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インボイス制度で利用できる少額特例や2割特例などの特例一覧

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インボイス制度で利用できる少額特例や2割特例などの特例一覧

インボイス制度では、中小企業や個人事業主が活用できる少額特例や2割特例など、税務負担を軽減するための特例制度が整備されています。

本記事では、これら特例の具体的な内容とその利用方法を詳しく解説し、経営効率を向上させる実践的な活用法について紹介します。

インボイス制度における特例制度の概要

インボイスの経過措置のイメージ

特例制度はインボイス制度の下で課税事業者を支援するための施策であり、具体的には「2割特例」と「少額特例」の2種類が存在します。これらの制度は小規模事業者を中心に、負担軽減と実務の効率化を目的として設計されたものです。

インボイス制度と消費税の基本

インボイス制度は、消費税に関連する取引の透明性を向上させる目的で導入されました。この制度では事業者が取引ごとに適格請求書を作成・発行し、保存することが義務付けられています。適格請求書には取引の詳細や消費税額が明確に記載されているため、活用すれば自社の仕入税額控除の適切な処理が可能になります。

さらにインボイス制度の導入により、事業者は売上や仕入れに伴う消費税額を正確に把握できるのも特徴です。インボイス制度の導入に伴い、免税事業者から課税事業者になった方にとっては新たに消費税の納税義務が発生するため負担増となるでしょう。しかし、将来的な消費税に関する取引をより明瞭にし、適切な税務運営を促進するための重要な枠組みとなっています。

関連記事:消費税の確定申告とは?やり方や計算方法、インボイス制度との関係

特例制度を活用する目的とメリット

特例制度は多くの面で事業者の支援となる仕組みです。特例制度を活用する目的は主に事務負担の軽減と納税負担の緩和です。そのほかにも特例制度にはいくつかのメリットがあり、特に中小企業や個人事業主にとって有益な手段となります。では、具体的にどのようなメリットがあるか具体的に見ていきましょう。

消費税負担の軽減

特例制度の適用により、納付する消費税が減少するため、経営資源の確保が容易になります。特に少額取引や低額の取引が多い事業者にとって、このメリットは非常に大きいです。

事務負担の軽減

インボイス制度では通常、請求書の発行や管理が複雑ですが、特例制度を利用することで、これらの事務作業の負担が軽くなります。取引の簡略化が図られ、業務効率が向上します。

キャッシュフローの改善

特例制度を利用することで、消費税の納税額が減少し、手元に残る資金が増えます。結果、日々の運転資金に余裕が生まれ、事業の成長に繋がる可能性もあるでしょう。

競争力の向上

特例制度を利用した場合、価格競争においても有利になります。消費税を軽減した価格で提供できるため、顧客にとっても魅力的な選択肢となるのです。

2割特例のメリットと適用条件

初めて免税事業者から課税事業者に移行する場合、消費税負担が気になる方も多いでしょう。特例制度はそういった不安や手続きの難易度を軽減するための制度です。ここでは、2割特例の詳細とそのメリットについて詳しく解説します。

2割特例とは?

2割特例とは、免税事業者が課税事業者へ転換する際、課税売上の8割を差し引いて納付税額を算出する制度です。ただし利用には一定の条件を満たさなければならないほか、期間も定められているためしっかり確認しておきましょう。

2割特例の適用条件と期間

では、2割特例の適用条件と期間はどのように決められているのでしょうか?以下は2割特例を適用するための条件と適用期間になります。

項目

内容

適用条件

主に以下のすべての条件を満たしていること。

  • 適格請求書発行事業者として登録を行っていること
  • 基準期間における課税売上高が1,000万円以下であること
  • 特定期間の課税売上高と給与等支払額が1,000万円以下であること

適用期間

2023年10月1日から2026年9月30日まで

つまり課税売上高が年間1,000万円以下の課税事業者は、2023年10月1日から2026年9月30日までの期間内において税制の優遇措置が受けられるというわけです。消費税を細かく集計しなくとも、売上や収入の税率(軽減8%‧10%)をそれぞれ把握しておけば申告書を作成できるため手続きも簡単です。

2割特例を活用した場合の消費税納付額の計算

2割特例を活用すれば、納税額が本来納付すべき金額の2割まで軽減されるため、消費税納付額の計算が簡素化されるというメリットがあります。つまり、売上税額の8割を差し引いて納付税額を計算すれば良いというわけです。

<計算式>

売上の10%(消費税)×0.2=納税額

例えば、対象となる売上高が1,000万円であったとします。この取引における消費税率が10%であった場合、消費税額は100万円(1,000万円×10%)となります。本来はそこから経費分の消費税を差し引いて納税額が決まります。

