法人税や消費税には中間申告という制度がありますが、中間申告と併せて見聞きする制度に予定申告というものがあります。本記事では、中間申告の概要や予定申告との違い、それぞれの申告方法について解説していきます。中間申告や予定申告について理解を深めたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
目次
中間申告とは
中間申告とは、納税する予定の税金の一部を複数回に分けて課税期間に納める制度のことを指します。中間申告を利用できるのは法人税と消費税です。法人税も消費税も、納めなければならない税額が一定のラインを超えると中間申告が必要になります。
中間申告により事前に納めた税金は、確定申告時には控除されるようになっています。その際、本来の税額よりも多く納めてしまった場合は還付される仕組みです。最終的に納める税金は変わりませんが、中間申告を行うと一度に支払わなければならない税金を抑えられるため、資金繰りの計画が立てやすくなるというメリットがあります。また、国側としても安定して税収が得られるというメリットがあります。
以下では、中間申告の対象となるケースや申告期限などについて解説していきます。
中間申告の対象となるケース
法人税の中間申告の対象となるのは、法人税額が20万円を超えた場合となっています。法人税の中間申告は合同会社や株式会社といった普通法人のみで、公益法人やNPO法人は対象にはなりません。一般的には、中間申告の対象となった場合は税務署より中間申告書が送付されます。
一方、消費税の中間申告の対象となるケースは、法人では前の事業年度の確定消費税額が48万円を超えた場合、個人事業主では前の年の確定消費税額が48万円を超えた場合となっています。現在の消費税率は8%と10%ですが、す。この消費税率には地方消費税率も含まれており、実際の消費税率は6.24%と7.8%となります。確定消費税額には地方消費税額は含まれていないため、地方消費税額を除いて計算します。
中間申告の対象とならない場合でも、任意で中間申告を行うことは可能です。一度にまとめて税金を納めることが負担になる場合などは、税務署に任意で中間申告をする旨の届出書を提出しましょう。
中間申告の申告方法と期限
原則として、中間申告が必要となった場合は税務署から中間申告書が郵送されます。ただし電子申告を行っている場合は、e-Taxのメッセージボックスに送られてくることもあります。
中間申告書の申告方法は、所轄の税務署に提出するかe-Taxを用いて申告します。法人住民税や法人事業税などの地方税に関してもeLTAXを用いた電子申告が可能なため、わざわざ税務署に赴かなくても申告ができます。
法人税の中間申告の申請期限は、事業年度が開始した日以後6ヵ月を経過した日から2ヵ月以内です。消費税の中間申告の申請期限や申告回数は前の事業年度の確定消費税額によって異なり、確定消費税額が高くなるほど申告回数は増えます。具体的な期限は以下の通りです。
中間申告の回数 | 納付期限 | |
年1回 | 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヵ月以内 | |
年3回 | 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2ヵ月以内 | |
年11回 | 法人 | 課税期間の開始後1ヵ月分 以降の10ヵ月分 |
個人事業主 | 1月分から3月分 4月分から11月分 | |
法人は課税期間の開始後1ヵ月分については、課税期間が開始してから2ヵ月を過ぎた日から2ヵ月以内に納めなければなりません。それ以降の10ヵ月分は、中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内が納付期限です。
ただし、消費税の確定申告の期限の延長特例を受けている場合は、税期間開始後の2ヵ月分については課税期間開始してから3ヵ月を過ぎた日から2ヵ月以内が納付期限となっています。それ以降の9ヵ月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内に納めましょう。
個人事業主は、1月から3月分は5月末日、4月から11月分は中間申告対象期間の末日の翌日から2ヵ月以内が納付期限です。
中間申告の2つの方法
中間申告は予定申告と仮決算という2つの方法があります。
予定申告は前の年度の実績を基に申告する方法で、所轄の税務署から送られてくる申告書と申告税額が記載された納付書を用いて納めます。納付額は前の事業年度に支払った法人税額の半分程度です。
仮決算は中間申告の対象となる期間に1度決算を行い、その結果を基に納付額を決める方法です。仮決算は予定申告よりも手間はかかりますが、前期の法人税額の半分を納めるのが厳しい場合などは仮決算のほうが負担を抑えられます。
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中間申告と予定申告はどう違う?
