スモールM&Aは、中小規模の企業や事業を対象としたM&Aを指します。個人でも手が届く資産運用方法として近年注目が高まっています。本記事では、スモールM&Aの基本やメリット、さらに具体的な資金調達方法について詳しく解説します。
目次
スモールM&Aとは?

スモールM&Aは、比較的小規模な企業買収です。明確な定義はありませんが、一般的には、売買金額が1億円以下のM&AをスモールM&Aと呼びます。
スモールM&Aの対象業種は多岐に渡る
スモールM&Aでは、一般的なM&Aよりも比較的少ない資金で事業買収を行います。既存の顧客基盤や販売チャネルを活用できる点が魅力です。
例えば、次のような業種の中小企業・小規模事業が対象となるケースが多い傾向にあります。
- サービス業
- 製造業
- 飲食業
- 小売業
- 医療・介護業
- IT・ソフトウェア業
- 教育・スクール事業
特に、既存の市場での競争力が高い地域に密着したビジネスや、ニッチな市場で特化したサービスを提供している企業は、買収対象に適していると言えるでしょう。またIT市場の拡大に伴い、ECサイトの売買などもスモールM&Aとして扱われます。
スモールM&Aは単に既存のビジネスを引き継ぐだけでなく、運営や成長戦略を通じて新たな価値を創出できる可能性を秘めています。さらに、企業のブランド力や競争力の向上だけでなく、地域経済の活性化にも寄与することが期待されています。
メリットの多い買収スタイルとして知られている
一つに、スモールM&Aは買収金額が比較的小さいため、個人投資家や起業家でも取り組みやすいという点が利点としてあげられます。特に起業や新規事業を行いたい場合、スモールM&Aを通じて既存のビジネスを引き継ぐことで、迅速に市場へ参入することが可能です。
また、買収先の企業が持つ顧客や資産をそのまま引き継げるため、ゼロから事業を立ち上げるよりもリスクをおさえられます。例えば、飲食店や小売店などでは、店舗や設備をそのまま活用できるケースが多く、初期投資をおさえながら早期に収益化を目指せる点がメリットと言えるでしょう。
さらにスモールM&Aは、自分のビジョンや価値観に合わせて事業展開できるため、経営者としての経験やスキルアップにもつながります。事業拡大だけでなく、経営者個人の成長手段としても魅力的な方法です。
スモールM&Aの流れ
スモールM&Aを進める際は、ターゲットとするビジネスの選定や市場調査が欠かせません。本章では、スモールM&Aの具体的な進め方を解説します。
ターゲット企業の選定
まずは、買収対象となる企業を選定します。経営者として考えている事業戦略や市場動向を踏まえて、目標に適した候補企業をピックアップしましょう。
企業を選ぶ際のポイントは次の2つです。
- 必要な経営資源(人材・設備・顧客基盤など)が備わっているか
- 買収後に自社事業とのシナジー効果が期待できるか
初めてM&Aを行う場合は、この段階でM&A仲介業者やM&Aの専門家のサポートを活用すると、効率的に候補を選定できます。
企業評価の実施
買収候補の企業が決まったら、その企業の財務状況や事業内容を詳しく調査し、企業評価を行います。
買収価格を決める際のベースにもなるため、売上高や利益率、負債額、資産内容、顧客構成などを分析し、多角的な観点から企業価値を判断することが大切です。
価格交渉と契約準備
企業評価を終えたら、次は実際に買収条件や価格について交渉を行う段階です。交渉がスムーズに進むよう、事前に譲れない条件や妥協点を整理しておくと良いでしょう。
交渉がまとまり次第、法的リスクや財務リスクを確認するため、デューデリジェンス(買収対象企業への詳細な調査)を実施します。トラブルを防止するために、法務や財務の専門家に依頼することも検討しましょう。
調査結果を踏まえ、必要に応じて契約条件を調整します。その後最終的な契約書を作成し、双方の合意のもとで契約を締結します。
事業承継と移行期間の管理
契約締結後は、買収した事業をスムーズに引き継ぐための準備を行います。まず、事業の運営方針や成長戦略を具体化し、引き継ぎに必要な手続きやスケジュールを明確にします。
特に重要なのは、従業員や取引先との関係維持です。買収後の事業運営を安定させるためにも、積極的にコミュニケーションをとりながら、従業員の意見を聞くことも意識しましょう。システムや経理、業務フローなどの引き継ぎ作業も丁寧に進めることで、トラブル発生のリスクをおさえられます。
取得後の経営戦略の再構築
事業の引き継ぎが完了した後は、事業成長を目指して、資金計画や経営戦略の見直しを行います。まず、買収企業の強みを活かしながら、市場環境や競合分析を行い、収益化や事業拡大のための具体的な戦略を立てます。
また、必要に応じて、追加資金の調達や人材採用、組織体制の見直しなども行いましょう。
M&Aの資金調達方法とは?融資を活用した実践的アプローチ

