多摩大学が寺島実郎監修リレー講座として開設する「現代世界解析講座ⅩⅣ」をインターネット録画で
聴講しています。5月20日収録分は、多摩大学経営情報学部の水盛涼一准教授による「変わりゆく中国
内政~政策・企業・教育」でした。
一帯一路、米中摩擦、香港・台湾への介入、ウイグル人権問題、軍事増強・・・等々、覇権主義を隠す
ことなく打ち出し、世界も戦々恐々としている習近平政権下の中国を、「学」「産」「官」の観点から
解説する講義でした。
1.学~試験
改革開放の鄧小平時代は、多様な検定教科書を教材として、試験も地方独自の出題を許容していました。
対して習近平は、倫理・国語・歴史について、国定教科書による統一審査体制とし、愛国(共産党)思想と
核心(中核の者~習近平のこと)意識を教育します。
中国には、日本のセンター試験に相当する「高考」があって、1,000万人超(日本の10倍!)が受験
しますが、学生は合格するためにはその通りに勉強せざるを得ないという環境に置かれます。
2.産~企業と党との関係
2005年、会社法にあたる「公司法」が改正され、会社の中に共産党支部を設立し、党の活動を展開する
こととされました。習近平はこれを強力に推進した結果、2016年末現在で、国有企業14.7万社の
93.2%、民間企業273万社の67.9%、外資系企業10.6万社の70%で党支部が組織されている、という
ことです。
3.官~人事と標語(スローガン)
人事では、賛同者を昇進・抜擢し、敵対者を左遷・罷免することによって、中央集権体制を確立します。
また、江沢民時代には、「集団指導体制で共有し会議で決定せよ。」とのスローガンで運営していました
が、習近平は、地域主義が横行し地方の政策が中央精神から離れている、として、例えば軍については、
軍事委員会11人の集団指導体制から軍事委員会主席1人が仕切る形に変えました。軍人に対する話も
「講和」ではなく「訓令」と呼ぶようになりました。
こうして、「習近平=核心」という体制が出来上がり、コロナ禍からのいち早い脱却、2020年唯一の
GDPプラス成長、火星到着という技術革新、といった成果を実現しているのも事実です。
一方で、逆に、14億人を1人が統治している危うさも感じざるを得ません。