株式会社の設立費用の目安は約25万円ですが、設立後は維持費がかかります。法人として存続する限り、最低でも約7万円の法人住民税の均等割が必要です。また、税理士への報酬や社会保険料の負担もかかります。本記事では、株式会社の年間維持費と設立時の初期費用を整理します。
目次
株式会社の維持費は最低でも年間約7万円!赤字でも発生する費用の正体
株式会社が赤字でも負担する代表的な費用が法人住民税の均等割で、その最低額は年間約7万円です。法人住民税の均等割は、会社所在地の都道府県と市区町村に納める税金です。会社の所得や利益に関係なく課税され、行政サービスの対価としての性格を持ちます。
法人住民税の均等割は、資本金の額や従業員数に応じて税額が決まります。そのため、創業直後で売上がなくても、法人として登記されている限り納税義務が生じます。
参考:総務省「法人住民税」
株式会社の年間維持費の内訳

株式会社の年間維持費は、すべての法人に共通する費用と、株式会社特有の費用に分けられます。
すべての会社に共通する主な維持費
事業規模や業種、利益の有無に関係なく、法人として存続する限り維持費は発生します。法人住民税や税理士費用は固定費となるため、資金計画に含める必要があります。
| 費用項目 | 金額の目安 | 発生頻度 | 備考 |
| 法人住民税の均等割 | 約7万円~ | 年1回 | 赤字でも必ず発生 |
| 税理士への顧問料 | 月2~5万円 | 毎月 | 顧問契約の場合 |
| 税理士への決算申告費用 | 15~30万円 | 年1回 | 顧問料とは別に発生 |
| 社会保険料(会社負担分) | 給与額の約15% | 毎月 | 役員報酬30万円なら月約4.5万円 |
法人住民税の均等割【最低でも約7万円】
資本金1,000万円以下、従業員50人以下の小規模な会社の場合、法人住民税の均等割は年額7万円程度が一般的です。例えば東京都23区では、都民税2万円と特別区民税5万円の合計7万円が課されます。具体的な金額は自治体によって異なるため、正確な額は、所在地の自治体で確認してください。
法人住民税の均等割は、会社が赤字であっても免除されることはありません。売上がゼロでも、事業活動を一切行っていなくても、法人として登記されている限り納税義務が生じます。
参考:東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
税理士への顧問料や決算申告費用
法人は年に一度、決算と税務申告を行う義務があります。税理士と顧問契約を結ぶ場合、月々の顧問料として2~5万円程度、さらに決算申告時に別途10~20万円程度の報酬が発生します。税理士と顧問契約を結ぶ場合、年間費用は40万〜60万円程度が一般的です。
取引量が多い場合や記帳代行を含める場合は、70万円を超えることもあります。一方、決算申告のみをスポットで依頼する場合は、年間15万円から30万円程度が相場です。
役員や従業員の社会保険料
株式会社は、法律により社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられています。これは、社長1人だけの会社であっても例外ではありません。
社会保険料は、役員や従業員に支払う給与の金額に基づいて算出され、会社と本人がおよそ半分ずつ負担します。会社の負担割合は、給与額のおおむね14〜16%程度で、加入している健康保険制度や年度によって若干異なります。
例えば、役員報酬を月額30万円に設定した場合、会社負担分は月額約4.5万円、年間で約54万円の負担です。
株式会社ならではの特有な維持費
共通費用とは別に、株式会社という法人形態に特有の維持費も発生します。これらは会社法などで定められた義務に基づくコストであり、事前に見込んでおく必要があります。
| 費用項目 | 金額の目安 | 発生頻度 | 備考 |
| 決算公告費用(官報) | 約6万円 | 年1回 | 電子公告なら実質無料も可能 |
| 役員変更登記費用 | 1万円~ | 数年に1回 | 任期満了時、司法書士依頼なら+数万円 |
決算公告費用【年1回約6万円】
株式会社は会社法に基づき、各事業年度の終了後に決算内容を公表する「決算公告」を行う義務があります。公告の方法は、「官報」「日刊新聞紙」「電子公告」の3つから選択でき、最も安価な官報への掲載で約8万円程度です。
この決算公告を怠ると過料の対象となる可能性があります。
役員変更登記費用【数年に1回、最低1万円~】
株式会社の役員には任期があり、非公開会社の場合は最長で10年まで設定できます。任期が満了した際には、たとえ同じ人が再任する場合でも、法務局で役員変更の登記手続きを行わなければなりません。登記申請には、登録免許税として最低1万円が必要です。
手続きを司法書士に依頼する場合は、別途数万円の報酬が発生します。
株式会社の年間維持費を安く抑えるための3つの方法

