フリーランスの方の心配事のひとつが「税金」ではないでしょうか。資金計画や支払い漏れを防ぐためにも、いつ、どんな税金を、いくらくらい払う必要があるのか把握しておきましょう。フリーランスが納めるべき税金の支払いタイミングや計算方法、税金が高いと感じた時の対策方法などを解説します。
目次
フリーランスの税金は毎月払うの?支払いタイミングを解説
給与所得者(サラリーマン)の場合、毎月の源泉徴収と年末調整によって正確な所得税を納めています。
一方フリーランスの場合は、確定申告のデータをもとに各種納税額を算出するため、税金の種類によって納税時期が異なり、分割納付が可能なものもあります。各種税金の支払いタイミングを把握し、事業に支障がないように資金計画を立てましょう。
所得税の支払いタイミング
フリーランスの人が所得税を納める時期は、原則「毎年2月16日から3月15日」の所得税の確定申告期間と同じ期間内に納税まで行う必要があります。
期間中に納税しなかった場合は、「延滞税」や「無申告加算税」などのペナルティが課されることがありますので注意しましょう。
もし、何らかの理由で納税できない場合には、一定の条件のもと税務署長の承認を受けて分割納付できる制度があります。確定申告をしたものの納税ができないと判明した場合は、速やかに所轄の税務署に相談しましょう。詳しくは、後述の「フリーランスが高すぎる税金を払えないときの対策」の項を参考にしてください。
住民税の支払いタイミング
フリーランスが住民税を支払う場合は「普通徴収」となります。普通徴収では、所得税の確定申告のデータをもとに自動的に税額が算出され、6月ごろ市区町村から「住民税決定通知書」とともに納付書が送付されます。
納付書は「一括納付」と「分割納付」の2種類が同封されているので、どちらか都合のよい方を選択しましょう。一括納付する場合支払期日は6月末まで、分割払いを選択した場合は6月末・8月末・10月末・翌年1月末が支払期日です。期日までに支払いができないと、住民税の場合も「延滞税」が課されますので、遅れないように注意しましょう。
支払いは、銀行窓口・口座振替・Pay-easy対応のインターネットバンキングやATM支払い・コンビニエンスストアなどで行えます。最近では、専用Webサイトを利用したクレジットカード決済や、PayPayやLINE Payなどのバーコード決済が可能な自治体も増えており、より簡単に支払えるようになりました。
納付直後に納税証明書を発行する予定がある場合は、銀行窓口やコンビニエンスストアなど、領収印のある領収書が発行可能な窓口で納めましょう。料金が支払われたという収納情報は、自治体に届けられるまでにおよそ2週間程度かかります。その間に納税証明書を発行する場合は、納付の確認として領収書(領収印のある納付書)の提出が必要です。ローン申し込みを控えている際などは、窓口で納付しましょう。
個人事業税の支払いタイミング
個人事業税とは、1年間に事業で得た所得が290万円を超えると課税される地方税の一種です。課税対象の業種が限定されており、全ての人が払わないといけないものではありません。
住民税と同様に確定申告に基づき判断されるため個別の申告手続きは必要なく、都道府県から8月ごろに送付される「納税通知書」をもとに納付します。一般的には、納付額が1万円以下の場合は一括納付(8月末期日)、それ以上の場合は分割納付(8月末・11月末期日の2分割)となるよう納税額をあらかじめ分けた納付書になっています。
消費税の支払いタイミング
基準期間の課税売上高が1,000万円を超え課税事業者となった場合や、インボイス制度に対応するためにあえて課税事業者となった場合、フリーランスでも消費税を納税する義務が発生します。
原則として、毎年3月31日までに前年1月1日~12月31日の課税期間分を納めます。所得税の確定申告と期限が異なること、消費税の確定申告の期限と納付期限が同じであること、納税通知書等の送付はないことに注意し、納税期限に遅れないように注意しましょう。
支払いは、銀行窓口・口座振替・クレジットカード決済、スマホアプリ決済、コンビニエンスストアe-Taxの利用者はインターネットバンキングからも納付可能です。
フリーランスが払う税金の種類や計算方法などについては、以下のページでも詳しく触れています。シミュレーションを用いて具体的に解説していますので、ぜひご覧ください。
関連:「個人事業主の税金はいくら?税理士はいらない?税金の種類やシミュレーションなども含めて解説!」
フリーランスが払う税金の計算方法
フリーランスは納税額の計算も、全て自分で行わなければなりません。税金の種類によってそれぞれ計算方法が異なるため、慣れない人では時間がかかります。納税時期になって慌てないように、あらかじめ把握しておきましょう。
所得税の計算方法
フリーランスが納める税金の中で大部分を占める税金が所得税です。経費や控除など漏れのないよう注意しましょう。所得税の計算方法は、下記の手順で計算します。
- 年間収入を算出する
- 年間収入-経費=所得
- 所得-所得控除=課税所得
