税理士との関係は、ビジネスを成功させるため重要な要素の一つです。しかし、時には税理士を変更する必要がある場合もあります。税理士とのトラブルは、税務調査や訴訟などのリスクを高める可能性があるため、税理士を変更する際は円満に別れることが望ましいです。そこで、この記事では、断りが必要な税理士変更のケースと、その際のコツや注意点を例文とともに紹介します。
目次
断りが必要な税理士変更のケースとは?
税理士との契約形態によって、断りが必要なケースとそうでないケースがあります。ここでは、主に二つの契約形態について説明します。
確定申告のみなど短期間契約
確定申告や申請書作成など、一回限りまたは短期間だけ税理士に依頼する場合は、契約期間や解約条件が明確に決まっていることが多いです。そのため、契約期間内に依頼内容を完了させれば、特に断りを入れる必要はありません。
ただし、次年度以降も同じ税理士に依頼するかどうかは別問題です。もし変更したい場合は、早めに新しい税理士を探す必要があります。また、旧税理士には「お世話になりました。ありがとうございました」など感謝の気持ちを伝えましょう。
もし、旧税理士から「翌年も税理士業務をしますよ」といった挨拶が来たら、新しい税理士と契約した旨を「今年は別の方にお願いすることにしました。ご理解ください」などの言葉で丁寧に伝えるとよいでしょう。
月次顧問契約
月次顧問契約とは、毎月一定額の報酬を支払って、経理や会計などの業務を税理士に任せる契約形態です。この場合は、契約書に解約条件や違約金などが記載されていることが一般的です。そのため、契約書をよく確認してから、解約手続きを行う必要があります。
また、月次顧問契約では、税理士と長期的な信頼関係を築くことが重要です。そのため、突然解約するということは避けた方がよいでしょう。契約書の内容に沿って、慎重に契約更新のお断りをする必要があります。解約する理由や時期を事前に伝えて、円満に別れることを目指しましょう。
たとえば、「業務内容や規模が変わったため、別の方にお願いしたいと考えています」「契約期間が終了する○月までに解約したいと思います」などの言葉で伝えるとよいでしょう。
税理士変更でトラブルが少ないタイミングは?
税理士変更でのトラブルを避けるために、タイミングも重要となってきます。税理士との契約や業務の進捗状況によっては、変更しやすい時期や難しい時期もあるためです。ここでは、税理士変更でトラブルが少ないタイミングについて、以下の4つのケースに分けて説明していきます。
担当税理士の異動
税理士事務所には、複数の税理士が所属していることが多く、担当税理士が異動することもあります。たとえば、退職や転勤、昇進や降格などの理由で、担当税理士が変わる場合などです。このような税理士の異動のタイミングは、税理士変更のチャンスです。
担当税理士が異動するときには、新しい担当税理士との打ち合わせや引き継ぎが必要になります。その際に、新しい担当税理士との相性や信頼感を確かめましょう。もし新しい担当税理士に不満がある場合は、そのまま契約を続けるよりも、別の税理士に変更する方がよいでしょう。
担当税理士の異動は、契約上の問題や業務上の遅れを引き起こすリスクが低いです。また、旧担当税理士との感情的な結びつきも弱くなります。そのため、トラブルを起こしにくいタイミングといえます。
税理士へのニーズの変わり目
ビジネスを行っていく中で、税理士へのニーズは変わっていきます。たとえば、事業拡大や業態変更、資金調達やM&Aなどの場合は、より専門的な知識や経験を持った税理士が必要になるかもしれません。逆に、事業縮小や撤退などの場合は、より低価格でサービスを提供する税理士が望ましいとされています。
税理士へのニーズが変わるときには、現在の税理士に対応してもらえるかどうかを相談、検討しましょう。
税理士へのニーズが変わるときは、ビジネス上の大きな転機となります。そのため、早めに新しい税理士を探して準備することが重要です。また、現在の税理士にはビジネス上の事情を説明して、納得してもらえるように努めましょう。トラブルを防ぐためには、コミュニケーションをしっかりとることが大切です。
