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会社設立の基礎知識

経営者は押さえておきたい!社会保険料の「未払金」と「未払費用」の違いと扱い方

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経営者は押さえておきたい!社会保険料の「未払金」と「未払費用」の違いと扱い方

社会保険料の経理処理では「未払金」と「未払費用」の使い分けが重要なポイントです。しかし、取引内容や仕訳のタイミングによって混同しやすい項目と言えます。本記事では、両者の違いや適切な仕訳方法を整理し、経営者が知っておきたい実務上の注意点を解説します。正しい理解は、経理業務の精度向上と経営判断の土台作りに役立つでしょう。

社会保険料の概要と役割

社会保険料は、健康保険や厚生年金保険、雇用保険などの制度を支えるための財源であり、労働者の生活や福祉を守ることを目的としています。

企業は従業員の給与から一定額を天引きし、会社負担分と合わせて納付します。このため、社会保険料は企業の中でも大きな出費の1つなのです。

会計処理では、給与に対応する期間に合わせて費用を計上する必要があります。たとえ未払いの状態であっても、適切に記帳しておくことで、正確な損益の把握ができるようになります。

社会保険料の処理は法律により義務付けられているため、対応を怠ると法的リスクが発生する可能性もある点に注意が必要です。企業の社会的責任にも関わるため、正確な処理が必要です。経理担当者は、仕訳や勘定科目の理解はもちろん、支払い期日の管理にも注意を払い、滞りなく対応するようにしましょう。

関連記事:社会保険とは?種類や加入条件、負担割合などを解説

社会保険料の仕訳時に注意するべき5つのポイント

社会保険料の仕訳は、正確な会計処理と資金管理のために重要な業務のひとつです。以下の5つのポイントを意識すれば、仕訳ミスや管理上のトラブルを防ぎ、財務諸表の信頼性向上にもつながります。

会社負担分と従業員負担分を明確に分けて処理する

会社負担分は「法定福利費」として計上し、支払い金額が確定していない場合には「未払費用」として賃借対照表に記載します。

一方、従業員負担分は給与から控除した後「預り金」として管理します。区別が不明確なまま処理されてしまうと、財務諸表の信頼性が損なわれるだけでなく、資金管理にも支障をきたす恐れがあるため注意しましょう。

発生主義に基づく仕訳を行う

社会保険料の仕訳では、「発生主義の原則」に基づいて処理を行うことが求められます。これは、実際の支払日が翌月以降であっても、費用が発生した月の分として計上する必要があるという考え方です。

支払日が翌月以降でも、その期間の費用として仕訳し、実態に即した損益計算を保持しましょう。

「未払費用」と「未払金」の使い分けに注意する

会社負担分の社会保険料のように、毎月継続的に発生する費用は「未払費用」で処理し、単発の負債は「未払金」で処理するのが適切です。この区分が不明確なままだと、決算時の費用把握や資金繰り予測に誤差が生じ、財務管理にも悪影響を及ぼす可能性があります。

ただし、決算時に支払金額が確定した社会保険料は未払費用から未払金に振り替えるケースも考えられます。

預り金の管理を徹底する

従業員負担分の社会保険料は、給与から控除されたあと会社が一時的に預かるものであり、会計上は費用として計上されません。

この金額は「預り金」として負債に分類され、後日、年金事務所などへ支払われます。そのため、預り金の残高は定期的に確認し、正確に管理することが重要です。こうした管理を徹底すれば、支払い漏れなどトラブル防止にもつながります。

法令改正や料率変更に対応する

社会保険料の算定基準や負担割合は、法令の改正や制度の見直しによって変更されるケースも少なくありません。

そのため、経理担当者は常に最新の情報を把握し、必要に応じて仕訳ルールや使用する勘定項目を見直す必要があります。変化に柔軟に対応し、制度に即した正確な経理処理を継続しましょう。

