会社を新たに設立する際には、会社を設立したことを税務署へ知らせなければなりません。その知らせとなる書類が、「法人設立届出書」です。
法人設立届出書は、決められた期日までに作成して提出する必要があります。あらかじめ法人設立届出書の書き方や提出先、提出期限などを知っておけば、スムーズに届出書を提出できます。
ここでは、法人設立届出書の書き方や提出先、提出期限など、法人設立届出書の提出について解説しています。併せて、提出期限を過ぎた場合の罰則などについても解説しているので、参考にしてください。
目次
法人設立届出書とは
会社を設立すれば、法人税や消費税などの税金を国へ納める必要があります。会社を設立したことや、会社の概要などを知らせるために提出する書面が「法人設立届出書」です。
法人設立届出書の提出は、法人税法第148条、法人税法施行規則第63条に定められています。つまり、法律で提出義務が定められている書面です。
法人設立届出書は、法人であれば全ての会社に提出義務があります。株式会社だけではなく、合同会社や協同組合、一般社団法人なども該当します。ただし、一般財団法人や一般社団法人で、非営利型法人の場合は提出が不要です。
法人設立届出書の提出先と入手方法
法人設立届出書には既定のフォーマットがあります。法人設立届出書のフォーマットの入手方法や、提出先について解説します。
提出先
法人設立届出書の提出先は、国税と地方税の2箇所です。
まず国税の届出として、納税地となる会社を設立した管轄の税務署へ法人設立届出書を提出します。
そして、地方税として、都道府県税事務所や市町村役場にも提出します。都道府県税務署への提出は一般的に必須となっていますが、市町村役場に関しては納税地によって異なります。東京23区の場合、都税事務所のみの提出となり、区役所への届出は不要です。
届け先が分からない場合には、国税庁ホームページより会社の所在地から調べてください。
入手方法
税務署へ提出する法人設立届出書は、国税庁のホームページで入手することができます。
税務署の窓口へ直接足を運んで届出書をもらうこともできますが、国税庁のホームページから無料でダウンロード可能です。ダウンロードは下記より行ってください。
参照:国税庁「法人課税関係の申請、届出等の様式の制定について(法令解釈通達)」
また、都道府県税務署や市町村役場へ提出する法人設立届出書は、自治体ごとにフォーマットが異なるため、各自治体のホームページで確認をしましょう。ホームページで分からない場合は、窓口へお問い合わせください。
小谷野税理士法人へご相談いただければ、ワンストップで書類準備から提出まで対応が可能です。
自社での対応に不安を感じる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
法人設立届出書の提出期限について
法人設立届出書の提出には期限があります。提出期限を知り、期限が過ぎないように準備をしましょう。
法人設立届出書の提出期限と、提出期限が過ぎた場合の罰則について解説します。
提出期限
法人設立届書の提出期限は、会社の設立から2カ月以内です。会社の設立日とは、設立登記の日を指します。2カ月以内に所轄の税務署へ提出しなければなりません。
都道府県税事務所や市町村役場へ提出する届出書は、自治体ごとに提出期限が異なります。多くは設立日から2週間~2カ月以内に設定されていることが多いです。東京都税事務所の場合は、「事業開始日から15日」です。
税務署への提出期限よりも各地方自治体への提出期限の方が短いケースが多いため、あらかじめ提出期限を確認しておくようにしましょう。
提出期限が過ぎてしまった場合
会社の設立時にはさまざまな手続きや事業の準備などに追われ、気付けば法人設立届書の提出期限が過ぎていたというケースもあるでしょう。
法人設立届書の提出期限は設けられているものの、実際に提出期限が過ぎても罰金などの罰則はありません。
しかし、法人設立届出書を提出しなければ、税務署から本来は送付されてくる書類等が送られてこないことになります。そうすると、税金の納付や年末調整の書類などが事前に届かず、申告漏れにつながる可能性があります。
提出期限が過ぎてしまっている場合には、できるだけ早急に準備して提出するようにしましょう。
法人設立届出書の書き方
法人設立届出書は、提起や登記事項証明書を参考にしながら記入すれば、問題なく作成できるでしょう。
法人設立届出書の項目と、項目ごとの記入内容について解説します。
届出の日付・税務署名
