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会社設立の基礎知識

【税理士監修】法人税率の「実効税率」とは?年所得800万円以下の中小企業の計算式はどうなる?

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【税理士監修】法人税率の「実効税率」とは?年所得800万円以下の中小企業の計算式はどうなる?

法人税率の「実効税率」は、企業の財務戦略において重要な役割を担います。これらの税率は、企業の所得に対する税の負担を示すもので、計算方法や適用条件によって異なります。今回の記事ではこれらの税率の基本概念、計算方法、および最近の税制改正が企業に与える影響について見ていきましょう。中小企業を含め、すべての企業にとって理解が不可欠な内容です。

法人税率の基本

中小企業の法人税率のイメージ

法人税率は、企業がその所得に対して支払うべき国税の割合を示します。中小企業などの企業形態や所得の規模によって異なる特徴があり、適切な税務計画のためにはこれらの理解が重要です。ここでは法人税率の基本概念、中小企業における特徴、その計算方法について詳しく見ていきましょう。

法人税率とは

法人税率とは、法人の企業活動から得られる所得に対して課される国税の割合のことです。法人税の税率は、企業の売上収入や土地・建物の売却収入などの益金から、売上原価や販売費、災害による損失などの損金を差し引いた所得額に適用されます。

法人税率は、普通法人や一般社団法人などの組織の種類によっても異なります。利益に対し、23.2%の税率が適用されるのが一般的ですが、資本金1億円以下で、さらにほかの要件を満たし中小規模とみなされた法人は、所得額のうち、年800万円以下の部分は19%の軽減税率が適用され、さらに特例により15%の特例措置が適用されます。これを時限特例措置といいます。

法人税率の計算方法

法人税の計算方法は、企業の事業年度ごとの課税所得に、法人税率を乗じる形式です。法人税率は、年間所得によって企業ごとにばらつきがあるため、自社の税率を正しく把握することが重要です。

一般的な計算式は以下の通りです。

法人税額 = 課税所得 × 法人税率

法人税の基本税率は、先述した通り、原則として23.20%です。ただし、中小企業などの負担軽減のため、資本金が1億円以下の法人に対しては、所得金額のうち、年800万円以下の部分については軽減税率19%(時限特例措置で現在は15%)が適用されます。

さらに、税額控除額を考慮した場合、法人税額の計算式は以下の通りです。

法人税額 = 課税所得 × 税率 - 税額控除額

「課税所得」と「税率」「税額控除額」は、それぞれの企業によって異なります。

また、法人住民税率や地方法人税率、事業税率、特別法人事業税率を含めた場合、実効税率の計算は、さらに複雑化します。たとえば、法人税率23.2%にこれらの税率を加えた計算では、実効税率(後述)が33.58%になる場合があります。

東京都の法人事業税率

東京都では法人事業税や法人都民税等にて、超過課税と不均一課税を実施しており、資本金の額や所得等の大きさに応じて、異なる税率が適用されます。これにより、東京都内で事業を行う法人の税負担は、企業によってばらつきがあります​​​​。(地方税法第72条の24の7、東京都都税条例第33条、附則第5条の2、附則第5条の2の2)

