、事業経営や福利厚生などへの有効活用が可能です。そこで、法人の利益を最大化するさまざまな節税対策を紹介します。
目次
法人が節税対策をする重要性とメリット
節税について検討する前に、まずは法人が節税対策を取り入れることの重要性とメリットについて理解しておきましょう。
節税の重要性
適切な節税対策は、税金の負担を減らすだけでなく、経営の安定化につながります。税金は企業の利益から支払われるため、節税を行うことで利益を最大化し、企業の成長や投資に活用できるからです。
また、税制は常に変化していることから、その都度適切な節税対策を行うことで、より効果的な節税対策を実現できるでしょう。
節税がビジネスに与えるメリット
節税対策は、単に税金の負担を軽減するだけでなく、ビジネスに多くのメリットをもたらします。たとえば、節税によって得られた資金を設備投資や人材育成に充てることで、企業の競争力が高まるのです。
また、財務状況が改善されることで、銀行からの融資を受けやすくなったり、事業を拡大したりと、経営にも好影響を与えます。
ただし、節税対策の手法はさまざまであるため、自社に合った対策を取り入れることが効果的な節税につながります。
法人設立による節税対策
個人事業主が法人化することにより、高い節税効果が期待できるケースがあります。ここでは、法人設立で期待できる節税効果と、法人化に適したタイミングについて詳しく説明します。
法人設立による節税効果
法人設立により期待できる節税効果について説明します。
役員報酬の損金計上
役員報酬を法人の経費として計上できるため、法人税を節税できます。
法人の経営者は、給与ではなく役員報酬という名目で報酬を得ますが、一定の条件を満たすことで損金計上が可能です。
ただし、役員報酬額の設定には注意しましょう。役員報酬の額を増やすことで法人税を減税できますが、役員個人の所得税が増加し、トータルの納税額が増えることがあるからです。
適切な報酬の設定により、法人税と所得税のバランスをとりながら効果的な節税対策を実現できます。そこで、税理士などの専門家に相談して適切な金額を決めるようにしましょう。
従業員への退職金を損金計上
法人設立による節税対策として、知っておきたいのが従業員への退職金の存在です。
従業員へ退職金を支払った場合、損金として計上できるため節税につながります。
欠損金の繰越控除可能期間が長くなる
法人は、赤字(欠損金)が発生した場合、最大で10年間(2018年4月1日前に開始した事業年度の繰越期間は9年)、その赤字を将来の利益から差し引けます。
この繰越控除の期間は、個人事業主では赤字が発生した翌年以降3年間です。赤字額が大きい場合、短期間の繰り越し控除では減税効果が得られないことがあります。赤字の繰越控除期間が長くなることで、長期的な節税効果が期待できます。
消費税の減税(免税事業者)
法人設立で、免税事業者を選択した場合、消費税の納税を一定期間免除されます。それは、法人化により消費税の計算期間が変わること、また、個人事業主としての課税売上高がリセットされるからです。
個人事業主として課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じます。しかし、法人化後の最初の2年間は、消費税の計算対象となる期間が存在しないため、消費税が免除されます。ただし、資本金が1000万円以上であるなど、特定の要件を満たす場合は、消費税の納税が免除されないため注意が必要です。
2023年10月1日より導入されたインボイス制度により、登録事業者になった場合は、課税売上高に関係なく、消費税の免税は受けられません。
インボイス制度について「【税理士監修】インボイス制度を簡単に解説!基礎知識・ポイントをゼロから学ぼう」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
節税効果を高める法人化のタイミング
法人化による節税効果を期待するなら、法人化のタイミングを見極めることが重要です。事業の規模が拡大し、個人事業主としての税負担が重くなってきた、事業に対する投資が増え、将来の利益拡大が見込まれる場合などは、法人化を検討することが望ましいです。
所得税と法人税の税率が異なることから、事業の利益額が、法人化の適切なタイミングを判断するポイントの一つです。所得税は事業の利益額に応じて税率が上がる超過累進課税率が適用されるのに対し、法人税は比例税率を適用します。
