多摩大学「現代世界解析講座ⅩⅣ」の第3回目(10月21日)は東京財団政策研究所の柯隆主席研究員による「中国経済の発展とネオ・チャイナリスクのあり方」でした。
1963年に南京市で生まれた柯隆氏は、1988年に来日、長銀総合研究所、富士通総研を経て、2018年に東京財団政策研究所に入所しています。
1.中国の大規模停電の背景と今後
(1)背景
①国産石炭の減少
中国の電源構成はその71%が火力発電で、その中でも多くを石炭が占めています。中国自身、石炭の大生産国ですが、中小の炭鉱が多く、また深く採掘する必要がある地盤ゆえ事故が多発しており、炭鉱の閉鎖に伴い、国産石炭が減少してきました。
これまでは、オーストラリアからの輸入で補充してきましたが、コロナ発生源を巡る対立から当該ルートは細っています。
②世界的資源価額の高騰
コロナ禍からの回復需要で世界的に資源価額が高騰していますが、中国の電力価格は国が統制し値上げができないため、電力会社は赤字を余儀なくされており、供給を絞ることになります。
こうして電力需給がミスマッチを起こし、停電を引き起こしています。
(2)今後
照明/エレベーター/信号等、国民の生活用電力を止めることはできないため、今後の電力不足への対応としては、産業用電力を制限せざるを得ないことになります。
その結果、中国の経済成長には下押しの圧力がかかることになります。
2.不動産バブル
中国では都市の土地は国が所有する公有制となっており、売買の対象は定期借地権と同じような土地の使用権です。商業用土地の存続期間は50年、住宅用土地のそれは70年ですが、使用権の売却代金は地方の財源とするルールとなっています。
このため、地方は単価を上げることが財政収入に直結しますので、地方とデベロッパーは一体となって地上げに傾斜することになり、構造上、バブルは必然です。
不動産経済学によると、マンションの価格は年収の6倍が限界と言われていますが、現在の中国は、最大50倍にもなっています。また、中国には投資商品が乏しいため、実物資産である不動産が値上がり目的の投資対象となっています。
中国の不動産バブルも終わりが近づいており、いずれ誰かがツケを負うことになります。いよいよ高度経済成長がストップして低成長時代に転換することになります。
3.日中関係の今後
激しい米中対立で日中関係は隠されている現在ですが、この後には日中が正面から向き合う時が到来します。講師の見解では、中国とは向き合わない方がよい、向き合えない、とのことです。
日本の若者は上野動物園の動物のように、決まった時間に安全にご飯を食べられるのが幸せと感じる一方、中国の若者はサファリパークを生き抜いており、このままだと中国との戦いの土俵にも上れません。
「教育」を抜本的に改めなければ中国社会に向き合うこともできません。