「税理士を変更すると税務調査の対象になりやすい」「税理士を変更したことで税務署に密告された」といった噂をきいたことはありませんか?そこで、今回は顧問税理士を変更した場合と税務調査の関連性、税理士の変更するときの適切なタイミングについて解説します。税理士の変更を検討しているなら、ぜひ参考にしてください。
目次
税理士変更で税務調査は来ないって本当?
税理士を変更すると税務調査が来ないという噂、逆に、税理士変更で税務調査が来やすくなるという噂もありますが、どちらも事実ではありません。ここでは、税理士変更と税務調査の関連性について解説します。
税理士変更は税務調査の理由にはならない
税理士を変更したという理由で税務調査の対象とはなることはありません。後程詳しく説明しますが、税理士変更後に税務調査が来たケースでは、主に4つの理由が考えられます。
1つ目がタイミングです。2つ目が、税理士の変更により会計処理に大きな変更が生じた場合です。3つ目が、税務署に目を付けられている可能性です。そして、4つ目が年間を通して相談できる顧問税理士の不在です。これらが税務調査が来る主な理由であるため、税理士変更と税務調査の関連性は低いといえます。
税理士が税務署に密告するのは違法
税理士変更後に税務調査が来た場合、前任の税理士がなんらか税務調査が入らざるを得ない内容の密告を税務署に行った可能性を疑うかもしれません。しかし、その可能性は低いです。確かに、情報提供を基に、税務調査を実施するケースがあるため、前任税理士の密告により税務調査を受けることはあり得ます。
しかし、税理士が税務署に密告するのは違法です。税理士には、守秘義務があり顧客の情報を外部へ漏らすことは法律で禁じられています。顧問税理士を辞めても、会社の内部情報を外部に漏らしてはいけないのです。情報を漏らしたことが発覚すれば、守秘義務違反となり訴えられることがあります。そのため、税理士が大きなリスクを冒して税務署に密告する可能性は低いといえるでしょう。
脱税行為が発覚した場合は税理士の責任
もし、仮に税理士が帳簿上で違法行為に加担していたとしても、その事実が明らかになった場合は、税理士がその責任を負います。
税務調査で申告の誤りを指摘されると追徴課税の支払いを命じられ、脱税が発覚した場合は、重加算税の賦課、逮捕されることもあり得ます。税理士による脱税の指南は、税理士法に違反し税理士業務の停止や禁止といった非常に重い処分の対象となるのです。
税理士の変更を快く思わないからといって、税理士自らが処罰の対象となるようなことをするのは考えにくいでしょう。
税理士変更のタイミングで税務調査が来る理由とは?
税理士変更のタイミングで、税務調査が来るのは、主に4つの理由が考えられます。それぞれの理由について以下に詳しく解説します。
税務調査が入るタイミングだった
税理士の変更とほぼ同時期に税務調査が入った場合は、たまたま時期が重なっただけという可能性が高いです。税理士変更の手続き中の前後に税務調査が入ると、税理士変更が税務調査の理由になったと勘違いしがちです。
税務調査は、少なくとも過去3年~、最大で7年前まで遡って申告内容を調査します。そのため、会社設立直後は、税務調査が来ることはほとんどありません。会社設立後、数年経過し、これまで一度も税務調査が来ていなければ、近いうちに来る可能性が高いでしょう。
税務会計の処理方法を変えた
税務会計の処理方法変更は、税務調査の対象になりやすいです。税務調査は税務申告の不備をチェックするだけではありません。特例適用や会計処理などが適切であるかを確認する目的で実施されることもあります。
会計処理が変わっても合法であれば問題ありませんが、申告内容が大きく変わると確認検査の対象となり得ます。会計処理の変更を理由とする税務調査は、税理士の変更ではなく申告内容の変更を確認する調査です。そのため、税理士を変更していなくても、調査を受ける可能性があります。
たとえば、経費を大幅に増やしたり、勘定科目を変更したりすると、前年の申告内容と比較して、帳簿上の金額が大きく変動することがあるのです。申告内容に大きな変化があると、その理由を調べるために税務調査が入る可能性があります。
税務署に目をつけられている
短期間で何度も税務調査を受けている場合、税理士変更が理由ではなく、単に税務署に目をつけられている可能性が高いです。短期間に何度も税務署から調査を受けるのは、申告した内容に誤りや疑いがあるからです。
また、申告内容が適切であっても、税務調査を実施するケースもあります。しかし、それと税理士変更はつながっていないと考える方が正しいです。顧問税理士に申告を任せているのに頻繁に税務調査が入る企業こそ、顧問税理士の変更を検討する必要があるでしょう。
