特別損失がどのようなものなのか、特別損失を計上するとどのような恩恵を受けられるのかご存じでしょうか。本記事では、特別損失の概要や特別損失を計上するメリットについて解説しています。また、特別損失に該当する損失や特別損失を計上する際のポイントについても併せて紹介しています。特別損失について理解を深めたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
目次
特別損失とは
特別損失とは業務外で突発的に発生した損失のことを指し、特損とも呼ばれています。特別損失として扱うための明確な条件などはありませんが、一般的に以下のような状況に当てはまるものを特別損失と呼びます。
- 継続的ではなく臨時の損失である
基本的に、上記に当てはまるような損失は特別損失として計上しますが、何を基準にするかは企業によって異なります。
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特別損失として扱える損失と仕訳例
すでに解説した通り、特別損失には明確な条件がありませんが、業務外で発生した突発的な損失という性質を持っています。この性質を持つ代表的な損失について、以下で紹介していきます。
固定資産売却損
固定資産売却損は、固定資産を売却したことにより発生した損失のことです。固定資産売却損は、売却した固定資産の帳簿価格から売却価格を差し引いた金額となります。例えば、建物を売却したことにより、固定資産売却損が生じた場合は以下のように仕訳をします。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
預金 | 8,500,000 | 建物 | 10,000,000 |
固定資産売却損 | 1,500,000 |
また、固定資産売却損を特別損失として扱う場合は、証明書として売却額や売却先などが分かる書類を保管しておきましょう。
固定資産圧縮損
固定資産圧縮損は、圧縮記帳を行った際に発生する損失です。国や地方自治体などの補助金を利用して、固定資産を取得した場合に計上できます。1,000万円の国庫補助金を受けて固定資産を取得した場合の仕訳は以下が考えられます。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
土地 | 40,000,000 | 預金 | 40,000,000 |
固定資産圧縮損 | 10,000,000 | 土地 | 10,000,000 |
通常、国庫補助金などの助成金は税金が課され、実際に受け取れる額が減ってしまいます。しかし、助成金を一度収益として処理し、その後固定資産圧縮損として同額を計上すれば税金が課されずに済むので、手間はかかりますが節税効果が得られます。
固定資産除却損
固定資産除却損は所有している固定資産を業務で使用することを辞め、帳簿から取り除く固定資産の除却を行った際に生じた損失のことを指します。
通常、固定資産は減価償却により経費として計上します。しかし、減価償却の期間中や償却後に建物を取り壊したり、設備機械を処分した場合は、その時点での帳簿価格を損失として処理しなくてはなりません。
例えば、工場の建物が取り壊しとなった場合は次のような仕訳になります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
固定資産除却損 | 2,500,000 | 建物 | 2,500,000 |
固定資産除却損を計上する場合は、除却稟議や解体工事の証明ができる書類などを保管すしておきましょう。
減損損失
減損損失は、減損処理によって計上した損失のことを指します。減損処理とは、固定資産の資産価値を減らす処理のことを指します。購入した固定資産から得られる収益が想定額を下回った場合、減損処理によってその損失として計上する処理です。
建物と土地を減損処理した場合の仕訳例は以下の通りです。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
減損損失 | 3,500,000 | 建物 | 1,500,000 |
土地 | 2,000,000 |
減損損失は原則として損金算入が認められていないため注意しましょう。
投資有価証券売却損
投資有価証券売却損は、投資のために保有していた有価証券を売却した際に生じた損失のことを指します。持ち合い株などの長期保有を目的としたもので、市場性のある有価証券が対象となっており、以下のように仕訳を行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
預金 | 7,000,000 | 投資有価証券 | 10,500,000 |
投資有価証券売却損 | 3,500,000 |
有価証券は関係会社株式や売買目的有価証券など、保有の目的によって複数の種類に分けられます。投資有価証券売却損に該当するのは、有価証券の中のその他有価証券にあたるものであるという点です。
前期損益修正損
前期損益修正損は、前期またはそれ以前の損益を修正したことによって生じた損失のことです。本来計上すべきはずだった支払いの漏れが発見された場合は特別損失として処理をします。具体的な仕訳例は以下の通りです。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
前期損益修正損 | 1,500,000 | 預金 | 1,500,000 |
前期損益修正損は継続的なものではなく、ミスへの対処という臨時的な出費であると考えられているため特別損失として処理しましょう。
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災害損失
災害損失は、地震や台風などの自然災害によって生じた損失を指します。地震などにより工場などが倒壊してしまった場合などに、帳簿価格と同額の損失の計上が認められています。災害保険による補償を受ける場合、災害損失と保険収益は同じ会計期間で処理しましょう。具体的な仕訳例は以下の通りです。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
災害損失 | 2,500,000 | 建物 | 2,500,000 |
また、災害損失が生じた会計期間に保険金が入金されない場合、受け取れる保険金がすでに確定していれば振り込みが完了する前でも未収入金として処理できます。その際の仕訳は以下のように行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
未収入金 | 3,000,000 | 保険収益 | 3,000,000 |
災害損失には、上記のように災害により失ってしまった資産のみならず、事後処理にかかった費用や修理にかかった費用も含まれます。
盗難損失
盗難損失は盗難被害によって損失が生じた際に計上します。盗難に対して保険金が下りる場合は損失と同じ会計期間に収益として計上します。例えば、社用車が盗難被害にあった場合は以下のように仕訳をします。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
盗難損失 | 3,500,000 | 車両 | 3,500,000 |
保険金が入金された場合の仕訳例は以下の通りです。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
預金 | 3,500,000 | 保険収益 | 3,500,000 |
ただし、盗難による損失は、雑損失として計上することも可能です。
特別損失を計上するメリット
基本的に、損失が生じてしまうと金融機関からの評価が下がる、外部から業績が悪化していると判断されるといった事象が起こります。しかし特別損失による赤字であれば、外部から業績悪化の判断をされたり、融資が受けづらくなったりすることを避けられます。この点は、特別損失を計上するメリットと言えるでしょう。
また、固定資産を取り壊さずに除却する有姿除却を行う場合の除却損も特別損失として計上できます。有姿除却であれば取り壊しなどに費用をかけずに除却できるため、節税効果があるという点も特別損失を計上するメリットだと言えます。
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特別損失に該当するものは積極的に計上しよう
特別損失に細かな要件はありませんが、業務外で発生した突発的な損失であるという前提条件があります。
代表的な特別損失には、固定資産売却損や減損損失、災害損失など多くの種類があり、それぞれ仕訳の際のポイントも異なります。特別損失の会計処理に不安がある場合は、税理士等の専門家に相談すると安心です。
本記事を参考に、特別損失の概要や対象となる損失について理解を深め、疑問点は専門家に質問するなどして特別損失についての理解を深めましょう。