家賃収入がある場合、確定申告を行わなくてはならないのかと疑問に思う人は少なくありません。本記事では、家賃収入における確定申告の必要性や確定申告を行う際の流れ、必要な書類について解説しています。また、確定申告を行う際に経費として計上できる支出についても併せて紹介しています。家賃収入と確定申告の関係について理解を深めたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
目次
家賃収入は確定申告を行おう
家賃収入は不動産所得に分類されており、副業の場合は年間20万円超の所得がある場合は確定申告が必要です。不動産所得に含まれるのは家賃収入だけではなく、入居時に入居者が支払った礼金や管理費、契約の更新料なども該当するため、これらをすべて合算して20万円を超えていれば確定申告を行います。
不動産所得は、損失を他の所得と相殺できる損益通算が認められています。そのため、不動産所得が赤字であったとしても給与所得があれば合算して所得税を下げることができます。。確定申告を行うか否かは総合的に判断した方が良いでしょう。
また、不動産所得は単純に家賃収入や不動産経営によって得た収入全額ではありません。不動産所得は、基本的に収入金額-必要経費によって求めます。
参考:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
家賃収入に課せられる税金
すでに解説した通り、家賃収入は不動産所得に該当します。そのため、所得税をはじめとした様々な税金が課せられることになっています。
以下では、家賃収入に課せられる税金について解説していきます。
所得税
所得税とは1年間の所得に対して課せられる税金で、税率が所得によって異なる累進課税制度が採用されています。所得税の税率は5%から45%です。所得税は1年間の所得そのものに対して課せられる訳ではなく、1年間の所得から必要経費や各種控除を差し引いた課税所得金額に対して課せられます。
例えば収入が家賃収入のみの場合は、(不動産所得ー所得控除)×所得税率で税額が算出できます。家賃収入以外にも給与を得ている場合は、(不動産所得+給与所得ー所得控除)×税率で税額が算出可能です。詳しい税率は国税庁が掲載している速算表を利用することで確認できます。
住民税
住民税とは、その地域に住んでいる人々が地域社会に必要な行政サービスの費用を分担する税です。住民税には市町村民税と都道府県民税の2種類あり、基本的に市町村民税6%、道府県民税4%を合わせた10%となっています。
住民税は、所得税の確定申告を行うことによって住んでいる自治体から納付書が送られてくる仕組みになっており、税額は所得金額によって異なります。納付時期は毎年、6月末、8月末、10月末、翌年1月末の年4回払い、もしくは6月末までの一括払いのいずれかです。
家賃収入の確定申告において経費として計上できるもの
家賃収入の確定申告を行う際には、まず不動産所得額から経費や各種控除額を差し引き課税所得額を算出する必要があります。以下では、課税所得額を算出する際に経費として計上できるものを紹介していきます。
保険料
施設賠償保険や地震保険、火災保険に加入しており、その保険料を家賃収入を得ている本人が支払っている場合は、その年に支払った保険料は経費として計上できます。しかし、マンションなどの集合住宅を所有しておりその一角に自宅がある場合は、自宅部分を除く範囲のみが計上の対象となります。
個人の生命保険料は経費とはならないため注意しましょう。
減価償却費
1台当たり10万円以上の車や建築物など、時の流れとともにその価値が下がっていく資産のことを減価償却資産と言います。減価償却資産を取得した場合は、取得にかかった金額を耐用年数に応じて分割して経費として計上することになっています。取得した年に一括で経費として計上することはできません。
建物の維持にかかった費用
建物を安全かつきれいな状態で維持するためにはさまざまな費用がかかります。建物の維持にかかった共益費や修繕費、管理費といった出費は経費として扱うことが認められています。
ただし、フルリノベーションをしたり、耐震強度を高める施工など建物の価値自体をあげたり、建物の耐用年数を延ばすような工事は修繕費として計上できません。
租税公課
租税公課とは勘定科目の1つで、国や地方公共団体、その他の公共団体に納める会費や罰金である公課と地方税や国税などの租税を示す科目です。租税公課として経費に含めることができる代表的なものは以下の通りです。
