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インボイスで家賃収入が減る?不動産賃貸業が受ける影響とは

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インボイスで家賃収入が減る?不動産賃貸業が受ける影響とは

2023年から始まった「インボイス」制度。これは売り手が買い手に対して正確な適性税率や消費税等を伝えるもので、適格請求書発行事業者として登録されればインボイスを発行することが可能です。これは一般的に個人事業主や小規模事業者に関係する制度という認識の方も多いでしょう。しかし、実は所有する不動産を賃貸として貸し出し、家賃収入を得ている「賃貸業」の方にも影響があります。

ここでは、賃貸不動産を営む法人向けのインボイスによる影響について見ていきましょう。

物件が「住宅」か「事務所」かがポイント!

インボイス制度によって、自分が所有する物件の家賃収入に消費税がかかるようになるのか?と不安な方も多いでしょう。これに関しては、まず「住宅」として使用されているか、「事務所や店舗」として使用されているかで異なります。

住宅・社宅は非課税、事務所・店舗は課税

賃貸業における物件の種類は、大きく分けると「住宅」と「事業用店舗」に分かれることはご存じかと思います。インボイス制度が開始しても、「住宅」やそれに伴う敷金や礼金、共益費、管理費、駐車場料金は変わらず消費税がかかりませんので、賃貸アパートやマンション、戸建て等を貸し出している方はあまり影響を受けないと考えて良いでしょう。

非課税

  • 賃貸マンション
  • 賃貸アパート
  • 戸建て住宅の賃貸
  • 社宅・寮
  • 貸し部屋
  • 住宅の賃貸に伴う敷金・礼金・共益費・管理費
  • 家賃に含まれる駐車場料金

課税

  • 賃貸期間1ヵ月未満の賃貸住宅
  • リゾートマンション
  • ウィークリーマンション
  • 旅館
  • ホテル
  • 貸別荘
  • 民泊
  • 家賃とは別途徴収している駐車場料金・施設利用料

ただし、賃貸住宅の中でも「貸付期間が1ヵ月未満」の場合は課税対象となります。また、アパートやマンションの共用スペースの利用料や、駐車場料金が家賃に含まれていないケースでも消費税が必要となるため注意が必要です。

参考:国税庁「住宅の貸付け」

リゾート・ウィークリーマンションにも課税される

気を付けておきたいのが、所有している物件が住宅の体裁を取っていても、係る施設の貸付けに該当するウィークリーマンションやマンスリーマンション、リゾートマンションは課税される点です。

この場合、賃貸期間が1ヵ月以上であっても課税対象となるため、物件を所有するオーナーは適格請求書発行事業者の登録を検討するのがおすすめだと言えるでしょう。とはいえ、物件の分類に関しては地域を管轄する自治体や、運営会社の判断によるところもあります。

例えば、リゾートマンションやマンスリーマンションでも、長期的な契約が前提であれば「住宅」として扱われる可能性もあるのです。まずは物件がある自治体に確認をしてみましょう。

関連記事:投資マンションの売却でかかる税金と確定申告の方法を解説

事務所・店舗のオーナーは注意!インボイスが与える影響

賃貸と持ち家のイメージ

このように事務所や店舗、ホテルとして物件を貸し出しているオーナーの場合、所有する不動産は課税対象となるため、インボイスの影響を受けやすいと言えます。

では、具体的にどのような変化が生じるのか、対策も踏まえて以下より見ていきましょう。

借主が他の物件を選んでしまうリスクがある

適格請求書発行事業者として登録するかどうかは任意となりますが、オーナーが適格請求書を発行できないと、借主との間に溝が生まれる恐れもあります。なぜかといえば、借りている物件の所有者がインボイス登録をしていないと、借主が消費税の仕入税額控除を受けられなくなるからです。

よって、税負担の増加を避けるため、借主が別の物件を検討してしまうかもしれません。こういったリスクを予防するには、オーナーが適格請求書発行事業者となる、もしくは賃料の値下げを考えるといった対策を講じる必要がでてくるでしょう。

課税業者ならではの事務作業が増える

仮にインボイス制度を利用し適格請求書発行事業者になった場合、今度は確定申告に向けた事務作業が増える、という問題が出てきます。具体的には適格請求書の発行や帳簿の記帳、消費税の申告などです。

従来は免税事業者であれば省略できた部分ですから、一気に業務に奪われる時間がかさむことになります。特に多くの物件を所有するオーナー様によっては、かなりの負担と感じるでしょう。コスト削減のために自力で知識やノウハウを身に着ける方法もありますが、状況に応じて税理士をはじめとする専門家を頼ることも検討してみてください。

関連記事:【税理士監修】消費税の確定申告とは?やり方や計算方法、インボイス制度との関係

関連記事:帳簿の付け方の基本を徹底解説!正しい納税と経理の効率化をサポート

「益税」がなくなる

益税」とは、不動産賃貸業においてはオーナーが借主から預かった消費税を納税せず、結果的に事業者の利益となるものを言います。違法や不正ではなく、あくまでも控除の範囲内で合法的に得られた利益のことです。

しかし、インボイス制度に基づき適格請求書発行事業者(課税事業者)になると、このような消費税も必ず計上し、申告しなければなりません。

収益が1,000万円以下でも消費税が発生する

インボイス制度が開始する以前は、通常は基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば「免税事業者」と見なされ、消費税の申告が免除されていました。

しかし、適格請求書発行事業者として登録されると、売上を問わず消費税の申告や納付が発生します。また、前述した通り益税もなくなるため、金銭的な負担が大きくなる可能性があります。

安定した経営を維持する意味でも、インボイス登録を行う際には一度税理士からアドバイスを受けるのがおすすめです。

関連記事:インボイスで消費税の計算が変わる!端数処理や計算方法について

住宅の賃貸オーナーはインボイスに登録しなくて良い?