所得税の税率は、所得金額に応じて5%から最大で45%ですが、法人税は売上800万円までは15%、800万円以上は23.2%です(中小企業の場合)。
事業の利益が少ないときは、個人事業主として所得税を支払う方が税負担が少ないはずです。事業利益が増えてきたタイミングで法人化することで、節税効果を高めましょう。
また、法人化を判断する際の所得金額として、800万円を目安にすると税負担を減らせる可能性が高いです。節税対策だけでなく、事業の信用力を高める、事業承継をスムーズに行うためにも、法人化は有効な手段です。節税効果も含めて、自身にとって最適な法人化の時期を判断しましょう。
不動産を活用した法人の節税戦略
不動産を活用した節税方法もあります。ここでは、具体的な方法と注意点について詳しく解説します。
不動産投資と節税効果
不動産投資で得られた収入を節税することで、利益を増やせます。不動産を購入し、賃貸事業を行うことで得られる賃料収入は、法人の収益として計上します。不動産の減価償却費や、ローンの利息、修繕費などの経費の計上により、不動産投資で得た収入に対する税金を軽減できます。
また、赤字が続いたときは、不動産を売却するなど利益調整が可能です。将来的に資産価値が高まりそうな不動産を選ぶことで、高い売却益が見込めるため、リスク対策にもなるのです。
不動産を用いた節税戦略は、法人にとって有効な手段の一つですが、リスクも伴うため、慎重な判断と適切な管理が求められます。
不動産投資について「不動産投資は節税対策になる?ならない?節税効果や仕組みについて詳しく解説!」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
社宅の活用
社長や社員が住んでいる住宅を社宅にすると、経費として処理でき法人所得を減らせます。社宅扱いにするには、法人名義で賃貸契約を結ぶ、もしくは法人が買い取った物件を賃貸にすること、その物件に住む社長もしくは従業員から適切な賃料を受け取ることが条件です。
従業員に対して住宅手当を支給した場合は給与扱いですが、社宅にすれば経費として損金算入でき、福利厚生も充実できます。
不動産投資をするときの注意点
節税対策を期待して不動産投資をする場合、ローンや減価償却などのシミュレーションをしておきましょう。減価償却費は、その価値が時間と共に減少する建物だけに適用されるため、不動産全体に置いて建物割合が大きいものの方が、節税効果が高まります。
また、新規で不動産を購入するときには、多額の資金が必要です。借り入れ額の決定や返済など、資金繰りから判断する必要があるため専門家に相談しましょう。
不動産での節税対策を検討中なら、ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください
保険を活用した法人の節税対策
法人が生命保険や損害保険などに加入することは、保険料を損金として計上できるため節税対策の一つです。
保険商品の選定と税務効果
保険加入で節税対策をするためには、法人が加入する主な保険の種類や節税効果について理解しておくことが大切です。
生命保険
法人の経営者や役員を被保険者とし、事業の存続危機に備える保険です。保険加入により経営者や役員に不測の事態が起こったときに、経営や資金繰りへの悪影響を防ぎます。
しかし、2019年の税制改正により、法人保険の損金として計上できる要件が厳しくなったことから、節税効果が薄れました。主に節税対策としてなのか、リスク対策としてなのか、目的を明確にしてから加入を検討することをおすすめします。
損害保険
事業活動を行ううえで起こり得る、災害、事故、盗難といったさまざまな損害に備えるための保険です。火災やその他の災害による損害を補償する火災保険、通勤中や勤務時間中の従業員の怪我や病気による損害を補償する労災保険などが該当します。
さまざまなリスクに備えられますが、生命保険と同様に、税制改正の影響で高い節税効果は期待できません。
経営セーフティー共済
取引先の倒産によって、中小企業の連鎖倒産や経営難リスクに備える保険です。掛け金は損金として計上できるため、節税効果も期待できます。さらに、掛け金は5,000円~20万円まで選べるだけでなく、増額や減額もできるため、利益に合わせて掛け金の調整が可能です。
たとえば、利益が多く出たときに掛け金を増額して損金を増やすことで、法人所得を減らすなど、状況に合わせた効果的な節税対策を実現できるでしょう。
