法人は、事業年度終了の日から2カ月以内に申告書の提出・納付を行わなければなりません。今回の記事では、法人が無申告だった場合の5つの罰則について解説します。また、やむを得ず申告できない場合の対処法も併せて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
法人の確定申告は義務
結論から申し上げると、法人の確定申告は法律で定められている義務です。そのため、毎年必ず行わなければなりません。
確定申告によって、納めるべき法人税・法人事業税・法人住民税・消費税の納税額を申告します。この4種類の税金の内、消費税以外をまとめて「法人税等」と呼ばれることが一般的です。
法人の場合は、毎年事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に確定申告を行う必要があります。
また、個人事業主の場合でも確定申告を行わなければならないケースがあります。詳細については、国税庁のホームページにある「確定申告が必要な方」を参考にしてください。
赤字の場合は不要?
赤字決算になった年は、利益がないため確定申告は必要ないと誤解している方がいますが、赤字の場合にも確定申告は必要です。
赤字の場合には、法人税と法人事業税は納める必要がない会社が大半ですが、納める税金がなくても確定申告は必要です。しかし、法人住民税の一部と消費税は赤字であっても納める場合があります。そのため、例年通り確定申告をして納税しなければなりません。
無申告の罰則5つ
法人・個人に限らず、期限までに確定申告を提出していない場合は、罰則(ペナルティ)が科されます。
無申告に科される罰則は下記の5つが挙げられます。
名称 | 課税要件 | 課税割合 |
無申告加算税 | 確定申告をせず、税務調査によって無申告が発覚した場合 | 15%・20%・30% |
延滞税 | 確定申告した後、納付期限までに税金を完納しなかった場合 | 原則7.3%・14.6% |
重加算税 | 故意の仮装隠蔽などの不正があった場合 | 35%・40% |
過少申告加算税 | 内容に誤りがあり、納付する税金が少ない場合 | 10%・15% |
刑事罰 | 脱税と見なされた場合 | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 |
このように、罰則として追加で課せられる税金を追徴課税と言います。
法人に対する税務調査は、個人事業主よりも厳しいことが一般的です。そのため、提出期限の管理だけではなく、確定申告の作成自体を税理士に依頼することが賢明です。
参考:No.9206 国税を期限内に納付できないとき|国税庁
無申告加算税
無申告加算税とは、定められた期限内に確定申告を提出しなかった場合に課せられる税金のことです。
上述の通り、法人の場合は事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に申告することが義務付けられています。この期限内に提出しなかった場合は、無申告加算税が課せられます。課税割合は納税額によって異なります。
納税額 | 無申告加算税の割合 |
50万円以下 | 15% |
50万円超300万円以下 | 20% |
300万円超 | 30% |
本来の納税額に、上記の納税額を加えて納付しなければなりません。ただし、提出期限が過ぎていても、税務署による調査が行われる前に提出すれば、無申告課税の税率は5%に軽減されます。
また、無申告の場合でも、加算税が課されないケースが3つあります。
- 提出期限から1カ月以内に自主的に提出している。
無申告加算税の税額が5,000円未満の場合。
期限後速やかに提出や納付を行った場合は、「期限内に提出する意思があった」と見なされやすくなります。万が一過ぎてしまったら、すぐにでも提出しましょう。
なお、2年連続して期限後に提出すると、青色申告が取り消されるというペナルティがあります。また、期限内に提出した場合よりも厳しく申告書を確認されることが一般的です。
そのため法人の確定申告は、書類作成から提出まで一貫して税理士に依頼するのもおすすめです。
参考:加算税の概要|財務省
参考:法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁
重加算税
重加算税とは、故意に所得を少なく申告したり、無申告を行ったりした場合に課せられる税金のことです。主に帳簿書類の隠匿や虚偽の記載などが行われた場合に課せられます。
重加算税は「故意による不正」と見なされた場合に課されます。そのため、無申告加算税に比べてかなり税率が高くなります。
内容 | 税率 |
過少申告 | 納税額×35% |
無申告 | 納税額×40% |
重加算税は、税制改正によって2024年(令和6年)1月1日から変更されました。前年度および前々年度の国税で、無申告加算税または無申告重加算税を課されたにもかかわらず再び無申告行為を行った場合、さらに重加算税が10%加算されます。
税制改正は随時見直しが行われているため、専門家でないと追いきれないことも多いでしょう。法人の方は、年間を通してサポートを依頼できる税理士と契約することをおすすめします。
参考:法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁
延滞税
延滞税とは、確定申告は期限内に提出したものの、税金を完納していない場合に課せられる税金のことです。
延滞税の税率は、年によって7.3%または延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合のため、毎年変更される可能性があります。下記の計算式は、2024年(令和6年)1月1日~12月31日までの税率です。
日数 | 税率 |
納付期限の翌日から2カ月以内 | 納付期限の翌日から完納日までの日数×2.4% |
上記の日以後 | 納付期限の翌日から完納日までの日数×8.7% |
延滞税は、納付期限の2カ月を境に大幅に税率が変わるので注意が必要です。
過少申告加算税
確定申告をしたものの、税務署の調査などによって申告した金額よりも実際に納めるべき税金が多かったと判明した場合に課される税金です。
過少申告加算税は、新たに納付することになった税金の10%相当額を納付します。ただし差額が、当初申告した税金と50万円のいずれか多い金額を超えている場合は15%になります。
刑事罰
刑事罰は、脱税のために確定申告を行わなかったと見なされた場合に課せられる罰金のことです。国税局の調査によって有罪判決が下った場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます。
近年、脱税に対する厳罰化が進んでいます。そのため、脱税だけではなく、正当な理由なく提出期限を守らなかった場合にも、刑事罰が科されるケースがあります。この場合は、1年以下の懲役または50万円以下です。
もしこれまで確定申告を行ってこなかった方は、今すぐ税理士へ相談し、提出するための準備を行ってください。
やむを得ない場合は延期可
災害などによって確定申告が難しい場合は、申請を行えば提出期限を延長できます。
その際、申告の延長を認められるケースは下記の通りです。
- 地震、台風、豪雨、豪雪、落雷など、大規模な自然災害
- 交通手段や通信手段の遮断、停電などのライフラインの遮断
- 本社や支社、工場などが大損害を受けた場合
- 申告等をする者の重疾病
など
基本的には、申告の延期は申告者自身にはどうすることもできない深刻な状況以外では認められません。必ず期限内に提出することを前提として準備しましょう。
参考:C1-15、H1-16 災害による申告、納付等の期限延長申請|国税庁
確定申告は税理士への代行依頼がおすすめ
確定申告の無申告には、罰則が科せられます。近年は脱税行為の厳罰化が行われているため、うっかり忘れてしまった場合でも刑事罰が科される可能性があります。
また、確定申告の内容が誤っている場合には、申告漏れを疑われることもあります。無申告に比べれば罰則は軽いものの、ないに越したことはありません。
そのため、法人の方は年間を通して確定申告に関する業務を一任できる税理士と契約しておくことをおすすめします。