納税予定の税金の一部を分割で課税期間内に納める制度を中間申告と呼び、中間申告の方法の1つに予定申告というものがあります。そのため、予定申告は中間申告の方法の1つであるという点を覚えておきましょう。
同じ「申告」という言葉が付きどちらも税金を前もって支払うことを指す言葉ですが、これらは全く別物という訳ではなく、あくまでも制度名とその方法という関係なのです。
予定申告のやり方
予定申告では前年度の実績に基づいて中間申告による納税額を決めますが、この基準となる金額を前期基準額と呼びます。法人税の前期基準額は以下の式で計算します。
前の事業年度の確定法人税額×中間期間の月数/前の事業年度の月数 |
中間期間は事業年度が開始してから6ヵ月です。例えば、前の事業年度の確定消費税額が100万円、中間期間の月数が6ヵ月、前の事業年度の月数が12ヵ月の場合は次のように計算します。
100万円×6/12=50万円
つまり、上記のケースでは中間申告時に50万円を納めることになります。また、消費税の場合は前の事業年度の確定消費税額によって回数と金額が異なります。具体的な回数の区分は以下の通りです。
前事業年度の確定消費税額 | 中間申告の回数 | 中間申告で納める消費税額 |
48万円超~400万円以下 | 1回 | 前の事業年度の確定消費税額の6/12 |
400万円超~4,800万円以下 | 3回 | 前の事業年度の確定消費税額の3/12 |
4,800万円超 | 11回 | 前の事業年度の確定消費税額の1/12 |
例えば、前の事業年度の確定消費税額が60万円だった場合、中間申告で納める消費税額は以下のようになります。
60万円×6/12=30万円
したがって、上記の場合は中間申告時に30万円の消費税を納めることになります。
参考:中間申告書の提出を要する通算法人|国税庁
参考:No.6609 中間申告の方法|国税庁
仮決算のやり方
仮決算は中間申告の対象となる期間に1度決算を行うことで納付額を決定します。法人税の場合は年に1度、事業年度が開始してから半年間を1つの事業年度として決算を行います。
例えば、期首が1月の場合は1月から6カ月間を1つの事業年度として考え、決算を行うのです。この中間決算で出された課税所得に法人税率を掛けて、中間申告で納めるべき法人税額を算出します。
消費税の場合は本決算と同様に仮決算を行い、消費税及び地方諸費税の確定申告書を作成して納めるべき消費税額を算出します。
関連記事:【税理士監修】税務署の管轄とは?地域別・状況別・ オンライン利用時などの確定申告書提出先の詳細ガイド
予定申告と仮決算はどちらがおすすめ?
中間申告の対象となった場合、予定申告方式と仮決算方式のどちらを選べばよいのか悩む人は少なくありません。以下では、予定申告がおすすめのケースと仮決算がおすすめのケースについてそれぞれ紹介していきます。
予定申告がおすすめのケース
予定申告は仮決算方式よりも手間がかからないというメリットがあります。仮決算を行う場合は、本決算と同様に確定申告書を作成しなければなりません。一方予定申告の場合は、前の事業年度の実績を基に中間申告で納める税額を決めるため、税務署から送られてくる納付書で納めるだけで完結します。
前の事業年度と比べて大幅に業績が悪化している場合を除いては、予定申告の方がスムーズに中間申告を済ませられるでしょう。
仮決算がおすすめのケース
仮決算では本決算と同様に書類を作成する必要があるため、時間と労力を要します。しかし、前の事業年度の実績を基にする予定申告よりも、より会社の現状に適した金額で納税できるのが仮決算方式のメリットです。
たとえば前の事業年度よりも業績が悪化し、まとまった金額を納めることが難しい場合は仮決算を選ぶと良いでしょう。また、資金繰りに注力したい場合も仮決算を行うことで金銭的な負担を抑えられる可能性があります。予定申告では多く税金を納めてしまったときは確定申告時に還付が受けられますが、もとより資金繰りをしっかり調整したい場合は確実な金額を納められる仮決算のほうが安心です。
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予定申告は中間申告の方法の1種である
税金の一部を前もって納める中間申告は、前の事業年度の法人税や消費税の金額が一定ラインを超えた場合に必須となります。予定申告は中間申告の方法の1つで、他にも仮決算という方法があります。どちらの方法を選択するかは納税者の自由ですが、経営状況によってどちらの方が負担が少ないかを考え、選択することが大切です。
どちらを選択するか迷う場合は税理士などの専門家にアドバイスを貰うと良いでしょう。