経営セーフティー共済について「中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は節税になる?それともならない?詳しく解説」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
保険で節税対策をする注意点
法人保険の活用にはいくつかの注意点があります。まずは、キャッシュフローの悪化が起こり得ることです。保険料の負担が大きいと、資金繰りを悪化させるリスクが高まります。
2つ目は、加入する目的が明確でない場合、保険加入によるメリットが薄れます。また、今後の税制改正により損金計上のルールが厳しくなることも予測できます。
節税目的だけでなく、自社のリスクに備えられる保険であるのはもちろん、保険料の支払いも含めて、慎重な判断が必要です。
税金やキャッシュフローが関連することから、保険の加入について税理士に相談することも検討してみましょう。
節税対策や自社のリスクに適した保険選びでお悩みなら、ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください
商品券を節税対策に用いるメリットと注意点
ギフト券や商品券の購入は、条件を満たせば経費として計上できます。ここでは、ギフト券や商品券を活用した節税方法と、注意点について詳しく解説します。
節税対策につながる商品券の活用方法
商品券は、法人が節税対策として活用できる手段の一つです。たとえば、お客様や取引先に商品券やギフト券をお礼、もしくは季節の挨拶として渡す場合、事業の売上と関連していることから、その購入費用は経費として計上できます。
他にも、商品を購入してくれたお客様に対するプレゼントキャンペーンとして、ギフト券や商品券を渡すときも、経費計上が可能です。
商品券購入時の注意点
商品券購入に関する明確なルールはありませんが、大量の商品券やギフト券の購入は脱税の疑いを高める要因となるため控えましょう。
商品券やギフト券は換金性の高い商品のため、法人として購入した商品券やギフト券を換金すると、脱税扱いされます。
また、常識の範囲を超えた高額な商品券やギフト券を贈った場合も、不自然とみなされて税務署から指摘を受ける可能性が高いです。
商品券を経費計上する際の注意点
商品券を経費として計上するためには、いくつか注意しておくべき点があります。まずは、渡した相手と目的を記録しておくことです。
それは、事業に関連する支出であることが、商品券やギフト券を経費計上するための条件だからです。また、贈った相手が商品券やギフト券を受け取ったことを証明するためにも、宅急便などの送り状を保管しておくことをおすすめします。
商品券の高額購入は疑われやすい項目であるため、税理士など専門家に相談するのが望ましいです。
車の購入やリースによる法人の節税対策
車の購入やリースが効果的な節税対策となる場合があります。ここでは、車の購入やリースにまつわる節税効果について詳しく紹介します。
車の購入による節税効果
法人が車を購入することは、節税対策として効果的です。車を事業用として使用する場合、その購入費用や、維持管理費(ガソリン代や保険料)などは全て経費として計上できるからです。
また、事業を行ううえで使用する備品や設備は資産扱いですが、時間の経過と共にその価値が低下する資産は、減価償却処理をして経費を増やせます。
車のリースによる節税効果
月々のリース料金を、全額経費計上できるため節税につながります。リースの場合、車を資産として扱えないため、減価償却費の計上はできません。しかし、税金、車検、自賠責保険など、車を維持するのに必要な経費全てがリース料に含まれています。そのため、項目ごとに経費を計上する必要がなく、経理処理が簡単です。
ただし、途中解約ができないことから、違約金の発生リスクがあること、走行距離の制限が設けられているため、使い方によっては追加料金が発生することがあります。
車を活用した税金対策の注意点
車を活用して税金対策をするなら、注意点を把握したうえで活用を検討しましょう。まずは、ローンで車を購入したときは、利息のみ経費にできる点に注意が必要です。ローンを組んだ場合、負債として計上されるため、ローンの元金は経費扱いにならないからです。
また、節税効果を高めるなら車の購入時期も考慮しましょう。減価償却費は使用月数に応じて計算しますが、決算期近くに購入すると、累計償却費が少なくなるからです。できるだけ多く減価償却費を計上したい場合は、会計年度の初めの購入がベストタイミングです。
法人税を節税するための主なテクニック
