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2014年03月13日 / 投稿者:Iwasaki 『憂鬱たち』より。

 

『何かが間違っているとしか思えない。誰かが何かを勘違いし、そのせいで多くの国民が被害を被っているとしか思えない。もしかしたら、私だけが何か勘違いをしていて、こんなにひどい目に遭っているのだろうか。他に何万人もこんな思いをしている人がいるだなんて思えない。私ですらこんなに老衰しているのだから、半分くらいの人が、発狂していてもおかしくはない。しかしそんなに発狂する人が増えればそれはもちろん社会問題となり、何か改善策が練られるに違いないのだから、私だけが何か勘違いをし、一人で膨大な時間を浪費しているという可能性だってなくはない。もしかしたら、私は何か勘違いをして、一人空回りをしているのではないだろうか。

横断歩道の待ち時間、私は自分が勘違いをしているのだとしたら、一体どこでどうやってその勘違いが生まれたのかと自問自答していた。分からない。そもそも私は確定申告の何も分かっていないのだ。はっきり言って、どこでどういう風に私の領収書や支払い明細や通帳の記録がまとめられ、承認され、どういうシステムで、金が戻ってきたり、戻ってきたと思ったら払わなければならなかったりするのか、私には全く分からないし理解出来ない。』

 

金原ひとみ 著

文藝春秋社

『憂鬱たち』ゼイリ 冒頭部分より

 

壮絶ですね。

確定申告シーズンです。

この『憂鬱たち』の主人公のように、発狂する想いで確定申告に至るかたがどれくらいいるのかはわかりませんが、もしも本当にこんなに苦しい想いをしているのなら、是非一度小谷野事務所にご連絡いただきたいものです(笑)

しかしながら、『憂鬱たち』の主人公は、その税理士についても半信半疑なので、一概にそんなことはいえないのかもしれないですね。

 

 

ともかく、このタイミングで『憂鬱たち』を紹介しようと思ったのは、確定申告の話だからです。

このあと主人公は、確定申告のための書類を税理士に送るために……と、話は続いていきます。

節税の情報などは載っていません、当然ですが(笑)

短編小説の一編とはいえ、確定申告について書いたフィクション作品はあまりないような気がします。

本はいつ読んでもいいものですが、季節感が合致している方が読みやすいです。

 

季節が通りすぎる前に読みきれるといいですよね。

では、また。

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