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繰越税額控除とは?活用事例や手続きの流れを解説

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繰越税額控除とは?活用事例や手続きの流れを解説

繰越税額控除について、どのような制度でどのように活用できるのか気になったことはありませんか。この制度は、企業の税負担を調整し、利益の変動に柔軟に対応することで経営の安定を支える仕組みとして注目されています。本記事では、繰越税額控除の概要やその役割について分かりやすく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

繰越税額控除とは?

繰越税額控除とは、課税年度内に控除しきれなかった税額を翌年度以降に繰り越して控除できる制度です。この仕組みは、2000年代初頭の税制改正で導入され、企業の利益変動に柔軟に対応し、税負担を平準化することを目的としています。

特に収益が不安定な企業にとって、税負担を軽減し、経営の安定を図る重要な制度と言えるでしょう。

令和6年度の税制改正では、賃上げ促進税制の一環として新たな繰越税額控除制度が創設され、賃上げを実施する企業がより長期的な税制メリットを享受できるようになりました。

(税制改正特集)賃上げ促進税制の見直し

適用される税額控除の種類

適用される税額控除の種類は以下の通りです。

税額控除の種類

概要

繰越可能期間

研究開発税制

研究開発費用に基づく控除

最大1年間

中小企業投資促進税制

設備投資や新技術導入時の控除

最大1年間

外国税額控除

外国で課された税金に対する控除

最大3年間

賃上げ促進税制

賃上げ実施企業が受けられる控除

最大5年間

研究開発税制は、技術革新を目指す企業に適した制度で、特に製造業やIT業界など、研究開発に多額の費用を投じる企業に向いているでしょう。未達控除分を翌年度に繰り越すことで安定した税制メリットを得られます(繰越期間は最大1年)。

中小企業投資促進税制は、競争力強化のための設備投資や新技術導入を予定している企業に向いているでしょう。控除未達分は翌年度まで繰り越せて、繰越期間は同じく最大1年です。

外国税額控除は、海外進出をしている企業に最適でしょう。外国で課された所得税を日本国内で控除でき、繰越期間は最大3年と長めに設定されているので、多国籍企業の税負担軽減に役立ちます。

賃上げ促進税制は、従業員の給与アップを実現する企業に適しており、令和6年度税制改正では控除率が最大45%に引き上げられました。

また、教育訓練費要件の緩和や「プラチナくるみん認定」企業向け優遇措置も追加され、人材育成に力を入れる企業に向いているでしょう。赤字企業でも繰越控除が可能なため、幅広い企業が利用できます。

参考:研究開発税制について|経済産業省

参考:中小企業投資促進税制|中小企業庁

参考:No.1240 居住者に係る外国税額控除|国税庁

参考:中小企業向け「賃上げ促進税制」|中小企業庁

参考:子ども・子育てくるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて|厚生労働省

繰越税額控除の3つのメリット

メリット

繰越税額控除のメリットは主に以下の3つです。

  1. 利益の変動に柔軟に対応できる
  2. 税負担の平準化が可能
  3. 中長期的な節税効果

1. 利益の変動に柔軟に対応できる

繰越税額控除は、収益が不安定な企業にとって特に有益な制度です。例えば、ある年度で赤字となり控除額を使い切れない場合でも、翌年度以降に税金が発生すればその分を控除に充当できます。

この仕組みにより、収益が変動しやすい業界や新興企業でも、税負担を効率的に調整できるでしょう。また、事業拡大や市場変動による一時的な赤字が発生しても、柔軟に対応できるため、経営の安定性向上に寄与します。

2. 税負担の平準化が可能

年度ごとの利益変動が大きい企業でも、繰越税額控除を活用すれば、税負担の平準化が可能であるため、資金繰りの改善や安定した財務計画の実現に有効でしょう。

例)

年度

事象

2024年度

税金が50万円発生。

控除可能額が10万円だったため、90万円分の控除を使い切れなかった。

未使用分90万円は翌年に繰り越される。

2025年度

税金が200万円発生。

この年に繰り越された前年度の控除額90万円を適用した結果、課税対象額が160万円となり、税負担が軽減された。

3. 中長期的な節税効果

繰越税額控除を活用すれば、中長期的な視点での節税効果が期待できます。一時的な損失や控除未達分を将来に繰り越せるため、所得が増加した年度に適用し、税負担を軽減できます。

また、節税で生まれた資金を事業拡大や設備投資に振り向けることも可能でしょう。結果として、資金効率を高め、企業の競争力を向上させるだけでなく、経営の柔軟性確保にも繋がります。

繰越税額控除における3つの注意点

適用事業報告のイメージ

繰越税額控除の活用にあたって、以下の3点に注意してください。

  1. 繰越期間が限定されている
  2. 申請には適切な書類準備が必要
  3. 他の控除との調整が必要になる

注意点1. 繰越期間が限定されている

繰越税額控除には、法律で定められた繰越可能期間があり、この期間を過ぎると控除は無効となります。例えば、2024年度に繰越可能額30万円が発生し、2025年度の税金益が10万円しかない場合、繰越期間が1年であれば、未使用金額は失効してしまいます。

