多摩大学の「現代世界解析講座XⅣ(春学期)」をインターネット聴講しています。
6月3日収録分は、東洋大学情報連携学部の坂村健学部長による「DX(Digital Transformation)とは
何か」でした。坂村博士は、内部ネットワークを制御するOSとして探査機「はやぶさ」に搭載された
「TRON」の生みの親です。
DXはDigital Transformationの略称ですが、英語圏ではTransを省略する際に「X」と表記しますので、
DTではなく、DXとなります。
一言でいうと、デジタル技術による根本的な変革(イノベーション)です。
日本は、特別給付金の支給やワクチン接種予約等でドタバタ劇を演じたように、DXを(遅れている
というレベルではなく)やっていません。
その原因として、第一に「人に頼むか、自分でやるか」という点が挙げられます。米国では、社内で
ICT開発できる企業が50%に対して、日本は10%足らずという調査結果があります。日本企業は自社
ではDXができずにアウトソースしてしまうため、コストはかかる上、自分で考えて問題点を炙り出し
て解決することができません。当事者がICTを学ばないといけません。
第二に、法体系の問題です。米国や英国の英米法は、”やってはいけないこと”しか決めていませんが、
日本の大陸法は”やっていいこと”しか書かれていません。選挙活動でのインターネット活用を例に
あげましょう。米国では、選挙にインターネットを使ってはいけないとは書かれていなかった(当時は
インターネットがなかった時代なので書かれていないのは当然ですが)ため、たちまち普及しました。
対して、日本では、選挙でインターネットを使っていい、とは書かれていないので浸透しません
でした。日本はイノベーションができる風土に乏しい法体系下にあります。
さて、過去は過去として、今後は、社会をプログラミングで変えてイノベーションできる時代に
なります。技術が大きく進歩し、プログラミングが大変簡単になった結果、何回も何回もチャレンジが
でき、その中から”新結合(=イノベーション)”が生まれます。
また、誰でもプログラムを見て使えるオープンソースが充実した結果、少しのプログラミングですごい
ことができるようになりました。
こうして、日本企業もDXに真剣に取り組み始めており、経済団体も”Society5.0”を表明しています。
昔は、人の資質を”文系””理系”と分けていましたが、そんな時代ではないのですね。