経営者の引退
経営者が引退するときは、税理士を変更することも考えられます。たとえば、後継者や新経営陣が自分の信頼できる税理士に変更したい場合や、引退する経営者が自分の税務上の問題を解決するために別の税理士に依頼したい場合などがあります。
経営者が引退するときには、税理士変更の理由やタイミングを明確にしましょう。後継者や新経営陣が税理士を変更したい場合は、引退する経営者と現在の税理士との関係を尊重して、円満に解約することが望ましいです。引退する経営者が税理士を変更したい場合は、後継者や新経営陣との関係を損なわないように、慎重に行うことが必要です。
経営者が引退するときは、ビジネスのバトンタッチのタイミングです。そのため、税理士変更により、ビジネスへの悪影響を最小限にできます。また、税理士変更に伴う手続きや費用も考慮する必要があります。トラブルを起こさないためには、計画的に行動するようにしましょう。
決算報告後
決算報告は、ビジネスの成果を示す重要なイベントです。決算報告後は、税理士への評価や感謝を伝える良い機会ですが、税理士変更のタイミングとしても適しているでしょう。
決算報告後は、一年間の業務が一段落します。そのため、契約上の問題や業務上の遅れを引き起こす可能性が低くなります。また、決算報告後は、次年度の業務計画や予算を立てる時期でもあるため、新しい税理士に変更することで、新たな気持ちでビジネスに取り組むことができます。
決算報告後は、税理士への感謝や評価を伝えることで、円満な契約解除を目指しましょう。たとえば「おかげさまで無事に決算報告ができました。ありがとうございました」「今年度は別の方にお願いすることにしました。ご協力いただき感謝しています」などの言葉で丁寧に伝えることを心がけましょう。
税理士変更のタイミングについて詳しく知りたい方は、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
税理士変更の円満な断り方
税理士を変更するときには、現在の税理士に契約更新を断ることが必要になりますが、これは簡単なことではありません。税理士との関係は、長期的で深いものですから、断り方によっては感情を傷つけたり、トラブルを引き起こしてしまう可能性も考えられます。
では、どのようにして税理士に契約更新を断り、円満な関係を保つことができるのでしょうか?ここでは、税理士変更の円満な断り方について、以下の5つのステップに分けて説明していきます。
【STEP1】契約書の確認
まず、税理士との契約書を確認しましょう。契約書には、契約期間や解約条件、違約金などが記載されています。これらの内容をあらかじめ把握しておくことで、税理士変更のタイミングや方法を決めることができます。
契約書を確認する際には、注意点があります。それは、契約書だけではなく、口頭での合意やメールでのやり取りも契約内容として有効である可能性があることです。そのため、税理士とのコミュニケーションの履歴もチェックしておきましょう。
契約書には、以下のような項目が含まれていることが一般的です。
契約期間
契約が始まった日から終了する日までの期間です。「一年間」や「三年間」などと決められている場合もありますし、「無期限」や「自動更新」となっている場合もあります。
解約条件
契約を解除するために必要な条件です。たとえば、「解約する場合は何日前までに通知しなければならない」、「解約する場合は何ヶ月分の報酬を支払わなければならない」などと定められている場合があります。
違約金
契約した場合に支払わなければならない金額です。たとえば、「解約条件を守らなかった場合」や「契約期間中に別の税理士に依頼した場合」などに発生します。
【STEP2】新しい税理士を見つける
現在の契約更新を断る前に、新しい税理士を見つけましょう。前もって新しい税理士を見つけておくことで、税理士変更の目的やニーズを明確にすることができます。また、新しい税理士との契約内容や開始時期も事前に決めておくことができます。
新しい税理士を見つける方法は、以下のようなものがあります。
紹介