5つのポイントを意識して会計処理を行うことで、社会保険料に関する正確な会計処理が行えます。

加えて、資金繰りの見通しもより明確になり、企業全体の財務管理に好影響を与えるでしょう。経理担当者は、制度の変化に意識を向けつつ、日々の仕訳作業においてもミスのない処理の徹底が求められます。

関連記事:【事業主向け】社会保険料を抑える7つの方法と3つのデメリット

未払金と未払費用の基礎知識

「未払金」と「未払費用」は、どちらも「支払いがまだ済んでいない負債」であり、企業会計において基本となる概念です。ここでは、それぞれの違いや特徴、具体的な適用例について詳しく解説していきます。

未払金と未払費用の共通点

「未払金」と「未払費用」は、いずれも企業が取引やサービスを受けたものの、まだ支払いが済んでいない債務である点が共通しています。

「発生主義の原則」に基づき、取引が発生した時点で帳簿に記録され、貸借対照表の負債に計上されます。これにより、企業の財務状況や損益が正しく反映され、資金繰りや経営判断にも役立つのです。

また、どちらも支払いが行われるまでの期間、企業の短期負債として扱われます。そのため、正しく管理しなければ支払予定の混乱や資金計画のズレにつながる恐れがあるため注意が必要です。

経理担当者はそれぞれの性質を理解し、適切な勘定科目を選ぶことが求められます。

未払金と未払費用の違い

両者の主な違いは「費用が継続的に発生するかどうか」です。

未払金

「単発的な取引」に対して、代金が未払いとなっているケースに用いる勘定項目

例:備品の購入代金や、弁護士など外部の専門家への報酬

未払費用

「継続的に発生する費用」のうち、未払いのものに使われる勘定項目

例:社会保険料や賃借料、利息

区分の違いにより、会計処理のタイミングや仕訳方法が異なるため注意しましょう。

未払金はすでにサービスや商品の受け取りなど取引が完了しており、支払い義務が確定しているものとして扱われます。一方、未払費用は「発生主義の原則」に基づき、サービスの提供期間に対応した費用を正しく期間配分するために使われます。

企業が未払金と未払い費用の勘定科目を正しく使い分けると、費用と発生期間との対応関係が明確になり、資金繰りの透明性が高まります。

取引の内容や発生頻度に応じて勘定科目を適切に使い分けることは、正確な財務管理を行う上で欠かせないポイントだと言えるでしょう。

関連記事:法人経理の年間スケジュールまとめ!年間の業務内容を徹底解説

未払金の代表的なケース

お金に困る男性のイメージ

未払金として処理される代表的なケースには、以下のようなものがあります。

備品購入代金の未払い

オフィス用の机や椅子、パソコンなどの備品を購入し、まだ代金の支払いが完了していないケース

スポットの外注費

一度きりの業務委託や外注作業に対して発生した費用で、当期中に支払いが済んでいないケース

コンサルティング費用や専門家への報酬

税理士や弁護士などの専門家に対する単発の業務依頼に関して、報酬の支払いが未完了の場合

備品や機器の修理代

突発的な修理費用で、まだ支払いが済んでいない場合

展示会やイベント出展費用

イベントの参加費用や設営費など、一時的に発生し支払いが後になる費用

これらの取引は、いずれも継続性がなく「一時的または単発の取引」である点が特徴です。未払金は貸借対照表の「負債」として計上され、取引が発生したタイミングで正確に仕訳する必要があります。

中小企業をはじめとする多くの企業で、経理処理を効率化するために未払金は広く活用されていますが、勘定科目の使い分けや記帳の正確さが求められます。

関連記事:複式簿記の5要素とは?単式簿記との違いやメリット・デメリットついても解説

未払費用の代表的なケース

ここでは、未払い費用の代表的な項目である「賃借料」「保険料」「支払利息」の会計処理について具体的に解説します。なお、未払い費用に関しては取り扱う項目ごとに前提や会計処理が異なるため、箇条書きではなく各項目ごとにまとめました。