節税対策としての方法はいくつかあるため、自社に合った方法を選択することが効果的な対策です。ここでは、主な節税方法について解説します。
未払費用の計上
今期中に発生した費用の中で、来期に支払いが予定されているものを計上することです。通信費、会社が負担する保険料、従業員給与などが該当します。
飲食費や交際費の計上
取引先との接待にかかった飲食代など、交際費などの計上も節税効果を高めます。損金として計上できる交際費の金額にも限度額があり、内容によっては経費として認められないこともあるため、注意が必要です。
社員旅行や健康診断の制度化
社員旅行や健康診断は福利厚生として費用計上できます。それぞれ経費として計上するためには、所定の条件を満たさなければいけません。条件を確認して、適切に導入することで、節税と福利厚生の充実を実現できるでしょう。
他にも、法人の節税対策にはたくさんの手段があります。自社に合った方法を選ぶためにも、税の専門家である税理士への相談を検討してみましょう。
グレーゾーン節税の理解と正しい対応
節税対策にはさまざまな手段がありますが、中には合法か違法かの判断が難しいグレーゾーンの対策があります。グレーゾーンの節税対策は法的なリスクを伴うため、節税について正しく理解することが効果的な対策につながります。
合法的な節税とグレーゾーン節税の違い
節税は、法律の範囲内で税負担を軽減することを指します。一方、グレーゾーン節税は、法律の解釈が曖昧な領域を利用して節税を行うことを指し、法的なリスクを伴う可能性が高いです。
不正な節税と判断されると、それが意図的ではなかったとしてもペナルティの対象となるでしょう。節税は税法に基づいて適切に行われるべきであり、リスクの高いグレーゾーン節税は避けるのが望ましいです。合法的な節税対策を取り入れるためにも、税の専門家である税理士相談することをおすすめします。
合法的な節税対策を取り入れたいなら、ぜひ「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください
法的リスクを避けるためのガイドライン
節税対策による法的リスクを避けるためには、以下の点に気を付けることが大切です。
- 税法や関連する法律を正しく理解する
- 節税策を検討する際は、税理士や弁護士などの専門家に相談する
- 税務当局の指針や通達を遵守する
- 税務申告は正確に行い、必要な書類を保管する
節税対策を誤ると、多額の税負担につながるリスクが高まります。正しい納税、合法的な節税対策の実現には、専門家によるアドバイスやサポートが役立ちます。
節税対策のリスク管理
節税策を実施する際には、リスク管理も重要です。まず、節税対策の長期的な影響を検討しましょう。場当たり的に取り入れるのではなく、対策を取り入れた場合の影響まで考慮することで、効果的な節税対策を長期間実現できるからです。
また、法改正や税制の変更に対応できるようにしておくことです。法律や税制の改正頻度は意外と高く、これまで行ってきた節税対策が効果を失うことがあります。常に、最新の税法や制度に精通し、必要に応じて柔軟に対応することが節税効果の維持につながります。
税務調査への対策と準備
税務調査における指摘が、追徴課税につながることもあるため、対策と準備が必要です。節税対策の内容によっては、税務署から指摘を受けることがあります。必要書類を準備しておくなど、指摘を受けても適切に対応できるように、以下のような準備をしておくと安心です。
- 過去の税務申告書や会計記録を整理し見やすいようにしておく
- 節税策の根拠となる法律や通達、専門家の意見などを文書化しておく
- 税務調査に対応するための内部体制を整える
税務調査が入ると、その対応に従業員が追われて通常業務に大きな支障が出ます。信頼できる税理士に税務調査の対応を任せることで、顧客の立場や利益を守るために力を尽くしてくれるはずです。
法人の効果的な節税は適切な計画の構築がポイント
ここでは、法人の節税対策について詳しく解説しました。節税対策を取り入れることで、利益を最大化し、事業発展のために有効活用できる資金をつくれます。
しかし、節税対策にはたくさんの方法があるため、自社に合うものを選ぶことが大切です。しかし、誤った対策を取り入れることで、かえって負担を増やすこともあります。、さらに、税金に関連する制度や法律の改正に柔軟に対応できると、長期的に節税効果を維持できます。
税のプロフェッショナルである税理士のアドバイスを受けながら、自社にとって効果的な節税計画の構築と実現を目指しましょう。