個人事業主が結婚により苗字が変わった場合、苗字変更手続きが必要となります。名刺や請求書の発行など旧姓を引き続き使用できるものもありますが、確定申告や銀行口座開設などは新姓で行う必要があるのでご注意ください。本記事では、個人事業主が結婚すると苗字変更が必要なのか、必要な手続きについて詳しく解説していきます。
目次
個人事業主は結婚で苗字変更が必要?
個人事業主やフリーランスは結婚して苗字が変わったとしても、旧姓のまま仕事を続けられるか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。特に、ライターや漫画家など個人で仕事をしている人は、苗字の変更をデメリットに感じる人もいるはずです。
個人事業主が結婚により、仕事で使う苗字を変更する必要があるのか、詳しく見ていきましょう。
結婚後も旧姓で仕事を続けることはできる
個人事業主やフリーランスは結婚して苗字が変わったとしても、旧姓のまま仕事を続けられます。個人事業主で結婚後も旧姓のまま仕事をしたいと考えている人は、開業届に記載する屋号を旧姓にしておきましょう。
新姓にて手続きしなければならないものもある
取引先に使用する苗字は結婚後も旧姓で問題ありません。しかし、本名で取引しなければならない手続きについては、結婚後は新姓で行う必要があります。結婚後に旧姓を利用できるケース、できないケースは、それぞれ下記の通りです。
旧姓を利用できるもの | 旧姓を利用できないもの |
● 名詞 ● 領収書の発行 ● 請求書・発注書の発行 ● 法人登記 | ● 事業用の銀行口座の作成・利用 ● 確定申告 ● 新姓の登録が必要な一部の職種 |
なお、法人登記については2015年から役員の名前に旧姓を併記できるようになりました。また、一部の国家資格では新姓の登録が必要となりますが、近年では旧姓を使用できる職種や範囲が広がりつつあります。
参考:結婚に関する口座の手続き
関連記事:個人事業主の入門編!青色申告とは?メリットと手続き方法をわかりやすく解説
個人事業主が苗字変更して仕事をするメリット・デメリット
個人事業主やフリーランスの中には、結婚で苗字が変わったときに新姓で働くか、旧姓で働くか迷うこともあるでしょう。個人事業主が結婚後に苗字変更して働くメリットとデメリットを詳しく解説していきます。
個人事業主が苗字変更するメリット
個人事業主が結婚を機に苗字を変更し、新姓で働くメリットは、すべての手続きを新姓で統一できる点です。先ほど解説したように、確定申告や銀行口座の作成などは新姓で行わなければなりません。
「この手続きは旧姓、新姓のどちらで行うべきか」と悩む必要がなくなるのは、結婚により苗字変更をするメリットといえるでしょう。
個人事業主が苗字変更するデメリット
個人事業主が結婚により苗字変更するデメリットは、取引先へ苗字が変わったことを報告する手間や名刺、印鑑変更などの手続きが必要になる点です。仕事の取引相手とはプライベートな話をしたくないと考えている場合、結婚を報告するのが嫌な場合もあるでしょう。
他には、旧姓で長く仕事をしている場合や受賞経験がある場合、苗字が変わると実績を活かしにくくなるケースも考えられます。このように、個人事業主が結婚で苗字変更をするのは、メリットとデメリットがあるので、慎重に判断しなければなりません。
個人事業主が苗字変更するときに行う手続き
個人事業主が結婚にあたり、苗字を変更する際には様々な手続きが必要です。手続きに漏れがないように計画的に進めていきましょう。本章では、個人事業主が結婚で苗字を変更するときに行う手続きを詳しく解説していきます。
婚姻届
結婚する際には、婚姻届の提出が必要です。婚姻届は、原則として住所地の市区町村役場に提出します。婚姻届を提出すれば、夫婦2人の戸籍が新しく作られ、住民票の情報も更新されます。
引っ越しに伴う住民票の異動
結婚により引っ越しをする場合は、住民票の異動をしなければなりません。同一の市区町村内で引っ越す場合は、住所地の市区町村役場に「転居届」を提出します。一方で、違う自治体に引っ越した場合は、下記の手続きが必要です。
