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減価償却では直接法と間接法のどっちがいい?使い分けのポイントを解説

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減価償却では直接法と間接法のどっちがいい?使い分けのポイントを解説

減価償却は、事業用の資産にかかった費用を複数年にわたって分割して費用化する会計処理です。正確な利益計算や節税、資金繰りの把握にも関わる仕組みのため、固定資産を多く扱う事業者は知っておきましょう。この記事では、減価償却の基本的な考え方から、直接法・間接法それぞれの特徴や仕訳の違いについて解説します。さらには節税に活用できる特例までを分かりやすく紹介します。

減価償却が必要な理由

減価償却費の計算

減価償却が必要な理由について、以下3つの観点から解説します。

会計上の理由

減価償却は利益の適正な把握に欠かせない方法です。固定資産を取得した年に一括で費用計上すると、その年の利益が実態より小さく見え、翌年以降は逆に大きく見えるといった収益の偏りが生じます。これでは企業の経営実態を正しく表せません。

減価償却は資産の取得価額を耐用年数にわたって合理的に配分し、期間ごとの費用として計上します。こうすることで利益を平準化し、財務情報の信頼性を高める役割を果たしているのです。

税務上の理由

減価償却は、税負担の公平性を保つための役割も担っています。資産取得費用を全額その年に経費処理してしまうと、当期の課税所得が不自然に少なくなり、税の負担が不公平になります。

そのため税法上では資産の価値を耐用年数にわたって配分し、毎年定額または定率で減価償却を行うことが義務付けられています。これにより、税の計算が合理的かつ公平に行われ、時期による税負担の偏りを防げるのです。

キャッシュ・フロー上の理由

減価償却は、キャッシュフローの把握と資金計画に不可欠です。減価償却は現金の支出を伴わない費用であり、損益計算書上では費用として計上されても、実際のキャッシュは流出しません。

そのため税引前利益を減らしつつ、キャッシュを企業内に留保できます。これにより、将来の設備更新や投資、借入返済のための資金を確保できるようになります。つまり減価償却は単なる会計処理ではなく、企業の健全な資金循環を支える重要な仕組みと言えるでしょう。

関連記事:減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!

直接法と間接法はどっちがいい?迷った時の判断基準

直接法は減価償却費を固定資産の勘定科目から直接減額する方法です。対して間接法は、減価償却費を直接固定資産の勘定科目から減額せず「減価償却累計額」という別の勘定科目を用いて処理します。

「結局、直接法と間接法のどっちを使った方がいいの?」と迷った方のために、どちらを用いるべきかをまとめた表をご紹介します。

直接法がおすすめ

  • 簿記の知識があまりない個人事業主

間接法がおすすめ

  • 中小企業・法人
  • 金融機関や投資家に決算書を見せる必要がある企業

直接法は「あとどのくらい費用にできるのか」が分かりやすいです。そのため、簿記に関する知識があまりない個人事業主や人手が少ない小規模事業者は直接法がおすすめです。

それに対して間接法は減価償却累計額が記載されているため透明性・信頼性が向上しやすいです。もしある程度の設備投資が必要な企業は、間接法のほうが良いでしょう。

直接法・間接法のメリットとデメリット

メリット

直接法・間接法それぞれのメリットとデメリットを以下の表にまとめました。

メリット

デメリット

直接法

仕訳がシンプルで理解しやすい

小規模事業者や個人でも分かりやすい

資産の取得額が分からなくなる

財務諸表の信頼性が下がる可能性がある

間接法

資産の取得額・残高が明確に表示される

財務諸表の透明性が高い

仕訳作業がやや複雑

減価償却累計額の管理が必要

間接法は情報開示の充実性や財務分析の観点から、多くの企業で採用されているのが特徴です。一方で直接法は、簡便さを重視する場合などに用いられます。

どちらの方法を採用するかは、企業の規模、業種、財務情報の利用者のニーズなどを考慮して決定されます。ただし一般的には、より多くの情報を提供する間接法が推奨される傾向にあるようです。

企業を成長させるための減価償却の活用術

ここからは、企業を成長させるための減価償却の戦略的に使う活用術をご紹介します。

「コスト削減」に活用する

減価償却は現金支出を伴わずに費用を計上できるため、戦略的に活用すれば中長期的なコスト削減につながります。例えば設備投資の際、耐用年数や償却方法を慎重に検討することで、将来の費用負担を見据えた経済的な選択が可能です。

耐用年数の短い資産や中古資産を導入すれば、初期投資を抑えつつ、早期に費用化が進められます。

「財務戦略」に活用する

減価償却を戦略的に活用すれば、企業は安定した財務基盤を築き、将来の資金調達を有利に進められます。減価償却費は現金を伴わない費用であるため、利益を圧縮しつつ内部留保を蓄積でき、新たな投資資金を確保しやすくなります。

また利益が低迷する局面でもキャッシュフローを安定させる役割を果たします。健全な財務諸表の維持は企業の信用力を高め、融資や取引条件にも良い影響を与えます。さらに、減価償却累計額の管理は、資産の効率的な運用や投資判断にも役立つでしょう。

「事業承継・M&A」に活用する

減価償却による適切な処理は、事業承継やM&Aの場面で企業価値を正確に評価する上で欠かせません。帳簿価額が正確に管理されていれば、買い手にとってはリスクの見通しが立ちやすく、売り手は正当な価格交渉が可能です。

一方で償却のミスや過不足は企業評価を不安定にし、交渉を複雑化させる原因となります。透明性の高い財務情報はデューデリジェンスをスムーズに進め、信頼性を高められます。

さらに、資産の計画的な更新や整理をしていれば、後継者の経営負担を軽減する効果も期待できるでしょう。

関連記事:使わない固定資産の除却処理で節税できるのは本当?

