「経営の正解はすべて社員が知っている」という本を読みました。
著者は、前千葉ロッテマリーンズ社長で現在は清水エスパルス運営会社の社長をされている山室晋也さんという方です。元メガバングで「伝説の支店長」と呼ばれていた方で、渋谷のお店にいらした際や大学のOB交流会でお会いしたこともあることから手にしてみました。
マリーンズ社長時代には、球団創設以来50年間、親会社の補填前の段階では営業赤字(就任以前5年平均は約25億円のマイナス)を続けていたのを、就任後5年目には単年黒字を実現し、退任した6年目には11億円の営業黒字にまで改善されたとのこと。
なぜそのようなことができたのか。
キーワードは“悩んだら「現場に聞け」”です。
就任当初にまず実施したのは、
“一人ひとりの「生の声」を聞いたこと”
“働いていて「楽しい」と思えるように調整していったこと”
“ただそれだけ”、とのことです。
しかし、経営者の果たすべき役割として、別の箇所では次のように言い換えられていました。
“組織の全体最適化を目指し各種の情報から優先順位づけをする”のが、“経営者として重要な付加価値の高い仕事である“と。
マリーンズの場合、メンバー全員からのヒアリングから、
・そもそも予算がない
・弱いチームでは魅力がないので、チーム強化資金が必要
・ファン拡大のための投資が必要
・人員不足で職員が疲弊している
・スタジアム立地・インフラを改善したい
・ステイクホルダー(ファン・地域・行政・応援団・後援会・スポンサー・出入業者等)からの信頼回復・信頼関係構築
といった問題がリストアップされたようですが。
これらに次のように優先順位を付けて整理をし、ひとつずつ達成されたそうです。
①まずお金を稼いで(スポンサー営業強化、手元資金獲得)
②最も投資効果の高い分野に投資し、収益を拡大(集客・ファン増加のための投資→来場者増加。利益拡大)
③稼いだお金の一部をチームに投資、
④黒字になったら、黒字分はすべてチーム強化とファン満足度向上に投資
ここで面白いと思ったのは、最初にチーム強化の投資を行うという選択をしなかったことです。
「チームが強くなれば儲かる」のは正しいとして、チームの強さ、勝率を上げることは相手もいるため、不確実性が高く、投資リスクが大きいため、最初に着手すべきではない。
まずはファンやスポンサーのためにできることから着手すべきだ、という方針によっています。
これは、ニューヨークヤンキースに視察に行った際、ヤンキースのビジネス担当役員から聞いた教えによるのだそうです。
やはり、変えられること、変えられないこと、を見分けて、変えられることに全集中すべき、ということですね。
この本の「おわりに」では、マリーンズ退任後、再びエスパルスというスポーツビジネスへの挑戦を選ぶことになったエピソードが紹介されていますが、これには思わず涙を禁じ得ませんでした。
勉強になり面白くて感動する、素晴らしいご著書でした。