昨今、働き方のひとつとして、スキマバイトを選ぶ方が増えていると思いますが、確定申告についてご存じでしょうか。バイトといっても、状況によっては確定申告が必要なケースがあります。この記事では、スキマバイトをしている方が、どういった場合に確定申告する必要があるのか、また確定申告する際はどういった準備が必要なのかについて解説します。確定申告が不安な方は参考にしてください。
目次
そもそも確定申告とは?
確定申告とは、1年間に得た所得を税務署に申告し、税金を納める手続きです。申告期間は所得を得た年の翌年2月16日〜3月15日で、正確に税金を計算し、期限内に申告しないとペナルティがあるので注意しましょう。
会社員やアルバイトをしている方は、源泉徴収や年末調整などで会社が代わりに納税手続きをしてくれるので、確定申告は主に個人事業主が対象ですが、バイトをしている方も確定申告が必要な場合があります。
スキマバイトの契約形態が「雇用契約」の場合
スキマバイトで確定申告が必要か否かは、契約形態によって異なります。契約形態は「雇用契約」と「業務委託契約」に分かれるので、スキマバイトのアプリやサイトなどでバイト先との契約形態を確認してください。
まず「雇用契約」の場合ですが、以下の6パターンが考えられます。
パターン | 確定申告の有無 |
① 年収103万円未満で年末調整がある | 無 |
② 年収103万円超えで年末調整がある | 無 |
③ 年収103万円超えで年末調整がない | 有 |
④ 年収103万円超えで源泉徴収されていない | 有 |
⑤ 年収103万円超えで複数のバイトをしている | 有 または 無 |
⑥ 年収103万円超えで年末に退職した | 有 |
年収103万円未満で年末調整がある
年収103万円未満の場合は、確定申告の必要はありません。なぜなら、基礎控除48万と給与所得控除55万円を合わせた額が103万円であり、103万円未満であれば課税所得がゼロになるためです。
年収103万円超えで年末調整がある
年収103万円を超えていても、バイト先で年末調整が済んでいれば、確定申告の必要はありません。ただし、年末調整を受けるためには、アルバイト先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以後「扶養控除申告書」と記載」)の提出が必須です。
年収103万円超えで年末調整がない
年収103万円を超えており、年末調整がない場合は確定申告しましょう。これは、前述の扶養控除申告書を提出していないケースです。
年収103万円超えで源泉徴収されていない
年収103万円を超えており、源泉徴収されていない場合は確定申告が必要です。月額給与が88,000円未満の場合、雇用主は源泉徴収の義務がないため、このようなケースが起こり得ます。
年収103万円超えで複数のバイトをしている
年収103万円を超えており、複数のバイトを掛け持ちしている場合は、状況によって確定申告の有無が異なるため注意しましょう。
すべてのバイト先から源泉徴収を受けていない場合は確定申告が必要です。ただし、主たる給与を得ているバイト先で年末調整が済んでおり、従たる給与を得ているバイト先からの総所得が20万円以下の場合は、確定申告の必要はありません。
主たる給与とは、扶養控除申告書を提出しているバイト先から支払われる給与であり、従たる給与とは、上記以外のバイト先から支払われる給与です。
年間所得が20万円以下の場合は確定申告が不要であるためです。一方、従たる給与を得ているバイト先からの総所得が20万円を超えている場合は、確定申告を行いましょう。
年収103万円超えで年末に退職した
年収103万円を超えた状態で年末に退職した場合、バイト先で受けるはずだった年末調整がないため、確定申告をしてください。
スキマバイトの契約形態が「業務委託契約」の場合
次に契約形態が「業務委託契約」の場合ですが、以下の4パターンが考えられます。
パターン | 確定申告の有無 |
① 給与(年末調整あり)以外の総所得が20万円以下 | 無 |
② 給与(年末調整あり)以外の総所得が20万円超え | 有 |
③ 給与(年末調整なし)含む総所得が103万円超え | 有 |