法人事業税と法人都民税の税率表は以下の通りです。

【法人事業税の税率表】

事業の区分
(地方税法第72条の2第1項各号)
法人の種類事業税の区分税率(%)
令和4年4月1日以後に開始する
事業年度
令和2年4月1日から令和4年3月31日までに開始する事業年度令和元年10月1日から令和2年3月31日までに開始する事業年度
不均一課税適用法人の税率(標準税率)超過税率不均一課税適用法人の税率(標準税率)超過税率不均一課税適用法人の税率(標準税率)超過税率
1号2号、3号及び4号以外の事業普通法人(②及び③の法人を除く)
公益法人等
人格のない社団等
所得割軽減税率適用法人年400万円以下の所得3.53.753.53.753.53.75
年400万円を超え年800万円以下の所得5.35.6655.35.6655.35.665
年800万円を超える所得7.07.487.07.487.07.48
軽減税率不適用法人
特別法人
〔法人税法別表第三に掲げる協同組合等(農業協同組合、信用金庫等)及び医療法人〕
所得割軽減税率適用法人年400万円以下の所得3.53.753.53.753.53.75
年400万円を超える所得4.95.234.95.234.95.23
軽減税率不適用法人
外形標準課税法人
〔資本金の額(又は出資金の額)が1億円を超える普通法人(特定目的会社、投資法人、一般社団・一般財団法人は除く)〕
所得割軽減税率適用法人年400万円以下の所得(1.0)*31.18*3(0.4)0.495(0.4)0.495
年400万円を超え年800万円以下の所得(0.7)0.835(0.7)0.835
年800万円を超える所得(1.0)1.18(1.0)1.18
軽減税率不適用法人
付加価値割1.261.261.26
資本割0.5250.5250.525
2号電気供給業(小売電気事業等・発電事業等・特定卸供給事業*1を除く)、ガス供給業(一定のものに限る*2)、保険業又は貿易保険業収入割1.01.0651.01.0651.01.065
3号小売電気事業等、発電事業等又は特定卸供給事業*1①及び②の法人収入割0.750.80250.750.80251.01.065
所得割1.851.94251.851.9425
③の法人収入割(0.75)0.8025(0.75)0.8025(1.0)1.065
付加価値割0.38850.3885
資本割0.15750.1575
4号特定ガス供給業収入割(0.48)0.5191.01.0651.01.065
付加価値割0.8085 ―
資本割0.336

※1:特定卸供給事業に係る税率は、2022年4月1日以後に終了する事業年度から適用されています。

※2:2022年4月1日以後に開始する事業年度においては、導管ガス供給業に限ります。(それ以外のガス供給業は1号又は4号に区分されます。)。

2022年3月31日以前に開始する事業年度においては、導管ガス供給業、ガス製造事業者が行うガス供給業及び旧一般ガスみなしガス小売事業者(電気事業法等の一部を改正する等の法律:平成27年法律第47号の附則第22条第1項の義務を負う者に限る)が行うガス供給業に限ります。

※3:2022年3月31日以前に開始する事業年度においては、外形標準課税法人の場合も軽減税率を適用する場合がありましたが、2022年4月1日以後に開始する事業年度においては、外形標準課税法人は軽減税率の適用対象外となりました。

出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税 | 税金の種類」| 

【都民税法人税の税率表】

区分

税率(%)

2019年10月1日以後に開始する事業年度

2014年10月1日から令和元年9月30日までに開始する

事業年度

2014年9月30日までに開始する事業年度

不均一課税適用法人の税率

(標準税率)

超過税率

不均一課税適用法人の税率

(標準税率)

超過税率

不均一課税適用法人の税率

(標準税率)

超過税率

23区内に事務所等がある場合

7.0

10.4

12.9

16.3

17.3

20.7

(道府県民税相当分1.0+市町村民税相当分6.0)

(道府県民税相当分2.0+市町村民税相当分8.4)

(道府県民税相当分3.2+市町村民税相当分9.7)

(道府県民税相当分4.2+市町村民税相当分12.1)

(道府県民税相当分5.0+市町村民税相当分12.3)

(道府県民税相当分6.0+市町村民税相当分14.7)

市町村に事務所等がある場合

1.0

2.0

3.2

4.2

5.0

6.0

出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税 | 税金の種類」| 

【関連記事】法人住民税について | 小谷野税理士法人

法人税率に関して疑問点がある場合は、どんな小さいことでも「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。

2023年の税制改正で中小企業に関連する変更点や期限の延長

年800万円以下の所得に対し、時限特例措置として軽減税率が適用されるのは中小法人のみです。平成31年度の税制改正によって、軽減税率の対象とならない大規模法人の範囲が拡大し、中小法人の要件が厳しくなりました。中小法人の要件は「資本金もしくは出資金の額が1億円以下」の条件を満たした上で、次の条件に当てはまらない法人です。

  • 大規模法人の傘下にあり、発行株式数の2分の1以上が所有された法人
  • 複数の大規模法人との間に支配関係があり、発行株式数の3分の2以上が所有された法人
  • 常時雇用の従業員が1,000人を超えている法人

