20代の後半に詩吟との出会いがあり、“梅見の会”に誘われたことが今でも鮮明に覚えています。梅を見ながら・・・・季節を感じる。
梅といえばとかく桜と比較されますが、正反対の特徴があります。まず観賞法が大きく異なる。梅は、一本一本、一輪一輪に近づき、匂いを楽しみながら花を愛でる。花だけではなく幹や枝も興味がつきない。対して桜は、個々の木や花ではなく満開の「花の雲」を眺めるのが醍醐味である。桜の花期は、梅よりずっと短く、散り際の潔さは「花は桜木 人は武士」とたたえられています。
さて、自宅の近くに香梅園があります。もとをたどると江戸末期、墨田区の香取神社の近くに「小村井梅屋敷」という梅園があり安藤広重の「絵本江戸土産」に大勢の人が梅見を楽しむ様子が描かれています。
当時、歴代将軍も訪れ、将軍が愛でた「御成り梅」と称された木もあった。それが、明治43年(1910年)の大洪水で、甚大な被害で廃園となりそれから長い月日過ぎて平成6年に念願が叶い「香梅園」と名づけて開園しました。
梅の木は、高さが抑えられているのが特徴です。2月19日(日)は、梅まつりで琴、尺八の演奏に抹茶の接待もありました。「桜は、見上げて観賞してもいいが、梅は間近で観賞するもの。香りもいっしょに楽しむためで、人間の目線、つまり“目通り”が一番いいそうです」と宮司さんはいっています。
梅の種類も85種もあり、空を背景にその色彩や香りの変化を楽しむのが最高の梅見でしょうか。ただ、枝垂れ梅だけは、高いほうがよい。花が目線まで垂れてくる。これを軸に梅の種類のバランス、開花時期を考慮して梅ファンが興味津津でやって来るが、珍種も含めて多さに驚き、感激するという。
日本に古くから自生した桜と違って梅は、古墳時代に薬木として中国から渡来し、万葉時代の花といえば梅だった。平安時代になっても人気は、変わらず、京都御所の紫宸殿前の庭に「左近の桜、右近の橘」も当初「左近の梅」だったという。梅と桜は、陰陽一対のもので日本人は、昔からこの2種の木の風姿に接することで人格を陶治してきたのではないでしょうか。