寄付金と協賛金は、税務処理や仕訳の方法が異なるため、正しく理解しておくことが重要です。寄付金は見返りを求めない支出で、所得控除や税額控除の対象になる場合があります。一方、協賛金は広告効果などの見返りがあると課税対象になることもあります。本記事では、両者の違いや仕訳の注意点をわかりやすく解説します。
目次
寄付金と協賛金とは?両者の違いを解説
以下では寄付金と協賛金の概要と違いについてまとめました。
項目 | 寄付金 | 協賛金 |
定義 | 組織・団体に無償で提供する金銭や資産の拠出 | 事業やイベント支援を目的に提供される金銭 |
契約の有無 | 一般的には契約を伴わず、一方的に行われる | 宣伝効果などの対価を期待することが多い |
対象 | 主に非営利団体など | 主にイベント主催者・取引先・地域団体など |
主な目的 | 社会貢献・支援 | 宣伝・取引関係の構築・社会貢献 |
備考 | 贈与(合意が必要) | 対価性があるため経済活動に近い |
寄付金と協賛金の大きな違いは「見返りの有無」にあります。寄付金は、見返りを求めずに行われる善意の支出であり、協賛金は広告や宣伝効果などの見返りを期待して支出されます。
見返りの有無の違いは、税務上の処理にも大きく影響します。寄付金は一定の条件を満たすと所得控除や税額控除の対象です。しかし協賛金は広告宣伝費や交際費として損金算入されるのが一般的です。
協賛金が課税対象となるかどうかの判断基準
協賛金が課税対象となるかどうかは「対価性があるかどうか」が重要な判断基準です。消費税は「対価を得て行われる取引」に対して課税されるため、協賛金に何らかの見返りが伴う場合は課税対象となります。
一方で見返りのない純粋な寄付であれば、課税対象外となります。
例えば協賛の見返りとして企業ロゴがパンフレットに掲載される場合は課税対象です。また慈善団体などに対する純粋な協賛金は見返りがないため、寄付金として処理します。協賛金は対価性があるものは課税、ないものは不課税と覚えておくと良いでしょう。
寄付金控除の流れ
以下に個人が「寄付金控除を受けるまでの流れ」を表形式でまとめました。
ステップ | 内容 | 補足事項 |
①寄付をする | 共感できる団体に寄付を行う 寄付先が控除対象かどうか事前に確認 | 控除対象外の団体に寄付しても税制優遇は受けられない |
②領収証明書を受け取る | 寄付先から領収証明書を受領 確定申告に必要 | 再発行不可のケースがあるため、申告まで大切に保管 |
③確定申告を行う | 確定申告で寄付金控除を申請 E-taxを使えばオンラインで申告可能 | 個人:2月16日~3月15日が通常期間。還付なら5年以内は申請可能 |
④納税額の控除を受ける | 還付金は指定口座に振込 住民税は翌年の納付額から控除 | 年末調整では寄付金控除は反映されない点に注意 |
寄付金控除を受けるには、控除対象となる団体に寄付し、領収証明書を受け取った上で、確定申告を行う必要があります。申告後、還付金は指定口座に振り込まれ、住民税も翌年の納付額から控除されます。領収証明書は再発行不可の可能性があるため、大切に保管しておきましょう。
協賛金もインボイス対応が必要な場合がある
協賛金が課税取引に該当する場合、インボイスの対応が必要です。2023年に導入されたインボイス制度では、協賛金に対しても対価性の有無によって処理方法が分かれます。
広告掲載などの見返りがある場合は「課税取引」となり、適格請求書発行事業者からインボイスを受け取らなくてはなりません。
対して見返りがない協賛金は不課税扱いとなるため、インボイスの発行も不要です。ただし、実務上は課税・不課税の判断が難しいケースも多く存在します。判断に迷う場合は、税理士など専門家への相談を行い、正確な処理を心がけましょう。
寄付金や協賛金を仕訳するコツ
寄付金や協賛金の仕訳には判断が多く伴い、ミスの原因にもなりやすいです。以下では、正確な処理を行うための2つのコツを解説します。
交際費との違いを正しく判断する
寄付金と交際費は「見返りの有無」で明確に区別する必要があります。交際費は、将来の取引や関係維持を目的として行う支出であり、見返りが期待されるものです。一方、寄付金は、見返りを求めない純粋な支出を指します。
例えば取引先のイベントへの協賛金は交際費となりますが、災害見舞金など相手に利益を求めない支出は寄付金として処理します。仕訳を誤ると税務調査で指摘される可能性があるため、判断基準を社内で共有しておきましょう。
広告宣伝費と混同しないようにする
協賛金の経理処理では、広告宣伝費との線引きに注意が必要です。広告宣伝費とは、自社の製品・サービスの認知度向上を目的とした支出です。主にパンフレットへのロゴ掲載など、具体的な宣伝効果が見込める場合に該当します。
これに対して、見返りのない地域団体やNPOへの支援は寄付金として扱われます。支出の目的や効果を事前に確認・記録しておけば、仕訳ミスや税務上のトラブルを防げるでしょう。
寄付金の種類によって損金算入の限度額が異なる
法人が寄付金を損金算入することで法人税の節税効果が得られます。しかし、寄付金の種類によって損金算入できる金額に制限があるため、事前に対象となる寄付の種類と算入可能額を確認しましょう。
特に、企業版ふるさと納税の場合は、市区町村への手続きも必要となるため注意が必要です。
フローチャートやチェックリストを活用する
協賛金は支出目的や取引先の性質によって勘定科目や消費税区分が異なります。判断する人によって変わるものにしてしまうと、同じ内容でも仕訳がバラつき、会計・税務のミスにつながるおそれがあります。
判断基準を統一するためには、フローチャートやチェックリストを整備し、取引ごとにその手順をたどって判断するのが効果的です。また、具体的なケースをまとめた事例集を用意しておくのもおすすめです。
会計ソフトの仕訳辞書を設定する
多くの会計ソフトには、特定の取引ごとに勘定科目や消費税コードを自動で呼び出せる仕訳辞書機能があります。
協賛金のパターン別に、あらかじめ仕訳テンプレートを登録しておくと便利です。フローチャートやチェックリストの判断結果に応じてテンプレートを選ぶと、入力ミスを大幅に減らせます。
より確実に寄付金や協賛金を仕訳する方法
寄付金や協賛金の仕訳は、勘定科目や消費税区分の判断が難しく、処理を誤ると税務調査で否認されるリスクもあります。社内で判断が分かれやすい取引だからこそ、税理士など専門家のアドバイスを受けることが大切です。
税理士に相談することで、実態に即した正確な仕訳ができるようになります。さらに税務上有利な処理方法の検討や社内ルールの整備についてもサポートを受けられるのでおすすめです。経理担当者だけで判断せず、まずはぜひ一度、税理士へご相談ください。
まとめ
寄付金と協賛金は、見返りの有無によって税務上の取り扱いが大きく異なります。誤った仕訳は税務リスクにつながるため、支出の目的や内容を的確に把握し、適切な処理を行わなくてはいけません。
特にインボイス制度対応や損金算入の判断は実務で迷いやすいため、チェックリストや会計ソフトの仕訳辞書の活用が効果的です。経理処理に不安がある場合は、税理士に相談し、制度に即した正確な対応を行いましょう。