補助金の利用を検討する方の中には、消費税がかかるのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。中でも、事業を経営中の方にとっては、会計処理における税区分や控除について把握しておきたい項目です。この記事では、補助金と消費税の関係性を中心に、不課税となるものや注意点について解説します。補助金はさまざまな分野に導入されており、注目されている項目の一つです。消費税について押さえつつ、自身に該当する補助金があれば早速申請してみましょう。
目次
補助金の種類・税区分
ここではまず、補助金の種類について押さえておきましょう。一般的に、事業経営に利用できる補助金は以下のものがあります。
名称 | 概要 |
事業再構築補助金 |
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小規模事業者持続化補助金 |
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IT導入補助金 |
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ものづくり補助金 |
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補助金とは、国・自治体が民間企業や団体などへ給付するお金のことです。政策目標を達成できる事業をさまざまな分野で募集し、金銭を給付して取り組みをサポートします。
なお、融資等とは違い返済義務はないものの、事業の取り組みをサポートするための補助のため、前もって資金が確保できるわけではありません。つまり、事業が進んでいる段階での給付が一般的です。事業を展開する前の資金調達としては活用が難しいことを覚えておきましょう。
さらに、利用に際しては審査があるため「申請すれば必ず利用できる」といったわけではない点にも注意しましょう。
個人事業主の補助金についてはこちらの記事でまとめています。興味のある方はこちらもぜひご覧ください。
関連記事:2024年|個人事業主が受給できる給付金は?持続化給付金についても解説
消費税における税区分
補助金の消費税における税区分について把握する前に、まずは消費税の税区分について押さえておきましょう。一般的に、消費税の税区分は下表のように4種類あります。
消費税の税区分 | |
課税区分 | 一例 |
課税取引 |
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非課税取引 |
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免税取引 |
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不課税取引 |
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上表のように補助金は不課税取引に該当することから、消費税はかかりません。消費税の非課税取引についてはこちらの記事でまとめているので、この機会に併せてご覧ください。
関連記事:消費税の非課税取引とは|免税取引との違いや不課税、対象について
なお、一般的に課税対象となる取引は下表の通りです。
課税対象となる取引 | |
対象 | 詳細 |
資産の譲渡・貸付・役務の提供 |
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対価を得て行うもの |
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上表のように、譲渡や貸付等を行った場合は課税対象です。補助金はこれらに該当していないため、消費税がかからないことが理解できるでしょう。
しかし、補助金は会計上「収益」とみなされるため、消費税はかからなくても法人税や所得税の課税対象になります。
ただし厳密には「営業外収益」に分類される利益です。そのため補助金を利用した際は、事業で出た収益全体から経費等を差し引いた金額が法人税や所得税の課税対象となるでしょう。
関連記事:事業承継補助金・引き継ぎ補助金とは?対象経費や対象者について解説
補助金に税金が生じる理由
補助金に消費税はかからないものの、法人税や所得税が生じるのは、補助金は事業運営において支払ったコストを補填する意味合いを持つからです。
例えば、A社の事業運営が頓挫し、売上の代わりとなる補助金を利用した場合です。この場合、売上の代わりとなる補助金を利用しているため、本来出るはずだった売上と同様に計上しなければなりません。
補助金は、事業の資金繰りの改善を目的としています。そのため、必要な部分に充てた補助金については、法人税や所得税が発生するのです。
なお、一部ではありますが、個人の場合は非課税となる補助金もあります。
- 新型コロナ感染症対応休業支援金
- 新型コロナウイルス感染症対応休業給付金
- 雇用保険の失業給付等
- 生活保護の保護金品
- 児童(扶養)手当
- 被災者生活再建支援金など
さらに所得税法においては個人の所得に関して非課税とする項目もあります。
- 学生支援緊急給付金
- ベビーシッター利用支援事業における助成
- 東京都認証保育所の保育料助成金など
補助金に消費税はかかりませんが、法人税や所得税の課税対象です。しかし、補助金を上手に活用できれば、事業範囲を広げられるきっかけにもなるでしょう。
