会社を休眠させる場合、どのような手続きを行うのかご存じでしょうか。この記事では、会社を休眠する際の手続きや注意すべきポイントについて紹介しています。また、休眠した場合の税金についてや休眠手続きを行う利点も併せて紹介しています。会社の休眠手続きについて知りたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
目次
会社の休眠とは
長期間にわたって会社が営業活動を一時的に停止することを休眠と言い、休眠状態にある会社のことを休眠会社と呼びます。休眠は会社自体を存続させたまま営業活動を辞めることを指しますが、みなし解散や廃業と混同されることも少なくありません。
以下では、休眠とみなし解散、廃業との違いについて解説していきます。
休眠とみなし解散の相違点
会社は登記が必要な事柄が起こると、その最新情報を2週間以内に登記簿に反映させなければなりません。登記簿への反映を2週間以内に行わないことを登記懈怠と呼び、12年間登記懈怠が続くと、その会社は経営実態がないとみなされ、みなし解散の手続きが行われます。
みなし解散とは登記上解散している会社であると認定されることで、登記を管理する法務局では定期的に休眠会社の整理を行っています。12年間手続きを行わず登記懈怠が続いている会社には、法務大臣よりみなし解散となる旨の通知が届きます。この通知が届いてから2ヵ月以内に、登記申請もしくは事業を廃止していない旨の書類を提出しないと、みなし解散として登記される仕組みです。
休眠は営業活動を停止するに留まりますが、みなし解散の場合は事業を行っていない会社であると登記されてしまう点を覚えておきましょう。
休眠と廃業の相違点
休眠とは会社を存続させたまま営業活動を停止することです。一方、廃業は会社としての活動を取りやめる事を指し、会社自体が無くなります。
休眠と廃業は混同されがちですが、廃業する際には解散登記や清算手続きを行わなければなりません。これらの手続きが終わると会社が消滅してしまうため、会社を存続させたまま活動のみを一時停止させる休眠とは異なると言えるでしょう。
会社を休眠させる場合の流れ
会社を休眠させる場合は、オフィスの電話回線の解約や取引先との提携停止などの手続きを終わらせた後、必要な書類を税務署や都道府県税事務所といった行政機関に提出しなければなりません。具体的な書類と提出先は以下の通りです。
提出先 | 提出する書類 |
税務署 | 異動届出書 |
給与支払事務所等の開設、移転、廃止届出書 | |
都道府県税事務所 | 異動届出書 |
市区町村役場 | 異動届出書 |
年金事務所 | 資格喪失届 |
健康保険、厚生年金保険適用事業所全喪届 | |
労働基準監督署 | 労働保険確定保険料申告書 |
ハローワーク | 資格喪失届 |
雇用保険適用事業所廃止届 |
会社を休眠させる場合は、必要に応じて上記に記載の書類を作成して各行政機関に提出しましょう。書類の準備や提出に費用は発生しませんが、漏れのないように注意が必要です。また、異動届出書には休眠させる旨を記入しなければならないので覚えておくと安心です。
休眠すると税金はかからない?
