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【税理士監修】特別償却と税額控除とは?節税のポイントや中小企業向けの控除について解説

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【税理士監修】特別償却と税額控除とは?節税のポイントや中小企業向けの控除について解説

特別償却や税額控除という制度がどのようなものなのかご存知でしょうか。本記事では、特別償却と税額控除の概要や違い、中小企業向けの税額控除について解説しています。また、節税のポイントも併せて解説しています。特別償却や税額控除のしくみについて知りたい方はぜひ本記事を参考にしてください。

特別償却とは

特別償却とは、青色申告法人が利用できる税制優遇制度のことを指します。特別償却では、減価償却費とは別に経費の追加計上ができるようになっています。減価償却費とは企業が購入した機械や建物などの資産を耐用年数に合わせて分割し、経費として計上する制度です。

特別償却の限度額は資産の取得価額の30%です。特別償却を利用することで通常よりも多い割合で経費計上できるため、節税に繋がると言われています。

特別償却が利用できるのは、対象となる資産を取得して事業用に使用開始した事業年度のみです。次年度以降は減価償却費として計上します。特別償却が利用できる条件は以下の通りです。

  • 2021年4月1日以降に取得した資産について適用を希望する商店街振興組合
  • 農業協同組合等
  • 資本金や出資金が1億円以下の中小企業
  • 大企業の子会社ではない中小企業
  • 常時使用する従業員の数が1,000人以下で資本金や出資金を有しない中小企業
  • 常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人事業主

特別償却の対象となる資産は以下の通りです。

  • 1台または1基の取得価額が160万円以上の機械および装置
  • 1台または1基の取得価額が120万円以上の測定工具および検査工具
  • 合計取得価額が120万円以上かつ1台あたりの取得価額が30万円を超える測定工具および検査工具
  • 1つの取得価額が70万円以上および合計取得価額が70万円以上のソフトウェア
  • 車両総重量が3.5トン以上の貨物の運送用の普通自動車
  • 内航海運業用の船舶

参考:No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁

税額控除とは

税額控除は、事業用の資産を取得した際に所得税や法人税などの算出税額から一定額を控除できる永久免税措置です。税額控除額は資産の取得価額の7%で、上限は納税額の20%となります。控除しきれなかった場合は、超過分を1年間繰り越すことが可能です。

税額控除の対象は資本金の額もしくは出資金の額が3,000万円以下の法人、または農業協同組合等もしくは商店街振興組合となっています。対象となる資産は特別償却と同じです。

参考:No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁

特別償却と税額控除の違い

特別償却も税額控除も、対象となる資産は同じで利用できる企業はほとんどの場合が青色申告法人であるという点は共通しています。しかし、特別償却は前倒しで経費として計上できる制度なので初年度の負担額は低くなりますが、最終的に計上できる経費の額は変わりません。

一方、税額控除は所得税や法人税から直接控除される永久的な制度となっています。

どちらも節税効果のある制度であることは変わりませんが、制度の内容は全く違うものであるという事を理解しておくことが大切です。

参考:No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁

関連記事:【税理士監修】会社設立後も青色申告できる?法人が青色申告するメリットや方法

中小企業向けの税額控除

法人税 滞納のイメージ

税額控除という制度のなかには、中小企業に向けた制度が多くあります。どの税額控除も、利用できる条件や適用期間などが異なるため、制度の利用を検討する場合は内容をきちんと理解しておくことが重要です。

以下では、具体的な中小企業向けの税額控除について解説していきます。

賃上げ促進税制

給与等を引き上げた時、一定の条件を満たすことで税額控除が受けられる制度です。

雇用者給与等支給額が、前事業年度の雇用者給与等支給額より1.5%以上増加した中小企業が利用できる制度です。中小企業以外の事業者は、3%増加していることが条件となります。ただし、以下の条件を満たしている企業は給与等支給増加額の25%相当の税額控除を受けられます。

  • 雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額より2.5%以上増加している
  • 「教育訓練費の額」が、前事業年度の「比較教育訓練費の額」よりも10%以上増加しているもしくは中小企業等経営強化法の認定を受け、経営力向上計画に記載された経営力向上を確実に行使した証明がされている

参考:No.1286 給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の税額控除|国税庁

参考:No.1288 給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除|国税庁

中小企業投資促進税制

機械等を取得した時、中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)と呼ばれる税額控除を受けられます。

この制度は特定中小企業者等に該当する資本金または出資金が3,000万円以下の法人または農業協同組合等が、特定機械装置等を取得した場合に、取得価格の7%が控除できる仕組みになっています。内航船舶を取得した場合は取得価格の75%が控除されます。