それまで顧問税理士がいない
確定申告書の作成や提出は毎年税理士に任せていても、年間を通して税務について相談できる顧問税理士がいないと、不適切な記帳や申告を疑われて税務調査の対象になりやすいです。たとえば、交際費や福利厚生費といった勘定科目は、支出の目的や状況を明確に判断できないケースが多くあります。
税務や経理の専門家である税理士なら、税務署からの指摘や質問に対して税法上の解釈を交え、会社側の立場に立って適切に対応してくれるでしょう。
また、税務調査で受けた指摘を認めてしまうと、次年度以降の税負担に影響が出ることもあります。税理士がいれば、税務署からの納得いかない指摘について、さまざまな角度から反証し、会社側に不利とならないように対応してくれます。
税務調査への税理士の立ち会いについて「税務調査に税理士の立会は必要?どこまで調べる?税理士に任せるメリット・デメリットや費用相場について解説!」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
顧問税理士の対応や不在でお悩みなら、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
顧問税理士の変更を検討した方がいいケース
今までお世話になっている顧問税理士ですが、場合によっては変更を検討した方がいいかもしれません。無理に契約を継続すると、事業で大きな支障が出ることもあるからです。ここでは、顧問税理士の変更を検討した方がよいケースについて解説します。
短期間に複数回税務調査を受けている
短期間に複数回の税務調査を受けている場合、顧問税理士の変更を検討しましょう。何度も税務調査に入るのは、申告内容に誤りが多いからです。
税理士は正しい申告をすることが重要な業務の一つです。顧問税理士に確定申告書の作成・提出などのサポートを依頼しているのであれば、税理士に不備があると判断できます。
節税効果に不満がある
できるだけ支払う税金を少なくするための節税効果を実感できないときも、税理士の変更を検討してみましょう。
会社の事業内容や状況に適した節税対策やアドバイスをすることで、会社にメリットをもたらすことも税理士の大切な仕事なのです。現在の節税対策に不満を感じるなら、一度別の税理士に相談してみましょう。
現在の顧問税理士の節税対策に不満があるなら、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。
税務調査を念頭にした税理士変更のタイミング
税理士を変更するなら、タイミングを見計らうことが大切です。ここでは、税理士変更に適したタイミングを解説します。
税務調査が入った直後
税務調査が終了し、そのフィードバックを受けた直後は税理士変更のベストタイミングです。税務調査では、申告内容をチェックされます。そのため、税務調査に関する相談や立ち会いは、書類作成を担当した顧問税理士が適任です。
税務調査が入りやすい時期は、会社の決算時期によって異なります。税務調査が決定しているなら、調査が完全に終わるまで顧問税理士を変更しない方がいいでしょう。
前年度の決算申告が終わった瞬間
法人税申告書の提出直後は、顧問税理士を変更するベストタイミングです。事業年度の終わりに確定申告があり、決算日の翌日から2ヵ月以内に法人税申告書を提出しなくてはいけません。
法人税申告書の提出直後は、当年度と次年度の税務業務の境目となるため、税理士変更による影響が少ないのです。法人税申告書の提出期限から逆算して、顧問税理士変更に向けて手続きを進めておくと、スムーズな移行を実現できるでしょう。
現在の顧問税理士との契約が満了する時期
現在の顧問税理士との契約が満了するタイミングは、契約にまつわるトラブルを防げるため、顧問税理士の変更に適した時期です。
また、税理士との顧問契約は、税務調査が入る時期や決算時期を念頭にして契約を結んでいる可能性が高く、顧問税理士変更による業務への影響が少ないです。
税務への支障を避けるためにも、現在の顧問税理士の契約満了日と、新しい顧問税理士の契約開始日を調整し、顧問税理士不在期間をつくらないようにしましょう。
税理士変更の手続きのポイント
税理士変更の手続きをスムーズに進めるためには、やるべきことをしっかりと把握することです。ここでは、手続きごとの詳細とポイントを解説します。
契約書を要確認
現在の顧問税理士と交わした契約書を見て、契約期間や解除条項を含めた契約内容を確認します。税理士の顧問契約は事業開始年度から決算日までの1年間が一般的です。しかし、1年以上の長期契約を結んでいる可能性や、解除申告をしなければ契約が自動更新される契約もあります。