知人や友人、他の経営者や専門家から税理士を紹介してもらう方法です。信頼性や相性が高い税理士を見つけやすいですが、紹介料が発生する場合もあります。
検索
インターネットなどで税理士を検索する方法です。多くの税理士から選ぶことができますが、信頼性や相性が低い税理士に当たる可能性もゼロではありません。
相談
税理士会や商工会議所などの団体に相談して税理士を紹介してもらう方法です。中立的な立場から税理士を紹介してもらえますが、相談料が発生する場合もあります。
新しい税理士を見つける際には、以下のようなポイントに注意しましょう。
資格
税理士は国家資格ですが、それ以外にも公認会計士や社会保険労務士などの資格を持っている場合もあります。自社のビジネスに必要な資格を持っている税理士を選びましょう。
経験
税理士は業種や業態、規模や地域などによって得意分野や経験が異なります。自分のビジネスに合った経験を持っている税理士を選びましょう。
人柄
税理士は長期的なパートナーになるので、人柄やコミュニケーション能力も重要です。自分と相性の良い人柄の税理士を選びましょう。
【STEP3】現在の税理士に契約更新を断る
次に、現在の税理士に契約更新を断りましょう。これは、最もデリケートなステップです。現在の税理士には感謝の気持ちと敬意を持っ、丁寧断が大切です。
現在の税理士の契約更新を断る方法は、以下のようなものがあります。
電話
声や口調で感情を伝えやすいですが、相手の反応や質問に対応しなければならない場合もあります。
メール
内容や言葉選びに時間をかけられますが、感情が伝わりにくい場合もあります。
面談
表情や態度で感情を伝えやすいですが、場所や時間の調整が必要な場合もあります。
現在の税理士に契約更新を断る際には、以下のようなポイントに注意しましょう。
理由
契約更新を断る理由を明確に伝えましょう。ただし、不満や批判は避けて、客観的かつ建設的な言い方をしましょう。たとえば、「業務内容や規模が変わったため、別の方にお願いしたいと考えています」などがおすすめです。
時期
契約更新を断る時期は、契約書に記載されている解約条件に従いましょう。たとえば、「解約する場合は何日前までに通知しなければならない」という条件がある場合は、その期限内に断る必要があります。
態度
契約更新を断る態度は、感謝の気持ちと敬意を持って、丁寧にしましょう。たとえば、「お世話になりました。ありがとうございました」「ご協力いただき感謝しています」などの言葉を伝えるとよいでしょう。
契約更新を断るときには、できるだけ正直な理由を伝えることが望ましいです。しかし、相手との関係が悪化する恐れがある場合は、別の方法を取る必要があります。
その場合は、前項で紹介した税理士変更のタイミングに合わせて、円満に断ることができそうな理由を探しましょう。たとえば、「取引先から指定された税理士に変更することになった」という理由や、「親戚や家族が税理士になったので、お願いすることにした」という理由などが、よく使われる方便です。
【STEP4】重要書類の返却を依頼
次に、現在の税理士に重要書類の返却を依頼しましょう。重要書類とは、会社の設立や変更に関する書類や税務申告に関する書類など、ビジネスに必要な書類のことです。これらの書類は、現在の税理士が保管している場合があります。
重要書類とは、以下のようなものです。
- 請求書:税理士から発行されたサービス料や経費などの請求書
- 領収書:経費などの領収書
- 年末調整関係書類:年末調整の申告や計算に関する書類
- 決算書:会社の収益や費用、資産や負債などを示す書類
- 税務署への提出書類:法人税や消費税などの申告や納付に関する書類
- 定款:会社の設立や変更に関する基本的な規則を定めた書類
- 登記簿謄本:会社の設立や変更に関する事項を登記した公的な証明書
- データに関する書類:会計ソフトやクラウドサービスなどで作成されたデータやパスワードなどの情報を記した書類
これらの重要書類は、ビジネスに必要なものですから、新しい税理士に引き継げるように、返却してもらいましょう。返却してもらう方法は、郵送や電子化、受け取りなどがあります