- (課税所得×課税所得に応じた税率)-税額控除=所得税額
なお、2037年までは「復興特別所得税」として所得税額の2.1%も併せて申告・納税します。これは東日本大震災復興のために創設された税金で、原則全ての納税者が納める必要があります。
前年1月1日~12月31日までを対象に年間収入を算出しますが、「売上が確定しているものの代金は未受領」という取引も含まれるため注意しましょう。
フリーランスの業種によっては、報酬額から源泉徴収されている場合があります。この場合、源泉徴収前の金額で年間収入を計算し、その後上記の通りに納税額を算出します。納税額が源泉徴収額より少ない場合は税金の払いすぎとして還付が受けられますので、経費や控除など漏れなく計算をしましょう。
住民税の計算方法
フリーランスが納める個人住民税は、確定申告のデータをもとに自治体が算出するため、納税者が申告する必要はありません。しかし、税額をあらかじめ知り手取りを把握しておくことは、生活費や事業の計画を作成するためにも重要です。どれくらいの金額になるのか計算し、納税に備えておきましょう。
住民税は、下記のとおり2階建ての仕組みです。
- 「所得に関わらず均等に負担する部分(均等割)」が都道府県1,000円+市区町村3,000円
- 「所得に応じ金額が変動する部分(所得割)」が一律10%
所得割は原則一律10%(都道府県民税が4%、区市町村民税6%)ですが、自治体によっては独自に減税を行っているため、実際には住民税の安い地域・高い地域が発生します。
一般的に住民税の所得割にかかる計算方法は、下記の通りです。
- (前年の所得-青色申告控除-所得控除)×10%-税額控除
所得税を算出した際の計算式と似ていますが、控除の限度額が所得税と住民税で異なりますのでWebサイトなどで確認してください。例えば、所得控除のうち基礎控除では、所得税では48万円控除対し住民税では43万円、生命保険料控除の限度額は、所得税では12万円控除に対し住民税では7万円など、細かな違いがありますので注意しましょう。
個人事業税の計算方法
個人事業税の計算方法は、下記の通りです。
- (収入-経費-事業主控除290万円)×税率=個人事業税額
個人事業税は、所得(収入-経費)が290万を超えた部分に対して税金がかかります。業種によって税率が異なるため、自分の事業の税率を当てはめて計算してみましょう。
消費税の計算方法
課税事業者となったフリーランスが消費税を納める方法は、「原則課税」「簡易課税」「2割特例(インボイス対応のために免税事業者から課税事業者となった場合のみ)」の3種類です。まずは、どの課税方式を利用するのか決定しましょう。
「原則課税」は、仕入と売上にかかった消費税の差額を計算し、納税額を算出します。
- 課税売上にかかる消費税額-課税仕入にかかる消費税額=消費税納税額
原則課税は正確な納税額を算出できるため、大規模な設備投資などで支払った消費税が多い際は、消費税が還付される可能性があります。一方で、計算など事務作業に負担がかかるという点がデメリットです。
「簡易課税制度」は、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を用いて簡易的に納税額を算出する方法です。事務作業が簡単になる一方、消費税の還付は受けられません。また、この制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が事前に届出を提出している場合のみ利用できること、届出書を提出したら最低2年間は継続しなければならない点にも注意が必要です。
- 課税売上にかかる消費税額-(課税売上にかかる消費税額×みなし仕入率)=消費税納税額
実際の仕入率が簡易課税方式の「みなし仕入率」よりも多い場合には、原則課税を選択すると納税額がより少なく済むでしょう。
「2割特例」とは、もともと免税事業者であったもののインボイス制度に対応するために課税事業者となった事業者のみを対象とした、課税売上にかかる消費税の8割を控除できる特例です。
- 課税売上にかかる消費税額-(課税売上にかかる消費税額×80%)=消費税納税額
消費税納税額の場合、2割特例の対象であれば事前手続き不要で一律に計算すればよいので事務作業が大幅に軽減されます。簡易課税制度でみなし仕入れ率の低い(40~70%)業種の場合は、2割特例の方が納税額が低く抑えられます。ただし、この特例は2026年事業分(2027年確定申告分)までの期間限定であるため注意しましょう。
フリーランスが高すぎる税金を払えないときの対策
今年の分の税金が源泉徴収される会社員とは異なり、フリーランスは前年度の所得に対し税金を払います。そのため、前年の所得が多い場合、今年の業績に関わらず高額の税金を納付しなければならないことがあります。
支払う税金が高いと感じたときに、フリーランスができる対策をご紹介します。
控除の見直しをしてみる
高すぎる税金を払えないとき、控除の見直しをしてみましょう。課税所得を計算する際に差し引けるような控除の見落としはありませんか?