通常、会社は法人税や法人事業税、消費税などさまざまな税を納めなければなりません。では、会社を休眠させた場合これらの税金はかからないのでしょうか。
以下では、会社を休眠させた場合の税金について解説していきます。
休眠期間中でも納税義務はなくならない
会社を休眠させていても、原則として固定資産税や法人税、法人住民税の納税義務はなくなりません。しかし、会社を休眠させる=営業活動の停止であり、休眠中は会社としての利益が発生しないため休眠会社には課税所得がありません。そのため、課税所得に対して課せられる法人税は発生しないと考えてよいでしょう。
しかし、法人住民税の均等割は課税所得とは関係のない税金であるため、休眠状態だとしても税金を支払わなければなりません。都道府県により、異動届出書を提出した会社は均等割の納税が免除されるケースもあるため、確認するようにしましょう。
また、会社が不動産などの固定資産を所有している場合は固定資産税を納めなければならない点に留意しておきましょう。
税務申告は毎年必須
会社を休眠させると営業活動も停止するため利益は生まれませんが、税務申告は毎年行わなければなりません。税務申告を怠ると青色申告が取り消されるため、事業を再開する際に再び申請が必要になります。
事業の再開をスムーズに行うためにも、税務申告は行うようにしましょう。
関連記事:【税理士監修】会社設立後も青色申告できる?法人が青色申告するメリットや方法
会社を休眠させる利点
休眠とは、会社を存続させたまま会社としての営業活動を停止することを指しますが、会社を休眠する利点にはどのようなものが挙げられるのでしょうか。以下で確認していきましょう。
税負担が軽くなる
通常、会社は消費税や法人税を納める義務があります。しかし、休眠の場合は利益や収入が発生しないため、消費税や法人税は課せられません。休眠により事業を一時停止することで、税負担が抑えられるのは休眠の利点だと考えられるでしょう。
事業再開が簡単にできる
経営者の体調不良など一時的な事情で事業の継続が難しい状況になってしまった場合、廃業してしまうとその後事業を再開する際に多くの時間が必要です。しかし、休眠であれば事業を再開したいタイミングで会社を復活させられます。
営業活動の停止理由が一時的なもので、いずれ事業の再開を検討しているのであれば休眠手続きを視野に入れてみましょう。
休眠に際して費用負担がない
会社を休眠させる際には、いくつかの書類を行政機関に提出しなければなりませんが、休眠の手続きには費用がかかりません。一方、廃業する場合は、登記費用や会社の在庫や備品の処分に係る費用、官報への公告料などさまざまな費用が発生します。
いずれ事業の再開を視野に入れているのであれば、休眠という措置の方が費用負担がないという点は休眠の利点だと言えるでしょう。
会社を休眠させる際の注意すべきポイント
会社を休眠させることには、税負担が軽減される、休眠による費用負担がないといった利点があります。では、実際に会社を休眠させる場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
以下では、会社を休眠させる際の注意すべきポイントを紹介していきます。
みなし解散にならないように登記を行う
すでに解説しましたが、12年間登記が行われないまま休眠状態が続いていると、その会社は事業を行っていない会社であると登記されてしまいます。そのため、登記すべき事柄が発生した際には2週間以内に登記を行うように注意しましょう。
万が一、12年間登記を行わずに必要な手続きも行わなかった場合、みなし解散となる旨の通知が法務大臣より送られてくるでしょう。その場合は、すみやかに登記申請もしくは事業を廃止していない旨の書類を提出しましょう。
役員の変更登記や税務申告は必要
通常、会社役員の任期は最長10年となっており、役員の変更が行われた場合は登記変更を併せて行わなければなりません。会社が休眠していたとしても役員の任期が停止するわけではないため、休眠期間中であっても任期は過ぎていくという点に気を付けましょう。
また、すでに解説した通り会社を休眠させていたとしても税務申告は毎年必要です。青色申告を行っている会社の場合、税務申告を怠ると青色申告が取り消されてしまいます。事業の再開後に再度青色申告を申請するには手間がかかるため、税務申告は忘れずに行うようにしましょう。
会社を休眠させる際の流れや注意すべきポイントについて理解しよう
会社を廃業させずに、営業活動を一時的に停止することを休眠と呼びます。会社を休眠させる際には、税務署や労働基準監督署などの行政機関に書類を提出しなければなりませんが、この手続きに費用はかかりません。
会社を休眠させて営業活動を停止すると、利益が発生しないため法人税や消費税はかかりませんが、納税義務そのものは免除される訳ではありません。そのため、会社を休眠させた場合でも、固定資産を所有していれば固定資産税が発生します。また、法人住民税の均等割は休眠会社でも納めなければなりません。
会社の休眠は、廃業とは異なり事業の再開もスムーズにでき費用もかかりません。一時的な事情で営業活動の継続が困難になった場合、事業の再開を視野に入れているのであれば休眠という手段を検討してみましょう。
会社の休眠手続きに伴う税務申告についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。