2023年に行われた税制改正において、中小企業の法人税に関して、さまざまな変更点がありました。主な変更点として特例措置の延長を軸とした、以下の4つの項目が挙げられます。

  • 法人税軽減税率の特例延長
  • 中小企業投資促進税制の見直しと延長
  • 中小企業経営強化税制の対象設備見直しと延長
  • 特定資産の買い換え課税特例の見直しと延長

個別に解説します。

法人税軽減税率の特例延長

中小企業の所得800万円以下に適用される法人税の軽減税率15%(本来19%)の時限特例は、中小企業の税負担を軽減し、企業の収益力拡大や積極的な投資を促進するのが目的で設けられています。この軽減税率の適用期限は、2023年3月31日までから、2025年3月31日までの事業年度に2年延長されました。

出典:財務省「法人課税に関する基本的な資料」

中小企業投資促進税制の見直しと延長

対象資産の見直し後、特別償却30%または税額控除7%(資本金3,000万円以下の者に限る)を適用する中小企業投資促進税制の適用期限も見直されました。もともとは、2023年3月31日までとされていましたが、2023年2025年3月31日までの事業年度と、2年延長されました。

中小企業経営強化税制の対象設備見直しと延長

中小企業等経営強化法にもとづく、投資に対する即時償却や税額控除が提供される中小企業経営強化税制が対象設備を見直した上で、適用期限が2年延長されました。2023年3月31日までとされていたのが、2025年3月31日までの事業年度に変更されています。

法人税の申告に関するお悩みごとがある場合は、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。

実効税率と法定実効税率

実効税率と法定実効税率のイメージ画像

実効税率は、法人税の理解において欠かせない概念です。実効税率とは、企業が実際に負担する税額の割合の事です。税制全体の負担感を理解するのに役立ちます。ここでは、実効税率の定義、法定実効税率の意義について見ていきましょう。

実効税率と法定実効税率の意味​​

実効税率とは、企業が所得に対して実質的に負担する税率のことです。この税率は、法人税や住民税、事業税など複数の税金を含めた総合的な税負担を反映します。

企業の実効税率は一律ではなく、資本金の額や所得金額などによって変動するものです。また、企業が所在する地方自治体の法律で定められた税率もあります。これらにもとづいて計算される税率を「法定実効税率」と呼びます。

計算式は以下の通りです。

法定実効税率=法人税率×(1+法人住民税率+地方法人税率)+事業税率+事業税率×特別法人事業税率

法定実効税率は、企業の資金繰りや納税資金の準備、会計処理において重要な指標です。法定実効税率の計算には、法人税率と各種地方税率を複合的に考慮する必要があります。

出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税 | 税金の種類」

法定実効税率の計算

法定実効税率の計算のイメージ画像

法定実効税率の計算は、法人税率とその他の税率(法人住民税率や地方法人税率など)の合計にもとづいて行われます。この計算により、企業の実際の税負担額におけるより正確な把握が可能です。東京都の法人税率、中小法人における実効税率の特徴や計算式について見ていきましょう。

東京都の法人税率

東京都における法人税率は、事業の種類や法人の種類、所得の大きさによって異なります。たとえば、普通法人の場合、年400万円以下の所得に対する税率は、3.5%から3.75%、年400万円を超えて800万円以下の場合は5.3%から5.665%、年800万円を超える所得に対する税率は7.0%から7.48%です​​​​。

東京都における法人の税率は、以下の税目が対象です。

  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税(法人税割)
  • 法人事業税(所得割)
  • 特別法人事業税

これらの税目は、企業の所得に基づいて課税され、企業の財政負担に重要な影響を与えます。なお、消費税や固定資産税などの他の種類の税金はこれに含まれません​。

出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税 | 税金の種類」

東京23区内の資本金1億円超の普通法人の法定実効税率

東京都23区に事業所を有する資本金1億円超の普通法人のことを外形標準課税適用法人と呼びます。外形標準課税的用法人には超過税率が適用されます。

外形標準課税適用法人の税目と税率は以下の通りです。

  • 法人税率:23.2%
  • 地方法人税率:10.3%
  • 法人住民税率(超過税率):10.4%
  • 事業税率(所得割・超過税率):1.18%
  • 特別法人事業税率:1.0% × 260%

