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M&Aの節税効果を高めるには?税金の種類・税務のポイントを解説!

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M&Aの節税効果を高めるには?税金の種類・税務のポイントを解説!

M&Aの節税効果を高める方法として、退職金や第三者割当増資、欠損金の繰越控除の利用のほか、売却益の相殺などがあげられます。節税効果が期待できる一方で、誤って処理すると逆に多くの税金を課されます。M&Aに関する税務は複雑なため、要注意です。今回は、M&Aで節税効果を高める方法や売り手・買い手、スキーム別に課される税金の種類、申告時期などを解説します。

M&Aに節税効果はある

事業継承・M&Aのイメージ

M&Aとは会社や経営権を取得することを指します。ビジネス規模の拡大や事業の多角化、後継者問題の解決などを目的として、近年増加傾向にあります。

M&Aのスキーム(手法)や、売り手・買い手が個人か法人かによって、税金の種類や処理方法は異なるのが特徴です。適切に処理すると、節税効果が期待できます。

経営権のみを移転する第三者割当増資の利用や、退職金の活用などの方法があるものの、場合によっては損する可能性もある点に注意が必要です。

M&Aにかかるデューデリジェンスや仲介業者への費用などについて、売り手・買い手ともに補助金を活用できるケースがあります。要件を満たすと申請できる補助金は「事業承継・M&A補助金」で、補助金の活用期間、M&Aのクロージング期間などが決まっています。

M&Aでは多額の費用がかかる傾向にあるため、節税対策や補助金などをうまく活用し、費用負担を軽減できるとよいでしょう。

M&Aの節税効果を高める方法

節税

M&Aで節税効果を高める方法は、以下の表の通りです。

退職金を活用する

  • 株式譲渡と同じ税負担になるまで退職金をもらうと、節税できる
  • 退職金の額を高く設定しすぎると、税務調査で指摘されるリスクがある
  • 譲渡金額の一部を退職金とすると、手取り額が増えるケースがある

第三者割当増資を活用する

  • 特定の第三者に新株を受ける権利を与え、増資する
  • 増資によって資本金・資本準備金が増加するため、法人住民税の均等割が増加する可能性がある
  • 売り手側の持株比率を50%未満にし、買い手に経営権を譲り渡す
  • 増資後に登記手続きをする必要がある
  • 原則として、株主総会で特別決議が必要である

欠損金の繰越控除を利用する

  • 繰越欠損金がある法人の場合、売り手と買い手が同業者であるなどの要件を満たすと、翌期以降の黒字と最大10年間に渡り相殺できる
  • 欠損金が生じた事業年度に、青色申告している法人が対象である
  • 資本金1億円以下の法人の場合、全額を損金算入できる
  • 資本金1億円超の法人や、資本金5億円以上の法人の完全子会社などの場合、損金算入できるのは一部である
  • 欠損金が生じた事業年度以降も連続して確定申告する必要がある
  • 帳簿書類など、10年間の保存が求められる

株の取得費5%を適用する

  • 株式譲渡所得税の計算では、株式の取得費として「出資額や先代から引き継いだ原価など」or「売値の5%」のいずれか有利な方を選択できる
  • 株の取得価額として、株価の5%を適用してもよい
  • 取得費が高いほど、譲渡所得をさげられる
  • 仲介会社への手数料も株式の譲渡費用に含められる

買い手のニーズに合わせる

  • 買い手の求める資産のみの売却で、買収金額を抑える
  • 買収金額が低くなると、納税額も少なくなる
  • 以下のいずれかの方法を選択する
  • 別会社に売却後、買い手に株式を譲渡することで譲渡価額をさげる
  • 買い手の希望する資産のみ譲渡できるため、株式譲渡よりも事業譲渡を選択する
  • 会社分割することで、譲渡する資産を絞る

