どれだけ働いても収入が少ないワーキングプア(働く貧困層)対策として、最低賃金を引き上げる必要があります。
・・・。
あります・・・か?
経済学的には間違っているとされている考えを、それっぽく提言として書いてみると本当にそれっぽい感じがしますよね。
さらっと間違っていることをバラしましたが、なぜ経済学的には間違いだとされてしまうのでしょうか。
最低賃金が引き上げられると、企業側は最低賃金に満たない能力の労働者(この場合、一概に若者とは言い切れませんが・・・)を雇用しなくなります。
最低賃金の額を支払って雇用しても、それに見合う働きをしないならば雇いたくなんてありませんよね、当然です。
また、より多くの若者は、学校に行くよりも働いたほうがいいと考えるようになります。
勉強することが高給への近道とは言い切れないような世界線ですよね。
その結果、働こうとする若年者は増加しますが、企業の雇用は減少するため、若年層の失業率が高まります。
なんということでしょうか。とんでもないですね。
また、基本給が高まることによって時間当たりの給与は増加しますが、未成年者などのように扶養範囲内での労働を前提とする場合には金額の上限が明確になるため、賃金単価の上昇に併せて働ける時間は短くなってしまいます。
高い賃金を支払ったとしても想定する時間数の勤務ができないとなれば、ますます企業は雇用を制限することにつながります。
代表的な研究において、最低賃金が10%上昇すると10代の雇用は2%程度減少することが明らかにされています。
つまり、最低賃金が10%引き上げられたからといって、平均賃金が10%上昇するわけではないということです。
ほかにも、最低賃金制により未熟練労働者の職業訓練機会が奪われる可能性があります。
繰り返しになりますが企業からすると、高い最低賃金に釣り合わない労働力を必要としていないからです。
そう考えると、”最低賃金で働いている人たち”=”ワーキングプアの人たち”である、という構造はいつから生まれたのでしょうか。
きっとそう、”働いていても収入が少ない人”のなかには最低賃金で働いている人もいるかもしれませんが、”働いていても収入が少ない人”が全員最低賃金かといえばそんなことはありませんよね。
もっと言えば、最低賃金で働いている人が全員”働いていても収入が少ない人”かといえばそんなことはないわけです。
「最低賃金を引き上げる」というのは非常に聞こえが良い言葉ですが、本来の目的と照らし合わせて考えると、本質的なことはそこじゃないような気がしてきますよね。
ではまた。