法人経理の年間スケジュールを把握していますか? 経理業務は日頃の数字の処理にとどまらず、経営全体の管理や、健全な会社運営に繋がる重要な役割を担っています。年度始めから年度末までの期間には、決算や税務申告、税金の納付など重要な業務が目白押し。スケジュールを把握し、業務をうまくコントロールしましょう。
目次
経理業務の基本的な流れ
経理業務は、なんと言っても日々の取引の記帳から始まります。売上の管理、仕入れ費用の計上、経費の精算といった日常的な業務こそ、企業の財務健全性と法人としての信頼性を支える基盤です。
毎月の締め処理では、取引の集計や請求書の発行を行い、月次報告書を作成。そして、決算整理や財務諸表の作成を通じて法人の経営状態を把握します。
これらは、次年度の戦略を策定するための大切な資料と言えます。これら月次業務と決算業務を円滑に連携させ、正確で効率的な財務報告を行いましょう。
また、税金の納付や申告にも適切に対応しましょう。税務調査に備えた資料整理や、関係書類の保管も重要です。経理部門と総務部門が連携して流れを確立すると、経理業務が安定するとともに、法人全体の業務効率や組織体制の強化に繋がります。
【決算期別】年度ごとに必要な経理業務
決算期(決算月)、つまり年度の最終月の経理業務は法人運営においてとても重要な時期と言えます。年度終わりに重要な作業が集中するので、やるべきことを的確に把握し、漏れやミスのないよう業務を進めましょう。
3月決算の会社の場合
3月決算の会社にとって、3月は新年度を迎える準備とともに、重要な業務が目白押しな時期です。
決算整理仕訳や財務諸表の作成、そして法人税の確定申告といった重要な会計業務を間違いなく進める必要があります。従業員の給与支払報告に関する書類の提出もお忘れなく。
また、決算業務が一段落つく4月には、年度締め作業が発生します。この際、未処理取引の整理とともに、既存データの確認が求められます。
会計処理の際には誤りがないよう注意しましょう。なお、3月決算の会社では、確定申告に向けた準備を早めに整えると、のちの手続きがスムーズに進むだけでなく、作業負担の軽減にも繋がります。
6月決算の会社の場合
6月決算の会社は、株主総会の準備として、昨年度の財務諸表や業績報告書など、各種書類の作成と見直しが求められます。
利益剰余金の適切な処理や、法人税・消費税をはじめとする各種税金の納付手続きを確実に進めるために、Excelなどを活用して精密なデータ管理を心がけましょう。
6月決算の場合、固定資産税や法人住民税の納付も重要なタスクです。従業員が9人以下の法人では、特例措置に基づき源泉所得税を半年分、一括して納付する場合がありますので、スケジュールをしっかり確認するようにしましょう。
9月決算の会社の場合
9月に決算を迎える法人にとって、決算期は業績を振り返り、次の戦略を立てるための重要なタイミングです。決算業務と並行して、これまでの業績を分析し、経費や収支のバランスを見直しましょう。
分析や調査を通して、次年度以降の経営方針や事業の方向性を決めていきます。正確なデータ管理を徹底したうえで、将来を見据えたプランを立案しましょう。
12月決算の会社の場合
12月決算の法人では、12月は年度末に向けた決算業務によって多忙を極める時期と言えます。売上の確定、在庫の評価、未払金の整理といった多岐にわたる業務が発生。また、役員報酬や従業員の賞与についても適切な対応が求められます。
こうした一連の業務を多忙な年末にスムーズに進行するには、適切な段取りが求められます。経理部門と総務部門が連携し、効率的な流れを確立できれば、経営基盤の強化にも繋がるでしょう。
月別に行う法人経理の業務
月ごとの業務を確実に行えているかどうかが、経理業務の年度全体の進行に大きな影響を与えます。各月の業務内容をしっかりと把握し、法人経理全体の質を向上させ、組織の円滑な運営に数字の面から貢献していきましょう。
4月の経理の業務内容
4月は多くの法人で新年度が始まる重要な月。当然、多くの経理業務が集中します。決算整理仕訳では、未処理の取引を整理し、新しい年度に向けた準備を行いましょう。
