将来キャッシュフローとは、企業が将来創出すると予測される現金の流れの総額を指します。企業価値評価や投資判断の基礎資料として幅広く活用されていて、ビジネスの成長性や収益性を把握する上で重要な指標です。本記事では、この指標の具体的な計算方法や活用シーンについて詳しく説明していきます。正確な数字を割り出し、経営判断に役立ててください。
目次
将来キャッシュフローとは
将来キャッシュフローとは、将来における一定期間にわたり、企業が事業活動を通じて生み出す現金収入と支出の差額を示したものです。
この指標は利益だけでなく、実際に手元に残る現金の動きを重視します。そのため、会計上の利益とは異なり、現金ベースでの実態が把握できます。
企業価値を算定する際には、この将来キャッシュフローによる評価が欠かせません。ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)として知られるこの評価手法は、投資判断やM&Aの場面で広く利用されています。
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将来価値と現在価値の違いとは
将来キャッシュフローにおける「将来価値」と「現在価値」は、資金の時間的な価値の違いを表す重要な概念です。
将来価値は、現在手元にある資金が一定期間後にどれほどの価値になるかを示します。一方、将来に受け取る予定の資金を現時点でどれだけの価値に換算できるかを示すのが現在価値です。財務の基礎知識として、両者の違いをしっかり区別できるようにしましょう。
将来価値とは
将来価値は、今手元にある資金や資産が、一定期間後にどれだけ増えるかを予測する指標です。主に利率や運用収益を反映して計算されます。例えば、投資や貯蓄を行った資金に、毎年間の利回りをもとに計算するのも将来価値を求める手順の1つです。
これにより、資産形成の見通しや目標達成への計画を立てやすくなります。この指標は、資金が時間経過とともにどの程度増えるかを示すため、事業の成長予測や投資評価などの場面で重宝されます。
現在価値とは
現在価値は、将来受け取る予定の資金や利益を、現在の価値に換算したものです。例えば、10年後に受け取る1,000万円の価値は今日の1,000万円とは異なるように、資金の価値は時間が経つと変化するため、それを割引して評価するのです。
割引率は、リスクや期待する収益率を反映し、将来の金額を現在の価値に調整します。これにより、将来の利益やキャッシュフローを現在の判断材料として活用でき、正確な資産評価に繋がるのです。
将来キャッシュフローの現在価値を計算する方法
将来キャッシュフローの現在価値を算出するには、まずキャッシュフローの予測を立てましょう。企業の事業計画や過去の実績を踏まえた上で、予想損益計算書や貸借対照表を用いて財務諸表の分析を行い、収益性や資金の流れを詳細に把握します。
その後、営業利益、税率、減価償却費、運転資本の増減、設備投資額などをもとに各年度のフリーキャッシュフロー(FCF)を計算しましょう。これで将来の現金収入と支出の実態を反映したキャッシュフローの予測が可能になります。
将来キャッシュフローを予測する
将来キャッシュフローを予測するには、企業が将来的に生み出す現金の入出金を詳細に見積もる必要があります。営業利益から税金を差し引いた後、減価償却費を加算し、運転資本の増減や設備への投資も考慮した上で、正確に予測を行いましょう。
特に、運転資本は売掛金や買掛金、棚卸資産の増減に連動するため、現金の流れに大きな影響を及ぼします。また、設備投資額も将来の成長や事業の維持に欠かせない要素ですので、十分な検討を行いましょう。
将来キャッシュフローを現在価値に割り引き合算する
将来キャッシュフローは、把握したままの数値を単純に用いるだけでは不十分と言えます。なぜなら、お金の価値は時間の経過によって変動するため、将来のキャッシュフローを現在価値に換算する必要があるからです。
その際に用いられるのが、投資対象である企業や有価証券のリスク、期待リターンなどを考慮して算定される「割引率」です。
割引率は「現在価値=将来キャッシュフロー÷(1+割引率)のn乗」という計算式で求められます。
「n」は「何年後か」を表しており、年数が長くなるほど現在価値は小さくなる計算です。この手法は事業評価や投資分析の分野でも広く活用されています。
特に、株式、債券、投資信託などの有価証券においては重要な分析要素となっていますので、知識として頭に入れておきましょう。
現在価値に割り引かれたキャッシュフローを合算すると、企業や有価証券の本質的な事業価値や投資価値が明らかになります。投資や経営戦略などの意思決定の精度がより高まると言えるでしょう。
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将来キャッシュフローを活用する方法
将来キャッシュフローは、企業や投資の意思決定において欠かせない指標です。事業価値の評価や資金繰り計画にも用いられ、経営の見通しを立てる上での重要な基盤と言えるでしょう。
将来キャッシュフローを活用することで、企業は自社の将来価値を客観的に評価でき、資本コストや投資回収期間の見極めにも役立ちます。
具体的には、将来キャッシュフローの予測により、自社がどの程度の収益や支出が見込めるかを把握できるようになります。
この数値に基づいて投資案件の採算性や新規事業の持続可能性を分析すると、合理的な判断を下せるようになるでしょう。現在価値への割引や将来的な成長シナリオを組み合わせれば、より正確な企業評価に繋げられます。
また、資金調達の場面では、将来キャッシュフローの提示は銀行や投資家に対して返済能力や利益の見通しを具体的に説明する材料となります。精度の高いキャッシュフロー予測は、信用力の向上や有利な金融条件の獲得にも直結すると言えるでしょう。
さらに、キャッシュフローの動向を定期的にモニタリングし、実績値と予測値を比較する習慣をつけましょう。
経営計画の軌道修正や改善ポイントの発見も容易になり、経営環境の急な変化にも柔軟に対応しやすくなります。このように、将来キャッシュフローの活用は、企業の健全な運営や持続的な成長を支える重要な要素と言えるのです。
まとめ
ここまで見てきた通り、将来キャッシュフローは、企業が将来的に生み出す現金の流れを表し、事業価値の評価に欠かせない指標です。資金調達や経営計画の策定、投資判断を支える重要な基盤となります。
具体的な算出プロセスとしては、営業利益や税率、減価償却費、運転資本の変動、設備投資額を反映したフリーキャッシュフローを年ごとに予測します。その上で、割引率による計算で現在価値に換算して合算しましょう。
こうして算出された将来キャッシュフローを、ぜひ実践的な意思決定に役立ててください。企業の成長戦略の見直しやリスク管理にも役立つため、財務の健全性を高めるうえで有効な材料となるでしょう。
将来キャッシュフローについてお困りの方、あるいは、専門家の知見を得てさらに理解を深めたい方は、ぜひ小谷野税理士法人までご相談ください。