また、契約書に定めた期間以外の契約解除は、違約金が発生するケースもあります。他にも、契約解除に際して税理士から書類やデータを返してもらうのに時間がかかることもあるのです。
契約解除にまつわるトラブルを回避するためにも、現在の顧問税理士との契約内容を確認したうえで、適切に手続きを進めましょう。
契約更新のお断りは口頭+文書
契約内容を確認し、現在の顧問税理士に対して口頭と文書で契約解除の旨を伝えます。現在の顧問税理士に対して不満があっても、強く非難したり文句を言ったりするのは控えましょう。
顧問税理士との関係が悪化することで、預けていたデータや書類の回収が円滑にできなくなるかもしれないからです。相手に不快感を与えないように、大人の対応を心がけましょう。
決算に必要な書類は返してもらう
次の顧問税理士に引き継ぐために、現在の顧問税理士に預けている書類やデータを確実に回収しましょう。回収するべき主な書類を、以下のチェックリストに紹介します。
- 決算書
- 総勘定元帳
- 登記簿謄本
- 定款
- 償却資産申告書
- 年末調整関係書類
- 給与明細など給与管理書類
- 法定調書
- 試算表
- 仕訳帳
- 請求書や領収書
- 税務相談に関する資料やデータ全般
新しい顧問税理士に会社の財務や会計の状況を把握してもらうために、少なくとも過去3期分のデータが必要です。直近の分はもちろん、過去のデータまで忘れずに返却してもらいましょう。
税務調査も念頭に新しい税理士を見つけておく
確定申告手続き、税務調査に適切に対応するためには、新しい顧問税理士に切り替えるタイミングを計ることです。適切な時期に新しい顧問税理士に依頼できるように、税理士を見つけておきましょう。
顧問税理士変更のベストタイミングは「現在の顧問税理士との契約が満了する時期」「法人税申告書を提出した直後」「税務調査が完了した直後」です。しかし、これは一般論です。会社の状況や新しい顧問税理士のスケジュールなどに応じ、適切な時期を見極めましょう。
税務調査のタイミングとは?
税務調査が行われる一般的なタイミングやサイクルを知ることは、税務調査への適切な対応に役立つでしょう。実は税務調査が行われる時期に決まりはありません。
しかし、税務署の繁忙期は税務調査の実施が困難となるため、税務調査が行われることは少ないです。確定申告の時期である2月~3月は、税務署の繁忙期で税理士の協力も得にくいことから、税務調査が行われる可能性は低いでしょう。毎年7月にある税務署の人事異動の直前である5月、6月も新たな調査に取り掛かりづらい時期です。
ここでは、税務調査の時期やサイクルについて、個人と法人それぞれのケースに分けて紹介します。
法人の税務調査のタイミング
法人に税務調査が入るタイミングは、一般的に3~10年に一度ですが、調査のサイクルは法人によって異なります。税務調査では、過去3年分の帳簿や帳票類を精査し、申告内容が適切であるかを確認します。
一般的に、所得があり法人税を納税している法人が、税務調査の対象となりやすいと言われています。一方で、赤字の法人でも消費税の納税義務があるため、定期的に税務調査が行われることもあります。
個人の税務調査のタイミング
個人事業主に税務調査が入るのは5年~10年に一度で、法人よりも税務調査の間隔が空くことが多いです。税務調査が行われた場合は、数年分の申告書や帳簿の内容をチェックされます。
個人事業主の税務調査の頻度は高くありませんが、売上高や業種、所得税の納付額によって頻度が変わることがあります。
税務調査のタイミングについて、「税務調査は個人では金額がいくらから・どこまで調べられる?いつ来る可能性があるのかなどを解説!」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
税務調査を見据えて顧問税理士を変更しよう
この記事では、税理士変更と税務調査の関連について解説しました。税理士の変更が、税務調査の直接的な原因になる可能性は低いです。税理士変更と税務調査のタイミングが重なった、会計処理の方法が大きく変わったことが、税務調査実施の主な原因として考えられます。
また、税理士の変更を検討しているなら、適切なタイミングで変更することで、業務への支障を避けられます。この記事を参考に、税務調査や確定申告を見据えて税理士の変更を検討してみましょう。新たな税理士をお探しなら、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。