しかし2割特例の場合は「100万円の2割」が上限となるので、以下のような計算式になります。

<2割特例を利用した場合の消費税負担額>

1,000万円×0.1=100万円
100万円×0.2=20万円
消費税負担額額: 20万円

このように2割特例を適用することで、消費税の納付額は20万円に減少します。ただし業種によっては、みなし仕入率を用いて税額を計算する「簡易課税制度」の方が消費税額が抑えられるケースもあります。

みなし仕入率は業種の事業区分によって変わるので、自社の事業がどの事業区分に該当するのかを確認した上で、2割特例と簡易課税どちらを適用するかを決めましょう。

関連記事:個人事業主の消費税の免除なくなるって本当?インボイスの影響、計算シミュレーションを公開

関連記事:インボイス制度と電子帳簿保存法|各制度の関係性や必要な対応について解説

少額特例のメリットと適用条件

現金(1万円札)を持つ男性

少額特例はインボイス制度における特例の1つで、主に1万円未満の取引に適用されます。こちらも消費税を軽減する方法として有益ですが、ここでは具体的な内容や適用条件、期間について詳しく見ていきましょう。

少額特例とは

少額特例は、課税仕入れが1万円未満の場合には請求書の保存義務が発生せず、取引内容が記載された帳簿の保管だけで仕入税額控除を受けられるという仕組みです。

納税申告に必要な帳簿には、以下の4項目の記載のみとなります。

  • 課税仕入れの相手方の氏名、または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率対象の場合、その旨)
  • 課税仕入れに係る支払対価の額

通常より処理が簡単なため、税務処理にかかる労力を軽減できるでしょう。また、取引先が中小企業や個人事業主の場合でも請求書発行が不要になることから、業務の効率化にも繋がると考えられています。

少額特例の対象となる1万円未満の取引

少額特例の対象となる取引は、税込み1万円未満の取引に限られます。この場合、1つの取引ごとの金額が1万円未満である必要があり、例えば複数の商品をセットで購入した場合、その合計金額が1万円を超えると少額特例は適用されません。

少額特例の適用期間と条件

少額特例に関する適用条件と期間は以下の通りです。

項目

内容

適用条件

以下のいずれかの条件を満たしていること

  • 基準期間の課税売上高が 1億円以下 であること
  • 特定期間の課税売上高が 5,000万円以下 であること

適用期間

2023年10月1日から2029年9月30日まで

基準期間

個人事業主:その年の前々年

法人:その事業年度の前々事業年度

特定期間

個人事業主:前年1月から6月まで

法人:前事業年度の開始の日から6月まで

また、上記の条件における基準期間と特定期間が、個人事業主と法人で異なる点にも注意が必要です。

少額特例の適用期間は2割特例より期間が長く設定されています。自社の売上や消費税などと条件を照らし合わせながら慎重に検討しましょう。

参考:少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要|国税庁

「適格請求書なし」で仕入税額控除を利用可能な特例

このように消費税の納税に関しては、2割特例や少額特例といった制度を利用することで納税額を抑えることできます。

インボイス制度では業種によって領収書や請求書の取得が難しいことから、適格請求書の交付が不要(必要事項を記入した帳簿のみで仕入税額控除を受けられる)なケースが存在します。

国税庁によれば以下の取引については、一定事項を記入した帳簿のみで仕入税額控除を受けることが可能です。

①適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

②適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)

③古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

④質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得

⑤宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑥適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑦適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

⑧適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

⑨従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

引用:帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合|国税庁

通常、適格請求書なしで仕入額控除ができるのは1万円未満ですが、公共交通機関による旅客の運送、および自動販売機および自動サービス機からの商品の購入については3万円未満と上限が引き上げられています。事業者はこのような特例を上手く活用して、納税額を下げる工夫をしましょう。

関連記事:納品書は領収書の代わりになる?領収書が発行されないときの対処法も解説

インボイス制度の特例活用のまとめ

インボイス制度における特例制度は、消費税の負担を軽減し、納税処理を円滑に行うための重要な手段です。2割特例や少額特例を活用することで、適用条件に応じたメリットがあります。税務上のトラブルを避けるためにも、必要書類や手続きについて十分に確認し、適格請求書の発行や帳簿の正確な記録に関するルールを把握しておきましょう。

また、特例を活用する際には届出が必要な場合もあります。その際には申告期限の遵守や必要情報の整理も重要なポイントです。誤った仕訳や計算をすると正しい申告ができなくなり、場合によっては追徴課税が課される可能性もあります。

2割特例と少額特例どちらがより納税額を抑えられるのか、その判断は事業形態や売上額など状況によって変わるため、できれば税理士のアドバイスも受けることをおすすめします。
特に毎年のように発表される税制改正では、これらの特例も適用条件や税率も変わることがあるため、専門家からの情報提供やサポートは所得の計算や申告時の税務処理に役立つことでしょう。

インボイスによる特例の活用でお悩みの際は、ぜひ「小谷野税理士法人」へご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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