重要書類の返却を依頼する際には、返却してもらう書類の種類や枚数を確認しましょう。返却してもらった後は、内容や状態のチェックも忘れずに行いましょう。返却してもらう期限についても契約終了日までに」や「一週間以内に」などと明確な期日を決めておく方がよい場合があります。
【STEP5】新しい税理士への引継ぎ
最後に、新しい税理士への引継ぎを行いましょう。引継ぎとは、現在の税理士から新しい税理士へ、ビジネスに関する情報やデータを渡すことです。これは、スムーズな業務移行やトラブル防止のために必要なことです。
新しい税理士への引継ぎ方法は、以下のようなものがあります。
- 現在の税理士と新しい税理士が直接会って引継ぎを行う方法:効率的で正確な引継ぎができますが、両者の関係やスケジュールによっては難しい場合もあります。
- 現在の税理士から自分に、自分から新しい税理士に引継ぎを行う方法:柔軟に引継ぎができますが、時間や手間がかかる場合や情報の伝達ミスが発生する場合もあります。
- 代理人や第三者が引継ぎを行う方法:中立的な立場から引継ぎができますが、費用や信頼性に問題がある場合もあります。
新しい税理士へ引継ぎする内容は、ビジネスの概要や目的、経理や会計の方法・ルール、税務申告の履歴や状況などです。これらの内容をわかりやすくまとめておきましょう。
税理士変更の断り方のポイント
税理士に限らず、何かを断ることは簡単なことではありません。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、現在の税理士に納得してもらいやすくなります。ここでは、税理士変更の断り方のポイントについて、以下の4つをご紹介していきます。
不満は述べず前向きに伝える
契約更新を断るときには、不満や批判は避けて、前向きに伝えることが大切です。不満や批判を伝えると、相手は反論や擁護をしたくなります。その結果、話がこじれたり、感情的になったりする可能性が高まります。
「前向きに伝える」とは、自分のビジネスやニーズに合った税理士を探すという目的を明確にすることです。たとえば、「業務内容や規模が変わったため、別の方にお願いしたいと考えています」や「取引先から指定された税理士に変更することになりました」などと説明するとよいでしょう。
このように伝えることで、相手は自分の責任ではないと感じやすくなります。また、自社の意思や事情を尊重してもらえる可能性も高まります。
感謝を伝える
契約更新を断るときには、感謝の気持ちを伝えることも重要です。感謝の気持ちを伝えることで、相手は自分の仕事や努力が認められたと感じやすくなります。また、自分も相手に対して敬意を示すことができます。
感謝を伝える方法のコツとして、感謝する内容を具体的に伝えるようにしましょう。たとえば、「おかげさまで無事に決算報告ができました」や「税務調査で問題がなかったのは〇〇さんのおかげです」などの言葉がふさわしいです。
解約の期日をはっきり指定する
契約更新を断るときには、解約の期日をはっきり指定することも必要です。そうすることで、相手は自分の業務の計画や予算を立てやすくなります。また、新しい税理士との契約や業務移行の準備をしやすいというメリットもあります。
解約の期日について契約書に示されている場合は、契約書に記載されている解約条件に従って解約の期日を指定できます。契約書に記載されていない場合や、相手の事情に配慮したい場合は、相談して解約の期日を決めましょう。
口頭で終わらせずメールや文書で伝える
契約更新を断るときには、口頭で終わらせずメールや文書で伝えることも大切です。口頭で終わらせると、相手や自分が聞き間違えたり、忘れてしまったり、お互いの認識がズレてしまう可能性があります。
口頭でやりとりした内容は、できる限りメールや文書で記録として保存しておきましょう。これは、後からトラブルが発生した場合に証拠となる可能性があるからです。「言った・言ってない」という揉め事に発展させないためにも、文書として形に残しておくことがポイントです。
税理士変更についてのお困り事なら、ぜひ私たち「小谷野税理士法人」にご相談ください。
【例文あり】税理士変更の挨拶文とは?