賃借料

賃借料とは、事務所や店舗などの不動産を借りる際、毎月発生する定額の費用です。会計上は「賃借料」という勘定科目で処理されます。実際の支払いが翌月以降でも、使用した期間に応じた金額を未払費用として計上する必要がある点に注意しましょう。

これは、賃貸契約が継続的なサービスの提供に該当するためであり、発生した期間に応じた費用を損益計算書に反映させることが求められるからです。

なお、賃貸契約の内容や契約条件によっては賃料が変動するケースもあるため、契約内容を事前に確認し、「賃借料」として計上することが重要です。

保険料

保険料には、社会保険料や労働保険料のほか、火災保険や賠償責任保険なども含まれます。特に社会保険や労働保険料は、給与と連動して毎月継続的に発生するため、発生した月の費用として未払費用に計上するのが一般的です。

たとえば、4月分の保険料を5月に支払う場合でも、4月分として損益計算書に費用計上し、貸借対照表には未払費用として記載します。この処理により、期間ごとの費用が正確に反映され、会計情報の信頼性が高まります。

支払利息

支払利息は、銀行などからの借入金に対して定期的に発生する費用です。支払日が月末や期末をまたぐ場合には、発生済みかつまだ支払っていない利息分を未払費用として計上する必要があります。

たとえば、決算期をまたいで支払いが行われる場合でも、当期に発生した利息はきちんと費用として認識し、損益計算書と貸借対照表に反映させることが大切です。利息も継続的な発生が見込まれる費用であるため、物品購入の未払いを示す「未払金」とは区別されます。

未払費用として利息を処理することで、借入金の状況や返済計画の把握がしやすくなり、資金繰りの精度向上にもつながります。

社会保険料の処理方法

売上高の計算

社会保険料の経理処理は、会社と従業員の負担分を区別し、適切な勘定科目を用いることが重要です。以下では、主な処理方法を科目別に解説します。

会社負担分:法定福利費

会社負担分の社会保険料は「法定福利費」のとして計上します。また、実際の支払が翌月以降となる場合は、「未払費用」の勘定項目で処理するのが一般的です。

未払費用として正しく記帳することで、支払いが翌月であっても当期の費用として計上でき、貸借対照表にも正確に反映されます。

会社負担分の社会保険は企業の重要コストであるため、会計ソフトや帳簿には支払期日と金額を正確に入力しましょう。さらに、勘定科目の選定にも注意することで、経理業務の正確性向上につながります。

従業員負担分:預り金

従業員負担分の社会保険料は、労働者が給与から控除され会社が一時的に預かって支払うものです。一般的に経理上は「預り金」として計上します。

この「預り金」は会社の資産ではなく、後日、社会保険事務所に支払う義務があるため、明確に区別して管理する必要があるのです。

従業員負担分の預り金の処理

従業員負担分の社会保険料は、毎月の給与から控除され、会社が一時的に「預り金」として管理します。この預り金は会社の資産ではなく、後日社会保険事務所などへ支払うことを前提とした一般的な負債として扱われます。

会計上は、預り金を貸借対照表の「負債」科目に計上し、会社の資金とは明確に区別することが重要です。

特に社会保険料については、「未払金」ではなく「預り金」として正確に仕訳すると、企業の帳簿の信頼性が高まります。また、預り金の記帳ミスや処理の曖昧さは、監査時の指摘やトラブルの原因となるため、日頃から丁寧な管理を心がけましょう。

関連記事:社会保険料の法人負担割合を基礎から計算方法まで丁寧に解説

まとめ

社会保険料の経費処理では「未払金」と「未払費用」の使い分けが大切です。会社負担分の社会保険料は「法定福利費」として処理し、従業員負担分は「預り金」として貸借対照表の負債に計上します。未払の社会保険料は、未払費用として処理しましょう。

正しく区分することで、財務諸表の正確性が高まり、資金繰りの見通しも良くなります。そのため、支払時期や負担区分を日頃から意識しましょう。また、不安がある経営者の方は、税理士などの専門家からサポートを受けると安心です。

保険料の仕訳についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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