株式会社の年間費用は工夫によって合法的に抑えられます。ここでは代表的な3つの方法を紹介します。
自分で決算申告を行い、税理士費用を節約する
年間費用を抑えるには、税理士費用を見直すことが有効です。近年では、クラウド会計ソフトが充実しており、簿記の専門知識がそれほどなくても、自分自身で決算申告を行えます。特に創業期で取引が少ない場合は、自力での決算申告も現実的な選択肢となります。
ただし、申告内容に誤りがあると追徴課税のリスクもあるため、慎重に判断しましょう。
役員報酬を低く設定して、社会保険料の負担を減らす
社会保険料は役員報酬の金額に比例して高くなるため、役員報酬の額を低く設定することで、社会保険料を軽減できます。例えば、役員報酬を月額20万円と30万円に設定した場合では、社会保険料の年間負担額に約36万円の差が生じます。
ただし、役員報酬を低くしすぎると生活水準や将来の年金額に影響が出るため、バランスを考慮する必要があります。
設立費用と維持費が安い合同会社を検討する
これから会社を設立する段階であれば、「合同会社」という企業形態を選択することも、コスト削減の有効な選択肢です。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
| 設立時の法定費用 | 約20~24万円 | 約10万円 |
| 決算公告義務 | あり(年間約6万円) | なし |
| 役員の任期 | あり(最長10年) | なし |
| 役員変更登記 | 任期満了ごとに必要 | 原則不要 |
合同会社は設立費用が約10万円で済み、決算公告や役員変更登記も不要なため、株式会社特有の維持費を削減できます。社会的信用度は若干低いですが、維持費を抑えられる点は、合同会社を選択する大きな利点です。
株式会社と合同会社の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【比較】株式会社と個人事業主の年間維持費はどちらが安い?
単純に年間の維持費だけを比較した場合、個人事業主の方が安く済みます。個人事業主には「赤字でも必ずかかる均等割」は存在せず、社会保険への加入も従業員5人未満なら任意です。
| 比較項目 | 株式会社 | 個人事業主 |
| 赤字時の税負担 | 最低7万円(均等割) | 原則なし |
| 社会保険加入 | 義務(1人でも) | 従業員5人未満なら任意 |
| 税率(所得800万超) | 有利(法人税率) | 不利(所得税累進) |
しかし、課税所得が年間800万円〜900万円を超えると、個人事業主に課される所得税率よりも法人税率の方が低くなるため、法人化した方が節税メリットが生じます。さらに、株式会社には社会的信用度が高い、融資を受けやすいといったメリットもあります。
個人事業主と法人の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
株式会社の年間費用に関するよくある質問
ここまで株式会社の運営にかかる年間費用について詳しく見てきましたが、実際の運用を考えると、さらに細かな疑問が出てくるかもしれません。ここでは、株式会社の年間費用に関してよくある質問をまとめました。
赤字で利益がなくても年間維持費はかかりますか?
はい、かかります。会社の利益が赤字であっても、法人住民税の均等割として最低でも年間約7万円の税金が発生します。また、税理士との顧問契約や社会保険料も、会社の利益状況にかかわらず発生します。
会社を一時的に休眠させた場合、年間維持費は発生しますか?
税務署や自治体へ休止の届出を行うことで、法人住民税の均等割が課税されない扱いとなる場合があります。ただし、取り扱いは自治体ごとに異なり、休眠していても課税されるケースもあるため、事前に自治体へ確認することが重要です。
また、休眠中も役員の任期が満了すれば役員変更登記は必要になります。
年間維持費を払えなくなったらどうなるのでしょうか?
税金や社会保険料を滞納した場合、延滞税や延滞金が加算され、最終的には会社の財産が差し押さえられる可能性があります。支払いが困難な場合は放置せず、速やかに税務署や年金事務所に相談し、分割納付などの猶予制度が利用できないか確認することが重要です。
まとめ
株式会社の年間費用は、たとえ利益がゼロであっても、法人住民税の均等割として最低約7万円が発生します。これに加えて、税理士への報酬、社会保険料、決算公告費用、役員変更登記費用など、会社の状況に応じた年間コストがかかります。特に社会保険料は、役員報酬の金額によっては年間100万円近くになることもあります。
年間費用を抑える方法として、自力での決算申告や役員報酬の調整、合同会社の選択が挙げられます。自社の事業規模、将来のビジョンに合わせて最適な企業形態を選択し、年間維持費と設立費用を把握し、無理のない資金計画を立ててください。