インボイスと海外取引のイメージ

住宅に関しては、前述したように非課税となるため、賃貸アパートやマンション、戸建て貸しなどのオーナーはインボイスの影響が低いと言えます。では、本当に適格請求書発行事業者になる必要はないのでしょうか?

家賃収入のみの場合、インボイスの影響はほぼない

まず、所有している物件が住宅のみである場合には、インボイスの影響はほぼないと言っても良いでしょう。家賃収入は非課税のため、収益の中で消費税がかかる部分が存在しないからです。

仮に所有物件を「社宅」として法人に貸し出しているケースであっても、用途が住居であれば収入は非課税となります。

関連記事:消費税がない不課税の領収書の書き方とインボイス対応の記載ポイント

関連記事:【税理士監修】個人事業主の消費税の扱いは?インボイス制度の免税業者や免除されているケースなど

駐車場料金や共用施設利用料は課税対象となる!

とはいえ、住居オーナーであっても収入が課税対象になるパターンもあります。それは「アパートやマンションの一部をテナント(店舗や事務所)として貸し出している」場合や、「共用施設や駐車場の支払いが家賃と別になっている」場合です。

インボイス登録は任意ではあるものの、所有している物件がこのような条件に該当する方は、取引先や入居者とも相談し、適格請求書発行事業者になる手続きを検討しても良いかもしれません。

インボイスに登録したい!その後の取引はどうなる?

ここまでの流れで、インボイス発行がお勧めされるのは基本的に「基準期間の課税売上高が1,000万円超の事業者」や「物件を事務所や店舗、ホテルとして貸し出している賃貸業者」、「住居の中にテナントが存在したり、別途施設料や駐車場料金を受け取っている賃貸業者」だとお伝えしました。

では、実際にインボイスに登録したい!と考えた場合、どのような流れで進められるのでしょうか?

インボイス登録の流れ

適格請求書発行事業者としてインボイスを交付するためには、納税地を所轄する税務署長に登録申請を行う必要があります。書面でも登録可能ですが、パソコンやスマートフォンからの申請にも対応しているため、お急ぎの方はそちらの方が便利です。

  1. マイナンバーカード、および利用者識別番号(e-Tax)を用意する
  2. 登録申請データを作成・送信する
  3. 登録通知データを確認する

参考:国税庁「申請手続き」

基本的には、上記の3ステップで完了できます。

もし書面で申請したい場合は、国税庁のWebサイトから申請書をダウンロードし、必要事項に記入して送付するといった流れです。不安な方は直接税務署で相談をしてみましょう。

参考:D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁

関連記事:期の途中からインボイス登録できる?請求書や仕訳の注意点も解説

登録後は毎月請求書の発行は不要!

インボイスに登録すると、適格請求書を発行することができるようになります。ただし、これは借主に毎月送付する必要はありません。契約書に貸主の登録番号や適格請求書の要件の一部が記載されていれば、取引に関する書類とともに保存しておくことで借主は仕入税額控除の恩恵を受けることが可能です。

支払い方法

必要な書類

口座振替

通帳+適格請求書の要件の一部が記載された契約書

口座振込

振込金受取書+適格請求書の要件の一部が記載された契約書

上記のように、家賃の支払い方法が口座振替か口座振込かによって必要なものが変わってきますので、その点はしっかり押さえておきましょう。

参考:国税庁「家賃を口座振替・口座振込により支払う場合の仕入税額控除の適用要件」

既に契約中の場合は、別途通知を行おう

インボイスが開始される前、あるいは登録前から契約を行っている借主との賃貸借契約書には、貸主の登録番号や適用税率、消費税額などが記載されていません。と言っても、新たに賃貸契約をやり直す必要はなく貸主からインボイス発行に必要な要件を記したメールや書面を借主に送ることで、借主は仕入税額控除の対象となります。

ただし、借主は以前の契約書とインボイスについて通知された内容を併せて保管しておかなくてはいけません。送付の際にはその旨を併せて伝えおき、情報を共有しておきましょう。

まとめ

不動産賃貸業は副業として行う方も多いため、インボイス登録に関しては悩まれることも少なくないと思います。しかし、今回解説した通り特に店舗や事務所、ホテルなど事業用の物件を取り扱って家賃収入を得ている場合には、適格請求書発行事業者と認められた方が借主ばなれのリスクを予防することが可能です。

とはいえ、その分手続きの手間がかかったり、事務作業の時間が増えたりといったデメリットも存在しますので、売上とも照らし合わせながら慎重に考えるべきでしょう。

もし知識に不安がある、作業負担によっては経営に響くかもしれない…といった理由でインボイス登録を迷っている方は、業務委託も視野に入れ、一度税理士をはじめとする専門家にぜひ相談してみてください。まずは事業の現状を整理し、課題を洗い出した上で、適切な対応について考えていきましょう。

インボイスについてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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