- 前の住所地の市区町村役場に「転出届」を提出し「転出証明書」を受け取る
- 新しい住所地の市区町村役場に転出証明書と「転入届」を提出する
上記のように、引っ越し先が同一市区町村かによって、手続き方法が変わるのでご注意ください。
マイナンバー情報の変更手続き
結婚により、氏名や住所が変更になったら、マイナンバー情報の変更も必要となります。個人事業主やフリーランスの場合、確定申告を行う際にマイナンバー情報の提出が必要となるので、早めに手続きしておきましょう。
ただし、マイナンバー情報の変更手続きの際には、本人確認書類の提出が必要となります。婚姻届の提出と共にマイナンバー情報の変更も行える場合が、あるので確認しておくと良いでしょう。
健康保険・国民年金の手続き
結婚により、健康保険や国民年金の手続きも必要です。結婚後に配偶者の扶養に入るかどうかによって、手続き方法も変わるのでご注意ください。結婚後は配偶者の扶養に入る場合は、配偶者が加入している健康保険にて手続きを行いましょう。
また、結婚後も配偶者の扶養に入らない場合は、ご自身の国民健康保険および国民年金の氏名・住所変更手続きが必要となります。
運転免許証の手続き
結婚で氏名や住所が変わった場合、運転免許証の変更手続きもしなければなりません。運転免許証に記載されている内容を変更する際には「運転免許証記載事項変更届」を提出する必要があります。
運転免許証記載事項変更届の提出先は、下記の通りです。
- 住所地のある都道府県を管轄する警察署
- 運転免許更新センター
- 運転免許試験場
上記のように、複数の提出先があるので職場や自宅から行きやすい場所にて、手続きをするのがおすすめです。
パスポートの手続き
仕事ではあまり使う機会がないかもしれませんが、結婚による苗字変更に伴い、パスポートも変更しておきましょう。パスポートは住所地がある都道府県のパスポートセンターにて、手続き可能です。
印鑑登録の手続き
結婚前の旧姓で印鑑登録をしていた場合、婚姻届を提出し苗字が変わった時点で、古い印鑑登録は破棄されてしまいます。そのため、必要であれば新姓で再び印鑑登録を申請しましょう。
なお、印鑑登録は「名前」のみで作った印鑑を登録することも認められています。したがって、結婚による印鑑登録の再申請を行うのを避けたいのであれば、名前のみの印鑑を登録しておくのが良いでしょう。
その他必要となる手続き
これまで紹介してきた手続きの他にも、細かい手続きが必要な場合があります。結婚後に必要となる手続きは、主に下記の通りです。
- 銀行口座の名義変更・登録印変更
- 自動車の登録名義変更
- クレジットカードの名義変更
- 携帯電話・固定電話の名義変更
- 証券口座の名義変更
- 保険や個人年金の名義変更
後から漏れがあったことがわかると非常に手間がかかることもあるので、結婚したタイミングですべて行っておくと安心です。
【補足】開業届の変更は不要
誤解されている人もいるかもしれませんが、事業を始めるときに提出した「開業届」は苗字変更の際には届出は不要です。また、住所地の変更があった場合も提出は不要ですので、ご安心ください。
確定申告については、新姓で行う必要があるので、結婚により苗字が変わったことや仕事は旧姓で続けていることなどを記載しておきましょう。
関連記事:【税理士監修】開業届とは?書き方や必要書類、提出方法までの完全ガイド
まとめ
個人事業主が結婚すると、婚姻届の提出や住民票の異動以外にも、様々な手続きが必要です。加えて、旧姓のまま仕事を続けて良いのか、迷ってしまう人もいるでしょう。
個人事業主が旧姓のまま仕事を続けるのはメリットとデメリットがあります。ライターや漫画家など個人の名前で活動している人は、旧姓のまま仕事を続けた方が良いケースもあるので、慎重に判断しましょう。
ただし、取引先と旧姓で仕事を続ける場合も、確定申告は新姓で行わなければならないのでご注意ください。個人事業主の確定申告にお悩みの場合は、税理士に相談してみることもおすすめします。