スモールM&Aとはいえ、買収にはそれなりの金額が必要となります。そのため、資金調達を成功させられるかが、一つの大きなポイントとなってくるでしょう。
資金調達方法は多岐に渡りますが、第一に融資を選択肢とするケースが多いのではないでしょうか。融資を行っている金融機関はさまざまなため、各融資方法の特徴を理解し、ニーズに合った方法を選ぶことが大切です。
本章では、具体的な融資手段や活用法について詳しく解説します。
日本政策金融公庫を利用した創業融資
日本政策金融公庫は、政府が運営する国庫を財源とした金融機関です。新規事業や事業拡大を支援する融資制度を提供しています。特に2024年4月から開始された「新規開業資金」は、無担保かつ連帯保証人不要で利用できる場合もあります。事業計画や融資額によって担保や保証人が求められるケースもありますが、起業家や中小企業にとって活用しやすい融資の一つです。
また、少額資金の調達も可能で、金利も一般的な金融機関よりも低く設定されています。リスクをおさえながら資金調達できるため、スモールM&Aを行う際の資金調達方法として検討価値が高いと言えるでしょう。
申請時には、具体的な事業計画書などの提出が必要なため、計画的な準備が必要です。
信用保証協会付き融資の活用法
信用保証協会は、中小企業や個人事業主が融資を受けやすくなるようにサポートする公的な支援機関です。金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証を行ってくれます。
保証料を支払う必要がありますが、信用保証協会が債務不履行リスクを保証してくれるため、資金調達の難易度が下がる点がメリットです。資金調達方法が限られている個人事業主やベンチャー企業、中小企業にとっては有力な選択肢となるでしょう。
地方銀行や信用金庫を活用する利点
地方銀行や信用金庫は、地域に根差した金融機関であり、地元の経済事業や事業環境に精通しています。そのため、地域密着型の事業を展開したい場合や、既存ビジネスを引き継ぐM&Aでは特に頼りになる存在です。
地域活性化を目的とした特別な融資プログラムや柔軟な融資制度を用意していることが多く、個人の事情に応じて融資条件を相談できる点がメリットです。
また、金融機関の担当者と直接顔を合わせてコミュニケーションを取れるため関係構築がしやすく、継続的なアドバイスやサポートを受けることも期待できます。
個人の資金で始めやすい!M&Aの魅力とは
スモールM&Aは、比較的少額から始められる資産運用方法として、特に近年注目が高まっています。自己資金だけで買収できるケースもあり、個人で取引を行うことも可能です。
低価格での取引がしやすい
自己資金を利用したM&Aは、個人事業や小規模ビジネスを対象としたケースが多く見られます。特に、地元の飲食店や美容室などの小規模店・サービス業の案件は、比較的手が届きやすい価格帯での取引が可能です。
このようなスモールM&Aは、事業の基盤や顧客をすでに確立しているため、ゼロからビジネスを立ち上げるよりもリスクをおさえられる点が魅力です。また、自身のスキルや経験、ネットワークを活かしながら事業価値を高めることで、より高い収益も期待できるでしょう。
買収後の事業を成功させるには、事前に買収対象企業の状況や市場状況をしっかり確認しておくことがポイントです。特に次のような点をチェックしておきましょう。
- 事業の財務状況や負債の有無
- 既存の顧客基盤や収益モデルの安定性
- 地域市場や競合他社の動向
- 取引先との関係性
将来的なリスクや改善点を把握しておくことで、より適切な事業戦略を立てられます。
融資との併用で選択肢を広げやすい
自己資金だけでなく、融資を活用することで、さらにM&Aの選択肢を広げられます。例えば、前述した日本政策金融公庫や地方銀行、信用金庫など、個人や中小企業が活用しやすい融資元もあります。多角的に資金調達方法を検討することで、より調達の成功率も高められるでしょう。
自己資金と融資を組み合わせることで、より大きな案件にも挑戦できるようになります。また、融資を利用することで流動資金を確保できるため、買収後の運転資金の確保にもつながります。
スモールM&Aの実践支援:マッチングサイトの活用について
スモールM&Aを成功させるには、希望に合う企業を見つけられるかがポイントです。しかし、数ある企業の中から条件に合う企業を見極めるのは簡単ではありません。
そこで活用したいのが、売却希望者と買収希望者をつなぐマッチングサイトです。
スモールM&Aにおけるマッチングサイトとは
マッチングサイトとは、M&Aの買収希望者と売却希望者をつなぐオンラインプラットフォームです。市場に出ている売却案件の中から、希望に合う企業を効率的に探せます。
活用する際は、まず自身のビジネスプランや買収先企業に求めるニーズを明確にしましょう。業種や地域、予算を決め、それに合う案件を扱ったサイトを選ぶとよりスムーズなマッチングが期待できます。
