代表 小谷野幹雄のブログ

2023年03月02日遺言書がない悲劇 ~子どもがいない夫婦~

小谷野です。

仕事柄、相続の悲劇ともいえるケースに何度も立ち会いました。

 

今回紹介するのは、子どものいない老夫婦で、夫が遺言書を作成しておらず、トラブルになったケースです。

 

都心で飲食業を営み、夫婦で懸命に働き続け、都心に夫名義で不動産も取得することができました。

そして夫が他界しました。

夫婦には子供がなく、もともと親戚付き合いも無く、夫の兄弟は全員亡くなっていました。

妻は当然、夫名義の全ての預金と不動産を相続できると思っていました。

 

 

(悲劇1)法定相続人は残された妻だけではなかった

 

夫には5人の兄弟姉妹がおり、既に全員亡くなっていましたが、その子ども達(甥姪)が10名いました。

この場合、相続人は妻1人ではなく、会ったこともない夫の甥姪10人にも相続権があります。

法定相続割合は、妻が4分の3、兄弟(その子ども達の甥や姪)は4分の1の相続権です。

もし夫の父母が生きていれば妻が3分の2、父母が3分の1ですが、本件では父母は遠い昔に逝去していました。

 

 

(悲劇2) 相続人の捜索が困難

 

遺産分割協議書に印鑑を貰うためには、全員の居所を把握して面談をし、相続財産、配分する財産額について説明が必要になります。

戸籍と住民票で居場所を特定できない人も多く、過去記録のあった住所へ出向いて、近所の人への聞き込みによって、甥姪の勤務先から、本人を突き止めたこともあります。まるで探偵業でした。

10人もいると、甥姪の居住地域も全国に広がり、遠方への出張も必要でした。

 

甥姪からすれば、予想もしないお金がもらえたので、皆さん笑顔で遺産分割協議書に印を押してくれました。

 

 

長年連れ添って、商売を懸命に一緒に頑張ってきた妻の手元にあった老後の現預金は、会ったことも無い甥姪に分配され、大半の現預金を失うことになりました。

 

本件は相続発生後の相談でしたが、事前に相談を受ければ、必ず「全財産を妻へ」と、遺言書作成を勧めるケースです。

 

兄弟やその子どもの甥姪には遺留分(*)が無いため、遺言書があれば、長年連れ添った妻に全ての財産を譲る事ができたのです。

 

(*)遺留分:遺言書によっても奪うことができない相続財産の一定割合

 

 

~遺言書は妻へのラブレター、小谷野でした~

 

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