一番左上にある日付と税務署名は、法人設立届出書を提出する日付と税務署名を記入します。本店所在地の所轄になる税務署名を記入してください。
管轄の税務署が分からない場合は、下記の国税庁のホームページから調べましょう。
整理番号
一番右上にある整理番号は、記入不要です。税務署側で記入する箇所なので、空欄のままにしておきます。
本店又は主たる事務所の所在地
本店所在地は、法人設立の際に登記申請書へ記入した本店の住所です。登記した住所の通りに記入します。事務所の所在地は、本店以外に主となる営業所がある場合、その住所を記入します。
尚、電話番号欄には法人の固定電話もしくは、代表者の携帯電話の番号を記入します。
納税地
納税地は、基本的に「本店又は主たる事務所の所在地」と同じ住所です。同じ住所の場合、「同上」と記入します。
法人名・法人番号
登記した会社名を記入します。略称は用いず、正式名称で記入してください。
法人番号は、国税庁から付与された13桁の番号です。登記事項証明書に記載されている12桁の会社法人番号とは異なるため、注意してください。法人番号が分からない場合は、下記の国税庁の法人番号公表サイトから検索可能です。
尚、こちらのサイトに公表されるのは、設立登記完了日の16時、もしくは国税庁の翌営業日の11時です。法人設立届出書を提出する日に法人番号の指定を受けていない場合は、記入せずに提出します。
代表者氏名・住所
会社の代表者の氏名と、代表者の自宅住所、電話番号を記入します。代表者氏名の欄には、法人実印を押印してください。
設立年月日
設立登記申請書が法務局に受理された日を指します。登記事項証明書に記載されている「会社成立の年月日」を記入してください。
事業年度
定款で定めた会計年度を記入します。例えば、決算日が3月31日の場合であれば、「(自)4月1日(至)3月31日」と記入します。
設立時の資本金又は出資金の額
登記事項証明書に記載されている「資本金の額」と同じ金額を記入します。会社の設立時の資本金に関しては、以下の記事を参考にしてください。
参考:「【税理士監修】会社設立時の資本金とは?その意義や設定方法と法的な注意点を解説」
消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始日の日
資本金が1000万円以上の場合は消費税の課税事業者になり、「消費税の新設法人」に該当します。この場合、「設立年月日」と同じ日付を記入します。
資本金が1000万円以下の場合は、何も記入しません。
事業の目的
定款に記載した事業目的を記入します。事業内容を長文で記入している場合や、将来的な事業展開を記入している場合もありますが、ここでは主な事業目的を記入します。
法人設立届出書の添付書類として定款のコピーを提出するため、事業目的は詳細に記入する必要はなく、簡略化した表現で問題ありません。
支店・出張所・工場等
本店以外に支店や出張所、工場などがある場合には、名称と所在地を記入します。ない場合は空欄のままにします。
これらの支店や出張所、工場等は、登記をしていないものも含まれます。
設立の形態
設立の形態に該当するものを選び、〇で囲みます。
法人設立に伴い、新しく会社を始める場合は「5.その他」を〇で囲み、カッコ内に「新規開業」と記します。一方で、個人事業から法人を設立した場合には、「1.個人企業を法人組織とした法人である場合」に該当します。
設立の形態が2~4である場合の適格区分
上記で説明した設立の形態が1または5の場合、こちらは空欄にします。
事業開始(見込み)年月日
事業を開始する年月日を記入するため、基本的には設立年月日と同じ日付を記入することになります。
個人事業から法人を設立した場合には、法人の設立年月日を記入します。また、事業をまだ開始していない場合には、事業を開始する予定日を記入してください。
「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無
会社の従業員や役員に給与を支払う場合には、給与支払事務所等の開設届出書を税務署に提出する必要があります。この届出書を提出している場合は、「有」を〇で囲みます。
一方で、従業員がいない場合で給与を支払う予定がない場合には、届出書の提出は不要なので、「無」に〇をします。
ただし、従業員がいなくても役員報酬が発生する場合には、届出書の提出が必要です。
関与税理士
法人設立届出書を提出する際に、顧問契約を締結する税理士が決まっている場合には、その税理士の氏名や事務所所在地、電話番号を記入します。税理士が決まっていない場合には、空欄のまま提出します。
