中小企業や個人事業主にとって「資金繰りがうまくいかない」という悩みは、経営を続ける上で避けて通れない課題の1つです。困った際に頼りになるのが、専門家や行政機関などの相談窓口です。それぞれ特徴があるため、経営の状況や目的に合った窓口を選びましょう。この記事では、資金繰りに問題を抱えがちな企業の特徴や、主な相談先窓口をご紹介します。
目次
資金繰りが課題を抱えがちな企業の特徴
資金繰りに悩む企業には、共通の課題を抱える傾向があります。以下のような状態に当てはまる場合は、早めに改善策を検討しましょう。
自転車操業に陥っている
毎月の支払いがギリギリで、別の借入で返済をまかなうような状態は「自転車操業」と呼ばれます。つまり、借金を返済するために他の金融機関から再度借入を行うことが常態化されているような状況です。
この状態を放置すると利息の負担が増え、ますます資金繰りが苦しくなります。次第に事業の安定性が失われ、深刻な状況に陥るリスクもあるので注意しなければなりません。早めに専門家に相談し、根本的な改善策を講じましょう。
関連記事:会社の借金はいくらまで?平均額と融資を通りやすくするポイント
現金残高がすぐに分からない
現金残高をすぐに把握できないのは、資金の流れが不透明であるということです。このような状態では、突然の支払いに対応できなかったり、支払いに関する適切な判断が難しくなったりするリスクがあります。
現金管理システムを見直し、日々の残高を正確に把握できる仕組みを整えることで、計画的な資金管理ができるようになるでしょう。
売掛金が多いが、回収までの期間が長い
売掛金が多い企業では、実際に現金が入ってくるまでに時間がかかることで、資金繰りに影響がでやすくなります。特に、入金が遅れがちな取引先がある場合には注意が必要です。
こうした状況を改善するには、売掛金の管理方法を見直し、入金予定日をしっかり把握することが大切です。取引先ごとにルールや基準を明確にし、入金のタイミングを可視化することで、キャッシュフローの遅れを防げます。
また、取引条件を定期的に見直したり、入金状況を月ごとにチェックする体制を整えたりすることで、資金繰りの安定につながります。結果として、経営への悪影響も最小限に抑えられるでしょう。
売上はあるが、資金が不足していると感じる
帳簿上では売上があるのに、手元の現金が不足しているというケースも少なくありません。商品やサービスを提供してから実際に入金があるまでに時間があり、その間に生じる支払いのタイミングで資金が枯渇してしまうのです。
こうした状況を防ぐには、資金繰りを見直し、収入と支出のバランスを正しく把握することが必要です。さらに、支払いのタイミング調整や短期的な資金調達など、具体的な対策を立てておくことで、急な資金不足にも落ち着いて対応できるようになるでしょう。
大型プロジェクトが進行中である
大型のプロジェクトを進めていると、先に大きな費用がかかるケースもありキャッシュフローが不安定になります。例えば、材料費や人件費の前払いなどが必要になり、思わぬタイミングで資金が足りなくなることもあるかもしれません。
プロジェクト全体の流れを見ながら、いつ・いくらお金が必要になるかを事前にしっかりと計画しておくことが大切です。不安がある場合には、早めに専門家に相談し、資金計画をチェックしてもらうと安心してプロジェクトを進められるでしょう。
自社の資金繰りをチェックしよう
資金繰りの状態を判断するためには、現状の把握が何よりも大切です。また、資金繰りの状況を知っておくことは、将来的な資金不足や無駄な出費を防ぐための第一歩とも言えるでしょう。
キャッシュフローを確認する方法や、安定した経営ができる企業の特徴などを紹介します。
キャッシュフローを確認する方法
キャッシュフローを把握するには「キャッシュフロー計算書」を作成すると良いでしょう。キャッシュフロー計算書とは、ある期間のあいだに「会社のお金がどこから入って、どこに使われたのか」を記録した会計書類です。
期首から期末までの現金の動きをまとめることで、最終的にどれだけの現金が残っているかが分かります。この計算書では、お金の動きを以下の3つに分けて把握します。
- 営業活動(本業の収入・支出)
- 投資活動(固定資産の取得・有価証券の購入など)
- 財務活動(借入金の調達・社債の発行など)
計算書を作成すると、資金に余裕がある時期や不足する時期を見極められるようになります。
安定したキャッシュフローを維持する企業の特徴
キャッシュフローが安定している企業には、次のような特徴があります。
- リピーターや固定客が多く、毎月安定した売上がある
- 売掛金の回収がスムーズである
- 取引先との契約や支払い条件を適切に管理している
このような企業は、急な支払いにも対応しやすく、資金繰りに困ることが少ないと言えます。その結果、企業の成長に必要な投資を行う余裕も生まれるのです。
投資を行う場合の注意点
新しいプロジェクトや設備など、会社を成長させるためには投資も必要でしょう。ただし、安易な投資や準備不足の状態でのスタートは、資金繰りが苦しくなるリスクもあります。
- いつ、いくら必要になるのか
- 投資後、どれくらいでリターンが見込めるのか
といった点をしっかりとシミュレーションし、営業戦略やマーケティングの計画もセットで考えておくことが大切です。投資から最大限の成果を出すためにも、計画段階から効果的な対策を取り入れておきましょう。
資金繰りが不安定な企業の状態とは?