④ 給与所得がない | 有 または 無 |
給与(年末調整あり)以外の総所得が20万円以下
給与(年末調整あり)以外の総所得が20万円以下の場合は、確定申告は不要です。
これは、業務委託としてバイト先からもらっている所得以外に、給与をもらっているケースです。年末調整済みの給与がある上で、業務委託で得た所得(その他の所得含む)の総額が20万円未満の場合を指します。
確定申告は不要ですが、住民税の申告は行いましょう。
給与(年末調整あり)以外の総所得が20万円超え
給与(年末調整あり)以外の総所得が20万円を超えている場合は、確定申告が必要です。
所得は収入から必要経費を差し引いた金額を指します。所得区分によって認められる経費の範囲は異なり、例えば、雑所得(主に副業で得る所得)に比べて、事業所得(事業で得る所得)の方が認められる経費が多いです。
参考:「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)|国税庁
給与(年末調整なし)含む年間収入が103万円超え
給与(年末調整なし)含む年間収入が103万円超えの場合は、確定申告が必要です。
こちらも、業務委託としてバイト先からもらっている収入以外に、給与をもらっているケースですが、給与が年末調整されていない場合は、すべての収入を合わせて103万円を超えると課税対象になるため注意しましょう。
給与所得がない
給与所得がない場合は個人事業主に該当するため、一般的には確定申告が必要です。年間所得が48万円以下であれば確定申告の必要はありません、青色申告などの場合は確定申告した方がいいケースもあります。
確定申告の流れ
確定申告の流れについて解説します。詳細な情報については以下をご確認ください。
【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて
必要な書類や情報を準備する
以下が、主に必要な書類や情報になるので、事前に確認しておきましょう。
- 源泉徴収票または支払調書
- 領収書や支払明細(業務委託契約の場合)
- 特定の控除書類(生命保険控除、医療費控除、住宅ローン控除の証明書など)
- 確定申告書(青色申告用紙の場合も)
- マイナンバー(通知)カードおよび本人確認書類
雇用契約の場合は「源泉徴収票」、業務委託契約の場合は「支払調書」が必要です。どちらも、年間に受け取った報酬額と源泉徴収額が記載されています。
業務委託契約の方で、経費を計上する場合、領収書や支払明細を用意しましょう。
紛失してしまった場合について、源泉徴収票や支払調書、控除書類などは、発行元に依頼すれば再発行が可能ですが、領収書(レシート)はメールやWEBで発行されたものでない限り再発行が困難です。
そのため、経費に関する領収書などは紛失しないよう保管しておいてください。なお、スキャナー、カメラによる電子データ保存も認められています。
確定申告書を作成する
書類や情報が整理できたら、確定申告書を作成しましょう。源泉徴収票や支払調書の情報をもとに、確定申告書に所得額や源泉徴収税額を記入します。
業務委託契約の場合、青色申告の際は「青色申告決算書」、白色申告の場合は「収支内訳書」の記入も必要です。また領収書やレシートをもとに経費(交通費、事務用品費など)も記入しましょう。
期限内に税務署に提出・納付する
申告書類が作成できたら、所轄税務署に提出します。申告期限は、所得を得た年の翌年「2月16日〜3月15日」です。
提出方法は、税務署窓口へ直接持ち込むまたは郵送する、e-Taxから申請するの3パターンです。所轄税務署が不明な場合は、以下のリンクから検索してください。
なお、所得税は申告期限である3月15日が納付期限でもあります。確定申告後に納付書が届くなどといったことはないので、申告期限までに忘れずに所得税の納付も行いましょう。
スキマバイトの確定申告で悩んだら専門家へ相談
スキマバイトの確定申告に関して疑問や不安がある場合は、税理士など専門家への相談をおすすめします。複雑な申告をスムーズに行うためにはプロのサポートが不可欠です。
小谷野税理士法人では、豊富な経験と専門知識を持つスタッフが、あなたの確定申告を丁寧にサポートしますので、お気軽にご相談ください。