現在一人社長として会社を経営している方や、これから一人社長として事業を行おうと考えている方のなかには、どのようにすれば節税できるのかと疑問を持つ人もいるでしょう。本記事では、一人社長におすすめの税金対策や経費の範囲について解説しています。また、一人社長が節税する際に注意すべき点についても併せて解説しています。一人社長の節税について理解を深めたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
目次
一人社長の節税のポイントは?
一人社長の節税のポイントは、大きく分けて6つあります。以下では、6つのポイントについて詳しく解説していきます。
個人と法人で所得を分散する
一人社長の節税として有効な方法に、個人と法人で所得を分散させるという方法があります。1年間の所得に対して課せられる所得税は、所得が高くなれば税率も高くなる累進課税制度が採用されています。
そのため、個人と法人で所得を分散させることでそれぞれの所得額を下げることができ、結果として所得税額も抑えられるのです。
給与所得控除制度を利用する
給与所得控除制度とは1年間の給与所得に応じた金額を控除できる制度を指します。この給与所得控除制度は、企業から給与を貰っている給与所得者を対象とした制度で、最大195万円を控除できます。具体的な給与所得に応じた控除額は以下の通りです。
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)給与所得控除額
1,625,000円まで
550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで
収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで
収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで
収入金額×20%+440,000円
8,500,001円以上
1,950,000円(上限)
例えば、給与等の収入金額が320万円の場合、控除額は以下のように計算します。
320万円×30%+8万円=104万円 |
この場合、給与所得額が104万円も抑えられるので自ずと所得税も節税できます。
欠損金は長期繰越で対処する
法人の所得に対して課せられる法人税では、赤字を10年間繰り越すことが認められています。例えば、今期が赤字であったとしても翌期が黒字であれば、翌期の利益を今期の赤字と相殺できるのです。
法人税の税額は課税所得額により決まるため、赤字を繰り越すことで黒字の年の課税所得額を抑えられ、結果として節税に繋がります。
出張した日の日当を経費として扱う
通常、出張をしたとしても経費として扱えるのは交通費や宿泊費のみですが、法人の一人社長の場合は出張旅費規程で出張日当として定めた金額を経費として扱えます。予め、出張旅費規程で出張した場合の宿泊費を2万円に設定しておけば、実際の宿泊費が2万円以下であったとしても2万円分を経費として扱えるのです。
所得は収入から経費を差し引いた金額を指すため、経費として扱える金額が増えると所得も抑えられ、結果として節税になります。
家賃を社宅として経費にする
法人には役員社宅制度という制度があります。役員社宅制度とは会社名義で借りた住宅を役員が社宅として利用できる制度です。この制度を利用すると、家賃の一部を会社の経費として扱えるようになります。
役員社宅制度を利用すると、会社の経費として扱えるお金の範囲が広がるため、結果として節税に繋がると言われています。
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一人社長が節税する際に注意すべきこと
一人社長の節税のポイントとして、個人と法人で所得を分散させることや家賃を社宅として経費にするといった節税対策を挙げました。
では、このような方法を用いて節税を行う場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。以下では、一人社長が節税する際に注意すべきことを紹介していきます。
節税=手元にお金が残るわけではない事を理解する
節税と聞くと、手元により多くのお金が残るというイメージをする人は少なくありませんが、実際はそうでないケースもあるという点に注意しましょう。
もちろん節税した分、徴収される税金は少なくなります。しかし、法人として経営を行っていくと様々な費用が発生します。法人の経営にかかる費用として代表的なものには、法人住民税や社会保険料などが挙げられます。元々個人事業主として事業を行っており、これから一人社長になるかを検討しているのであれば、法人を設立する際の費用なども併せて考えることが大切です。
租税回避行為に頼りすぎない
現在の法の抜け穴を利用して、課税される税を回避することを租税回避行為と呼びます。租税回避行為に頼って会社を運営していると、法が改正された際に首が回らなくなる可能性があるため注意が必要です。
租税回避行為に頼った節税方法は会社のためにならないため、適切な納税と適切な節税を心がけましょう。
国が作った節税の制度の利用を検討する
安定して節税を行いたい場合は、国が作った制度を利用すると良いでしょう。国が作った節税制度の代表的なものには経営セーフティ共済や小規模企業共済、中小企業経営強化税制などが挙げられます。
これらの制度を利用するには既定の条件を満たす必要があるため、利用できる制度がないか確認しておきましょう。
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一人社長にできる節税や注意点について理解を深めよう
一人社長として経営を行っていく場合、給与所得控除制度を利用したり、欠損金を長期繰越で対処したりすることで節税に繋げることが可能です。また、役員社宅制度を利用したり、出張旅費規程を策定して経費として扱える範囲を拡げることで節税する方法もあります。
しかし、法人の経営には法人住民税や社会保険料といった支出をはじめ、設立の際の登録免許税といった初期費用も必要となります。これから一人社長になることを検討している場合は、節税できる金額と初期費用などの両面から検討することが重要です。
また、既に一人社長として事業を行っている場合は、なるべく租税回避行為に頼った節税は避けましょう。そして、国が作った節税できる制度の利用の検討もしてみて下さい。本記事を参考に、一人社長ができる節税のポイントや注意点について理解を深めましょう。