資金繰りがうまくいっていない場合は、キャッシュフローの悪化が顕著になります。その結果、以下のような状態が見られます。
- 支出が収入を上回っている
- 売掛金の回収が遅れている
- 短期的な借入に依存している
こうした状況が続くことで、資金繰りはさらに苦しくなっていくでしょう。さらに、仕入れ先や取引先への支払いが遅れてしまうなど、信用を失うリスクも高まります。
資金繰りの問題を解決するためには、現状を見直すことが重要です。早めに専門家に相談することで、的確な対策を見つけやすくなるでしょう。
関連記事:融資と借入の違いとは?メリット・デメリットや審査内容も解説
中小企業・個人事業主が利用できる資金繰りの相談先6選
資金繰りに困ったときには、信頼できる相談窓口を見つけることが重要です。さまざまな窓口がありますが、それぞれに専門分野や支援メニューがあるため、自社の状況や目的にあった相談先を選びましょう。
税理士
税理士は、税金に関する知識と経験を持つ専門家で、事業運営を円滑に進めるうえで心強い存在です。資金繰りの面でも、税理士から適切なアドバイスを受けることで、税金の負担を
減らしつつ手元のお金が減るのを最小限に抑えられるでしょう。
また、金融機関から融資を受けるときに必要な書類の準備や、申請手続きのサポートも行っています。スポットの利用も可能ですが、定期的に税理士と相談を行うことで、企業の財務や税金に関する課題を把握でき、早めに対策できるようになります。
税理士の専門的な知識と第三者としての客観的な視点は、事業を安定して成長させていくために欠かせない存在となるでしょう。
関連記事:個人事業主に税理士は必要?費用相場や相性でのおすすめな探し方
専門コンサルタント
資金繰りや経営について悩んだ際には、専門コンサルタントからのサポートを受けるのもおすすめです。コンサルタントは、資金管理のノウハウや市場動向に詳しく、それぞれの状況に応じた具体的な改善策を提案してくれます。
特に、資金計画を立てたいときや、資金調達の戦略を練る際には、コンサルタントの専門的な知識が大きな助けとなるでしょう。また、コンサルタントによる分析やアドバイスを通じて、自社の強みや課題をより深く理解でき、今後の方向性も明確になります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、中小企業や個人事業主を対象に、手厚く柔軟な融資の支援を行っている公的機関です。特に、低い金利の融資や条件が優遇されるなどの制度が整っており、資金面で悩みを抱える事業者にとって心強い存在と言えます。
また、申請手続きが簡単にできるよう工夫されているため、多忙な経営者でもスムーズに申し込みができる点も魅力です。
日本政策金融公庫の融資を活用することで、必要な資金をスピーディーに確保しやすくなり、事業の土台作りや新規事業の立ち上げ、運転資金の確保など、さまざまなニーズに対応できるでしょう。
また、公的な機関であることから信頼性が高く、多くの経営者に選ばれているのも特徴です。
商工会議所・商工会
商工会議所や商工会は、中小企業や個人事業主が抱えるさまざまな課題に対応する総合的な相談窓口です。資金調達はもちろん、セミナーの開催や専門家とのマッチング支援など多岐に渡るサービスを提供しています。
地域に密着した機関のため、地元の市場情報やビジネスの動きに詳しいのも魅力。地域の特性を踏まえた実践的なアドバイスが受けられます。資金繰りの改善においても、信頼できるパートナーとなるでしょう。
参考:日本商工会議所
信用保証協会
信用保証協会は、中小企業や個人事業主が融資を受けやすくするための「信用保証」を提供する公的機関です。信用保証協会の保証があることで、万が一返済が滞った場合の一部を協会が保証するため、金融機関は安心して貸し出せるようになります。
その結果、融資の審査が通りやすくなり、資金調達のハードルも下がります。特に創業間もない事業者や、信用実績が少ない中小企業にとっては、非常に有効な支援手段と言えるでしょう。
また、保証業務だけでなく、中小企業や個人事業主を支援する幅広いサポートも受けられます。経営や資金繰りに役立つプログラムやセミナーも開催されているため、資金調達に関する知識を深められるのもメリットです。