税理士を変更するときには、現在の税理士に契約解除の意思を伝える必要があります。ここでは、税理士の変更理由を明確にしない場合と理由を書く場合、郵送する場合に分けて挨拶文の例文を紹介していきます。
理由を明確にしない場合
税理士に契約更新を断るときには、必ずしも理由を明確にしなければならないということはありません。理由を明確にしない場合は、「弊社の都合で」や「諸般の事情で」など曖昧な表現を使うとよいでしょう。以下にテンプレート文例をご紹介します。
件名:今後のお取引につきまして
いつもお世話になっております。 株式会社◯◯の◯◯でございます。 この度、不本意ながら諸般の事情により、◯◯年◯月をもって月次顧問契約を解除させていただきたく存じます。長年のお力添え、誠にありがとうございます。 つきましては、お忙しい中恐縮ですが、契約終了日の◯◯年◯月◯日以降、御社に保管していただいております弊社書類をご返却いただけますようお願いいたします。ご返却をお願いしたい書類につきましては別紙にて一覧を作成いたしました。 契約終了まで残り◯カ月ではございますが、何卒よろしくお願いたします。 このメールをもって顧問契約解除通知書とさせていただきます。
今後、また機会がございましたら、何卒よろしくお願い申し上げます。 貴社のますますのご発展をお祈りしております。
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理由を書く場合
次に、税理士に契約更新を断る理由を書く場合のテンプレート文例をご紹介します。
件名:今後のお取引につきまして
いつもお世話になっております。 株式会社◯◯の◯◯でございます。
この度、不本意ながら諸般の事情により、◯◯年◯月をもって月次顧問契約を解除させていただきたく存じます。 理由といたしましては、取引先の株式会社◯◯様に顧問税理士事務所に変更してほしいというお申し出を受けたことによります。 長年のお力添え、誠にありがとうございます。 つきましては、お忙しい中恐縮ですが、契約終了日の◯◯年◯月◯日以降、御社に保管していただいております弊社書類をご返却いただけますようお願いいたします。ご返却をお願いしたい書類につきましては別紙にて一覧を作成いたしました。 契約終了まで残り◯カ月ではございますが、何卒よろしくお願いたします。 このメールをもって顧問契約解除通知書とさせていただきます。
今後、また機会がございましたら、何卒よろしくお願い申し上げます。 貴社のますますのご発展をお祈りしております。 |
この文章では、「取引先の株式会社◯◯様に顧問税理士事務所に変更してほしいというお申し出を受けた」という具体的な理由を伝えています。この場合、理由を伝えることで相手に自分の判断や責任ではないことを示すことができます。
郵送する場合
税理士に契約更新を断るときには、メールだけでなく、郵送で通知することもできます。以下に、郵送する場合のテンプレート文例をご紹介します。
◯◯事務所 税理士 ◯◯殿 顧問契約解除通知書 当社は、貴事務所と顧問契約を締結しておりますが、このたび弊社都合により、〇〇年〇月〇日をもちまして、顧問契約を解除いたしますので、ご通知申し上げます。 ◯◯年◯月◯日 東京都◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯ 株式会社◯◯◯◯ 代表取締役 印
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税理士に契約解除を断られたら?
税理士との契約解除は、事業主の権利です。しかし、税理士に契約解除を伝えたときに、断られてしまうこともあります。税理士に契約解除を断られたら、どうすればいいのでしょうか?
契約解除を断られる理由
税理士に契約解除を断られる理由は、以下のようなものが考えられます。
- 契約期間が残っている
- 契約内容に違反している
- 引き継ぎが困難な状況にある
- 税務調査や訴訟などの重要な案件が進行中である
- 税理士としてのプロ意識や信頼関係が傷つく
これらの理由は、税理士の立場からすれば、合理的なものかもしれません。しかし、事業主としては、税理士との関係に不満があり、別の税理士に変更したいという希望がある場合もあります。
契約解除を断られたときの対処法
税理士に契約解除を断られたときには、まず契約書を確認しましょう。契約書には、契約期間や契約解除の条件などが記載されています。契約書に違反していないことを確認した上で、契約解除の意思表示を行います。
次に、税理士に契約解除を断る理由を聞きましょう。税理士がどのような事情や考えを持っているのかを把握することで、円満な解決に近づける可能性があります。また、税理士が誤った認識や情報に基づいて判断している場合は、正しい事実や根拠を提示することも大切です。
理由を聞いた上で、交渉することもできます。たとえば、契約期間が残っている場合は、違約金を支払ってでも早期に解消したいという旨を伝えることができます。また、引き継ぎが困難な状況にある場合は、新しい税理士と協力してスムーズに引き継ぎができるように提案することも効果的です。交渉する際は、感謝の気持ちや配慮の言葉を忘れずに伝えましょう。
交渉しても税理士が応じてくれない場合は、第三者機関に相談することもできます。たとえば、日本税理士会連合会や各都道府県の税理士会には、紛争処理委員会という機関があります。ここでは、税理士とのトラブルに関する相談や調停を受け付けています。
また、裁判所に訴訟を起こすこともできますが、時間や費用がかかることや、関係が悪化することを考慮して、最後の手段として考えましょう。
参考:日本税理士会連合会
税理士変更にまつわるデメリットの噂は本当?