補助金における消費税やその他の税金に関する注意点
補助金の消費税についてはいくつかの注意点があります。ここでは3つの注意点について解説するので、補助金を利用する際の参考にしてください。
補助金の受給によって納税額が変動する可能性がある
会計処理する際、補助金は収益に区分されます。そのため、補助金を申請する人が法人であれば法人税の課税対象となり、消費税以外の税金がかかる点に注意が必要です。
また、申請者が個人事業主であれば所得税の課税対象になります。所得税は年間の所得金額に応じて税率が変動する税金です。補助金は収益に該当するため、収益として計上しなければなりません。この場合、1年間でかかった費用を洗い出し、収益から引き去った後の所得金額に応じた所得税が課税されます。
いずれにせよ、補助金に消費税はかかりませんが、別の税金がかかる点に注意しましょう。
なお、万が一、事業が赤字を迎えた場合、法人税や所得税を納付する必要はないでしょう。これは課税対象がないものとみなされるためです。
レアケースではありますが、補助金を受給する予定の人は押さえておくと良いでしょう。
仕入税額控除の適用によって返還の義務が生じる可能性がある
仕入税額控除とは、事業において必要な製品等の仕入を行った際に払った消費税を、売上にかかる消費税から差し引くことができる制度のことです。
この仕入税額控除が適用された場合、補助金を利用した経費における消費税分の金額に対して返還の義務が生じる可能性があります。補助金の目的上、仕入税額控除によって本来は消費税として納めるべき金額も控除の対象になるためです。
仕入税額控除が適用されると「売上に含まれる消費税」から「購入・仕入にかかった消費税」を差し引きできます。取引においては売上と仕入の両方に消費税が生じた場合もあるでしょう。そのようなときに、「購入・仕入にかかった消費税」のみを控除できるので、消費税の二重課税を防ぐことができます。
補助金を利用した場合、補助金を利用した経費の消費税も仕入税額控除の対象です。例えば、補助金を利用して課税仕入れを行った場合、本来支払うべき消費税も控除されます。しかし、補助金を使用した仕入が課税仕入れであることから、この時発生した消費税に対する金額は返還しなければなりません。
返還の対象外となる条件
補助金を受給する予定の方は、あらかじめ仕入税額控除において返還の対象外となる条件について押さえておくと安心です。具体的には以下の通りです。
- 免税事業者
- 簡易課税方式で申告している事業者
- 公益法人等で、特定収入割合が5%を超えている
- 個別対応形式において、補助金の対象経費が非課税売上に要する課税仕入れのみ
- 補助対象経費が非課税仕入のみ
「補助対象経費が非課税のみ」に該当する方の中には、人件費や社宅家賃といった消費税のかからない経費のみに補助金を充てる場合もあるでしょう。このような場合、補助金を受給した場合にも消費税に関する返還の義務はありません。
ただし、仕入税額控除における返還義務がない方であっても、仕入控除税額の報告は必須となっています。免税事業者や簡易課税方式を選択している事業者の方は、たとえ返還額が0円であっても「返還額0円」として報告してください。
申告義務者は申告しないとペナルティが課せられる恐れがある
申告義務者であるのに対し、消費税について申告しないままだと、ペナルティが課される可能性があります。具体的には以下の通りです。
- 延滞税
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
ペナルティを課されることのないよう、消費税の扱いには十分注意しましょう。
消費税を申告する|提出期限や提出前後の流れ
消費税の申告にあたっては、必要書類を用意し、必要事項を記載した上で定められた期限までに提出する必要があります。なお、消費税の計算や申告に際しては下表のように必要な書類が異なるので注意しましょう。
種類 | 書類の種類 |
一般課税 |
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簡易課税 |
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2割特例 |
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また、確定申告と同様に行う必要性から、税抜経理方式の場合は3月15日前後には前年度の消費税を算出する必要があります。3月は年度末ということもあり、事務作業にまで手が回らないといった事業者も多いでしょう。
消費税をはじめ、個人事業主であれば所得税の申告漏れはペナルティに課される恐れがあります。確定申告時期の経理等が煩雑する可能性がある場合は、早めに税理士等へ依頼しましょう。
関連記事:【税理士監修】消費税の確定申告とは?やり方や計算方法、インボイス制度との関係
補助金に消費税はかからないが、法人税や所得税の対象になる
補助金は、消費税の支払い義務がありません。しかし、法人の方が給付を受けた場合は法人税の、個人事業主であれば所得税の対象になります。
補助金の利用目的は、事業運営における必要部分の補填です。場合によっては税金がかかる点に注意しましょう。
補助金は現在、さまざまな土地・目的で導入され、多くの人が利用しています。自身の事業に該当する補助金について知りたい方は、この機会に小谷野税理士法人へご相談ください。