税務署は法人の運営や税務に関することを確認する場合、会社の代表者ではなく税理士に連絡することがあります。この欄に税理士名を記載していれば、税理士に任せることができます。
添付書類等
該当するものを〇で囲みます。以前は登記事項証明書の添付が必要でしたが、現在は不要になったため、原則として定款の写しなどを添付します。
添付書類に関しては、次の章で詳しく解説します。
税理士署名
法人設立届出書を税理士に作成してもらった場合には、その税理士が署名をする欄です。
自分で作成した場合は、空欄にします。
法人設立届出書の添付書類について
法人設立届出書を提出する際には、必要な添付書類があります。
税務署や都道府県税事務所、市町村役場などそれぞれの提出の際に必要になる添付書類を知っておき、事前に準備をしておくとスムーズです。
税務署の場合
税務署へ提出する法人設立届出書は、定款の写しを添付します。定款の写しが準備できない場合には、規則や規約などの写しでも問題ありません。以前は登記事項証明書の添付も必要でしたが、現在は不要です。
都道府県税事務所・市町村役場の場合
都道府県税事務所へ提出する法人設立届出書には、定款の写しだけではなく、登記事項証明書の写しも添付します。税務署への届出書と添付内容が異なるため、注意しましょう。
また、合併や分割で新たに設立された会社の場合、その他の書類の提出が必要な場合があります。判断が難しい場合には、都道府県税事務所や市町村役場の窓口や、税理士へ相談してください。
法人設立届出書の作成におけるポイント
法人設立届出書はフォーマットがあるため、比較的容易に準備を進めやすい書類だといえます。
しかし、今後の会社の運営には大切な書類になるため、以下の点に注意しながら準備を進めるようにしましょう。
控えを残しておく
法人設立届出書の記入事項を全て記入した後は、書類をコピーしておきましょう。大切な書類になるため、コピーは紛失しないように保管してください。
法人設立届出書のコピーを各機関へ持参すれば、受理印を押してもらえます。このコピーは、金融機関での口座開設や融資の際に提出を求められることがあります。
郵送で提出する場合には、返信用封筒と返信に必要な切手を貼って同封すれば、控えを受けられます。
税理士に任せることもできる
法人設立届出書の作成から提出まで全てを自分で進めることもできますが、税理士に任せることも可能です。
法人設立届出書の作成は難しいものではありませんが、記入漏れなどがあれば再提出しなければなりません。税理士ならば記入漏れなく正確に作成ができ、スムーズに提出まで進められます。
また、会社を設立すれば、法人設立届出書だけではなく、給与支払事務所等の開設届出書や青色申告の承認申請書などさまざまな書類の準備が必要になります。それぞれの書類に提出期限があるため、一人で準備することは大変でしょう。
税理士はこうした会社設立に必要な書類の準備や作成をワンステップで対応できるため、依頼すれば大幅に手間を軽減できるといえます。
会社設立に必要なその他の書類や準備に関しては、以下の記事を参考にしてください。
参考:【税理士監修】会社設立の必要書類の準備と提出とは?法務局と税務署での手続き
法人設立届出書は期限を守って提出しましょう
ここでは、会社を設立した時に提出する法人設立届出書について解説しました。
法人設立届出書は国税と地方税を納めるために必要な書類であり、会社の設立には欠かせない重要な書類といえます。
税務署や各自治体が用意するフォーマットがあるので作成が難しい書類ではありませんが、設立から2カ月以内という提出期限が設けられています。都道府県税事務所や市町村役場によっては2週間など短い期間の場合もあります。
添付書類の準備や会社設立に必要なその他の書類準備なども行っていれば、手一杯になってしまい、提出期限が迫ってしまう可能性もあるでしょう。
法人設立届出書は自分で作成することもできますが、税理士へ依頼することも可能です。
税理士へ依頼すれば、法人設立届出書だけではなく、会社設立に向けた必要書類の収集や作成、資金集めや経営相談などの助言なども受けられます。
小谷野税理士法人では会社設立に豊富な知識と経験を持つ税理士が在籍し、会社設立から設立後の税務サポートまでワンステップで対応しています。会社設立前から相談することで、法人設立届出書の作成を含めた設立に向けた準備もサポートします。まずはお問合せフォームよりお気軽にお問合せください。