所得金額から控除した金額が課税所得のため、控除額が大きければ納税額も抑えられますが、所得控除は15種類、税額控除は住宅ローン控除や寄附金控除をはじめ多くの控除があります。これらは個人の事情に合わせて税負担を調整できるようにしたものですが、それぞれ自動的には適用されないため、確定申告で申告しなければなりません。
そのため、節税するためには利用できる控除を漏れなく申告を行うことが重要です。特にふるさと納税などの寄附金控除や医療費控除、雑損控除など、条件を見直してみると利用可能な控除が見つかることもあります。事業の売上や毎年の状況によって適用できる控除が変わることがありますので、毎年ひとつひとつ見直しましょう。
経費で計上できるものを探してみる
フリーランスの場合、経費の計上漏れもよくある見落としです。控除と同様に、経費もきちんと計上すれば納税額を抑えられるポイントですので、見落としがないかチェックしましょう。
一般的に経費というと交通費や交際費、備品購入費などが代表的ですが、業務に使用していれば家賃や光熱費、インターネット料金、スマートフォン通信費なども経費として計上可能です。フリーランスでプライベートと共用している場合には、「家事按分」をして実際に使用している面積や時間から算出した分を経費として計上できるほか、新聞や事業に関連する雑誌や書籍の購入費も経費にできます。
ただし、節税対策のためにむやみに経費を増やすのはおすすめしません。納税額は抑えられますが、手元に残す資金も減ってしまい事業運営費が確保できなくては本末転倒です。
必要な支出を漏れなく経費に計上できるよう、事業で使用したものは普段からプライベートとは別に管理をしておくとよいでしょう。
分割払いが可能かを相談する
税金が払えないからといって、何も対応せずに放置することは避けなければいけません。期日を過ぎても払わずにいると延滞税が課せられ、支払いを促す督促状や催告状が送付されます。それでも納付せずにいると、財産を差し押さえられてしまいますので注意しましょう。
税金の納付が困難なやむを得ない理由がある場合は、一定の条件のもと税務署長の承認を受けて分割して納付できる制度があります。もし税金を払えないことが判明した場合は、必ず期日までに管轄の税務署や市区町村の担当窓口などに相談しましょう。
猶予を設けてもらえるかを相談する
国税は一括納付が原則ですが、納税が困難な場合には申請により「換価の猶予」と「納税の猶予」が認められることがあります。
「換価の猶予」は、1年以内の財産の差押えや換価(売却)の猶予、猶予期間中の延滞税が軽減されます。猶予期間内に完納できない事情があると認められる場合には、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で延長できます。
「納税の猶予」は、災害や盗難、病気などの事情により納税が困難な場合や、本来の期限から1年以上経過したのちに納付すべき税額が確定した場合などに認められる制度で、1年以内の納税猶予ができ、延滞税は免除されます。
制度を利用するには、それぞれに定められている要件に該当し、税務署長に承認される必要があります。納税が困難な場合は、猶予を設けてもらえるか所轄の税務署に相談しましょう。
自己破産を検討する
借金が膨らみ返済に追われ納税できない場合は、自己破産も検討するとよいでしょう。
自己破産をしても税金の支払い義務は免除されませんが、借金の支払いは免責され債権者に財産を差し押さえられることもありません。
病気やけがで収入がなくなり支払いが困難な場合は、まずは税務署や市役所などの相談窓口に速やかに相談しましょう。相談の際は「支払えない事情があること」「支払う意思があること」「支払える目処が立つのはいつか」を伝えることが重要です。誠意をもって説明すれば、税務署も事情を汲んで分割などの相談に応じてくれるでしょう。
ファクタリングの利用を検討する
ファクタリングとは、売掛金を期日前に売却し資金を調達する方法です。手数料が差し引かれますが、借入や融資を受けることなく資金を調達できるメリットがあります。期日前に資金化できるため、至急必要な資金が確保できない際などに利用するとよいでしょう。
法的には「債権譲渡」にあたるため、取引先との契約書に債権譲渡禁止の記載がある場合には利用できません。また、ファクタリング会社への支払いは基本的に一括送金のため、期日に売掛金が入金され次第速やかに送金しなければならない点に注意が必要です。
ファクタリング会社を装ったヤミ金融業者もありますので、事業者を選ぶ際はしっかり調査し信用できる会社を選びましょう。不審な点や心配な点があれば相談窓口や専門家に相談し、違法な取引を行わないように注意しましょう。
フリーランスの税金は毎月支払う必要はなし
フリーランスは会社員と異なり毎月税金を支払う必要はありませんが、支払期日までに各種税金を自分で支払う必要があるので注意しましょう。
確定申告と同じ時期に納税を行う所得税と消費税以外は、申告のデータをもとに納税額が算出されるため6月ごろから各種の納税通知書が届き始めます。分割納付が選択可能なため、事業の資金繰りなどを考慮しながら納付方法を選びましょう。
納税額が負担に感じたら、まずは経費や控除を見直すことがポイントです。税金が払えない場合でも無申告のままでいることは避け、速やかに所轄の税務署や担当窓口へ相談しましょう。納税への誠意を見せ、どのように納税していくかを説明すれば、事情を汲んで分割納付などの相談に応じてくれるでしょう。
いつ、どの税金を、いくら支払うべきなのか、計算方法や資金計画にお悩みの方は、お気軽に小谷野税理士法人へご相談ください。