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- カニバリゼーション ~事業の共食いを乗り切る~
小谷野です。
『カニバリゼーション』(ダイヤモンド社 2023.6 山田英夫著)を読みました。
事業転換の際には必ず生じるカニバリゼーション(自社競合、共食い)ですが、これを体系的に分類し、解決方法を示唆している書籍です。
著者の山田英夫氏は、早稲田大学ビジネススクールの教授で、アステラス製薬、NEC、サントリーホールディングなどの社外役員を歴任しました。
既存ビジネスと新規ビジネスはカニバリゼーションが起きるが、これをどのようにマネジメントしていけば良いのかの提言書となっています。
(新旧ビジネスモデルの関係は3パターン)
1. 置換
例:アドビAdobeは、収益性の高い映像パッケージソフト販売から、ダウンロードのサブスクリプションに置換
2. 併存
例:マイクロソフト パッケージ販売、PCのプレインストール販売、サブスクリプション販売を併存させた。
3. 共生
一般企業が出店してEC販売する、アマゾンマーケットプレイスと、アマゾン本体は売れ筋商品のみを扱うことによって効率的運営に徹している。
(新旧ビジネスの間の3つの問題)
1. エネルギーが社外ではなく社内向けになる
2. 新事業の機会損失
3. 忖度(そんたく)経営の蔓延
(カニバリゼーションの克服)
・収益事業からの撤退
黒字事業から撤退するのは通常は考えられないが、不合理な決定が重要になる。
・トップが防波堤になる
ミドルマネジメントは担当する事業の利益極大化が使命であり、不合理な決定はトップにしかできない。
・市場志向の事業定義
製品志向から消費者目線の事業定義にすることで、同じカテゴリーでもカニバリゼーションの摩擦を軽減できる。
以下、「会社名:製品志向の定義 / 市場志向の定義」の順番です。
|
製品志向定義 |
市場志向の定義 |
セコム |
ガードマンによる警備 |
安全と安心の提供 |
鎌倉新書 |
仏教関連の出版社 |
葬儀の情報加工業 |
富士フイルム |
写真フィルムの会社 |
イメージング・インフォメーション |
凸版印刷 |
印刷会社 |
情報を加工する会社 |
リクルート |
情報誌の健康をはかる会社 |
マッチング・ビジネスの会社 |
タニタ |
健康をはかる |
健康をつくる |
・伝統的な評価尺度を変える
・評価を別建てにする
(カニバリゼーションをあえて生み出す)
無意味な競争は組織を疲弊させるが、適度な競争は社内に緊張感をもたらし組織を活性化するので、カニバリゼーションが常に組織にある状態は、新旧ビジネスモデルを推進する企業の必須条件といえる。
*カニバリゼーション(Cannibalization)の語源:西インド諸島にいた人食い人種のカリブ族をあらわすスペイン語で、共食いを意味するようになったといわれている。
~カニバリを避ければ衰退、小谷野でした~