TBS「サンデーモーニング」のコメンテーターとしておなじみの寺島実郎氏が学長を務める多摩大学の
「現代世界解析講座XⅣ」をインターネット聴講しています。
5月13日収録分は、慶應大学の礒﨑准教授による「北朝鮮とどう向き合うか」でした。
教授からは、冒頭、「北朝鮮とどう向き合うか、に関する結論を述べるのではなく、皆さんが考える上
でのヒントを提示したい」という前置きでスタートしましたが、ここでは、講義を受けた印象から
結論を記載していくこととします。
Q1.北朝鮮は崩壊する? ⇒ A1.これは日本の希望的観測であり、実際には北朝鮮はそう簡単
には崩壊しない。
建国して73年、また1991年のソ連崩壊時には「早晩崩壊するだろう」と言われましたが、それ以降、
30年続いている(耐えてきている)歴史的事実が物語っています。
貧しい国であることは間違いありませんが、憲法に「金日成・金正日主義を国家の指導的指針とする
(第3条)」「武装力の使命は金正恩を擁護することにある(第59条)」と定めるほど、ある意味、社会
統制が強固な国です。因みに、国民は12年の義務教育の中で徹底的に憲法思想を叩き込まれます。
Q2.経済制裁は効いている? ⇒ A2.国民経済が厳しいのは間違いないが、経済制裁は効いている
とは言えない。これも、希望的観測として”効いていてほしい”と思っているだけ。
本当に効いているのなら「拉致」にも少なからず進展があるはず。
日本と北朝鮮は敵対関係にあり、日本からすると「北朝鮮は世界の中で孤立している」と思いがちです
が、そもそも北朝鮮は世界160か国と国交があり(主要国で国交がないのは日・米・韓・仏程度)、
北朝鮮は孤立しているわけではありません。
インドがミサイルを発射しても(インドと日本は友好国なので)日本で騒がれることがないのと同様に、
北朝鮮がミサイルを発射しても世界はあまり関心を持ちません。米国も、米国を射程内とするICBMや
核の“拡散”については自国の安全保障の脅威として反応しますが、短・中距離ミサイルの場合は放置する
傾向にあります。
経済制裁によって、日朝貿易は2010年から輸出入ともにゼロとなっていますが、中国・韓国の貿易が
それを補って余りあるほど伸びています。
Q3.北朝鮮は非核化する?⇒A3.非核化しない。
1993-94米朝枠組み合意→2003-07 6か国協議→2018米朝首脳共同声明、と非核化合意自体はなされて
きましたが、実行段階になるとお互い譲ることはなく、結局は破綻してきました。
37歳と若い金正恩が支配する北朝鮮は、長期戦を覚悟しており、相手が動かないなら、その間、核開発を
継続するという姿勢です。
Q4.拉致問題は解決できる? ⇒ A4.今のままでは難しい。日本政府として何かしら譲歩して
動かすしかないのではないか。
2002年に小泉政権が日朝首脳会談で5人の拉致被害者を奪還して以降、何も進展していないのが現実
です。当時は、日朝国交正常化と経済支援の約束と引き換えに拉致被害者奪還に成功したということを
忘れてはいけません。