特に、減価償却費の調整や勘定科目の整理などの作業は、財務状況を正確に把握するうえで重要な業務と言えます。
また、4月には従業員に関する書類提出の業務が発生。例えば、従業員の転勤や退職があった場合、「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」を市町村に提出する必要があります。これは住民税の特別徴収に影響するので、迅速かつ正確な対応をしましょう。
参考:総務省|地方税分野の主な申告手続等における様式【税目別】
6月の経理の業務内容
6月は各種税金の納付が行われる時期です。特に、4月決算の企業では、法人税や消費税の納付が集中するため、スケジュールの確認をしっかり行いましょう。書類の不備がないよう、総務部門との連携も重要です。
また、株主総会の準備も、経理の重要な役割のひとつです。昨年度の業績を基に財務諸表を作成し、株主に向けた報告資料を整えます。
株主とのコミュニケーションがスムーズに進むよう、わかりやすく整理された資料の作成を心がけましょう。税の納付業務とも重なるため、厳密なスケジュール管理が求められます。
参考:総務省|固定資産税
9月の経理の業務内容
9月は多くの法人にとって中間決算にあたる重要な月。年度末や年度始めに次いで、業務が増加します。業績の確認と前半期の収支見直しを行い、中間決算時に必要なデータや資料を漏れなく整理しましょう。
12月の経理の業務内容
12月は、12月決算の企業はもちろん、3月決算の企業にとっても、年度末への準備に向けて忙しくなる時期。売上の確定や在庫評価、未払金の整理などの業務に加え、役員賞与や従業員給与の計算も行う必要があります。
さらに、来年度の業務計画や予算の策定を進めるために各部署との調整が求められるほか、年末調整業務も発生。従業員の所得税や控除額は正確に計算しましょう。
関連記事:従業員に源泉徴収票はいつ渡す?作成方法や発行のタイミングは?
経理業務スケジュールを効率化するためのポイント
年間スケジュールをしっかり把握し、部門全体で効果的な管理を行うようにすると、経理業務の効率化が実現できます。経理担当者の業務負担を軽減することで、法人運営の根幹を支える重要な業務の精度を高めていきましょう。
スケジュール管理のためのツールを活用する
スケジュール管理のためのツールを効果的に使用すると、業務の効率化が実現。プロジェクト管理アプリやカレンダーアプリは、個々の業務がいつ行われるべきかを明確にし、スケジュールを管理しやすくしてくれるでしょう。
Excelを使ったスケジュール作成も根強い人気です。柔軟なフォーマットやカスタマイズが可能な点が支持され、今でも多くの現場で活用されています。まだ使っていない組織では、活用を検討してみてもいいでしょう。
社内体制の整備と見直しをする
経理業務の効率化を図るには、社内体制の見直しが必要です。経理部門だけでなく、総務や他の関連部門とも連携を図り、コミュニケーションを円滑にしていきましょう。
部門間の情報の流れがスムーズになると、業務の重複や抜け漏れの防止に繋がります。また、研修の実施により、従業員のスキル向上を図るのも効果的でしょう。
自動化で業務効率を向上する
自動化できる業務は、どんどん自動化していきましょう。例えば、帳簿記入や仕訳作業などのルーティン業務を自動化すると、時間と労力の大幅な削減が実現。経理担当者が単純作業から解放され、より戦略的で付加価値の高い業務に集中できる環境が整います。
関連記事:期末在庫を増やすと税金が減る?計算方法や消費税の扱いも解説!
まとめ
法人の運営において、重要な役割を果たしている経理業務。その年間スケジュールを把握することは、業務を円滑に進めるための基盤となります。各決算期や月ごとの業務をしっかり理解し、何をいつ行うべきかを明確にしましょう。
さらに、年間スケジュールをしっかりと整備しておくと、業務の優先順位が明確になり、効率的に業務を行うための計画が立てやすくなります。適切な時期に必要な業務を遂行することで、法人全体の財務状況をより正確に把握できるようになるとも言えるでしょう。