中小企業投資促進税制の控除の上限は法人税額の20%です。しかし、税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超えてしまい、税額控除限度額の全額を控除しきれなかった場合は1年間繰越できます。

参考:No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁

中小企業経営強化税制

中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合、取得価額の7%が控除できる制度です。資本金または出資金が3,000万円以下の中小企業者等は10%が控除できます。特定経営力向上設備を取得した時の税額控除は、法人税額の20%が限度となっています。

しかし、税額控除限度額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超えてしまい、その事業年度で全て控除しきれなかった場合は1年間繰越可能です。この税額控除における特定経営力向上設備とは、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具、備品、建物・付属設備およびソフトウェアで一定の規模を満たすものを指します。

参考:No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁

研究開発税制

試験研究費にかかる税額控除で、中小企業等がその事業年度に試験研究費が発生している場合に、その試験研究費の額に一定割合を乗じて計算した金額を控除できる制度です。試験研究を行った時の税額控除には、以下の種類があります。

  • 中小企業の試験研究費の税額控除(中小企業技術基盤強化税制)
  • 試験研究費にかかる税額控除
  • 特別試験研究費にかかる税額控除

この税額控除では、青色申告法人は試験研究費の額×控除割合または超過試験研究費の額×控除割合で計算した金額を控除できます。中小企業等は、試験研究費の12%を乗じた金額が控除可能です。ただし、控除の上限は調整前法人税額の25%となっています。

参考:No.5441 研究開発税制について(概要)|国税庁

参考:No.5444 中小企業技術基盤強化税制|国税庁

参考:No.5442 一般試験研究費の額に係る税額控除制度|国税庁

参考:No.5443 特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)|国税庁

特別償却と税額控除はどちらが節税できる?

すでに解説したとおり、特別償却と税額控除はどちらも節税効果のある制度ですが、特別償却は前倒しで経費として計上することで初年度の負担を抑える制度で、税額控除は永続的な効果があるという違いがあります。

では、特別償却と税額控除ではどちらのほうがより節税できるのでしょうか。以下で解説していきます。

中長期的な節税は税額控除

既出のとおり、税額控除は永続的な効果があるため中長期的に考えて永続的な節税効果を期待する場合は税額控除を利用する方がおすすめです。減価償却費としてではなく法人税から直接控除をすることで、経費を増やす必要がなくなり決算書上の利益を維持した状態で節税ができます。

また、今期が赤字の場合でも翌期以降が黒字の見込みであれば当期の税額控除を繰り越しておき、翌期以降の納税額を減額することでより節税効果を高められます。

資産を取得しても資金繰りが苦しくない場合は、中長期的な視点から税額控除を選ぶと良いでしょう。

関連記事:税金対策の基本と効果的な方法!節税や資産運用のポイントを簡単にわかりやすく解説

当面の負担軽減は特別償却

特別償却は、当面の負担を軽減したい場合や資産の取得により資金繰りが厳しい場合におすすめの制度です。翌期以降の業績悪化が予想される場合や、当期の納税負担を抑えたい場合、特別償却で前倒しして納税額を抑えることで手元資金に余裕が生まれます。資金に余裕が生まれると、経営方針の転換や経営改善がしやすくなるため安心です。

また、当期も翌期も赤字決算が続くと考えられる状況で税額控除を利用すると、当期の適用だけでなく繰り越しもできなくなる可能性が高まります。このような状況でも特別償却を利用すれば、繰越欠損金を作れるため今後の黒字決算に備えられるのです。

当面の負担を軽減して将来の黒字決算に備えたい場合は特別償却を利用すると良いでしょう。

関連記事:収入より経費が多い赤字の場合でも確定申告すべき?その理由と注意点を解説

特別償却と税額控除について理解して節税に繋げよう

特別償却と税額控除はどちらも節税効果が期待できる制度です。どちらの方法が適しているのかは、企業の経営状況によって異なります。中長期的な効果を得たい場合は税額控除、当面の負担を軽くしたい場合は特別償却といったように、自社の状況にあった方法を選ぶことが大切です。

より高い節税効果が得られるように、特別償却と税額控除の仕組みや内容についてしっかりと理解を深めましょう。

企業の節税でお悩みなら「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
今野 靖丈小谷野税理士法人 税理士
1997年中央大学経済学部卒業後、東京国税局に入所しました。法人の税務調査の現場では税の議論だけでなく、企業の経理体制の優れた点の説明や、改善すべき点をアドバイスしてきました。国税徴収に関わる部門では、多くの中小企業の経営者、個人事業主と財務に関わる面談をし、資金操計画の作成アドバイスを行ってきました。
会計・財務・税務に関する様々な相談に対応し、提案をすることをライフワークと考えています。お気軽にご増段下さい。
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