売却益を相殺する

  • 大規模な設備投資などを実施し、譲渡益と相殺する
  • 法人の場合、すべての損益が課税対象である
  • 手元の資金が減る点に注意が必要である

M&Aの節税対策を正しく実施できるかによって、納税額が数百万〜数千万円単位で変わるケースがあります。内容や手続きが複雑な場合が多いため、税理士へ相談すると、結果として有利になる事例が多いです。

M&Aで売り手・買い手に生じる税金

課税所得と税金の計算

M&Aをするとき、売り手と買い手に納税の義務が生じるケースがあります。具体的には以下の表にまとめました。

M&Aのスキーム

売り手に生じる税金

買い手に生じる税金

株式譲渡

【個人】

  • 所得税
  • 復興特別所得税
  • 住民税

【法人】

法人税

  • 原則として非課税である
  • 贈与税・法人税:時価よりも極端に低い価格で譲渡されるときに生じる

事業譲渡

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 地方法人税
  • 消費税:課税資産がある場合に生じる
  • 不動産取得税:不動産取得時、一定要件を満たすと生じる
  • 登録免許税:不動産取得後、登記すると生じる

株式譲渡による譲渡所得は分離課税方式で、税率は一定なのが特徴です。以下の通り、所得税の課税方法には総合課税と分離課税があり、対象や税率が異なるため、押さえておくとよいでしょう。

所得税の課税方法

該当する所得

分離課税

  • 利子所得
  • 退職所得
  • 山林所得
  • 譲渡所得:土地・建物・株式の売却

総合課税

  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 譲渡所得:ゴルフ会員権などの売却
  • 一時所得
  • 雑所得

関連記事:M&Aによって発生する税金はなに?税率についても解説

M&Aのスキーム別に必要な税金

M&Aするときは、以下の通りスキームによってもかかる税金が異なります。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 合併・会社分割

以下で詳しく解説します。

関連記事:子会社売却の仕訳はどうする?基本ルールと実務のポイントを解説

株式譲渡

株式譲渡で売り手側にかかる税金は以下の表にまとめました。

個人

  • 所得税
  • 住民税
  • 復興特別所得税

法人

  • 法人税
  • 法人事業税
  • 法人地方税

金額の計算方法は以下の通りです。

  • 個人:譲渡価額−(取得価格+譲渡経費)✕20.315%
  • 法人:譲渡金額−(取得価格+譲渡経費)✕(法人実行税率:約30%)

本来の株価よりも低い株式を譲渡する場合など、買い手側に贈与税が課されるケースがあります。

令和7年から高額所得者の最低税率制度が導入されるため、所得税の計算がより複雑になります。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の一部もしくはすべてを第三者に売却・譲り渡すことです。各社の戦略に基づいて実施されています。事業譲渡でかかる税金は以下の通りです。

【売り手】

法人税など

以下の税金が課せられる

  • 法人税
  • 事業税
  • 地方法人税
  • 法人住民税

【買い手】

消費税

以下の課税対象資産がある場合に課せられる

  • 土地を除く有形固定資産
  • 無形固定資産など
  • 営業権
  • 棚卸資産

不動産取得税

  • 建物や土地等を取得すると発生する
  • 固定資産税評価額✕4%(土地は3%)(宅地:固定資産税評価額✕1/2)で算出する

登録免許税

  • 不動産取得後、登記するときに発生する
  • 原則として固定資産税評価額✕2%で算出する

支払った対価と引き受けた資産の時価との差額が「営業権」です。買い手は営業権を5年で償却できるため、営業権の大きい取引の場合、節税効果が高まる可能性があります。

合併・会社分割

会社法に則りM&Aで会社組織などの変更する方法として、合併や分割があげられます。合併とは、複数の会社を1つに統合することです。一方、会社分割は、別の会社に対して権利や義務の一部またはすべてを継承させることを指します。