減価償却でよくあるミス5つとその対策

トラブル

ここからは、減価償却でよくありがちなミスをまとめました。またその対策についても解説しているので、税務調査の際に役立ててみてください。

耐用年数の誤りによる誤算定がある

減価償却資産の耐用年数は、国税庁が定める「耐用年数表」に従って適切に設定する必要があります。例えば中古資産でも新品と同じ耐用年数で償却を行っていたり、建物とその付属設備を一括で処理してしまっていたりするとします。

この場合、税務調査での指摘対象となる可能性が高くなってしまうのです。特に中古資産の耐用年数の算定方法は誤解しやすいため、注意が必要です。耐用年数の選定にあたっては必ず根拠を明示できるようにしましょう。

少額資産の処理が要件を満たしていない

取得価額が一定額以下の減価償却資産については、一括償却や全額費用計上できる特例が設けられています。

しかし、特例が適用されるには利用要件や上限金額が定められています。例えば少額減価償却資産の場合、青色申告の中小企業であることや、年間の取得価額の合計金額が300万円に達するまでが条件です。

これらの要件を満たしていないにもかかわらず、特例を適用してしまった場合は、税務上の誤りとして修正申告を求められる可能性があります。対象者要件をあらかじめ確認し、資産処理が正しく行われているか税理士などの専門家に相談するのが望ましいです。

直接法と間接法が混在している

直接法と間接法のどちらか一方に統一せず、資産ごとに異なる処理をしている場合、帳簿の整合性が問われることになります。

特に決算書と実際の帳簿が一致していないと、調査官から「処理方法に一貫性がない」と判断されかねません。記帳方針は明確に定め、処理方法を統一しましょう。

やむを得ず混在させる場合には、その理由や根拠を説明できる体制を整えておくのが賢明です。

資産の除却・売却時の仕訳が不適切

固定資産を除却または売却した際には、減価償却累計額の取り崩しや、除却損・売却損益の正確な計上が求められます。しかし、これらの処理が行われておらず、帳簿上に実際には存在しない資産が残っているケースも少なくありません。

このような状態は税務調査において「帳簿と実態が乖離している」として指摘を受けやすいポイントです。また、現在まったく使用していない資産についても、事業の用に供していなければ減価償却の対象外となる場合があるため、適切な資産管理が求められます。

固定資産台帳の更新や除却・売却の証憑書類を整備し、帳簿残高と突合できるようにしておけば、誤処理や税務調査での指摘を防げます。

期末の減価償却費計上漏れ

減価償却費の計上し忘れは経費の過少計上につながり、結果として課税所得が本来よりも大きくなってしまう可能性があります。特に毎期計上されている費用が突如として漏れていた場合には税務署側もその異常に気づきやすく、調査対象となる可能性があるので要注意です。

期末の決算調整時には減価償却の計上有無を必ず確認し、必要に応じて修正仕訳を行う体制を整えておきましょう。

関連記事:固定資産の減損処理はどのように行う?減損処理の概要も解説

減価償却や直接法・間接法に関するよくある質問

最後に減価償却や直接法・間接法に関するよくある質問をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

直接法と間接法だとどちらが節税効果が高い?

直接法と間接法は減価償却の記帳方法の違いであって、節税効果や税額に違いはありません。税金は利益に対して課税されるため、どちらの方法でも最終的な税額は変わらないです。

減価償却ができないのはどんな資産?

減価償却ができない資産は土地、借地権、骨董品などが挙げられます。例えば土地や借地は、経年による価値の低下はありません。同様に歴史的価値を持つ骨董品なども、通常は時間経過によって価値が下がるものではないと考えられます。

さらに過去に事業で使用していた設備であっても、現在全く使用していない状態であれば減価償却資産には該当しなくなります。

まとめ

減価償却は、資産の価値を適切に会計・税務処理するうえで欠かせない制度です。資産の購入費用を耐用年数にわたり費用化することで、利益の平準化や税務上の公平性、キャッシュ・フローの把握に役立ちます。

また、直接法と間接法にはそれぞれ特徴があり、事業規模や目的に応じた選択をしましょう。

減価償却やその仕訳方法に迷った場合は、専門知識をもつ税理士に相談するのがおすすめです。小谷野税理士法人では減価償却に特化した税理士が在籍しております。

「直接法と間接法のどっちを使えばいいか分からない」とお困りの方は、ぜひ一度「小谷野税理士法人」までお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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