~ナイル川の河岸で人喰いワニが子供を人質にとりました。
母親に対して「自分がこれから何をするか言い当てたら子供を食わずに助けてやろう。
だが、もしも不正解ならこの子を喰う」と言ました。
これに対し母親が「あなたはその子を喰うでしょう」と言いました~
自分自身が設定したルールによって自分自身の行動に矛盾が発生してしまう状況を指して”自己言及のパラドックス”と言います。
不思議の国のアリスの著者で数学者のルイス・キャロルが発表したものが有名で、人喰いワニのジレンマともいわれています。
さて、冒頭の一文。
・ワニが子供を喰う場合、母親はワニがしようとすることを言い当てたので食べることはできません。
・ワニが子供を喰わない場合、母親の予想が外れたのでワニは子供を食べることになります。
しかし、食べると結果的に母親の予想は正しかった事になるため、ここで矛盾にぶつかってしまいます。
ワニが何をしようとも自己矛盾を起こしてしまい、子供を食べる事も、食べない事もできなくなってしまいました。
短いのでワニのセリフ部分だけ原文も載せておきますね。
“Well,” said the Crocodile, “if you say truly what I shall do I will restore it: if not, I will devour it.”
「devour」という単語がいいですよね。食い荒らすとか貪り食うとかって意味です。
こんな汚い言葉を使うわりに真面目なワニですよね。約束なんてはじめからないに等しいのに。
というか、食べるも食べないもできないのであればそもそもの賭けがご破算になっているだけだと思いますよね。
結局子供も助かっていないというか・・・。
自己言及のパラドックスそのものはたくさんあります。
そのほとんどがだいたい屁理屈みたいなものです。
貼り紙禁止の壁に”貼り紙禁止”と書かれた貼り紙をしてもよいか、とか。
なんというか、報酬や罰則がその目的と重複してしまってはいけない、と表現すればいいんですかね。
自分で言ったことで勝手に自分で苦しむのは楽じゃないですよね。
ではまた。