税理士変更を考えるときに、気になるのがデメリットです。ここでは、税理士変更にまつわるデメリットとしてよく聞かれる3つの噂について、その真偽を検証していきます。
【嘘】税務調査に入られる
税理士変更をすると、税務調査に入られやすくなるという噂があります。これは本当でしょうか?
答えは「嘘」です。税務調査は、税務署が行うものであり、税理士が関与するものではありません。税理士が契約解除を受け入れないために、故意に税務調査を仕掛けることはできませんし、そもそもそんなことをしたら、自分の信用や評判を失うことになります。
税理士変更と税務調査は直接的な関係はありませんので、安心してください。税務調査は、税務署が一定の基準で対象者を選定し行います。税理士を変更したからといって、特別に調査対象になることはありません。
では、なぜこのような噂が広まったのでしょうか?それは、偶然やタイミングの問題かもしれません。たとえば、税理士を変更した直後に、税務署から税務調査の通知が届いた場合、事業主はその原因を税理士変更に求めてしまうかもしれません。しかし、これは単なる偶然であり、因果関係はありません。
税務調査について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
税務調査とは?どこまで・何を調べる?流れや個人・法人の対応方法などについて詳しく解説
税務調査に税理士の立会は必要?どこまで調べる?税理士に任せるメリット・デメリットや費用相場について解説!
【嘘】会社の機密情報が表に出る
税理士変更をすると、会社の機密情報が表に出てしまうという噂もあります。これは本当でしょうか?
答えは「嘘」です。税理士は、顧問先の会社の経営や財務に関する情報を知っていますが、それらの情報を漏洩することはできません。税理士は、税理士法に基づいて、守秘義務を負っているからです。
税理士法第三十八条には、
「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする」引用:国税庁|税理士法違反行為
と明記されています。この守秘義務は、契約解除後も継続するものです。したがって、税理士が会社の機密情報を表に出すことは、法律違反になりますし、自分の信用や評判を失うことになるでしょう。
ただし、税理士変更の際には、旧税理士が保有する顧客の書類やデータを新しい税理士に引き継ぐ必要があります。 その際に、書類の紛失やデータの漏洩などの事故が起きないように注意することが必要です。
また、旧税理士との契約解除時には、秘密保持義務の期間や範囲などを明確にすることも大切です。つまり、税理士変更自体は機密情報の漏洩の原因にはなりませんが、書類やデータの引き継ぎや契約解除の際には、細心の注意を払う必要です。
出典:国税庁|税理士法違反行為
【本当】税理士を頻繁に変えるのはデメリットが多い
税理士変更によって、デメリットがあるという噂は、一部「本当」です。しかし、税理士変更そのものが悪いということではありません。「税理士を頻繁に変えること」デメリットが多いということです。
税理士を頻繁に変えることのデメリットは、以下のようなものが考えられます。
- 引き継ぎに時間や費用がかかる
- 新しい税理士との信頼関係やコミュニケーションが取りにくい
- 税務処理や会計処理に不統一や不整合が生じる
- 税務調査や訴訟などの重要な案件で対応力や経験が不足する
上記の デメリットを避けるために、税理士を変更する際には慎重に判断しましょう。また、新しい税理士との契約や業務移行の準備もしっかりと行いましょう。
税理士変更でトラブル回避したいなら新しい税理士にお任せするのも一つの手
税理士は、個人事業主や法人の経営者にとって、重要なパートナーです。税務処理や節税対策など、専門的な知識や経験を持った税理士に任せることで、事業の効率化や安定化につながります。
税理士の変更は、事業者のニーズや事業のステージに応じて行われることが多く、珍しい行為ではありません。税理士変更は事業主の権利ですが、税理士の立場や感情も尊重しながら、円満に解決できるように努めましょう。
しかし、税理士を変更する際に契約更新を断ることは簡単なことではありません。トラブルを回避し、自社の本来の業務をスムーズに行うためにも、新しい税理士にお任せするのも一つの手です。