地方自治体が運営する中小企業支援センター
地方自治体が設置する中小企業支援センターは、資金繰りや経営の課題に対する総合的なサポートを提供する窓口です。各地域の実情に即したアドバイスが受けられるのが特徴で、資金繰りをはじめとした経営の悩みについて、気軽に相談できます。
また、地域のネットワークを活用したビジネスマッチングやイベントなども開催されており、販路拡大やビジネスパートナー探しにもつながります。費用負担も少なく、初めて相談する方にとっても利用しやすい支援機関と言えるでしょう。
金融機関とのコミュニケーションポイント
資金繰りを安定させる上で、金融機関との信頼関係は欠かせないものです。日頃から経営状況を適切に共有し、信頼関係を築くことで、いざというときに融資の相談がしやすくなります。
金融機関からは最新の融資プログラムやキャンペーン情報が提供されることも多いため、自社に合った資金調達のチャンスを逃さないためにも、継続してコミュニケーションを取りましょう。
特に、財務諸表やキャッシュフローなどの数値を正確に把握し、整理された状態で提示することが、信頼を高める上での大きなポイントです。
参考記事:設備資金・運転資金の返済期間はどれくらい?返済が難しいときの対処法も解説
専門家に相談することで得られるメリット
資金繰りの課題は、多くの中小企業や個人事業主にとって避けて通れない課題となるものです。
豊富な知識と第三者視点を持つ税理士などの専門家に相談することが、経営を安定、成長させるために有効な手段だと言えるでしょう。専門家へ相談することで得られるメリットを紹介します。
適切な解決策を導き出してくれる
専門家は、財務状況やキャッシュフローなどのデータを分析し、企業が抱える問題の本質を見抜くことができます。経営者自身では気づきにくい課題も客観的にアプローチできるため、より効果的な改善策を見出せるのです。
例えば、資金の流れに無駄がある場合や資金繰り表の運用が不十分な場合など、実践的なアドバイスを通じて状況を大きく改善できるでしょう。
他のサポート機関の紹介を受けられる
専門家のネットワークを通じて、融資のアドバイスを受けられるだけでなく、他の支援機関や助成金情報を知る機会も増えるでしょう。信頼できる専門家から紹介を受けられることも、大きなメリットの1つです。
企業の信用力向上につながる
資金繰りが安定することで、金融機関や取引先からの信用が高まり、ビジネスのチャンスが広がります。専門家の支援を受けると財務の透明性を高められるため、長期的な事業成長にもつながるといえるでしょう。
事業成長のチャンスにつながる
専門家のアドバイスを受けることで、どのタイミングで融資を受けるべきかや、最適な条件での交渉方法について戦略を立てられるようになります。
その結果として資金繰りが安定してくると、融資を運転資金や返済ではなく、事業拡大のための手段として活用できるようになります。例えば、新規事業や設備投資が必要な場合にも、資金不足でチャンスを逃すことなく、事業展開を進めていけるのです。
経営者の負担を軽減できる
忙しい日々の中で、資金繰りや財務管理、対策の検討を一人で進めるのは難しいでしょう。しかし、資金繰りや財務管理にかかる時間や労力を専門家に任せることで、経営者は本来の業務に専念しやすくなるのです。
同時に、専門家は業務の改善や課題解決の対策についても的確なアドバイスを提供してくれるため、効率的な業務運営もできるようになるでしょう。専門家のサポートは、資金繰りのみならず、経営全般に良い影響をもたらすと言えるのです。
関連記事:税理士の探し方がわからない経営者必見!いい税理士の探し方と見極めポイント!
まとめ
資金繰りは、中小企業や個人事業主にとって、事業の継続と成長を左右する重要な課題です。
しかし、一人で抱えこむ必要はありません。税理士や専門コンサルタント、その他の窓口といったさまざまな専門家や支援機関が、それぞれの立場から実践的なサポートを提供しています。
自社の状況や目的に応じて最適な相談先を選ぶことで、資金繰りの改善はもちろん、事業の安定や成長にもつながります。信頼できるパートナーを見つけ、積極的に活用していきましょう。