東京23区内の資本金1億円越えの普通法人の実効税率計算式

外形標準課税法人の実効税率の計算式は以下のようになります。

法人税率23.2%×

(1+法人住民税率10.4%+地方法人税率10.3%)+

事業税率1.18%+特別法人事業税率1.0%×260%/1+

事業税率1.18%+特別法人事業税率1.0%×260%

=実効税率30.62%

出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税 | 税金の種類」

法人税の計算に関する疑問があるみなさんは、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。

中小法人(資本金1億円以下の普通法人)の法定実効税率

東京都の資本金1億円以下の普通法人=中小法人には、標準税率が適用される場合と超課税率が適用される場合に分かれます。それぞれの税目と税率、計算式を見ていきましょう。

標準税率が適用される場合

中小法人(資本金1億円以下の普通法人)で標準税率を適用される場合の適用条件は、以下の2点です。

  • 住民税:法人税額が年1,000万円以下
  • 事業税:年所得額が2,500万円以下 

税目と税率は以下の通りです。

  • 法人税率:23.2%
  • 地方法人税率:10.3%
  • 法人住民税率(標準税率):7.0%
  • 事業税率(所得割・標準税率):7.0%
  • 特別法人事業税率:7.0% × 37%

計算式は以下の通りです。

法人税率23.2%×

(1+法人住民税率7.0%+地方法人税率10.3%)+

事業税率7.0%+特別法人事業税率7.0%×37%/1+

事業税率7.0%+特別法人事業税率7.0%×37%

=実効税率33.58%

超過税率が適用される場合

超過税率の適用要件は以下の通りです。

中小法人(資本金1億円以下の普通法人)で超過税率を適用される場合の適用条件は、以下の2点です。

  • 住民税:法人税額が年1,000万円超
  • 事業税:年所得額が2,500万円超

税目と税率は以下の通りです

  • 法人税率:23.2%
  • 地方法人税率:10.3%
  • 法人住民税率(超過税率):10.4%
  • 事業税率(所得割・超過税率):7.48%
  • 特別法人事業税率:7.0% × 37%

計算式は以下の通りです。

法人税率23.2% × (1 + 法人住民税率10.4% + 地方法人税率10.3%) + 

事業税率7.48% + 事業税率7.0% × 特別法人事業税率37%/1+

事業税率7.48%+特別法人事業税率7.0%×37% 

= 実効税率34.59%

出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税 | 税金の種類」

関連記事:税金対策の基本と効果的な方法!節税や資産運用のポイントを簡単にわかりやすく解説

法人税の申告に不安がある中小法人の責任者の方は、「小谷野税理士法人」にお気軽にお問い合わせください。

法人税率と実効税率を理解して有効な税務戦略を!

法人税率と実効税率の基本概念、計算方法、および中小企業における特徴を詳しく解説しました。特に、法人税の実効税率は、法人税や住民税、事業税など複数の税目を組み合わせて計算されるため、企業の実際の税負担を正確に把握する上で重要です。

例としてあげた東京都では、超過課税と不均一課税を実施しており、資本金の額や所得の大きさによって異なる税率が適用されます。企業の種類や規模に応じた公平な税負担を目指すためのものです。

なお、特別法人事業税は法人事業税の一部を分離して設けられています。法人事業税の構造が変化し、企業の税務計画に影響を与える可能性があります。将来を見据え、専門家の意見に耳を傾けながら税務戦略に取り組むことが賢明でしょう。

この記事の監修者
今野 靖丈小谷野税理士法人 税理士
1997年中央大学経済学部卒業後、東京国税局に入所しました。法人の税務調査の現場では税の議論だけでなく、企業の経理体制の優れた点の説明や、改善すべき点をアドバイスしてきました。国税徴収に関わる部門では、多くの中小企業の経営者、個人事業主と財務に関わる面談をし、資金操計画の作成アドバイスを行ってきました。
会計・財務・税務に関する様々な相談に対応し、提案をすることをライフワークと考えています。お気軽にご増段下さい。
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