このようなリスクを回避するために、事前に適用条件を確認し、期限内に控除を使い切るための計画を立てましょう。

注意点2. 申請には適切な書類準備が必要

繰越税額控除を受けるには、対象となる費用の明細や証明書類など、適切な書類を用意する必要があります。これらの書類が不備の場合、申請が認められない可能性があるだけでなく、税務調査の際に控除が否認されるリスクも高まるでしょう。

事前に申請の要件をしっかり確認し、必要な書類を漏れなく準備しておきましょう。

注意点3. 他の控除との調整が必要になる

繰越税額控除を活用する際は、他の税額控除とのバランス調整が必要です。複数の控除を適用する場合、控除額が重複して認められないケースもあるため、優先順位や適用順序を慎重に検討し、控除を最大限に活用できる税務計画を立てましょう。

繰越税額控除の活用事例

繰越税額控除について、具体的にどのような場面で活用できるか、実際の事例を通してご紹介します。それぞれの事例を参考に自身の経営や税務計画に役立ててください。

活用事例1: 研究開発費が多い製造業

製造業では、新製品開発に多額の研究開発費が発生するのが一般的であるため、研究開発税制を活用しましょう。

例えば、2024年度に研究開発費500万円を計上し、控除額50万円が発生したものの、税金が12.5万円しかなく控除しきれなかった場合、未使用の37.5万円を翌年度に繰り越すことができます。2025年度に税金100万円が発生した際、この繰越控除額37.5万円を適用することで課税対象を75万円に軽減できます。

活用事例2: 設備投資が必要な中小企業

設備投資が必要な中小企業は投資促進減税を活用しましょう。

新技術導入のために設備投資を行った企業が、2024年度に40万円の控除が発生したものの赤字で控除しきれない場合、この額を翌年度に繰り越せます。2025年度に税金150万円が発生した際、繰越控除額40万円を適用することで税金の軽減が可能です。

活用事例3: 海外展開を行う企業の外国税額控除

海外進出企業では、現地で課される所得税を国内で控除できる外国税額控除が適しているでしょう。

例えば、現地で50万円の所得税を支払い、日本国内での控除可能額が30万円に限られる場合、残り20万円を翌年度以降に繰り越せます。翌年度に課税所得が発生した際、この控除を活用して税負担を軽減し、資金を事業成長に充てることが可能です。

活用事例4: 賃上げを推進する中小企業

賃金を増加させる企業には賃上げ促進税制が効果的でしょう。例えば、2024年度に給与支給額を基準給与額より10%増加させ、控除額60万円が発生したものの赤字で控除しきれない場合、この額を翌年度に繰り越すことが可能です。

2025年度に税金300万円が発生した際、この控除を適用することで税負担を軽減し、さらに従業員への再投資を行えるでしょう。

繰越税額控除の手続きの流れ

繰越税額控除を活用するための手続きの流れを解説します。

適用条件と必要書類

適用条件を満たしているかどうかを事前に確認し、必要書類を準備してください。

税額控除の種類

適用条件

必要書類

研究開発税制

研究開発費用が一定の基準額を超えていること

費用明細書、研究プロジェクト概要資料、領収書など

外国税額控除

海外で支払った所得税または法人税があること

外国税額の証明書(納税証明書など)、海外取引明細書

中小企業投資促進税制

設備投資や新技術導入に係る費用が対象基準に合致していること

設備購入の契約書、領収書、固定資産台帳など

賃上げ促進税制

雇用者給与等支給額が基準給与等支給額を上回っていること

雇用者給与明細書、基準給与の計算資料

これらに不備がある場合、控除が認められないリスクがあるため、事前準備は徹底しましょう。特に税務調査時に対応できるよう、領収書や契約書などの証憑類は保存し、明細書も適切に作成する必要があります。

中小企業の税制優遇とは?令和5年度の改正内容と活用方法のポイント

中小企業向け賃上げ税制における「教育訓練費」は?範囲や上乗せ要件を解説

参考:研究開発税制の見直しについて|小谷野税理士法人

具体的な申告の流れ

手続きの流れ

詳細

必要書類の準備

必要書類を整え、控除対象額を算出

確定申告書の作成

控除額を指定箇所に記載し書類を添付

確定申告書の提出

税務署に申告書を提出し審査を待つ

まず、控除額を正確に計算するため、前述したように対象費用の明細や証明書類を準備してください。書類が準備できたら、税務署が指定するフォーマットに従い、控除額を確定申告書の指定箇所に記載します。

記載した確定申告書は、事業所管轄の税務署に、事業年度終了後2か月以内に必要書類とともに提出しましょう。申告後、税務署による審査が行われ、問題がなければ控除が承認されます。

【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて

繰越税額控除でお悩みの方は専門家に相談

繰越税額控除を適用すれば、利益の変動にも対応しやすくなるなどのメリットがあります。

税務手続きや繰越税額控除の活用に迷ったら、専門家の助けを借りることをおすすめします。

小谷野税理士法人では、豊富な経験と専門知識を活かし、最適な節税計画を提案可能です。

複雑な控除条件や書類作成もサポートし、企業の財務戦略を強力にバックアップいたしますので、税務に関する疑問や課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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