- 個人事業税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 固定資産税
- 都市計画税
個人事業税は、前の年度の所得が290万円超の場合にのみ課せられる税金です。ただし、290万円を超えていても、不動産所得が事業的規模ではない場合は、事業税はかかりません。確定申告を行っている人の場合、個人事業税が発生した際には県税事務所から納付書が送られてきます。
不動産取得税とは、建物や土地を取得したり増築や改築を行ったりした際に課せられる税金です。不動産取得税は取得した際に1度だけ課せられ、事業用として取得した場合にのみ経費として計上できます。
登録免許税とは、不動産登記を行う際に課せられる税金で登記料とも呼ばれています。土地や家屋を所有している場合、毎年課せられる固定資産税も経費として計上可能です。下水道の整備や生活道路の整備、拡充などへ充てることを目的としている都市計画税も経費として扱えます。
家賃収入の確定申告の手続きの流れや必要な書類
家賃収入の確定申告を行うにあたってまずやるべきことは、青色申告にするか白色申告にするかの検討および決定です。青色申告は一般的には正規の簿記のルールにのっとった帳簿作成が必要なため、白色申告と比較して会計処理が煩雑です。しかし、白色申告にはない青色申告特別控除が利用できたり、赤字を繰り越せたりなど節税に繋がるメリットが多くあります。
青色申告を利用したい場合は、事前に青色申告承認申請書と開業届を税務署に提出する必要があります。白色申告は青色申告のような恩恵は受けられないものの、会計処理に関する知識を必要としないため、気軽に確定申告を行えます。
青色申告を行う場合は確定申告書と不動産所得用の青色申告決算書、白色申告を行う場合は確定申告書と不動産所得用の収支内訳書を準備しましょう。また、確定申告書を作成するにあたって以下の書類が必要となります。
- 源泉徴収票
- 固定資産税通知書
- 損害保険の証券
- 売買契約書
- 賃貸契約書
- 売渡精算書
- 家賃の送金明細
- 譲渡対価証明書
- 管理費などの領収書
上記の書類が揃ったら確定申告書を作成します。確定申告書の提出は、原則として翌年の2月16日から3月15日までとなっています。確定申告書の提出期限を過ぎてしまうとペナルティが科せられる可能性があるため期限内に終わらせられるように余裕をもって準備することが大切です。
関連記事:個人事業主の入門編!青色申告とは?メリットと手続き方法をわかりやすく解説
家賃収入の確定申告で注意すべきポイント
すでに解説しましたが、家賃収入の確定申告において経費として計上できるのは保険料、減価償却費、建物の維持にかかった費用、租税公課などです。経費として計上できると勘違いされやすい支出には、以下のものが挙げられます。
- 借入金の元本
- 私用のものと区別がつきづらいもの
- 住民税
- 所得税
- 居住スペースに関する支出
借入金に関しては、利子のみ経費として扱うことが認められています。元本の返済した金額は経費として扱うことができません。また、私生活でも使えるようなスーツや鞄などは、たとえ賃貸経営のために購入したとしても経費として計上することはできません。
すでに解説した通り、家賃収入によって課せられる税金には、住民税と所得税が挙げられますが、これらの税金は経費として計上できません。なお、マンションなどの集合住宅を所有しており一部を自宅として使っている場合は、賃貸経営の部分のみ経費として計上できます。
住宅ローン控除に関しては、営利目的で所有している物件には適用されない点にも留意しましょう。ただし、自宅として所有している部分に関しては控除が適用されます。
家賃収入における確定申告の有無や手続きの流れを把握しよう
基本的に、不動産所得が年間20万円を下回る場合は確定申告を行う必要はありません。しかし、仮に20万円以下であったとしても、不動産所得が損失の場合は、他の所得と相殺して計算されるため、確定申告を行うことによって所得税額を下げられる可能性があります。
家賃収入の確定申告では保険料や租税公課などを経費として計上できますが、自身に課せられた所得税や住民税は計上できないため注意しましょう。
また、確定申告を行う際には、まず青色申告にするか白色申告にするかを決めなくてはなりません。青色申告は会計の知識が必要ですが、青色申告特別控除やさまざまな恩恵が受けられるため、専門家に相談しながらどちらを利用するか決定することをおすすめします。