また、サイトごとの利用者の口コミや評判を参考に、サイトの信頼性やサポート体制もチェックしておくのがおすすめです。例えば、M&A・事業承継支援プラットフォーム「BATONZ(バトンズ)」は、小規模事業の案件も多く取り扱っています。28,000以上の豊富な案件数を誇り、初めて利用する人へのサポート体制も充実している人気のサイトです。また、「茨城スモールM&Aマッチングサイト」のように、商工会議所が運営しているものもあります。地域に根差した企業・事業のM&Aを検討している場合は、チェックしてみてはいかがでしょうか。
マッチングの失敗を防ぐための注意点
マッチングを成功させるには、案件情報を慎重にチェックすることが大切です。リスクを把握しておくことで、将来的なトラブルを予防したり対策を講じたりできます。例えば、次のような案件はリスクを抱えている可能性があるため、注意が必要です。
- 決算書の開示が不十分
- 未払いの債務や訴訟歴がある
- 売却理由が不明瞭
- 売上の大半が特定の取引先や人物に集中している
必要に応じて専門家に相談しながらデューデリジェンスを行いましょう。
また、売却希望者の過去の取引実績や評価を確認し、信頼できる相手かどうかを判断することも必要です。取引相手と適切なコミュニケーションを図り、相手の姿勢や誠実さを見極めましょう。
スモールM&Aのマッチング成功のポイント
スモールM&Aでマッチングを成功させるためには、次のようなポイントをおさえておきましょう。
- 自身の希望するビジネスモデルや成長戦略を明確にしておく
- 売却希望者と信頼関係を築く
- 専門家のサポートを活用する
まずは、自分が目指すビジネスモデルや事業計画を具体化します。「なぜこの事業を買収したいのか」「どのように価値を高めるのか」を整理しておくことで、企業選びの基準を明確にできます。
売却希望者との良好な関係構築も重要です。信頼関係があると、交渉をスムーズに進めることができ、より良い条件で契約が結べる可能性が高まります。
また、M&Aには法的な手続きが伴うため、M&Aのアドバイザーや弁護士、税理士などのプロにサポートしてもらうのも有用です。トラブルを回避できるだけでなく、MA&全体に関するアドバイスも期待できます。
スモールM&Aの計画や実行時に押さえるべき注意点

最後に、スモールM&Aを成功させるために、おさえておきたい注意点を解説します。計画から買収までの全プロセスで意識しておくと良いでしょう。
適切な資金計画を立てる
スモールM&Aでは、綿密に資金計画を立てることが重要です。資金の流れを把握し、どの段階でどれだけの資金が必要となるかを明確にしておくことで、予期せぬ資金不足を防げます。
買収後の事業運営にも影響するため、資金計画は慎重に立案しましょう。金融機関からの融資や助成金を活用するなど、資金調達の幅を広げることでリスク低減にもつながります。
コミュニケーション不足・情報不足は解消しておく
スモールM&Aでよく見られる失敗には、コミュニケーション不足や相手の情報不足による判断ミスなどがあげられます。
特に、売却希望者との信頼関係が築けていない場合、後々トラブルの元になることがあります。特に、事業運営の引き継ぎ時に、買収先の企業が持つノウハウや人脈をうまく活かせないケースが多い傾向にあるようです。
交渉段階から密なコミュニケーションを心がけ、契約締結後も引き継ぎ期間を十分に確保するなど、サポートを受けられる体制を整えましょう。
また、契約前にはデューデリジェンスを実施した方が良いでしょう。事前に財務状況や法的リスクを把握することで、トラブルを回避できる可能性が高まります。
適宜返済スケジュールを見直す
M&Aに必要な資金を融資で調達した場合は、返済スケジュールの管理が大切です。M&Aでは、買収後に予期せぬ費用が発生することもあるため、柔軟に返済計画を見直せる体制を整えておきましょう。
例えば、毎月キャッシュフローをチェックし、資金繰りの状態を把握することが重要です。もし、返済が難しいと予想される場合は、早めに金融機関に相談し、リスケジュールや返済条件について話し合ってみましょう。問題が深刻化する前に対策することで、金融機関からの信用低下を防げます。
スモールM&Aと資金調達を成功させよう
スモールM&Aを成功させるには、目標の明確化と計画的な資金調達が重要です。
ターゲット企業の選定においては、収益性だけでなく、自身のビジネスとのシナジー効果も踏まえた判断が求められます。買収プロセスでは、信頼関係の構築や適切な資金運用、返済計画の見直しを行い、財務的な安定を確保することも重要です。
複数の視点から戦略を立案し、段階的にリスクを軽減することで、スムーズな事業運営を実現できるでしょう。
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