非適格合併・非適格分割と認められると、以下の通り課税されるケースがあります。

【合併】

法人税

譲渡益があるときに発生する

登録免許税

  • 不動産評価額✕4/1,000で算出する
  • 土地建物に関する軽減措置がある

【会社分割】

消費税

  • 承継会社で発生するケースがある
  • 原則として不課税取引である

法人税

譲渡益があるときに発生する

不動産取得税

  • 平成20年4月1日から令和3年3月31日までに取得した不動産が対象
  • 不動産の固定資産評価額の3%or4%を納税する

登録免許税

  • 法人登記or不動産登記するときに発生する
  • 【法人登記】分割会社:30,000円納税、承継会社:資本金の1,000分の7の額を納税
  • 【不動産登記】分割した年の前年4月1日から、分割した年の3月31日までの登記が課税対象
  • 不動産評価額の2%納税

税制適格要件を満たすと節税対策につながるため、正確に理解しておくのは重要です。

関連記事:合併と買収の違いとは?種類やそれぞれのメリット・デメリットについて解説

M&Aで生じる税金の申告時期

M&Aによって譲渡所得・譲渡益が発生した場合、以下の通り法人か個人かによって、申告や納税の時期は異なります

法人

  • 取引が発生した事業年度の終了日の翌日から、2ヵ月以内に申告し納税
  • 特例を適用すると、申告期限を1ヵ月延長できる

個人

通常、取引が発生した年の翌年2月16日から3月15日の間に、確定申告し納税

やむを得ない事情があると認められる法人は、申告期限を延長できるケースがあります。特例を適用するには、事業年度終了日までに、税務署へ申告書を提出する必要があります。申告期限は延長できるケースがある一方、法人税の納付期限の延長は不可能です。

個人の場合、M&Aで事業所得が発生した年の翌年6月頃、住民税の納付を求められます。申告期限を過ぎるとペナルティを課されるケースがあるため、法人・個人ともに期限を守るのは重要です。

参考:C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請

M&Aに関するよくある質問

M&Aの税務に関してよくある質問をまとめました。以下で詳しく解説します。

M&Aにより10億円で会社売却すると税金はいくらですか?

状況によって異なります。

例えば、資産3億円の法人が10億円で事業譲渡する場合、売り手にかかる法人税は(譲渡益7億円✕法人実行税率:約30%=約2.1億円)と求められます。

個人や法人、M&Aのスキームなどにより、課せられる税金の種類などが変わると知っておく必要があります。

個人事業主がM&Aで事業譲渡すると税金はかかりますか?

譲渡所得に対して、所得税がかかります。

譲渡する資産の内容によって、総合課税か分離課税のどちらになるのかが決定します。基本的には消費税が課せられるものの、土地や有価証券などを譲渡する場合、非課税となるのが特徴です。

M&Aで税金の優遇措置は受けられますか?

はい。

中小企業経営強化税制や、賃上げ促進税制など、中小企業はさまざまな優遇措置を受けられる可能性があります。優遇措置を受けられると、納税の負担を軽減させられるのがメリットです。

関連記事:中小企業の税制優遇とは?令和5年度の改正内容と活用方法のポイント

M&Aで消費税はかかりますか?

状況によります。

一般的なM&Aである株式譲渡の場合、原則的には消費税の課税対象外です。譲渡手数料など、株式譲渡にかかる費用は課税対象となるのが特徴です。

関連記事:【税理士監修】消費税の確定申告とは?やり方や計算方法、インボイス制度との関係

M&Aで節税効果を高める方法の相談は税理士へ

M&Aで節税効果を高める方法や売り手・買い手、スキーム別の税金の種類、申告時期などを解説しました。

節税効果を高めるには、退職金や第三者割当増資の活用のほか、株の取得費として5%適用などの方法があげられます。

一方で、誤って処理すると逆に多くの税金を課せられるケースがあるため、注意が必要です。M&Aをするときは、税理士などの専門家と相談しつつ、慎重に進めるのが賢明です。

小谷野税理士法人は、補助金申請や節税対策など、4,000社以上のサポート実績があります。M&Aを実施する場合、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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